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念を使わせてみよう小説スレッド

2081:2005/01/04(火) 22:14



「う、うわああああああああああああああああああ!」
 僕は思わず大声で叫んだ。
 さっきからの悪臭の原因は、これだったのか。
 勘弁して下さい。
 本当に勘弁して下さい。
 もうお腹一杯です。
「大きな声出すんじゃねえよ、馬鹿」
 ギコが僕の頭をはたく。
「し、し、し、死体!
 そこに首吊り死体が…!」
 震える指で、僕はロープにぶら下がった亡骸を指差した。
 スーツ姿の、中年男性らしき死体。
 死んでから結構時間が経っているらしく、あちこちが腐り始めている。
 その上烏についばまれた所為か、かなり無残な状態で木からぶら下がっていた。
「……」
 ギコはそちらに眼を向けると、何ら気後れする事なくつかつかと死体の前まで歩み寄った。
 こいつ、何で死体を目の前にしてそんなに平然としていられるんだ?
「!!」
 と、ギコは刀の抜き打ちで死体のぶら下がっていたロープを断ち切った。
 ドサリと音を立てて、死体が地面に転がる。
「ギ、ギコ、何を…」
「仏さんを埋めてやる」
 言いながら、ギコは刀で地面を掘り返しだした。
 まさか、本当にこの死体を弔ってやるつもりなのか?
「何でそんな事を。
 知り合いでも何でもない死体なんか、どうして…」
「理由なんかあるかよ。
 ただ、このままじゃあこのおっさんが可哀想だと思っただけだ。
 言うなら、俺の自己満足かな」
 当然のようにギコは言い放った。
 可哀想。
 死んだ人間に哀れみをかけて、一体何になるというのか。
 それでもギコはただ、死体を埋める為の穴を掘り続けた。
 彼は自分のやっている事が無意味だと思っているのだろうか。
 思っていないのだろうか。
 思っていながら、敢えてこんな行動を取っているのか。
「…僕も手伝うよ」
 ギコだけに穴を掘らせるのも悪い気がしたので、一応僕も手伝う事にした。
 そこら辺にあった木の枝を使って、ギコと一緒に地面を掘り起こす。
 念能力の助けもあった為か、二十分かそこらで人一人を埋めるだけの穴を掘り終える事が出来た。
「よっと」
 何の躊躇も無く、半分腐乱死体となった男性の死体をギコが担いで穴に横たえた。
 流石にこれまでは手伝う気にはなれない。
「……」
「……」
 無言のまま死体を入れた穴に土を被せていく。
 程無くして、男性の死体は完全に土の中へと埋没した。
「……」
 ギコが両手を胸の前に合わせて黙祷を捧げた。
 僕もそれに合わせて、名前すら知らない男性に対して黙祷する。
 しかしこいつ、こんなに律儀な奴だったのか?


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