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念を使わせてみよう小説スレッド
193
:
1
:2004/12/30(木) 03:45
@ @ @
『あんたが、俺が殺さなきゃならない相手なのか?』
地下で、
あまり嬉しくない生まれ故郷への久々の帰郷で出会った坊主は、
開口一番外法狐に言ったのはこの言葉だった。
まるで世界の全てを憎んでいるような―――
諦めているような―――
そんな目をしていた坊主。
かつての自分と、同じ目をしていた坊主。
外法狐はそんな坊主を『外法』に迎え入れた。
それが興味だったのか、単なる気紛れだったのかは、
今となっては外法狐自身にも分からない。
ただ一つ言えるのは、その坊主は『外法』の中ですら変り種の異端児であったという事。
『外法』殺意は、不特定の、それこそ人間に限らない全てに向けての、
無差別で無区別で無軌道な殺意である。
理由も無ければ必然性も無い、殺す為に殺す、殺す為の存在だから殺す者の集団である。
だが、あの坊主は違った。
あの坊主は誰でも殺せばいいというものではない。
殺意に、指向性がある。
誰かは分からないが、あの坊主は特定の誰かを殺すという目的がある。
それはもう、そういう運命の下に生まれたと言っても差し支えの無いくらい、
絶対的な目的であり、存在理由だった。
何故か、外法狐はそう感じていた。
では、あの坊主がそこまでして殺したいのは誰か?
それは未だに分からない。
それは自分かもしれないし、あの坊主自身かもしれない。
もしかしたら、一生分からないままなのかもしれない。
だが、もしそんな相手が存在するのだとしたら、ぞっとしない話である。
あの坊主の念能力―――
外法の中で、いいやこの世界で最も、『殺す』事に特化した能力。
余りに『殺す』事に特化した所為で、他の何者にもなれない念能力。
こと『殺す』という点においては、外法狐すら凌駕する念能力。
そんな能力を持つあの坊主が、どうしても殺さなければいけない奴とは、
一体どういった存在だというのか。
「…ま、考えてもしゃあないわな」
外法狐は思考を中断し、PSPを起動させた。
しかし、自分は何だって今頃あの坊主の事を。
それに、この言いようの無い感覚は何だ。
外法狐は自問する。
歯車が噛み合わないような、螺子が締まらないような、漠然とした不安感と不快感。
まるで、運命が軋みをあげて捩れていくような、嫌悪感。
運命。
そうだ、2ヶ月以上前に出会ったあの少年。
これはあの少年と出会った時と同じような感覚だ。
そして、その不安の通りに、あの少年の運命は崩壊した。
他の運命すら巻き込んで、崩壊していった。
いや、もしかしたら崩壊する事すら、運命の予定調和だったのかもしれない。
それどころか、崩壊したのは周りの運命だけだったのかもしれない。
だとすれば、あの少年は危険だ。
自分の意思とは無関係に、運命レベルで他者を巻き込んで殺す。
あの少年はそういった運命を持っているのかもしれない。
ならば、今のこの得体の知れない感覚は、そうなのか?
また、少年の周りで何かが起ころうとしているのか?
そしてあの坊主も、それに関係しているというのか?
「…下らねえ」
やめよう。
論理的でないにも程がある。
ただの空想、どころか妄想だ。
それに、第一あの少年とあの坊主が、ばったり出会うなんて事が起こる訳が無い。
それこそ天文学的な確率での偶然だ。
「あの少年、頑張ってんのかねー」
それとも、もう失格してしまっているのだろうか。
まあ常識的に考えて、ついこないだまで素人だったあの少年なんて、
余程の幸運なり運命の後押しでもなければ1次試験すら突破出来まい。
少なくとも、3次試験までにでもいけば失格確実である。
だからこそ、合格したら何でも言う事を聞くと言ったのだ。
「ま、2次試験までいってたら、ご褒美にちゅーくらいはしてやるか」
PSPのディスクを射出して遊びながら、外法狐は薄く微笑むのだった。
〜続く〜
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