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念を使わせてみよう小説スレッド

621:2004/11/21(日) 01:57





 午後6時15分。
 その日も特に変わった事など無く、僕は学校から下校した。
 いつも通りに授業を消化し、いつも通りに絵を写して一日が終了。
 恐らく卒業までずっと一緒であろうその日課。

「…まだ残ってるんだ、このクレーター」
 狐さんに殺人鬼から助けて貰った場所で、僕は足を止めた。
 土手地の地面には、今もなお痛々しい程の戦いの爪痕が残されている。
 事件現場という事もあり、当分の間埋め立てが行われる予定はないらしい。

「…?」
 ふと、僕は地面に穿たれたクレーターから視線を上げた。
 前の方に、人がいる気配を感じたからだ。
 さっきまでは確かに誰も居なかった筈なのに、
 そこには一人の女の子が立ちはだかっており、
 待ちかねたと言わんばかりの顔で僕の事を見つめていた。
「やあ、しぇりーちゃん。 お久し振り」
 僕は片手を挙げ、その女の子人吊詩絵莉に挨拶をした。
「…自分を狙う殺し屋を目の前にしたというのに、随分と個性的な応対の仕方ですね」
 呆れたように口を開くしぇりーちゃん。
「そうでもないよ。 ここ数日、いつ君が襲って来るのかとビクビクしてた」
「あなたにそんな感情があったなんて、驚きです」
 失礼な事を言う子だ。
 まるで人を妖怪か何かのように言いやがって。
 オジサンイカッチャウゾ?
「…で、マジな話、どうして僕が君に殺されなきゃいけないのさ。
 君が誰に頼まれたのかは知らないけど、
 僕は殺される程の恨みを他人から買った覚えは無いよ?」
 もしかしたらモナカさんが振られた腹いせに、とも考えたが、
 時期的にそれはありえないだろう。
 僕がモナカさんを振ったのはしぇりーちゃんに襲われた後だし、
 殺し屋を雇ってから告白するなんて人間、フィクションの世界ですら見た事が無い。
「これから死ぬ人間が知る事ではないです」
 前と同じように、しぇりーちゃんの手の平に特大チャクラムが魔法のように創造される。
 狐さんに教えて貰った、具現化系の念能力というものなのだろう。
「そうか。
 そうだよね…」
 僕は一つ息をついた。
 殺し屋を目の前にしているというのに、僕の気持ちはひどく落ち着いている。
 もう何もかも終わらせてしまっていいか、そう考えてしまっているのかもしれない。
 僕は偽物。
 だから初めから人生に意味は無い。
 ならば、ここで人生が終了したとして何の悔いが残る。
 家族は僕が死んだらどうするのだろうか。
 僕が死んだ事を悲しむのか、兄さんが死んだとして悲しむのか。
 それとも、今度は僕と兄さんなど最初から存在しなかった事にしてしまうのか。
 どうでもいいや。
 そんなの、僕の考える事じゃない。

 だけど、狐さんは。
 …あの人は、僕が死んだら何か感じてくれるのだろうか。

「…くッ」
 思わず、自嘲的な笑い声が漏れた。
 狂っているな。
 戦いを目前にして、僕は何を考えているんだ。
「…何がおかしいんですか?」
 ムッとした顔で、しぇりーちゃんが訊ねる。
「いや、何でも無いよ。 自分の愚鈍さ加減に愛想が尽きただけさ」
 静かな声で、僕はそう告げた。
「それにしても、凄いねそのチャクラム。
 そんなのを思いつけるなんて羨ましいなあ」
 僕には無理だから。
 僕には、自分自身のの何かを創れないから。
 だから、誰かの真似をする。

 ―――完全再生率、27%
 ―――発動、『劣化複製・穴あきの満月(デグラデーションコピー・フライングドーナッツ)』


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