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念を使わせてみよう小説スレッド

681:2004/11/22(月) 01:56

「…あの、狐さん」
 寿司の値段も心配だが、僕はもう一つの心配事を狐さんに聞く事にした。
「うん? どうした、恋愛相談か?」
「うるせえ黙れ」
 即座に突っ込みを入れる僕。
「ひ、ひどいわ、タッチャン!」
「人を某野球漫画の主人公の仇名で呼ばないで下さい。 真面目な話です」
 真剣な目で、僕は狐さんを見た。
 狐さんも冗談を交わす雰囲気ではないと悟ったのか、茶化すのをやめる。
「…連続猟奇殺人事件の犠牲者が、26人に増えました」
 26人。
 ここまでくれば、間違いなく日本犯罪歴史上に殿堂入りするレベルである。
「しかもその犠牲者の一人は、ロードローラーで押し潰されたって話じゃないですか。
 きっと犯人は時を止められる吸血鬼ですよ?」
 僕がそう言うと、何故か狐さんは微妙な表情へと変わった。
 何だ?
 何か変な事言ったか、僕?
「でも、重要なのは殺され方じゃありません。
 殺されてるって事が重要なんです。
 そもそも、殺人鬼は以前に狐さんが止めた筈なんですから」
 そうだ、殺人鬼は確かに狐さんが殺した。
 なのにまだ猟奇殺人は続いている。
 これはまるで悪夢のような冗句だ。
「教えて下さい、狐さん。
 この街で、一体何が起こっているっていうんです?」
 僕は狐さんを見据えて言った。

「…前、言ったよな。
 お前さんが踏み込むべきでない世界ってのが存在するって」
 しばしの沈黙の後、狐さんがゆっくり口を開いた。
「はい。 ですけど…」
「君も薄々は感づいてはいるんだろ?
 この事件には、常識など及びもつかない力、『念』ってのが関係してるって事に。
 最近念能力に目覚めたばかりの君なら尚更そういうのに敏感だろうしな」
 トロを口に運び、狐さんが一つ間を置いた。
「やっぱり…」
 やっぱり、念か。
 人間では考えられない力で犠牲者の死体がぐちゃぐちゃにされている事からよもやとは思っていたが、
 どうやらそれで正解だったらしい。
「そう。
 だからこそ君の質問には答えられない。
 君には、念使いの念能力がバレる事は致命傷だとも教えたよな?
 だから君にここで事件のあらましを説明したら、君まで巻き込む事になる」
 真面目な顔で、狐さんは僕にそう告げた。
「…わかりました」
 念使いにとって自分の能力を知られる事が鬼門ならば、
 それは自分の能力を知る者は敵と見なされるという事。
 知ってしまえば、もう引き返せない。
 だから狐さんは僕に何も教えない。
 真実が気にならないといえば嘘になるが、狐さんの好意を無下に断るのも気が引ける。
 だから、僕はこれ以上聞かない事にした。
「よろしい。
 お姉さん素直で物分りのいい子は好きよ。
 ちゅーしたげるちゅー」
「うるせえセクハラすんな年増」
 …本当はノリもいいからでちゅーして欲しいと思ったが、
 流石に公衆の面前ではヤバいと思ったので丁重に断った。

「狐さんとお兄さんばっかり話しててつまんないです〜!」
 会話から外されていたしぇりーちゃんが、耐え切れなくなったのか横から口を挟んだ。
 ああ、そういやこの子の事すっかり忘れてたな。
 ごめんごめん。
「今度は私が狐さんとお喋りするんです〜!」
 歯を剥き出しにして、あからさまに僕を敵視するしぇりーちゃん。
 ふざけんな。
 お前如き薄っぺらい藁の家が僕と狐さんとの会話に割り込むんじゃない。
「あ、いや、ごめんなさい…」
 しかし勿論僕にそんな事を言う度胸なんてあるわけなく、
 せっかくの狐さんとの会食はしぇりーちゃんによって台無しになるのだった。


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