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念を使わせてみよう小説スレッド

1591:2004/12/08(水) 23:45

「……!」
 狐さんの右腕が、僕の腹を貫いた。
 目が霞み、口から血が流れる。
「!!
 お、俺は―――」
 狐さんがたじろいだ声を上げる。
 どうやら、狐さんの意思とは無関係に、反射的に手が出てしまったらしい。
 成る程、確かに僕を殺すというのは、はったりでも何でも無かったようだ。
 だけど。
 それでも、僕は、まだ生きている。
「…どうしました?
 僕はまだ、死んでなんかいませんよ?」
 出来るだけいつもと同じような声で、僕は狐さんに言った。
 痛みは感じない。
 偽物の心と体だから、本物の痛みなんて感じない。
「馬鹿か君は!!
 死ぬぞ!! 本当に死ぬんだぞ!!」
 狐さんが叫ぶ。
 もう、泣くのを堪えようともしない。
 僕の腹部に腕を突き刺したまま、狐さんは子供のように泣きじゃくっていた。
「だったら、早く殺したらどうですか?
 僕はまだ生きてるんですよ?
 それともあなたの言う殺すってのは、
 こんなちっぽけな怪我をさせる事を言うんですか?」
「――――――!」
 実際には全然ちぽっけな怪我なんかじゃないのだけれど。
 僕はそれでも得意げにそう言った。
 僕だって男だ。
 やせ我慢の一つや二つぐらい、やってみせる。
「僕は、あなたに殺されたりなんかしない」
 言いながら、僕は狐さんを抱きしめた。
 腕を腹に突き刺している為、狐さんには逃れる術は無い。
 これぞまさしく怪我の功名というやつだろう。
「やめろ!
 放せ! 放せえ!!」
 狐さんが僕の腕を振り解こうともがく。
 放すものか。
 絶対に、放したりするものか。
「放して欲しいなら、僕を殺せばいい。
 あなたにとっては、簡単な事なんでしょう?」
「……!」
 腕に鈍い痛みが走る。
 それと同時に、両肩から先の感覚が全く無くなった。
 狐さんに、両腕をもぎ取られたからだ。
 だけど、僕はまだ、生きている。
「…それで終わりですか?」
 僕は狐さんに訊ねた。
 こんなもの、モナカさんやしぇりーちゃん、それから僕の家族が受けた苦しみに比べれば、大した事なんてない。
「―――!」
 狐さんがよろよろと後ずさる。
 多分、狐さんを後ろに下がらせた人間は、僕が史上初だろう。
「ほら、どうしました?
 僕を殺すんじゃあ、なかったんですか?
 だったら早く…」
 そこで、僕は勢いよく地面に倒れた。
 ああ、そうか。
 痛みには耐えれても、出血多量による意識喪失だけは防げない。
 その事を、すっかりと忘れていた。
「●●●●! ●●●●●●●!」
 狐さんが何か言っているみたいだが、上手く聞き取れない。
 最悪だ。
 あれだけ格好つけて、結局死ぬのかよ。
「     、     。          」
 もう、何も聞こえない。
 死ぬのか、ここで。
 ああ、畜生。
 死にたくないなあ。
 死にたくないなあ。
「          。         」
 僕が死んだら、狐さんはしぇりーちゃんが死んだ時みたいに悲しんでくれるのだろうか。
 いいや、出来れば、忘れて欲しいな。
 僕なんかと事で、この人に悲しい思いなんてして欲しくないから。
 僕は狐さんの事を好き。
 それだけで、僕は―――


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