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念を使わせてみよう小説スレッド

431:2004/11/16(火) 01:31

「んじゃ話しを戻すぞ、念には練、纏、凝、隠、円とかいうのがあって… んん?」
 狐さんが、僕の描いていた絵を覗き込んだ。
「へえ、絵なんて描く趣味があったんだな、少年。
 後ろにあるやつは全部君が描いたのか?」
 狐さんが、後ろに立てかけてある僕が今までに描いた絵に視線を移す。
 正確に言えば絵を描くのではなくて模写だし、それに模写は趣味ではない。
 これしか出来ないからしているだけだ。
「見てもいいかい?」
「どうぞ」
 僕の返答を確認すると、狐さんは僕の絵をしげしげと眺め始めた。
 てか、この人に芸術とかその類の事が理解出来るのだろうか。
「ふん、へえ、ほお〜。 成る程ね…」
 五分程鑑賞した所で、狐さんは僕へと視線を戻した。
「忌憚の無い意見を言わせて貰うが、いいかい?」
 狐さんが僕に訊ねる。
「別に、いいですよ」
 どうせ的外れな意見だろうけど、許可する。
 この人に情操教育が備わっているとは到底思えないし。
「んじゃ言わせて貰うけど、この絵は、何と言うか恐い。
 本来絵に備わっているべきものが、決定的に欠けてるんだ。
 俺はこういう芸術には門外漢だから詳しい事は分からないけど、
 絵っていうのは描いたやつの心が透けて見えるのが普通なのは知ってるぜ。
 それが例え既存の絵の模写であろうとも、だ。
 なのに、君の絵からは君自信の何かが感じられないんだ。
 本当に、ただそこにある絵が写されているだけなんだ。
 『この絵が好きだから描き写す』とか、
 『この絵に近づきたいから描き写す』とか、
 そういうのすら見えてこない。
 これは異常だぜ。
 機械のようにただそこにある物をコピーするなんて、
 およそ人間の技術とは思えない」

 ―――――!

 僕は言葉を失った。
 たった数分見ただけで、狐さんに全てを言い当てられてしまったからだ。
 僕の絵の本質を。
 僕自身の本質を。
 まるっきり余す所無く言い当てられてしまったのだ。
「…悪いな、こんな言い方して」
 狐さんがすまなそうに謝る。
「別にいいです。
 全部、あなたの言う通りですから。
 僕は、ただの偽物なんですから」
 そうだ、僕は偽物なんだ。
 体も心も絵も名前も。
 みんなみんな出来損ないの偽物なんだ。
「いいや、君は偽物なんかじゃないよ。
 『機械的にコピーする』。
 これだって君の立派な個性であり、才能さ。
 他の誰かに真似出来る事じゃない」
 狐さんがそう言って僕の肩を叩く。
「…それでも、所詮偽物は偽物です。
 本物の前では、その存在なんてゴミ屑同然になる。
 僕にはそんな偽物しか作れないんです」
 僕は自嘲気味に笑った。
 何を言ってるんだか僕は。
 拗ねていじけて、狐さんに同情でもしてもらおうってのか?


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