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念を使わせてみよう小説スレッド

131:2004/11/11(木) 17:41

「? 少年、電話なんか取り出してどうするつもりなんだい?」
 ポケットから携帯電話を取り出した僕に、狐さんが訊ねた。
「警察! 警察ですよ! これは間違い無く警察に連絡すべきです!」
 目の前で殺人事件が起きた。
 ならば矢張り一般市民としての僕が取るべき行動は、警察に連絡を入れる事だろう。
「おいおい、警察に連絡されると、色々面倒な事になりそうなんだ。 止めてくれよ」
 平然と言い放つ狐さん。
「いや、駄目でしょう! どう考えても駄目でしょう!
 あなたが僕を助けようとしてくれた事はちゃんと証言しますから、
 大人しく警察に自首して下さい!
 過剰防衛は免れませんが、情状酌量の余地は残されてます!」
「悪いが、君が警察を呼んだら、俺は警察諸共君を殺す」
 やばい。目がマジだ。
 もう嫌です。もうこんなの嫌です。
 誰か僕をここから連れ出して下さい。

「それにさあ、君は大きな誤解をしているぞ、少年。
 俺はあのおっさんを殺してなんかいないよ」
 何を言ってんだこの人は。今になって容疑の否認か?
 でも残念。僕はきっちり殺人現場を見ています。
 それとも、犯した罪に耐え切れずに精神がおかしくなっちゃったのか?
「あー… やっぱ口でこう言っても信じられないか。 仕方無い」
 と、狐さんはいきなり僕の腕を掴んだ。
 凄い力。振りほどこうという気すら起こらない。
 そのまま、僕は狐さんが惨殺した殺人鬼の死体の傍まで連れてこられた。
「ほらよ」
 あろう事か、狐さんは僕の手を殺人鬼の死体の一部に押し当てた。
「うわああああああああああああああ!」
 何をするんだこの人は!新手の嫌がらせか!?
 ひんやりとした、生命が失われた事を象徴するような冷たさが手の平に伝わってくる。
 ……?
 え?
 待て。
 冷たい?
 これは、おかしいぞ?

「分かったみたいだな」
 狐さんが僕の手を死体から離した。
 冷たい。
 この死体は冷た過ぎる。
 こいつは、つい今し方殺されたばかりの筈なのに、だ。
 本来なら、肉体にはまだ温かみが残っていないと理屈に合わない。

「…どういう事なんですか?」
 僕は狐さんの方を向いて言った。
「どういう事も何もそういう事さ。
 こいつは、ずっと前に死んでいた」
 馬鹿な。そんなの、信じれるか。
 漫画やゲームじゃあるまいし、死体がひとりでに動くなんてある訳が無い。

「まっ、信じれないのも無理は無いさ、少年。
 君のような一般人(カタギ)には、俺達逸般人(アウトロー)の世界の事なんざ知らないだろうからな。
 理解出来ないのが当然だし、理解出来ない方がいい」
 狐さんが屈みこみ、何やら死体を調べ始める。
「はぁん、ふむふむ、成る程ね。
 これは多分、いや、間違い無く…」
 何やらぶつぶつ呟きながら、狐さんがわりと原型を残している殺人鬼の頭部を眺めた。
 そして思い出したように、僕の方へと顔を向ける。
「少年、ここまでだ。
 君の退屈で平凡で安全で安心で正常な日常を失いたくないのなら、ここで回れ右して家に帰りな。
 それで、今日ここであった事なんざ忘れろ。
 覚えていても、決して碌な事にはならない。
 君は殺人鬼になんか襲われなかったし、そもそも君は俺には会わなかった。
 それで万事は終了する。
 未解決という形で何事も無く解決する。
 いいか、少年。
 世の中には関わらない方がいい世界が、確実に存在するし、君には関わる資格は無い」
 真面目な顔で、狐さんがそう告げた。
 言われなくとも、元よりそのつもりだ。
 というかこうなった原因の一部はあんたにもあるじゃないか。
 いいさ。
 丁度殺人鬼も死んだ事だし、これ以上猟奇殺人が発生する事も無いだろう。
 そして、再び僕の日常は続く。
 何も本物など無い、偽りの日常が―――

 ウゾリ

 その時、殺人鬼の耳から蛭のような蟲が這い出て来た。

「う、うわあああああああああああああ!?」
 ホラー映画のようにおぞましいその出来事に、僕は本日何回目か分からない悲鳴を上げた。
 もう勘弁してくれ。
 何だって今日に限ってこんな馬鹿げた事ばっかり。厄年にはまだ早過ぎるぞ!?


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