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念を使わせてみよう小説スレッド

1721:2004/12/15(水) 18:41
 〜二十九話〜

「…大体ここらへんだな」
 ハンター試験を受けると豪語してしまってから4日後、
 狐さんから渡されたハンター試験会場の住所が書かれた紙切れを頼りに、
 僕は都内某所に足を運んでいた。
 本当は試験会場を探すのも試験のうちなのだそうだが、
 そんなのはスーパーマリオでいう1−1に過ぎないからという事で、
 特別に狐さんが会場を教えてくれた。
 狐さんが言うには、「コネも実力のうち、君が俺と知り合いなのも、才能の一つさ」、との事らしいが、
 逆を言えば、この程度の手助をした所で受かるような楽な試験ではないとも取れる。
 てかここ、思いっきり街中なんですけど、
 こんな人通りの多い場所でハンター試験とかしちゃっていいんだろうか。
「まあ、どうでもいいけどね」
 試験をどこでやろうが、それは僕が口出しする事ではない。
 チラリと時計を見る。
 午後2時から開始との事だが、今は午前10時を少し回ったくらい。
 どうやら、少し早く来過ぎてしまったらしい。
 しょうがない。
 取り敢えず試験会場を見つけたら、適当にどこかで時間を潰すとするか。
「よう、そこのお前」
 いきなり、後ろから声を掛けられた。
 声からして、僕と同じくらいの年齢の男だろうか。
 僕は声のした方向に振り返り―――

「―――――」

 僕は言葉を失った。
 そして、全てを理解してしまった。
 僕の目の前には、一人の少年が立っている。
 所々ほつれた薄手のシャツに、よれよれのGパンというラフな格好。
 背中には、剣道で使う竹刀袋を担いでいる。
 身長も体重も、僕と同じくらいか。
 でも、顔立ちは全然似ていないし、性格だって全く僕とは違うだろう。
 それにも関わらず、いや、だからこそ、僕はこう直感した。
 僕は、こいつに似ている。
 いいや、僕はこいつの真似をする為に生まれてきたのだ、と。
 僕の兄さんでも狐さんでもない、他ならぬこいつの偽物になる為に、僕という存在は生み出されたのだ。
 僕が誰かの真似しか出来ないのも、全てはその副産物に過ぎない。
 そう思えるだけの確信が、僕の体を貫いた。
「ちょっと道を教えちゃくんねえかな」
 そいつは飄々とした表情のままでそう言った。
 こいつがどこに行きたいか。
 それはきっと、いいか必ず、僕と同じ場所。
「ハンター試験会場って、どこだ?
 知ってるんだろ、お前」
「どうして、僕が…」
 そこで僕は訊ね返すのを止めた。
 どうして、僕が試験会場の場所を知っているのか、だって?
 愚問にも程がある。
 そんなの、鏡に向かって「あなたはどうして僕の事を知っているんですか?」と訊ねるようなものだ。
「知ってるよ」
 だから僕はこう答えた。
 答えないのも、嘘をつくのも、この場では無意味だ。
「そうかい。
 まあそうだろうと思ったぜ」
 そいつはおかしそうに笑った。
 何がそんなにおかしのか。
 君がそこに居る事か。
 それとも僕がここに居る事か。
 あるいは、そのどっちもか。
「んじゃ悪いけど、道案内頼めっかな。
 この辺りっつーのは突き止めたんだけど、詳しい場所まではさっぱりでね」
「分かった」
 僕は二つ返事で了解した。
 そうするのが、僕の役目だと思ったから。
「サンキュー、助かるぜ。
 ああ、そうだ。 一応聞いとくよ。
 お前、名前は?」
 名前。
 僕とこいつとの間に、そんなもの何の意味があるというのか。
「…宝擬古(たから ぎこ)」
「そうかい、いい名だ。
 俺は―――」
 そいつは一瞬だけ逡巡して、
「擬古(ぎこ)っていうんだ。
 苗字は訳あって言えねえが、まあ気にすんなゴルァ」
 これが、僕とギコとの、最初の出会いだった。


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