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念を使わせてみよう小説スレッド
218
:
1
:2005/01/07(金) 18:44
ゴロンと、山崎渉さんの首が地面に転がる。
「―――なッ!?」
僕は思わずギコの襟首を掴んだ。
「お前、何で殺した!?」
ギコの顔を引き寄せ、怒号をぶつける。
「はあ?
あいつは俺達を殺しに来たんだ。
殺し返して何が悪い」
「それはそうかもしれない!
でも、あの人はもう降参してたじゃないかッ!?」
「降参が嘘だったら、どうする気だったんだ?」
何ら悪びれる素振りも無く、ギコは答えた。
こいつは、今人を殺したばかりというのに、何も感じはしないのか。
「いいか。
あいつが夕方、俺達を狙った時既に、あいつの死は決定していたんだ。
人を殺すってのは、逆に殺されても文句は言えねえって事なんだぜ?
それ位の覚悟、向こうだってしてた筈だ」
「だからって… だからって本当に殺さなくてもいいだろう!
手足を縛るなり、他にいくらでも方法があった筈だ!
こんな殺しに何の意味があるってんだ!?」
「意味なんか、ねえよ」
短く、ギコは告げた。
「殺しに意味なんかねえ。
俺はただ、他の方法が思いつかなかったからこいつを殺しただけだ。
それだけのこった。
こいつを殺した事実なんて、俺の人生には何の影響も与えない。
俺が殺した結果、こいつは死んだ。
あるのはその過程と結果だけさ」
「……!」
僕は何も言い返せなかった。
言い返す気にもなれなかった。
こんな奴に、
こんな化物に、
僕なんかの言葉が一体何の役に立つというのだ。
「…そろそろ放せよ。
首、痛えんだけど」
ギコが冷めた目つきのまま僕に言う。
僕は何も言えず、黙ってギコの襟を掴む手を放した。
「…お前は、お前は―――」
僕はその時、何を訊ねようとしていたのだろうか。
お前はどうしてそんな考えが出来るんだ?
お前はどうしてそんな考えをするようになったんだ?
お前はどうしてそんな考えを肯定出来るんだ?
あるいはそれら全部か。
それともそれ以外の事か。
「……」
ギコは、何も喋らなかった。
僕も、何も喋らなかった。
何か言っても、無駄だと思っているから。
言う必要なんて無い位、僕達はどこかで通じ合っていたから。
「―――!」
その時、ギコが咄嗟に後ろを振り返った。
今度は僕にも分かる。
何かが、僕達の所に近づいて来ている。
僕がそれを分かったのは気配とかそういうのではない。
草を掻き分ける、というより、
障害となる木々を全て破壊していく、と言ったほうが正しいような音が、
どんどん僕達の方に向かって来ていたからだ。
何だ。
一体、何が来ているというんだ!?
「!!!!!」
木っ端を撒き散らしながら、一体の怪物が僕達の前に躍り出た。
2メートルはゆうに越しているであろう巨躯。
堅牢な鱗に覆われた表皮。
血塗られた手足。
どこをどう見ても、人間とは思えない。
「……!」
さしもののギコも驚愕を隠せず、用心深くその怪物を見据えながら中段に刀を構える。
何だこいつは。
こんな奴、受験生の中に居たか!?
それとも、こいつが試験官の言っていた『鬼役』なのか!?
「GUUUU…」
怪物が、僕達を睨む。
憎しみしか込められていない、濁った目で。
「ニクイ…」
怪物が呟いた。
「ニンゲン、ニクイ…」
憎い?
僕が?
いや、多分違う。
これは、特定個人というよりは―――
この世の全てに向けられた憎悪だ。
何故か、そう確信出来る。
「ニクイ ニクイ ニクイ ニクイ…」
怪物が体を震わせながら、呻く。
こいつは、こいつは一体何なんだ!?
どうしてこんな奴が、僕の目の前に居る!?
「ニクイイイイイイイイイイイイイIIIIIEEEEEEEEEEEE!!!」
体を突き抜けるような咆哮。
思えばこれが、悪夢のような殺戮の始まりを告げる合図だったのかもしれなかった。
〜続く〜
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