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念を使わせてみよう小説スレッド

1491:2004/12/08(水) 02:40

「悔しいでしょう?
 許せないでしょう?
 しかし残念。
 あなたの無念は決して晴らせない。
 あなたはただの脇役として、舞台の上から退場するのです。
 あなたの死体を外法狐に見せれば、彼女は一体どんな顔をするのでしょうねえ?
 全く傑作もいいところだ、あの女は。
 自分は最凶の殺人鬼だというのに、真人間のふりをしているのだから。
 そういう意味では、あなたも彼女も似たようなものですよ。
 普通の人間の真似をすれば、普通の人間になれると思っているのですからねえ」
「狐さんを侮辱するな…!」
 違う。
 あの人は僕とは違う。
 本物だった。
 しぇりーちゃんが死んだ時にあの人が見せた涙は、確かに本物だった。
 偽物なんかじゃない、本当の涙だ。
 本当の怒りと悲しみだ。
 あの人としぇりーちゃんとの絆は、確かに本物だったんだ。
「それで?
 そこから君はどうすると?
 怒りの力でパワーアップでもしてみますか?」
 僕の目の前までその反吐が出そうな顔を近づけ、『冥界の支配者』は訊ねた。
「…しませんよ。
 あいにく僕は少年漫画の主人公じゃありませんからね。
 怒りだの愛だの友情だので超サイヤ人なんかにはなれない」
 僕は『冥界の支配者』の顔を睨んでそう告げた。
「そう、僕はただの人間の偽物だ。
 弱くてちっぽけで矮小で邪悪な、ただの人間の模造品だ。
 だから…」
 だから。
 僕は正義の味方の勇者なんかじゃないから。
 その偽物ですらないから。
「だから、いくらでも卑怯な事が出来る…!」
 その言葉と共に、僕は『用意していたもの』に『合図』を送った。
「!?」
 次の瞬間、窓のガラスをぶち破って何匹もの野犬が家の中に飛び込んで来る。
「な!?」
 狼狽する『冥界の支配者』。
 それに構わず、野犬の群は一斉に『冥界の支配者』に襲い掛かった。
 これが、僕の用意した秘策だった。
 ここに来る前に手ごろな野犬を何人か殺し、
 『冥界の支配者』の念能力を真似して僕の支配下においておいたのだ。
 『冥界の支配者』の能力は、僕が狐さんに助けてもらった時既に見ている。
 ならば、僕の『無貌の仮面(ドッペルゲンガー)』でコピー出来る。
 僕は内通者のアヒャさんには、僕の能力を教えていない。
 だから『冥界の支配者』は僕の能力を知らない筈であり、
 それこそが僕にとって唯一の勝算だった。
「ちィッ!」
 『冥界の支配者』が腕を横に振って犬を薙ぎ払う。
 しかし、野犬の群はそれだけで全滅するような数ではない。
 物量に物を言わせ、次々と犬達が『冥界の支配者』に牙を剥いて跳びかかる。
「なめるなァ!
 こんな、こんなのもので…!」
「ええ。
 こんなものではあなたは倒せない」
 杭によって地面に縫い付けられていた左足を強引に引き剥がし、
 僕は『冥界の支配者』に突進した。
 もとより犬なんかでこいつを倒せるとは思っていない。
 僕が狙っていたのは、この瞬間。
 犬に気を取られた『冥界の支配者』が見せる、一瞬の隙。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 ―――発動、『劣化複製・不死身の肉体』
 思い出せ。
 あの強さを。
 狐さんが見せた、あの最強の一撃を。
 そのほんの一部でも、忠実に僕の体で再現しろ。
 不完全でいい。
 こいつさえ、『冥界の支配者』さえ殺せるなら、僕は偽物のままでいい…!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
 僕の突き出した右拳が、深々と『冥界の支配者』の胸に突き刺さった。
 拳を通して伝わる、胸骨の砕ける感覚。
 殴り飛ばされた『冥界の支配者』はその勢いのままに壁に激突し、ずるずると床に崩れ落ちた。


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