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念を使わせてみよう小説スレッド

1871:2004/12/26(日) 22:56



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 廃屋と化したビルの一室で、二人の男が向かい合っていた。
 一人は、フーンの顔をした8頭身の青年。
 もう一人は、人間と呼ぶには余りに獣じみた、余りに獰猛な外見。
 辛うじて、男、いや、雄というのが判別出来るくらいの…
 それくらい人間離れした様相だった。
「…GUUUUUUUU……」
 しかし、精神的に圧しているのは普通の人間にしか見えない青年の方だった。
 ジリジリと、ジリジリと、獣のような男が後退していく。
 まるで、本能的に危険を察知しているかの如く。
 今にも、逃げ出そうとしているかの如く。
「GUOAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
 しかし、獣のような男の闘争本能は、逃走本能を凌駕していた。
 バネに弾かれたように、猛スピードで青年に跳びかかる。
「ほう、素晴らしい速さだ。
 だが…」
 青年が、クンッと指を動かして―――

「その速さが、仇になったな」
 それは一瞬の出来事だった。
 獣のような男の体が、頭から爪先にかけて次々と、
 次々と輪切りになっていく。
 まるで鋭利な刃物に切り裂かれたかのように、限りなく平面に近い傷口を晒しながら、
 獣のような男はバラバラになって血の海に沈む。
 恐るべきは、青年は指を動かす以外に何も行動を起こさなかった事。
 そう、青年はそれ以外何もしはしなかったのだ。
「OK、標的ゲット」
 青年が決め台詞を言う。
「流石だよな、俺ら」
 青年の後ろから、これまた青年にそっくりな男が現れる。
「おお、弟者。
 そっちは済んだのか」
 獣のような男を解体したばかりの青年が、自分とそっくりな男に話す。
「ばっちりだ、兄者」
 弟者と呼ばれた男がガッツポーズをする。
「ふむ。
 『D』というのがどれ程のものかと思ったが、存外に手応えが無かったな」
「いいや兄者。
 俺達が強過ぎるのさ」
「それもそうか。
 まあ、俺の『殺人技術』と、お前の『殺人奇術』に、敵などいる筈がなかったな」
「その通りだ」
 兄弟が声をあげて笑う。
「さて、早いとこ『掃除屋』に電話を入れるとするか…
 ……ん?」
 兄者と呼ばれた男が携帯電話を取り出したその時、電話が振動した。
「もしもし、俺だ」
 電話にそう告げる兄者。
『面倒な事になった』
 電話の主は、開口一番そう言った。
『Dの残党が包囲網を突破したらしい。
 急いで追撃に当たってくれ』
「…ほう、少しは、骨のある奴がいたという事か」
 兄者が感心したように呟く。
『そういう事だ。
 俺もすぐにそちらと合流する。
 零母那(レモナ)にも連絡を伝えておいてくれ』
「ああ…
 分かったよ、裏螺(うらら)。
 で、そいつらはどっちに逃げたんだ?」
 兄者が訊ねる。
『詳しくはまだ分からない。
 だが、西へ逃げたのは確かなようだ』
「西、か」
 兄者が復唱する。
「OK分かった。
 すぐにでもそちらに向かおう」
 それだけ言って、兄者は電話を切った。
「兄者」
 弟者が告げる。
「ああ、今すぐ出発だ。
 お前はレモナに電話を入れてくれ」
 兄者は弟者にそう言い、弟者が携帯電話を取り出すのを確認すると、
 弟者から視線を外してそっと呟いた。
「妖を滅する彩なる女、魔を断ち切る真なる琴月、鬼を祓いて木を払う、
 獣の死に十字をきって、人を吊るすは一つの理、それら法を外れし下なる方、
 我は『禍つ名』、字は『妖滅(あやめ)【彩女】』。
 殺す由を排除して、殺す故を駆逐して、今宵一つの刃と化さん。
 我に最早、己は無い」


                     〜続く〜


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