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念を使わせてみよう小説スレッド

1351:2004/12/05(日) 02:08



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 何をどう頑張ろうと、何をどう足掻こうと、何をどう立ち向かおうと、
 既にどうしようもない状況というのは時として存在する。
 最悪しか選択肢の無い、そんな絶望的な状況というのは、時として存在する。
 そんな状況に、僕は今まさに直面していた。
「ギ…ギギイイイイイイイ…」
 モナカさんが僕達に半分以上崩れかかった顔を向ける。
 まさかとは、思っていた。
 だけど、そのまさかと考える事自体が、間違っていたのだ。
 『冥界の支配者』に誘拐されたかもしれないという時点で、
 モナカさんがどうなってしまうかなど、一つしか考えられないではないか。
 だがそれでも、僕は愚かにももしかしたら無事助け出せるのではないか、などと考えてしまっていたのだ。
 そして、その僅かな望みも、この目の前の現実によって無残に砕かれた。
「モナカさん…」
 僕はほとんど無意識に、モナカさんに歩み寄ろうとした。
 ごめん。
 謝っても許してはくれないだろうけど、本当にごめんなさい。
 僕は君を傷つけたばかりか、巻き込んだ上に殺してしまった。
 どれほど君に償おうと、僕は決して許されなどしない。
 僕が、許せない。
「…行くな、少年」
 狐さんが僕の腕を掴んで引き止める。
「でも…!」
「あいつはもう、お前の知ってるモナカ嬢ちゃんじゃない」
 重い声で、狐さんはそう告げた。
 違う。
 そんな訳ない。
 彼女は、紛れも無くモナカさんだ。
 どうしようも無いくらいに、正真正銘モナカさんだ…!
「……」
 狐さんが、無言のまま拳に気を宿した。
「!!
 何をするつもりなんですか!?」
 何をするのか。
 そんなのは本当は僕にも分かっている。
 それでも、僕は問わずにはいられなかった。
「…殺す」
 当然の事のように、狐さんは断言した。
「…!
 駄目です! お願いだからやめてください! モナカさんは…」
「それじゃあ、このまま生ける屍として放置しておくのが、本当に嬢ちゃんの為なのか?
 そうじゃないだろう。
 …もう、『冥界の支配者』の呪縛から解放してやるしか、
 この嬢ちゃんに救いは残されてないんだ」
 視線をモナカさんから外さないまま、狐さんが静かに言う。
 殺すしかない。
 それはもう誰の目から見ても明らかなのだろう。
 それでも、僕は往生際悪く、他の道に縋ろうとしていた。
 縋りたかったのだ。
 何故だ。
 どうして、こうなった。
 原因は誰だ?
 きっかけは誰だ?
 本当に悪いのは誰だったのだ?
 それは、恐らく、僕なのだろう。
 ならば、せめて―――
「…分かりました。 だったら、それは僕がやります」
 僕は狐さんを押しのけ、モナカさんの前に立ちはだかった。
 一つだけ残された、僕に出来る事。
 それは、他ならぬ僕がモナカさんを殺す事だ。
 殺す事の罪を、殺す事の罰を、他ならぬ僕が背負う事だ。
 最早それだけしか、僕の償いの術は残されていない。
「…そうか」
 狐さんが、悲しそうな顔を僕に見せて―――

「それだけで、十分だ」


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