したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

念を使わせてみよう小説スレッド

491:2004/11/16(火) 23:05
 〜七話〜

「あら、おかえり」
 学校から帰った僕に、お母さんが声をかけた。
「あ、うん。 ただいま」
 そっけなく返事をして、制服の上着を居間の椅子に掛ける。
「昨日お友達の所に泊まってたみたいだけど、
 あんまりお友達に迷惑かけちゃ駄目よ?」
「うん」
 フーンさんの言っていた通り、家族にはきっちりと連絡をしておいてくれたらしい。
 面倒な事にならなくて、本当によかった。

「……」
 僕は仏壇の間に行き、そこに立てかけられている遺影に手を合わせて黙祷した。
 一卵性双生児だった、僕と本当にそっくりだった僕の『兄』。
 …あの事故で死んでから、もう十年以上も経ったのか。
「…生きていたら、一緒の学校に通ってたかもしれないのにね」
 後ろで、お母さんが誰に言うでもなく呟いた。
「…うん」
 信号が赤になっている事に気づかずに、横断歩道に飛び出て即死。
 どこにでもある、ありきたりであっけない人生の終焉。
 あまりに唐突過ぎる、『兄』の最期。
「弟の分まで、しっかり頑張らなくちゃね、『お兄ちゃん』」
「…うん」
 家族は、『兄』が死んだ事を認めたくなかった。
 認めなかった。
 だから家族は、“僕”に『兄』を求めた。
 だから“僕”は『兄』になった。
 『兄』の偽物としての人生を強いられた。
 僕は偽物。
 僕は代理品。
 僕は贋作。
 だから、僕は僕であって僕でない。
 誰でもないから、誰の真似でも出来る。
 一つも顔(かお)が無い故に、無限の貌(かお)を持っている。
「…ごめん、僕ちょっと寝るよ。
 晩御飯になったら起こして」
 いいだろう。
 それならば、僕は偽物としての人生を全う(まっとう)しよう。
 あなた達が僕に僕以外の“誰か”を求めるならば、僕はそれに答えよう。
 全てを偽って、全てを欺いて、自分自身を完全に殺しつくそう。
 この“家族ごっこ”を、“おままごと”を、あなた達の気が済むまで続けよう。
 『兄』は死んだ。これは事実だ。
 だが、誰もがそれを否定するのならば、その事実に一体何の意味がある?
 『兄』は死んだ。
 確かに死んだ。
 だけど、それと同時に『僕』も死んでしまったのかもしれない。
 そんなふうに、僕(タカラギコの偽物)は考えていた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板