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念を使わせてみよう小説スレッド

1221:2004/12/01(水) 19:19





「…ケッキョクナニモワカラナカッタナ」
 アヒャさんが僕の横で溜息をついた。
 まあさんざん意気込んで出張ってきたわりに収穫は0とくれば、落ち込むのも無理は無い。
「…狐さん達は、何か手がかりを見つけてますかねえ」
 まあ、恐らくは向こうも大した発見は無いだろうが。
 だがしかし、本当にあの遺留品はどういう事だろうか。
 アヒャさんには話さなかったが、狐さんには話しておくべきかもしれない。
 あの人なら、信用が出来るだろうから。
 信頼、したいから。
 ああもう、僕がもう少し賢ければ、こんなに悩む必要だって無いのに…

「タカラギコ君!?」
 突然、後ろから声をかけられた。
 振り向いてみると、そこには見知った顔の壮年男性が立っている。
「冬夫先生…」
 二丁目冬夫。
 通称、おとうふ先生。
 僕の高校の、生物学教師。
 まさかこんな所でばったり会うとは偶然である。
「よかった、心配していたのですよ。
 あの事件から、ぱったりと学校に来なくなってしまって…」
 心からほっとしたような顔をするおとうふ先生。
 流石に二週間近くも学校に行っていなければ大事にもなるか。
「…すみません」
 僕はおとうふ先生に頭を下げた。
「いえ、構いませんよ。
 …その、君の家族については、本当にお気の毒としか……」
 気の毒なのは僕ではない。
 僕の家族だ。
 僕の所為で、あの人達は、死んだ。
「…ところでタカラギコ君、今までどこにいたんですか?
 親戚の方々に連絡しても、行方知れずになっているとの事でしたので…」
 あ、そっか。
 狐さんにご厄介になってるって事、親戚や学校には伝えてないんだった。
 こりゃうっかりしてた。
「あー…、えっと、今は何と言うか、この人の所でお世話になってます」
 僕はアヒャさんに視線を向けた。
「そうでしたか。 それでこちらの方は…」
「アヒャダ」
 短くアヒャさんが告げる。
「そうですか…
 タカラギコ君、辛いかもしれませんが、また元気に学校に来て下さい。
 クラスの皆も、心配していますよ?」
「はい」
 学校か…
 行ったところで、もう二度と前と同じような退屈な学園生活を送る、
 というのは不可能に近いだろう。
 あの事件で僕もかなりの有名人になっているだろうし、
 そんな僕に分け隔てなく接するような善人ばかりがあの学校にいるとも思えない。
 どうしようか。
 転校するか、いっそ高校を中退してしまうか。
 いずれにせよ、もうあの学校には戻れない。
「ああ、そういえば」
 おとうふ先生が思い出したように呟いた。
「山吹萌奈香さんが行方不明になっているのですが、何か心当たりはありませんか?」
 モナカさん―――?
 行方不明になった、だって?
 そうだ、僕は彼女に謝らなければならないんだった。
 でも、何だって彼女が行方不明なんかに。
 いいや、考えられる可能性はただ一つ。
 『冥界の支配者』―――
「どうしました、タカラギコ君?」
 顔面蒼白になった僕に、おとうふ先生が訊ねる。
「いえ、何でも、ないです」
 モナカさんまでが、『冥界の支配者』の毒牙に?
 こうしちゃいられない。
 すぐにでも、探し出さなければ。
 だって、僕は、まだ彼女に謝っていない。
「アヒャさん」
「アア」
 僕の考えを察したのか、アヒャさんが頷く。
「すみません、先生。
 僕、もう行かなければ」
「?
 そうですか。 また学校で、元気な顔を見せて下さいね…」
 そのおとうふ先生の微笑を背に、僕達はモナカさんを探しに街中へと駆け出すのであった。


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