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念を使わせてみよう小説スレッド

1801:2004/12/22(水) 01:03

「…なあ」
 今度は、ギコから僕に訊ねてきた。
「お前、人を殺した事はあるか?」
 まっすぐに、ギコは僕にそう問うた。
 これ以上無いくらい純真に。
 これ以下無いくらい愚直に。
 ギコははっきりとそう聞いてきた。
 僕が、人殺しなのかどうかという事を。
「……」
 こいつに嘘をつく事など無意味だし、元より嘘をつくつもりも無かったが、
 それでも僕は答えを返すのを躊躇った。
 でも、僕ははっきりと言わなければならない。
 ギコの質問に、答えなければならない。
「…あるよ」
 それだけ、僕は答えた。
 殺した。
 みんな殺した。
 直接僕が手を下したのは一人だけど、
 大勢の周りの人を僕の所為で殺してしまった。
「ふうん。
 やっぱそうか」
 予め僕の答えを予測していたかのように、ギコは頷いた。
「で、殺した時お前はどんな気持ちだった?」
 ギコは更に容赦無く僕に訊ねる。
 まるで、自分自身に問うているかのように。
「…嫌だったよ。
 最低最悪の思いで一杯だった。
 自分を殺したくて、仕方がなかった」
 今も、そう思っている。
「そっか。
 それを聞いて安心した」
「どういう事だ?」
 安心したって、どういう意味なんだ?
「いやな、たまにいるんだよ。
 殺す事を一種のステータスのように思っているような奴が。
 人を大勢殺すのが、凄い誇らしい事のように錯覚してるクズ野郎が。
 どうやら、お前はそんな奴じゃなかったようだ。
 だから、安心した」
 ギコはそう言って、軽く微笑む。
 僕には絶対に真似出来ないような顔で、微笑む。
「そりゃどうも…」
 僕は苦笑するしかない。
 作り物の表情で、苦笑するしかない。

「…君は、人を殺した事があるのか?」
 僕は一体何を聞いているのか。
 よりによってこいつに、『人を殺した事があるのか』だって?
 馬鹿馬鹿しい冗句だ。
 果々(はかばか)しい冗長句だ。
「あるよ」
 そっけなく、ギコは答えた。
「殺した。
 何人も殺した。
 男も女も子供も老人も、更には人間以外だって何人も何匹も殺してきた。
 俺は、屍の山の上に立っている」
 ギコが僅かに、眉をひそめる。
 こいつの偽物の僕でない限り分からない程、本当に僅かに。
「…君はその時、どう思ったんだ?」
 無為と知りつつ、僕は質問を続ける。
「思わなかったね、何にも。
 誰を殺そうが何を殺そうが、殺す時には何も思わなかったね」
 殺す時に何も思わない。
 何も持たない。
 何も感じない。
 何も得ない。
 何も失わない。
 何も残さない。
 それ故何も、理由が無い。
 あれ?
 知ってるぞ。
 僕はこんな欠落者を、
 こんな逸脱者を、
 知っているぞ?


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