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念を使わせてみよう小説スレッド

1531:2004/12/08(水) 02:42

「…君は」
 狐さんが小さく呟くように言った。
「君は、もう二度と戻れなくなった。
 君が生きている限り、殺したという罪悪感は、君を責め続けるだろう。
 君は一生、君を許す事など出来はしないだろう」
 死ぬまで、いいや多分死んでからも、永遠に圧し掛かり続ける罪。
 逃れられぬ罰。
 僕の心に刻まれた十字架。
「君は人殺しだ。
 それは、どんな理由があったところで、その事実だけは決して消えはしない。
 君はこれからずっと、人殺しとして生きていかねばならない。
 人に軽蔑され、忌避されながら生きていかねばならない」
 人殺し。
 大罪を犯した者。
 最低最悪の外道。
 分かっている。
 そんな事は分かりきっていた筈なのに。
 誰も救えなかった。
 誰も守れなかった。
 誰も助けられなかった。
 皆を傷つけ、殺してしまった。
 僕には、何一つ出来なかった。
 何にも、何にも出来なかったんだ…!

「でも」
 狐さんが振り向いて、僕に顔を向けた。
「でも、俺は許してやる。
 俺だけは、君を許してやる。
 俺は知っているから。
 君の心の中には、そこには確かに君だけの殺す理由があった事を、知っているから。
 それがこの世界のどんな正義よりも尊いものだったという事を、俺は知っているから。
 俺だけは、それを知っているから」
 狐さんが微笑む。
 優しそうに。
 悲しそうに。
 そんなふうに、微笑んだ。
「それだけを以ってして、俺は君を肯定する。
 例え世界が君を敵と見なそうと、俺は君の味方でいる。
 もし君が人を殺した事で君を罵る奴がいるならば、俺はそいつをぶっ殺す」

 ―――――――!

 多分、その時僕は泣いていたのだろう。
 嬉しかったから。
 悲しかったから。
 だから、泣いていたのだろう。
「だから、自分を殺したいなんて言うな。
 どれだけ人から蔑まれても、どれだけ自分を許せなくても、君は生きろ。
 …もう、これ以上友達が死ぬなんて、俺は嫌だ」
 ああ、だから。
 だから、僕は、この人が。
 僕は、この人を―――
「…狐さん」
「何だい?」
 多分これが、最初で最後の僕の言葉。
 誰かの真似なんかじゃない、何かの偽物なんかじゃない、
 僕自身の心からの言葉。
「僕は、あなたが好きです」


                      〜続く〜


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