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念を使わせてみよう小説スレッド

981:2004/11/25(木) 18:32

「…それは、だけど……」
 だけど、そんな事で納得していい訳が無い。
 そんなのって、あまりにも―――
「…やっぱり、狐さんの言う通りですね」
「?」
「お兄さん本人に、家族の敵討ちとして『冥界の支配者』を殺させては駄目、という事です」
 狐さんが、そんな事を言っていたのか?
「待ってくれ! 僕はあいつを許さない!
 あいつは、僕がこの手で―――」
 この手で、殺す。
 殺す。
「駄目です。
 お兄さんは、後悔してしまう人です。
 いいですか、人を殺すというのは、動物を殺すのとは訳が違います。
 種族保存の本能か、他者との共感力なのかは知りませんが、
 人を殺すという事には、少なくない覚悟と犠牲がつきまといます。
 そして、お兄さんはその覚悟と犠牲に耐えられるのだとしても、
 きっと後悔してしまいます。
 殺しを、割り切れない人です。
 そんな人は―――どんな理由であれ、人を殺すべきではありません」
「――――――」
 明らかに僕より年下の少女に、人殺しとは何なのか説教をされる。
 そしてそれは恐らく正しい。
 僕の想像など遥かに及ばない程の修羅場を、しぇりーちゃんは潜ってきたのだろう。
 そんなしぇりーちゃんに、今までぬくぬくと日々を暮らしてきた僕が、
 何かを言う事なんて出来る筈が無い。
「……」
 僕は、自分の不甲斐無さが口惜しかった。
 いいのか?
 本当にいいのか、これで?
 このまま狐さん達に、全てを任せたままでいいのか?
 それで、僕は本当にいいのか?

「…お兄さんは不思議な人なのです」
 しぇりーちゃんがふと呟いた。
「お兄さんと話していると、何故か鏡に向かって話している気になるのです」
 鏡、か。
 それはそうなのだろう。
 僕には、あまりにも自分が欠け過ぎている所為で、誰にでもなれる。
 だから、しぇりーちゃんは僕の中に自分自身を投影してしまったのだろう。
 何て、愉快。
 何て、奇怪…


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