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念を使わせてみよう小説スレッド

1511:2004/12/08(水) 02:41





 『冥界の支配者』の家を出た僕は、とぼとぼとあてども無く彷徨い歩いていた。
 どこに行けばいいのだろう。
 もう、どこにも、僕の帰る場所は無い。
 どこにも、何も残ってはいない。
 これから僕はどうなるのだろうか。
 『冥界の支配者』を殺した犯人として、指名手配されるだろうか。
 それならそれでいいかもしれない。
 逮捕されれば、どこかの少年院にぶちこまれるだろう。
 そこが僕の居場所になるというなら、それはそれで構わない―――

「…狐さん」
 気がつくと、道の向こうに狐さんが立っていた。
「よう、少年」
 片手を上げ、僕を出迎えるように声を掛けてくる。
 恐らく、一足先に『冥界の支配者』の居場所に向かっていた僕を追いかけてきたのだろう。
 だけど、全てはもう遅かった。
 僕はもう、狐さん抜きで、自分独りで決着をつけてしまっていた。
 僕の敗北という形で。
「『冥界の支配者』はどうした?」
 狐さんは僕に訊ねた。
「…殺しました」
 僕は答えた。
「…そうか」
 狐さんは少し俯いて、そう言った。
「…足、怪我してるな」
 狐さんが血まみれになった僕の左足の太ももに気がつく。
「すぐに医者に行かなきゃ大変だ。
 乗れよ。 モラックジャックのとこまでおぶってやる」
「いえ、いいですよ」
「いいから四の五の言わずに黙って言うことを聞け」
 狐さんは半ば強引に僕を背中に背負った。
 おんぶされるなんて、何年ぶりだろう。
 子供の頃、膝をすりむいて泣いてた僕を、お母さんはおんぶしてくれたっけ。
 …そのお母さんも、もういない。
 僕が、殺してしまったから。
「…何も聞かないんですか?」
 おぶられたままで、僕は狐さんに問うた。
 狐さんは、僕が人を殺した事について何も言わなかったからだ。
「俺が一々口を出す事じゃない。
 罪も、罰も、君自身の問題だ」
 狐さんは、責めも赦しもしなかった。
 顔を後ろに向けたまま、ただそう答えるだけだった。
「…アヒャさんは、どうなったんですか?」
「殺したよ」
 短く、狐さんは言った。
「フーンさんは…」
「アヒャに腹を刺されてな。
 かなり危険だったが、もう大丈夫だ。
 今は、モラックジャックの所で寝てる」
 狐さんがフーンさんを殺さなかったという事は、
 フーンさんはアヒャさんとは何の関係も無かったのか。
 となると、フーンさんは相棒だったアヒャさんに裏切られた事になる。
 フーンさんは今、何を思っているのだろう。
「……」
「……」
 それから、僕と狐さんはお互い何も言わなかった。
 黙ったまま、狐さんは僕をおんぶして歩いていた。


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