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念を使わせてみよう小説スレッド

1841:2004/12/26(日) 22:55





「ふい〜〜〜、ようやく全試合が終了しましたね。
 これで一次試験はお終いで〜〜〜す!」
 周りを見渡せば、受験者の数は明らかに入った時に比べて激減していた。
 およそ、半分くらい。
 というか正しく半分にまで減ったわけなのだが。
「よお、ええかっこしい。
 まさかとは思っていたが、やっぱ念を使えたんだな」
 後ろからギコが僕の肩を叩く。
「まあね。
 ところでさっきの君のは何なんだ?
 見たところ、念を使ったようには見えなかったけど」
 ギコの腕相撲の相手は、僕程とは言わないけれど、相当にガタイのいい奴だった。
 それをギコは、苦も無く倒してのけたのである。
 その光景は、まるで相手が自分から倒れるようでもあった。
「合気の一種みたいなもんさ。
 色々、そういう殺人術は習わされたんでね」
「合気は武道じゃないのか?」
「武道なんてーのは、突き詰めりゃあただの殺人技さ。
 まあ今みたいな世の中じゃ、殺す為に技を使えないから誤解するのも無理はないけどな」
 物騒な話だな、おい。
 しかしまあ現代において殺す為の技を習得する事に、
 あまり付加価値がないというのは同意である。
 事実空手だの柔道だのの初段より、英検1級の方が社会では役に立つだろう。
「しかし、あんな日と目につく所で念を軽々しく使うのは感心しねえな」
 ギコが咎めるような視線を僕に向けた。
「どうして?」
「阿呆かお前は。
 あれだけの体格差がある相手をお前みたいな平凡な兄ちゃんが軽々倒せば、
 誰でも警戒するだろうが。
 お前が大きな障害になるかもしれないっつー理由で、
 誰かが邪魔をしないなんて保証はどこにもねえんだぞ?」
「……あ」
 そういや、その通りだ。
 僕としては余程の事が無い限り、フェアプレイはするつもりではあるが、
 ここにいる全員が全員、そんなスポーツマンシップにのっとった連中ばかりではないだろう。
 出ている杭は打つ。
 垂れ下がる足は引っ張る。
 本気で『ハンター試験』に合格する気があるなら、それぐらい平気でやる奴は、間違いなく居る。
「中には、他人を蹴落とす事だけを目的に『ハンター試験』を受ける奴もいる。
 『新人潰し』って糞ったれな異名まで持つ馬鹿も、存在するらしいしな」
 『新人潰し』。
 そりゃまた随分と不名誉で下種な通り名だ。
「しまったね。
 迂闊にも程がる」
 僕は自分の余りの迂闊さに呆れ果てた。
 あーあ。
 やっちゃったよ。
 これからどーすっかなー。
「ま、そんなに心配するなよ。
 いざって時は、俺が助けてやっからさ」
 ギコがはにかみながら言う。
「そいつはどうも。
 でも、何だって僕にそんな事をしてくれるんだ?」
「友達だろ?」
 当然のように、ギコは答えた。
「…そっすか」
 僕はそう返すので精一杯だった。
 何で、どうして今日会ったばかりで、
 こいつはこんなにも屈託なく「友達だ」って言えるのだ。
 僕には、出来ない。
 僕には到底そんな事は出来ない。
 所詮、僕はこいつの劣化コピーにしか過ぎないという事か。
 本物であるこいつの前では、無意味な存在という事なのか。


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