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念を使わせてみよう小説スレッド

2111:2005/01/05(水) 22:59
 〜三十八話〜

 ギコが横で罠を作っている横で、僕は微かな匂いを感じ取っていた。
 死体の匂いかと思ったが、そうじゃない。
 もっと直接的な…
 もっと、漠然とした、
 言うならば、『死』そのものの匂いを。
 嫌な予感がする。
 それもどんどん、強くなってきている。
 嫌だ。
 何かよく分からないけど、兎に角嫌だ。
 一刻も早く、ここから帰りたい。
 どうして、僕はこんな所に居るのだろうか?
 図書館で毒男さんに出会わなければ、僕がここに来るなんて有り得なかった筈だ。
 永遠に、この第4次試験会場までは到達出来なかった筈だ。
 だが、僕は現実にここに存在している。
 とてつもない、それこそ奇跡のような偶然の積み重ねで、ここに存在している。
 ただの幸運。
 そんな事では決して無いだろう。
 何かもっと大きな、
 そう言わば神の見えざる手のような―――
 大いなる、悪意を感じる。
 それとも。
 それともまさか。
 この状況を引き起こしたのは、他でもない僕自身なのだろうか?
 この僕が、逆にここに居るという運命を引き寄せたのか?
 それならば、何の為に。
 僕はどうして、こんな所に―――
「おい」
 ギコが僕に告げる。
「ぼーっとしてんなよ。
 いつ、誰に襲われてもおかしくねえんだぞ?」
「…分かってる」
 余計な思考をかき消す為に頭を横に振りながら、僕はギコに返事を返した。



          @        @        @



 D−1(Dナンバー1)は、独り空を見上げていた。
 空にはぽっかりと、まるで穴のような紅い満月が浮かんでいる。
 月―――
 思えばついこの間までそんなものなど見た事は無かったと、D−1は感慨に耽る。
 自分が今まで頭上に見てきたのは、黒く冷たい人口の天井だけだったからだ。
 あの奈落の底…『地下魔街(アンダーグラウンド)』で彼が見てきたのは、
 紛れも無い地獄そのものでしかなかった。
 人権などまるで無視された(そもそも人権などという言葉はD−1は知りもしなかったが)、
 狂気の沙汰としか言いようの無い生体改造の数々。
 彼の仲間の殆どは、その副作用に耐え切れずに死んでしまった。
 憎かった。
 仲間を殺し、自分をこんな体にした人間が。
 憎かった。
 そんな痛みも知らず、のうのうと生きている他の人間が。
 憎かった。
 この世の、全てが。
 だから彼らは復讐を実行し、この地上へと逃げて来た。


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