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念を使わせてみよう小説スレッド
157
:
1
:2004/12/08(水) 23:45
「狐さん!
僕は―――」
今更、僕に何が言えるというのか。
だけど僕は、何かを言おうとせずにはいられなかった。
「言うな」
背を向けたまま、狐さんが短く告げる。
「それ以上言えば、俺は君を殺す」
本気だった。
声を聞けば分かる。
本気で、狐さんは僕を殺すつもりだった。
「いいえ、言わせて頂きます。
僕は、やっぱりあなたの事が、好…」
「言うな、と言っている!!」
言い終わる前に、狐さんは乱暴に僕を押し倒した。
といっても決してやらしい意味では無く、
純粋に僕を殺すのに丁度いい馬乗りの体勢になったに過ぎない。
そのまま狐さんは、僕の首にその手をかけた。
「君だって分かっているだろう!
俺が君を好きになれば、俺は必ず君を殺す!
絶対、絶対にだ!
それなのにどうして君は俺なんかを好きになる!
迷惑なんだよ!
誰かに好きなんて言われるのは、迷惑なんだよ!!」
軽く、狐さんの手に力が加えられる。
首を絞められる事で気管が圧迫され、息苦しい。
だけど、狐さんはまだ本気じゃない。
もし本気なら、既に首をへし折られている所だ。
「ああ、そうだよ!
俺も君の事が好きなのかもしれない!
だから殺したくない!
だから殺したいんだ!」
今にも泣き出しそうな顔で、狐さんは叫ぶ。
好きだから、殺したい。
好きだから、殺したくない。
一見矛盾を孕んだその感情は、しかし狐さんにとってはごく当たり前の事なのだろう。
この人にしてみれば、この世の全ては殺す事とイコールなのだから。
「俺だって、普通の生活がしたかった!
下らない事で笑って、他愛も無い事で泣きたかった!
友達とお喋りして、遊んで、楽しい時間を共に過ごしたかった!
誰かを好きになったり、好かれたりしたかった!
でも、でも駄目なんだよ!」
狐さんは普通の人間じゃない。
でも、普通の人間じゃない事と、普通の人間でありたいと願う事とは、違う。
だが狐さんは、自身の持つ大き過ぎる力が、普通である事を許さなかった。
「俺は殺してしまう…
何もかも、殺してしまう。
手に入れたいものも、そうでないものも、全部殺してしまうんだ…!」
欲しいから殺す。
殺してしまえば、二度と手に入らなくなると分かっているのに、殺す。
いや、だからこそか。
殺す事で、永遠に自分のものにしておきたいのか。
だから、殺すのか。
「…好きだよ、少年。
だから…俺の為に殺されてくれ」
狐さんの両手に、ぐっと力が込められ―――
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