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念を使わせてみよう小説スレッド

1441:2004/12/07(火) 02:37
 〜二十五話〜

 ―――強い。
 外法狐という人物の特徴を挙げろといわれれば、まず間違い無くこの二文字が出てくる。
 では、強さとは何なのか。
 怪力や強力の事を指すのか。
 目にも止まらぬ素早さであるのか。
 卓越した技か。
 想像を絶する特殊能力か。
 何事にも動じぬ精神力か。
 あらゆる困難から逃れられる幸運か。
 全てを見通す頭脳か。
 座したままに指先一つで世界を動かせる権力か。
 どんなものでも手中に収められる財力か。
 掴み取った栄光や名声か。
 あるいはそれら全てか。
 それともそれらなど必要ですらない、超越的な何かなのか。
 だが外法狐は、苦笑しつつこう言うだろう。
 「俺は強くなんてない」と。
 「俺は殺す為の力に長けているだけだ」と。
 「『強い』という事と、『力がある』という事は、似ているようで全然違う」。
 それが外法狐が敬愛する師匠外法狸から教えられた道であり、そして彼女の矜持であった。
 だから外法狐は、自分は強くはないと考える。
 強さとは、己の我侭を通す事が出来るという事。
 己の生き様を貫くという事。
 ならば矢張り自分は強くなどないのだろう。
 自分には、出来なかった。
 人吊詩絵莉を守る事が、出来なかった。
 ずっと友達でいたいと思っていた。
 ずっと一緒に居たかった。
 だけど、守れなかった。
 ならばそんな力などに何の意味がある。
 人一人守れない脆弱な力など、どうして『強い』と呼ぶ事が出来る。
 殺す為の、殺す為にしか使えない力。
 そんなのが、そんなものが、『強さ』などである訳がない。



 街外れの波止場。
 外法狐は、変わり果てたしぇりーの亡骸をただ見つめていた。
 連絡を入れたので、もう暫くすれば『人吊』の構成員がしぇりーの遺体を引き取りに来る筈だ。
 『禍つ名』とはいえ、自分の身内くらいは丁重に葬ってくれるだろう。
 少なくとも、警察で司法解剖されるよりかは何倍もマシだ。
「……」
 外法狐は一言も発さないまましぇりーの見つめ続けた。
 もうしぇりーは動かない。
 もうしぇりーは喋らない。
 もうしぇりーは笑わない。
 それは分かりきった事。
 外法狐にとって、死などごくありふれた日常でしかなかった筈だった。
 それでも、しぇりーの死は外法狐の心に大きな空洞を作っていた。
「……」
 フーンはそんな外法狐に声をかける事が出来なかった。
 近寄っただけで殺されてしまうと思ったからだ。


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