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念を使わせてみよう小説スレッド

1651:2004/12/10(金) 00:40

「やったーーー!
 よかったな、少年!
 温泉旅行だぞ!」
「いや、ちったあ頭冷やして下さい!
 『湯煙殺人』て、殺人事件に巻き込まれる確率100%じゃないですか!」
 ただでさえ本編で人殺しはお腹一杯なのに、これ以上周りで人が死んでたまるか。
「君はノリが悪いなあ。
 見た目だけで物事を判断するなんて、悪い癖だぞ?」
「その理屈はおかしいし見た目で判断してねえ!」
 正しくは見た目でなくて名前だ。
「固いこと言うなよ」
「固くねえ!」
 これが固い事だというなら、世の中は豆腐か何かで構成されている事になってしまう。
 世界の存続の為にも、この一線は死守せねば。
「タケちゃんマンのケチー」
「『タ』しかタカラギコと合ってねえ!」
 タケちゃんマンて、あんた一体いくつだよ!?
 リアルタイムで見てた世代は、少なくとも30歳超えてるぞ?
「君は疑り深い奴だなあ。
 これはきっと、日頃の行いのいい俺達に対する、神様からのプレゼントさ」
「んな訳ないでしょう!」
 僕が神様なら、きっと僕や狐さんにはプレゼントじゃなくて天罰を下すと思う。
「お願いですから行くのはやめましょう!
 何と言うか、予定調和を通り越したご都合主義という名前の、
 神の見えざる手を露骨に感じます!
 これはもう陰謀レベルで罠ですから!」
「駄目だね。
 行かなきゃ話が進まないじゃないか」
「あんたそれ言ったらお終いだろ!」
 かくして、僕は狐さんと二人で、『湯煙殺人温泉ツアー』へと旅立つ事になるのであった。





 電車やバスを何時間も乗り継ぎ、僕達はようやく福引券で当てた旅館まで到着した。
 旅館はいかにも老舗の温泉宿といった感じで、外見だけでもマトモなのは正直以外だ。
 てっきり、幽霊屋敷みたいなのが出てくるかと思ってたのに。
「…何にも無い所ですね」
 僕は嘆息した。
 周りは見渡す限り森、森、森。
 陸地だというのに、僕はまるで絶海の孤島にいるかのような感覚を禁じえない。
「ん〜〜、いい気持ち」
「この空模様で、よくそんな事が言えますね…」
 空は今にも夕立が降りそうなくらいに、どんよりと雲っていた。
 嫌な予感がするなあ…
 絶対豪雨の所為でがけ崩れとか起こって、麓の町と連絡取れなくなったりするよきっと。
「ようこそいらっしゃいました…」
 と、宿の入り口から一人の老婆が現れた。
 背は小さく顔は皺だらけ。
 いかにもいわくつきな妖怪ババアという風体に、益々嫌な予感が強くなる。
「私がこの旅館の女将を勤めている、春側乃畝(はるかわ のうね)【以下、ノーネ】でございます。
 この度はこちらにお越し頂き、まことにありがとうございます…」
 丁重に頭を下げるノーネ女将さん。
「いえ、こちらこそお世話になります」
 狐さんもお返しに頭を下げた。
 この人、こういう所で常識はあるんだよなあ…
「お世話になります」
 僕も合わせて一礼する。
 これからしばらくご厄介になるのだから、良好な関係を維持するのに越したことはあるまい。


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