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念を使わせてみよう小説スレッド

161:2004/11/13(土) 01:34





 その日も、つつがなく六限目まで授業は終了した。
 授業という学校の檻から開放された学生達が、放課後という空へと思い思いに羽ばたいていく。
 ある者は部活へ。ある者はそのまま家へ。ある者はコンビニへ。ある者は繁華街へ。
 ある者はファーストフードへ。ある者は塾へ。ある者はゲーセンへ。
 そして僕は、相も変わらず美術室で絵を写していた。

 人の絵を模倣している時は、何と言うか心を無にして落ち着く事が出来る。
 何の目的も無いが、何の意味も無いが、僕にとっては時間を潰す程度の役には立つ。
「……」
 ちらりと、壁にかかった時計を見る。現在4時30分。閉校時間まではまだもう少しある。
『君にその気があるならまた逢おう』。
 狐さんの言葉が頭の中で再生される。昨日狐さんとあのゲーセンについたのは確か午後6時くらい。
 学校から歩けば30分程で到着する。
 言い換えれば、5時30分、つまりあと1時間の間に僕は選択をせねばならなかった。
 あのゲーセンに行って狐さんと会うか、それともそうしないのか。
「ま、考える必要も無いけどね」
 そう、考える必要は無い。答えは『行かない』だ。
 大体何で僕が明らかに危険(ヤバ)そうな事に足を突っ込まなきゃならないのか。
 あんなの、無視するのが一番いいに決まってる。そうすれば、今までと同じ日常を送れるのだ。
 わざわざ虎の穴に飛び込むような愚を冒す必要などありはしない。
 そうさ、僕はこのまま―――

「……?」
 ガラリ、と美術室のドアが開く音。誰かが部屋に入って来たらしい。
 こんな所に、何か用でもあるのだろうか。
「あ…ごめん、邪魔した…?」
 すまなそうに僕に声をかけてきたのは、一人の女子生徒だった。
 制服のリボンの色から、どうやら僕と同じ2年生らしい。
 えーと、見覚えがある気もするんだが… 誰だったっけ?
「いえ、別にいいですよ」
 そう返しながら、僕はこの女子が誰だったのかを思い出そうとする。
 あまり人とは関わらない性格の所為か、僕はどうにも人の顔と名前を覚えるのが苦手だ。
 狐さんのようにどぎついインパクトでもない限り、一度あったくらいでは顔と名前は一致しない。
 さて、この人は誰だったか。
 美術部の幽霊部員か、それとも同じクラスの女子だったか…


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