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念を使わせてみよう小説スレッド

751:2004/11/22(月) 01:59

「―――?」
 僕の頬を、熱いものが伝った。
 …?
 これは、涙?
 泣いているのか?
 僕が?
 違う。
 これも偽物だ。
 偽物の涙だ。
 僕には、本物の涙を流すなんて出来やしない。
 出来っこ、ない。
 なのに、なのにどうして涙が勝手に出てくるんだ!?

「…少年」
 優しい顔で、狐さんが僕の顔を見つめた。
「…悲しいよな」
「はい」
「悔しいよな」
「…はい」
 うつむき、僕は狐さんに答えた。

「…少年、君と君の家族との間に何があったのかなんて、俺には分からない。
 もしかしたら、君の言う通り偽物だってあったのかもしれない」
 僕の両肩に手を置き、狐さんが静かに口を開く。
「だけど、そこには本物もあった筈だ。
 でなきゃ、例え偽物でも涙なんて出やしない。
 俺が保証してやる。
 君と君の家族には、確かに本物の絆がそこにあったって事を。
 君の流す涙は、紛れも無い本物だったって事を。
 それを嘘だという奴がいるなら、俺が全部叩きのめす」
「う、うううううううう…!」
 喉から嗚咽が漏れた。
 そこで、僕は本当に心の底から泣いているのだと、気がついた。
 もう、会えないのだと思った。
 お父さんにもお母さんにもおじいさんにもおばあさんにも、
 もう決して会えないのだと思った。
 二度と、話が出来ないのだと思った。
「うううううううう」
 十年以上も昔の、兄さんがまだ生きていた頃、
 その時は確かに、僕は他の何とも代替の利かない、
 正真正銘のお父さんとお母さんとの息子だったのだろう。
 兄さんが死んで、僕は兄さんの偽物である事を求められたけど、
 それでもそれまで僕は正真正銘の僕自身だったのだろう。
 それが、悲しかった。
 悲しんでいるのは、その時の昔の僕なのかもしれない。
 だけど、その僕は今もなお僕の心の奥底に生きている。
 だから、死ぬ程悲しいんだろうと思った。

「…0人だ」
 狐さんが、言った。
「俺が『殺す』と決めて一ヶ月以上生きてた奴の人数だ。
 逃がしゃしねぇ。
 今まで生きて来た事を後悔するまで、何度でも殺してやる…!」
 狐さんは、阿修羅の如き憤怒の面を浮かべていた。


                 〜続く〜


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