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念を使わせてみよう小説スレッド

741:2004/11/22(月) 01:58

「…少年、取り敢えずここを出るぞ。
 ここに居ても、辛くなるだけだ」
 辛い?
 はは、まさか。
 偽物の僕に、そんな感情などあるわけがない。
「少年!」
 狐さんが僕の腕を引っ張った。
 引きずられる形で、僕は居間から連れ出される。

「…僕の所為で、死んだんですね」
 居間を出た廊下で、僕は呟いた。
「…! それは違うぞ、少年!」
「…電話の奴は、僕を狙ってるようでした。
 だから、僕が狙われていたから、家の皆はその巻き添えを受けた」
 そう、僕の所為で。
 下らない偽物の僕の所為で、家族は、殺された。
「違う!
 悪いのは殺した奴だ!
 君には、何の責任も無い!」
 責任は確かに僕には無い。
 だけど、原因はある。
 それなら、直接手を下してはいないものの、僕が家族を殺したようなものじゃないか。
 なのに、僕にはそれを悔やむだけの本物の心すらない。

「…僕だけ死ねば、よかったんだ」
 僕が死ねばよかった。
 これだけは、多分僕の本当の気持ちなのかもしれない。
 兄さんが死んでから、僕は死んでいたようなものだった。
 だって、僕は僕として生きる事を許されなかったのだから。
 兄さんの偽物でしかなかったのだから。
 なら、死んだ所で別に不都合なんて無かった筈だ。
「最初にしぇりーちゃんに会った時に、大人しく殺されればよかったんだ」
 空っぽな声で、僕は言った。
 何であの時抵抗してしまったんだろう?
 何であの時生き延びてしまったんだろう?
 それさえなかったら、こんな事には。
「もういっぺん同じ事言ってみろ!!」
 狐さんが僕の胸倉を掴む。
 怒っている。
 哀しそうな顔で、怒っている。
 何でこの人は、こんなにも必死になって怒っているんだろう。
 僕は偽物でしかないのに。
 なのに何でこんなにも必死に怒ってくれるのだろう。
「…僕は、兄さんの偽物でしかなかったんです。
 最初から、僕は死んでいたんです。
 だから、僕が死ねばよかった。
 宝擬古だって、本当は僕の名前じゃない、兄さんの名前だ。
 僕は、偽物の家族にすぎなかったんだ。
 だから…」
 だから、家族が死んだって、僕には泣く事すら―――


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