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念を使わせてみよう小説スレッド

761:2004/11/23(火) 01:34
 〜十二話〜

 目が覚めた。
 そこで僕は気がつく。
 いつものベッドではないと。
 いつもの寝室ではないと。
「〜♪〜〜♪♪」
 隣の部屋から狐さんの鼻歌が聞こえてくる。
 え〜と、これはどういった状況なのでしょうか。
 知らない間に、僕と狐さんとはそーいう深いかんけーになってたのか?
 これはしくじったなあ。
 肝心のベッドインの記憶が残ってないじゃないか。
 宝擬古人生最大の不覚ってやつだ。
「……」
 起きたばかりで朦朧とする頭を振り、狐さんの声がする方に向かう。
 どうやらここはかなり高級なホテルの一室らしい。
 床には所狭しと漫画やゲームが山積みになっているが、全部狐さんのものだ。
 見かけによらず、狐さんは結構インドアな趣味の持ち主らしい。
「えーと…」
 しかし本当にどうして僕がこんな所に。
 夜のプレイをするだけなら、安いラブホテルでもいいじゃないか。

「お、起きたか少年」
 狐さんは備え付けのキッチンで朝食を作っていた。
 割烹着(かっぽうぎ)というおよそ萌えとは程遠い服装にもかかわらず、
 ばっちりと決まっているのは流石である。
 しかしキッチンまで完備の部屋って、修学旅行でも泊まった事ねえぞ。
「もう少し待ってな。
 すぐ朝ご飯出来るから」
 香ばしい焼き魚の匂い。
 どうやら和風の朝食のようだ。

 …思い出してきた。
 僕の家族が死んで、警察に通報して、警察に保護されて、事情聴取を受けて、
 家族の葬式を済ませて、そこで親戚に会って、クラスメイトにも会って、
 腫れ物扱いされて、僕がまだ狙われてるかもしれないって事で、
 親戚の家にいたりしたらまたそこで周りを巻き込むかもしれないから、
 それで狐さんが泊まっている宿にご厄介になる事にしたんだ。
 で、そんな事がこの一週間の間に起こった。
 一週間。
 まだ、一週間しか経ってないんだ。
 もう、十年以上経ってるのかと思った。

「お待ちどう様」
 テーブルの上に、出来立ての食事が並ぶ。
 シャケに卵焼きにほうれん草のおひたしにノリに納豆に味噌汁に白いご飯。
 うん、やっぱ日本人なら朝はご飯だよね。
「いただきます」
「いただきます」
 同時に手を合わせ、黙々と朝食を食べる。
「ご馳走様でした」
「御粗末さまでした」
 一言も会話の無いまま、朝食は全て胃の中に納められた。
 家族が死んで二、三日は食べてもすぐに吐いてしまっていたのだが、
 ようやくマトモに食事を受け付けるくらいには精神状態は安定したらしい。
 人間は慣れる生き物だといわれているが、
 人の死すら過ぎ去った思い出として処理するその冷徹さに、我ながら恐ろしくなる。
「狐さん、一つお願いがあるのですが」
「何かね少年」
「今度、裸エプロンで料理して下さい」
「死なすぞ糞餓鬼」
「ごめんちゃい」
 冗句の応酬。
 僕としては冗句などではなく、本気で裸エプロンが見たいと思っての真剣な発言なのだが、
 狐さんに確実に殺されるのでこれ以上のおねだりは止めておく。


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