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念を使わせてみよう小説スレッド

791:2004/11/23(火) 01:36

「だけど、奴がヤバいのは能力じゃない。
 その異常性さ。
 奴は、人を殺傷するのが愉快で堪らない。
 人をいたぶるのが面白可笑しくてならない最低の下種野郎なんだ」
 口にするのも忌々しいといった様子で、狐さんは顔をしかめた。
「だから、多分遠回しに君を狙うのもその一環さ。
 そして、その責任は俺にある」
「…?
 どうして、狐さんに責任があるんですか?」
 僕は不思議そうに言った。
 だって、悪いのはどう考えてもその『冥界の支配者』じゃないか。
「この前、殺人鬼に襲われてた君を俺が助けたよな」
「ええ。 ですがそれとこれと何の関係が?」
「あの時、『冥界の支配者』に君の事を見られた」
「え―――?」
 それは、どういう事なんだ?
「少し考えれば分かる事さ。
 死体を操って人を襲わせるのに、操る本人がその様子を観察しないって筈は無い」
 そうか。
 あの時狐さんが『鼠退治』と称してどっかに石を投げてたのは、
 僕達を観察していた『冥界の支配者』を追い払う為だったんだ。
「で、でも、あんな暗い場所で、それこそたった少しの間顔を見られただけで…」
 それだけで僕個人をあんな短時間で突き止めるなんて、
 いくら裏社会の住人とはいえ可能なのだろうか?
「ああ、君の言う通りだ。
 俺達ハンターだって万能じゃない。
 君のようなただの一般市民を、何の情報も無しに特定するなんて、かなり厳しい。
 それには膨大な時間と金がかかり過ぎる。
 だから、わざわざ君を探してまで殺しにかかるなんてありえないだろうと思っていた。
 すまない、俺の失策だ」
 狐さんが深く頭を下げた。
「で、ですけど…」
「…それに、あの日君を呼び止めたりしなければ、君を巻き込む事は無かった。
 言ってみれば、俺が君の家族を殺したようなものだ」
 沈痛な面持ちで、狐さんは告げた。

 ……。

 僕は何も言えなかった。
 確かに、あの日狐さんと会わなければ、僕が事件に巻き込まれる事は無かったかもしれない。
 だけど、狐さんだって僕や僕の家族を殺すつもりなんか無かった筈だし、
 あの時自分の行動が人の死に結びつく事を予想するなんて、神様でもなければ不可能だ。
 …それでも、僕は狐さんに何も言えなかった。
 狐さんの所為じゃないですなんて、言えなかった。
 愚かにも、醜くも、
 僕は家族の死の怨み辛みを、身近な対象にぶつけたいと、そう思ってしまっていたのだ。
 狐さんは悪くなんかないのに、
 これっぽっちも悪くなんかないのに、
 それでも心のどこかで僕は狐さんを責めようとしていた。
 僕は心底嫌になった。
 自分の弱さが。
 自分の醜さが。
 それを許容してしまおうとする、自分自身が。


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