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念を使わせてみよう小説スレッド

331:2004/11/15(月) 02:34

「!?」
 しかし、僕のパンチはあっけなくしぇりーちゃんにかわされてしまった。
「…何ですか、それは?
 素人同然のパンチですよ?」
 そうだった。
 いくらパワーとスピードが増しているとはいえ、本体である僕は戦いに関してはずぶの素人。
 そんなへっぽこパンチが、恐らく戦闘のプロフェッショナルであるしぇりーちゃんに当たる筈も無い。
「ははっ、どうやら立派なのは念だけのようですね!
 そんなんじゃ、百年経っても私に触れる事すら出来ませんよ!?」
 僕が本格的戦闘未経験者である事を見抜いたしぇりーちゃんの顔に、余裕の色が戻ってくる。
 そう、僕は誰かと殺し合いをした経験も無ければ、
 格闘技を習っていた事だってない。
 ならば答えはただ一つ。
 誰かの真似をすればいい…!



 ―――模倣対象、記憶内検索開始
 ―――検索完了、模倣対象発見
 ―――模倣対象、
『「それじゃあ、今度はこっちの番だな」
 狐さんは先程の殺人鬼の一撃など毛程も効いていない様子で、腕を大きく振りかぶった。
 あまりにも単純な、あまりにも愚直な、あまりにも率直なパンチの為の姿勢。
 攻撃準備態勢。

「……!?」
 目を凝らすと、狐さんの周りに何かもやのようなものが纏わり付いているのが見えた。
 そのもやは、狐さんの今まさに放たれんとする右拳に特に大きく纏わり付いている。
 何だ、あれは?
 目の錯覚かなにかなのか?

「いくぜ…!」
 臨海まで力を溜めた狐さんが、今まさに拳を打ち込もうとした。

 轟音。

 振り上げた拳を振り下ろす、ただそれだけの行為。
 たったそれだけの筈なのに、僕には狐さんのその動作が見えなかった。
 あまりにも速く、あまりにも強く、それはあまりにも常軌を逸し過ぎていて、
 地面に出来た小規模のクレーターと、半分以上挽き肉と化した殺人鬼の有様を見て、
 ようやく何が起こったのか理解出来る、それ程の超常現象。
 文字通りの一撃必殺。』
 ―――解析開始
 ―――力点、作用点、攻撃角度、攻撃速度、攻撃距離、攻撃威力… 解析完了
 ―――構成要素抽出開始
 ―――模倣対象構成要素、抽出完了
 ―――模倣開始
 ―――模倣処理正常
 ―――模倣完了
 ―――完全再現率9%
 ―――全工程終了
 ―――発動、『不完全模倣・闘法外法狐(インパーフェクトバトルモード・KITUNE GEHO)』

「それじゃあ、今度はこっちの番だな」
 僕の体が動き、あの時と同じように拳を振り上げる。
 狐さんが見せた、あの攻撃態勢と同じように。
 あの凄絶な一撃と同じように。
「いくぜ…!」
 模倣ししろ再現しろ再生しろ。
 あの時起こった全てを。
 あの最強を。
 あの無敵を。
 正確に精密に緻密に忠実に再現しろ…!
「ひッ―――」
 しぇりーちゃんが、思わず後ろずさった。
 おいおい、しぇりーちゃん。
 そんな化物でも見てしまったような、怯えたような声を出さないでくれよ。
 僕は化物なんかじゃない。
 化物なんて大層な存在じゃ、決して無い。
 僕はただの偽物。
 そう―――化物の――――――偽物だ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
 僕は力一杯、振り上げた拳を振り下ろした。


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