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念を使わせてみよう小説スレッド

1731:2004/12/15(水) 18:41





「いらっしゃいませー」
 アルバイトの店員さんが無料のスマイルで僕とギコを出迎える。
 試験会場の下見を済ませた僕達は、まだ時間もあるので近くのファーストフードで昼食を取る事にした。
「俺はテリヤキバーガーセット」
「僕はチーズバーガーセットで」
 それぞれ注文し、バーガーとポテトとドリンクの載ったトレイを受け取って席に着く。
 道案内のお礼と、ギコは僕の分の代金まで払ってくれた。
「いやしかし、びっくりしたぜ。
 目の前にいきなり鏡が出てきたのかと思ったぞゴルァ」
 ギコがハンバーガーの包みを開きながら言う。
「ふうん、そう」
「そう、って気の無い返事だな。
 お前は驚かなかったのかよ」
「いや、驚いたよ。
 だけど別に、そこまで引きずる程の事でもないからね」
 僕が誰かに似ているなど、僕にとっては日常茶飯事だ。
 それでも、ここまで正反対に対照的に対称的に一致していたのは、
 僕にとっても始めてだったけど。
「僕としては、試験会場の方が驚いたね。
 あれ、どっからどうみてもただの公民館だろ」
「んー?
 まあそれもそうだな。
 てかお前、本当にあの場所で合ってんのか?」
「僕に住所を教えてくれた人が嘘をついてなければ、あそこで間違い無いよ」
 狐さんが僕に嘘をつく理由はさして見当たらないから、あの場所で合っているのだろう。
 まあ仮に嘘だったとしても、元々試験を受けるのに初めから乗り気だった訳じゃないし、
 それはそれで丁度いい。
「そのお前に住所を教えたのって、どこの誰よ?」
「年上ツルペタ和服美人俺女」
 外法狐という名前は、ここでは出す必要は無いだろう。
 あの人結構有名人らしいし、あの人の関係者というのがバレて面倒事に巻き込まれないとも限らない。
「なんだよそのおもしろおかしい設定のキャラは…
 つーか、俺の身内以外にもそんな奴居たのか」
「身内?」
「ん、ああ、失言だったかな。
 まあ深くは気にするな。
 俺の家族…っつーか、まあ親しい知り合いに、それと似たような奴が居るって事。
 ま、お前さんは多分知らないよ」
 どこの誰かは知らないが、狐さんと同じような人がこの世に存在したのか。
 そりゃ何とも恐ろしい怪談だ。

「そういやーさー」
 ふいに、ギコが話題を変えようとした。
「お前、どうしてハンター試験なんて受けようと思った訳よ」
 どうして僕がハンター試験を受けるのか。
 さっきまでは狐さんとの口論が発展して成り行き上、と思っていたけれど、
 今ならその本当の理由がはっきりと分かる。
 僕がハンター試験を受ける理由、それは…
「…君がハンター試験を受けに来たから、だと思う」
 僕は君の、ギコの偽物として生まれてきたから。
 だから僕は、影が実像に追いすがるように、ここにやって来たのだろう。
「何だそりゃ。
 理由としちゃあありなんだろうが、主体性の無い野郎だな」
 つまらなそうにギコがハンバーガーを頬張る。
「そういう君はどうなんだ」
「俺はまあ、あれだよあれ。
 何となくとか、風の向くまま気の向くままとか、適当にとか…
「君だって人の事言えないじゃないか。
 君には主体性はあるのかもしれないが、 理由が根本的に欠けている」
「はん。 試験を受ける理由なんざ、俺にとってはどうでもいい事さ」
 理由無き行動。
 理由無き殺し。
 外法狐。


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