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念を使わせてみよう小説スレッド

611:2004/11/21(日) 01:57
 〜十話〜

 二時間目の数学の授業。
 僕の三つ左隣の席には、誰も座っていなかった。
 モナカさんが学校に来なくなって、もう三日になる。
 学校には風邪を引いているからとの連絡が入っているらしいが、
 本当の所は僕が原因なのだろう。
 僕はモナカさんの気持ちに答えてはあげれなかった。
 答えるつもりも無かった。
 まあ、いいさ。
 こういった問題は時間と共に風化していくのが世の常になっている。
 モナカさんも、あれは一時の気の迷いだった、と古い思い出にすり替わっていくのだろう。
 そして僕も、すぐにモナカさんの事など思い出さなくなるのだろう。
「…最低だなあ」
 本当に最低だな、僕は。
 好きな人に拒絶されれば傷つく。
 それが辛辣なものであれば尚更だ。
 僕も、恐い。
 狐さんに嫌われるのが恐い。
 だから、狐さんにモナカさんとの事を怒られた時には深い絶望を味わった。
 そんなのは分かっていた筈なのに。
 それなのに。
 僕は、モナカさんに酷い言葉をぶつけてしまった。
 どうする。
 住所を調べて、謝りにいこうか。
 …やめておこう。
 そんな事をしても、徒に傷口を拡げてしまうだけだ。
 やっぱり、ほとぼりが冷めるまで下手なアクションはしないのが最善の策なのだろう。

「……」
 モナカさんが学校へ来なくなると同時に、狐さんもぱったりと姿を消した。
 あの人の事だから多分死んではいないのだろうが(というより殺しても死ななそう)、
 あんなのが最後の会話では心残りにも程がある。
 だけど、多分もう二度とあの人とは会えないのだろう。
 再びあの人と話せはしないのだろう。
 それでもいいかと思った。
 それでいいやと思った。
 所詮、僕は偽物。
 あの人と想いを通わせる事など、不可能ではないか。
 それなら、いっそ綺麗さっぱり望みが絶たれる方がまだ諦めがつくというものだ。
 だけど、もう一度会いたいと心のどこかで思っていた。
 それは下らなくて馬鹿馬鹿しくて意味などなくて取り留めのない一縷の望み―――
「…では宝、この問題を解いてみろ」
「はい」
 やめよう。
 こんな事考えたって、どうしようもないじゃないか。
 いくら想いをつのらせても、どうしようもないじゃないか。
 それに狐さんだって、モナカさんのように僕の中に誰か別の人を投影していただけかもしれないじゃないか。
「え〜と…」
 僕は狐さんの事もモナカさんの事も頭の中から追い出し、
 因数分解の解式に思考を専念させるのだった。


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