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念を使わせてみよう小説スレッド
25
:
1
:2004/11/13(土) 01:38
僕は、人間の胃袋にあれ程の量のものが入るという神秘を初めて目の当たりにした。
30分もしない間に、狐さんは山積みの食事を平らげてしまったのだ。
はっきり言って、あれはもう人間業じゃあない。
食べながら、僕と狐さんは他愛も無い話で盛り上がった。
最近見たニュース、昔読んでいた漫画、面白いと思ったゲーム、などなど。
よく考えれば、僕が家族以外の他人とあんなに親しく会話するなんて、
初めての事だったように思う。
僕自身、その事実に驚いていた。
「…ガラでもないな」
そう、本当にこんなのガラじゃない。
僕が、あそこまで他人に深く(と言っても普通の人にとっては珍しくもないレベルだが)接するなんて。
何も無いから、何も出来ないから、自分である事を諦め、
どこにでもいる端役(エキストラ)に徹していたこの僕が。
本当に全然、ガラじゃない。
夜道を一人、歩く。
狐さんに「送ってやろうか」とも言われたが、
また学校で噂になるのも嫌だし丁重に断った。
まあ大丈夫だろう。
殺人鬼は、昨日狐さんが抹殺している。
いや、元々死んでいたのを動かなくしたという方が正しいか。
…え?
殺人鬼?
「…あ」
一番大切な事を聞くのを忘れていた。
死体だった筈の殺人鬼が、どうして動いていたのか。
まず最初にこれを聞いておくべきだったのだ。
念という突飛過ぎる話の所為で、その事をすっかりと忘れていた。
というか、この事を話さない狐さんも狐さんだ。
あの野郎、よりによって最も肝心な話をすっぽかしやがった!
「…いや、違うか」
僕は軽く頭を振った。
あの狐さんが、こんな重要な事を話し忘れるだろうか?
多分、それはない。ならば何故話さなかったか。
考えられる回答はただ一つ。
僕には知らない方がいい事だから。
おそらく、あの殺人鬼には狐さんの言っていた『踏みこまない方がいい世界』の出来事なのだろう。
だから、僕に話さなかった。
話せば、知ってしまえば、僕も巻き込まれてしまうかもしれないから。
…あの人なりに、僕に気を遣ってくれたんだろう。
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