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念を使わせてみよう小説スレッド

1711:2004/12/15(水) 00:43

「…ごめん。
 つまらない話聞かせちまったな」
 狐さんが悲しそうに笑う。
「そんな事、ないです」
 きっと今話した事なんか、狐さんの過去のほんの一部に過ぎないのだろう。
 僕の想像など及びもつかないような苦労を、狐さんはしてきたのだろう。
 僕には何も出来なかった。
 ただ話を聞くしか、狐さんにしてあげられなかった。
 僕は、少しでも狐さんの力になってあげたかった。
 エゴなのかもしれない。
 独り善がりなのかもしれない。
 でも僕は、狐さんの力になりたかったんだ。
「…ごめんな」
 もう一度、狐さんは僕に謝った。
「君がこんなに俺の事を想ってくれているのに、俺は君に何もしてやれない。
 …抱かれてやる事すら、出来ないんだ」
 抱かれれば、殺してしまうから。
 絶対に、殺してしまうから。
「…僕は」
 僕は、言った。
「僕は、あなたを抱きたいから、あなたを好きになったんじゃないです」
 好きだから抱きたいという式は成り立っても、その逆は成立しない。
 不可逆。

「……」
「……」
 いかん、会話が止まった。
 何とかして、再び流れを取り戻さなくては。
「そ、そういえば狐さん。
 ハンターの仕事って儲かるんですか?」
「ん、えーと…
 まあ、個人の腕次第だな。
 俺みたいな高給取りもいれば、初任給を貰う前にくたばる奴もいる」
 つまりは、完全出来高制という事か。
「ハンターになるのって、難しいんですか?」
「まあ、そうだな。
 ハンター試験ってのを受けて、それに合格すれば免許が発行されるんだが、
 倍率は軽く100倍を超える。
 場合によっちゃあ、四桁に上る事もザラじゃねえ」
 おいおい。
 国家Ⅰ種でも、そこまでいかねえぞ。
「ま、そんな試験を俺は一発で合格したんだけどな。
 流石俺。
 かわいくて強くて、しかも心まで美しい」
「うるせえ四捨五入したら30歳」
 禁句である年齢を使ってツッコミを入れてみた。
「君、最近ツッコミに容赦が無くなってきてるぞ…
 そうだ。
 折角だから腕試しにハンター試験受けてみるか?」
「はい?」
 いや、僕はそんなつもりで話を振ったんじゃないんですけど。
「別に嫌ならいいさ。
 最悪死人が出るような試験だしな。
 素人が手を出した所で、怪我するのがオチだし」
 死人が出るような試験を受けさせるつもりだったのかよ、この人。
「…ただ、少年って臆病者だったんだなあ、って思うだけさ」
 カチーン。
「いいでしょう、ハンター試験とやらを受けてあげますよ。
 ただし、もし合格したら何でも僕の言う事を聞いて貰いますからね!」
「いいよ〜別に。
 どうせ君が受かる訳ないし〜」
 鼻で笑う狐さん。
「望む所だ!
 後でギャフンと言わせてやる!」
 こうしていわゆる売り言葉に買い言葉というやつによって、
 僕はハンター試験を受ける事になるのだった。


                   〜続く〜


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