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念を使わせてみよう小説スレッド

1611:2004/12/08(水) 23:46

「…こんちわ」
 僕は片手を上げて狐さんに挨拶した。
 流石モラックジャック先生。
 完璧に腕をくっつけてくれている。
「ああ」
 そっけなく、きつねさんは返事をした。
「…悪かったな。
 その、酷い事してしまって…」
「別にいいです。
 原因は僕にあるんですし。
 それに―――」
 それに。
「僕は、今こうして、生きている」
 僕はそう言って苦笑した。
 もし狐さんが僕をここに連れて来てくれなければ、僕は死んでいたのだろうけれど、
 そんな事を議論するのに意味など無い。
 僕は今生きている。
 それが全てだ。
「減らず口だな」
「ええ」
 減らず口で、負けず嫌いの屁理屈なのは百も承知だ。
 それでも、僕はそれでよかった。
「狐さん、僕は…」
 そこで、僕は言葉を詰まらせた。
 ここから、僕は何を言えばいいのだろう?
 考えても考えても、次の言葉が見つからない。
「自惚れるなよ、少年」
 ピシャリと、狐さんが僕に告げた。
「俺が君を殺さなかったのは、君がつまりはその程度の人間だったからに過ぎない。
 本当に君が好きなら、俺はとっくに君を殺している。 そこの所を忘れるな」
 …やっぱり、そうですか。
 いやまあ、予想はついてたけどさあ。
「…だったら、これからあなたをその気にさせてみますよ。
 そして、その時にはあなたに殺されないくらい、強くなってみせる」
 負けじと、僕は言い返した。
 だけど、狐さんに勝てるようになるなんて、不可能に近いどころか不可能そのものではないのだろうか。
 いや、考えるのはよそう。
 目標は、高いに越した事はない。
 しかし達成不可能な程高い目標を据えるのもいかがなものか。
「ふふ、それは楽しみだ。
 ならばそれを証明してみせろ。
 君の言葉は嘘ではなかったと、俺に見せてみろ。
 言っておくが、俺はその時が来れば、微塵の躊躇も無く君を殺すぞ?」
 それは半分は嘘で、半分は本当だったのだろう。
 曖昧であやふやな言葉。
 本物で偽物な言葉。
「…だからそれまでは、君と一緒に居てやる」
 多分、それは、保留なのだろう。
 殺すか活かすか、どちらか決まるまでの時間稼ぎでしかないのだろう。
 それでいいと思った。
 それじゃあいけないと思った。
 だから僕は、一言だけこう告げる。
「ありがとう」


                      〜『冥界の支配者編』・完〜


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