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念を使わせてみよう小説スレッド

151:2004/11/13(土) 01:32
 〜三話〜

 狐さんと別れた(というより一方的に立ち去られた)後、
 僕は結局警察には通報しないまま家に帰った。
 警察にあそこであった事を話しても到底信じてくれないだろうし、
 もし信じる人がいるならそれは病院へ行く事をお勧めするべきだろう。
 それより何より、通報した僕が容疑者として疑われるかもしれなかったからだ。
 かくして僕は3000里歩いて来たかのような疲労感と感じながらも何とか家に辿り着き、
 「今日は食欲が無いから」と晩御飯も食べずにそのまま寝てしまった。
 というより、殺人鬼の死体のあの有様を見て普通に食欲が湧く方が異常だ。
 そして、今日、何事もなかったかのように学校へと登校している。

「夢じゃ…なかったんだよなあ……」
 朝、眼が覚めた時、僕は昨日の惨劇は悪い夢なのかと思っていた。
 そうであって欲しかった。
 しかし、そのささやかな願いも朝のニュースを見た時に脆くも崩れ去った。

 『連続猟奇殺人事件、21人目の被害者か!?』

 何度目か分からない緊急速報。
 テレビのレポーターが実況しているのは、紛れも無く昨日のあの土手地だった。
 そしてそこに映る小規模のクレーター。
 それが昨日のあれはどうしようもなく疑いようもなく抗いようもなく現実だったという事を示していた。
「冗談じゃねえぞ…」
 何だったんだ。何だったんだ、あれは。
 そして、あの人は。
 外法狐。着物の似合う女性。俺女。容姿端麗。豪放磊落。馬鹿力。異常頑丈耐久力。
 僕を巻き込んだ人。僕に何かを見出した人。僕に何かを教えようとしている人。
 そもそも、あれは本当に人なのか?

「タカラギコ君、急がないと遅れますよ?」
 と、思案に耽る僕の横から柔和な声がかけられた。
「…あ、お早うございます、おとうふ先生」
 二丁目冬夫(にちょうめふゆお)。僕の高校で生物を教えている先生だ。
 生徒達からは、冬夫(ふゆお)を音読みした『とうふ先生』、または『おとうふ先生』の愛称で親しまれている。
「? 先生、きょうは自転車で学校へ行かれているんですか?」
 僕は先生に訊ねた。
 おとうふ先生はいつもは白い愛車で通勤しているのだが、今日に限って自転車に乗っていたのだ。
「ああ、最近下っ腹のたるみが気になってきましてね。
 健康の為に車を控える事にしたのですよ。」
 歳相応にやや皺の入った顔を恥ずかしげにほころばせて先生が答える。
 成る程、そういう事か。これで合点がいった。
「では私はお先に。 タカラギコ君も遅刻してはいけませんよ」
 そう言うと先生は一足先に学校へと向かった。
 さて、それでは僕も少し急ぐとしよう。


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