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念を使わせてみよう小説スレッド

1901:2004/12/30(木) 03:44

「やめないか君達!」
 と、よく通った声が殴り合いをしようとしていた連中の動きを止めた。
 僕達の視線が、その声の主に集まる。
 そこにいたのは、一人の青年だった。
「今はそんな事をしている場合じゃないでしょう。
 このままでは皆不合格になってしまいますよ?」
 青年が周囲を見回して言う。
「だけど、どっちみちこのままじゃ500回なんて…」
 グループの一員である男が口ごもる。
「ええ、確かにこのままでは無理です。
 しかし、勝算はあります」
 自信に満ちた表情で、青年は告げた。
「まず、ロープを回す人を交代しましょう。
 今回している人では、回す速度が微妙に違う為に、
 前と後ろでそれぞれジャンプのタイミングがずれてしまいます。
 そうですね…」
 青年が僕とギコの方を見やった。
「ロープを回すのは君達にお願いしましょうか。
 君達なら、息もぴったりでしょうから」
「はあ、分かりました」
 異論は挟まない。
 というか、短時間でそこまで見抜くこの人の眼力に敬服しさえした。
「で、次に私達跳ぶ側ですが…
 皆さん、隣どうしで手を繋いでください」
 青年の言われるまま、グループの人達が手を繋いで整列する。
「これで、他の人とジャンプのタイミングを合わせ易くなった筈です。
 いいですか、それでは始めますよ」
 青年が僕とギコに目で合図を送った。
 僕とギコはお互いに頷き合い、ロープを回す。
 鏡に向かい合わせの如き僕とギコに、タイミングや速度のすれがある筈も無い。
「1!2!3!4!5!…」
 掛け声と共に、全員が跳躍する。
 凄い。
 さっきまでとは大違いだ。
 たったあれだけの事で、ここまで一致団結出来るとは。
 僕とギコとのロープを回すタイミングが抜群というのもあるのだろうが、
 何より大きいのは、跳ぶ人どうしが手を繋ぐ、体の一部を接着させるという事だろう。
 文字通り人との触れ合いが、一時的にとはいえ、擬似的にとはいえ、
 安心感や信頼感、それから連帯感というものを作り出しているのか。
 手を繋ぐというのは、そういう心理的なものを狙ってのものだったのか。
 勿論ジャンプする時に繋いだ手は邪魔になるかもしれないが、
 そんなものを克服するくらいの身体能力は、
 この場所に残っている者なら有しているだろう。
 だからこそ出来るテクニック、そういう事か。
「!!」
 217回目の所で、誰かが足を引っ掛けて失敗してしまった。
「大丈夫、まだ時間は残っています!
 次こそ成功させましょう!」
 青年が皆を鼓舞する。
 残り時間は10分と少し。
 時間的に次が最後のチャンスである。
「1!2!3!4!…」
 僅かな可能性を信じて、再び跳び始める。
「187!188!189!190!191!…」
 ここまできたら、もうやり直す時間は無い。
 このまま失敗せずに飛び続けるしか、僕達には残されていないのだ。
「342!343!344!345!…」
 隣で歓声が上がる。
 どうやら、どこかのグループが成功したらしい。
 構うものか。
 いや、そんな事に構っている余裕は無い。
 集中力を切らすな。
 ふとした気の緩みがそのまま失敗に繋がってしまう。
「423!424!425!426!…」
 もう少し。
 もう少しだ。
 お願いだから、どうかこのまま―――


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