したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

念を使わせてみよう小説スレッド

2011:2005/01/02(日) 00:10

「…君はここで僕と別れた方がいい、ギコ。
 あいつが僕を狙ってるっていうなら、僕一人で…」
「僕一人で引き受けるっていうのは無しだぜ。
 お前みたいな半分素人に、どうこう出来る手合いじゃねえよ。
 それに、お前とつるんでる時点で、俺も立派な標的の一人だろうしな」
 皮肉っぽい笑みを浮かべながら、ギコは静かに告げた。
「…すまない」
「謝るなって。
 まあ悲観するばかりでないさ。
 確かにお前一人じゃ無理かもしれねえが、今は俺もいるしな。
 2対1に持ち込めれば、大した事ねえだろ」
 ああ、そうか。
 どうしてギコが、今こうして僕を連れてあてどなく歩いているか、ようやく分かった。
 僕を餌に、尾行している相手を誘っているのだ。
 2対1は不利とみて逃げるならそれでよし。
 誘いに乗るならそれでよし。
 よくもまあ、そこまで度胸が座っているもんだ。
「ここら辺でいいか…」
 人気の無い路地裏に入った所で、ギコは足を止めて振り返った。
「出て来いよ。
 折角おあつらえ向きの舞台を整えてやったんだぜ。
 それとも、尻尾巻いて逃げ出すか?」
 竹刀袋入れから刀を取り出しながら、ギコが未だ姿を見せぬ相手に向かって挑発する。
 しかし、そこには人っ子一人居はしなかった。
「……」
 沈黙が続く中、時間だけが流れていく。
「…本当に、誰かが尾行してたのか?」
 僕はギコに言った。
 こいつ、格好いい台詞を言ってみたかっただけなんじゃないだろうか。
 そんな不安が、僕の頭をよぎる。
「いいや、誓ってそれは無い。
 間違い無く、『ここ』に誰かが『居る』」
 周囲を用心深く見回しながら、ギコが呟く。
「そうは言っても、誰も居ないじゃ―――」
「危ねえ!」
 いきなり、ギコが僕を突き飛ばした。
 直後、「ぐうッ」というギコのくぐもった声が聞こえてくる。
「…!
 何をすんだ―――」
 文句を言おうとした僕は、そこで言葉を止めた。
 ギコの右腕の服が、鋭利な刃物で切り裂かれたように破れ、
 そこから鮮血が滴っているのを見たからだ。
「―――ッ!」
 僕は息を飲む。
 これは!?
 攻撃されたのか!?
 いつ!?
 どこから!?
 どうやって!?
 相手は!?
「くッ…!」
 慌てて周りをぐるっと見回すも、そこには誰も居ない。
 馬鹿な。
 ギコは確かに、誰かが居ると言っていた筈だ。
 ならば何故そいつの姿が見えない。
 それとも、僕達は今まさに透明人間と相対しているとでもいうのか!?
「…はッ」
 ギコが不愉快そうに笑った。
「どうも面白くねえ展開になっちまったようだなあ」
 ゆっくりと、ギコが刀を鞘から引き抜く。
 その刀身は炎のように朱く、
 まるで血を吸ったかのように紅く―――
 吸い込まれそうな程赤い、
 刀だった。
「いいさ、どっからでもかかって来い。
 最初の一撃だけは、サービスで受けてやるよ。
 だがな―――」
 ギコが、どこにいるかも分からない敵に対して刀を構える。
「その一撃で俺を殺せなきゃ、屍(かばね)を晒すのはてめえの方だぜ…!」


                       〜続く〜


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板