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念を使わせてみよう小説スレッド

661:2004/11/21(日) 01:59

「…狐さん」
「ん? どうした、少年?」
「…どうして、僕なんか助けてくれたんですか」
 僕は狐さんの顔から目を逸らして言った。
「決まってるだろ。 友達だからだ」
 さも当然のように、狐さんは答えた。
「…!
 どうして!
 この前の事怒ってないんですか!?
 僕は、あなたに―――」
 あなたに嫌われるような事を、した筈なのに。
「ああ、怒ってるよ」
 狐さんが静かに告げる
「だったら…」
「だけどさ、俺が怒っているって事と、お前と俺が友達だって事とは別問題だろ?
 友達ってのはそいつが好きだけで成り立ってんじゃない。
 良い所も悪い所も、好きも嫌いも含めて、そいつと向かい合いたいと思う。
 それが一番大切な事の筈だぜ」
 …あなたは、
 あなたはどうしてそんな風に、
 僕が決して得られないものをそうも簡単に言ってのけるのか。
 どうして、そう言われただけでここまで安心出来るのか。
 どうしてあなたは、どうしようもない位にあなたなのだ。
「俺が友達じゃ、迷惑か…?」
 不安そうに、狐さんが僕に訊ねた。
「…いえ、そんなんじゃ…ないです」
 迷惑であるわけがない。
 だけど、僕は不安なんだ。
 僕は偽物だから。
 僕とあなたとの絆も、きっと偽物だから。
 いつか、その偽物の絆が、壊れてしまう日が必ず来るから。
 だから…

「…この前は、ごめんなさい」
 僕は頭を下げ、狐さんに謝った。
「いい子だ、少年。
 でも、君が謝らなきゃいけないのは俺じゃないだろ?」
 僕の頭を撫でながら、狐さんがそう告げる。
 てかこの歳になって他人に頭を撫でられるとは思わなんだ。
「はい」
 今度は狐さんの目を真っ直ぐ見て、そう答える。
 そうだ。
 謝らなくちゃ。
 モナカさんに。
 到底、許してもらえるとは思えないけど。
 許されるような事ではないけど。
 それでも、僕には謝らなければいけない義務がある。
「分かればよろしい。
 それじゃあ、景気づけに一緒に飯でも食いにいこうぜ。
 お前も来るだろ、しぇりー?」
 狐さんがしぇりーちゃんに顔を向ける。
「え?あ、はい!」
 慌てて頷くしぇりーちゃん。
 どうやら、狐さんには全く頭が上がらないようだ。
「よし、それじゃ出発するか!」
 こうして、狐さんに引っ張られる形で僕達三人は食事に行く事になるのだった。


 …この時はまだ、明日になればいつもと変わらない日常が来ると信じていた。
 当たり前のように学校に行って、当たり前のように家に帰る。
 宿題をして絵を写して食事をして風呂に入って寝る。
 そして明日はそこにモナカさんに謝るという特別なイベントが追加される。
 そんな明日が来ると、信じて疑わなかった。
 だけど、もう全ては遅かった。
 この時から、いいや恐らく初めて狐さんにあった時から既に、
 僕は二度と引き返せないレールの上を走っていたのだ。
 今日この日が、僕にとって最後のいつもと変わらぬ日常だったのだと、
 まだ僕は気づいてすらいなかった―――


                   〜続く〜


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