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念を使わせてみよう小説スレッド

1211:2004/12/01(水) 19:18
 〜二十話〜

 連続猟奇殺人事件を管轄している警察署に到着すると、僕達はすんなりと資料室まで案内された。
 狐さんの言ってた『警察に話はつけておく』というのは、
 どうやら僕が思っていた以上の効力があったらしい。
 机の上には、事件現場にあった遺留品、僕の家族の死体を写した写真、
 その他諸々の証拠になりそうな物品が並べられている。
 果たして、ここから『冥界の支配者』の手がかりを掴む事は出来るのだろうか、
 という不安は拭えなかったが、それでも今僕に出来る事はこれしかない。
 ごく僅かな可能性を信じて、進むだけだ。
「さて、と…」
 僕は覚悟を決め、家族の死体の写真に目を移した。
 ……!
 腹の中から、先程食べたばかりのうどんが逆流しそうになるのを、無理矢理押さえ込む。
 引き裂かれ、押し潰され、叩き潰され、文字通り肉塊となった家族の無残な姿。
 まるでぼろ雑巾のように、まるで挽肉のように、
 …人の命を、何だと思っていやがる。
「―――!」
 嘔吐感を我慢するのも、ここまでが限界だった。
 慌てて資料室から飛び出し、洗面所で胃の中のものを残らず吐き出す。
 情けない。
 お前はその程度か、宝擬古?
 そんなんで、家族の仇を討てるのか?
「…オイ、ダイジョウブカ」
 アヒャさんが、僕の背中をさすりながら声をかける。
「…はい」
 お腹がすっからかんになったおかげで、何とか吐き気は収まった。
 ああ、くそ。
 本当に、僕は何だってこんなにも無力なんだ…!
「ドウスル? モウヤメトクカ?」
「冗談はよして下さい。 大丈夫、続けれますよ」
 ふらふらとした足取りで、再び資料室に戻る。
 こんな所で諦められるか。
 僕はまだ、何も掴んじゃいないというのに。
 もう一度、家族の死体の写真を見てみる。
 見れば見るほど、およそ人間の仕業とは思えない。
 まるで獣のような力で、人体を悉く破壊されたみたいだ。
 狐さんが言うには、「『冥界の支配者』の能力は死体を操る事だが、
 その死体は本来人間が無意識に制御している筋肉を100%使用するから、
 常人を遥かに超える身体能力をその死体は有する」のだそうだ。
 成る程、この家族の死体の惨状を見れば、その説明も納得である。
「……」
 今度は、遺留品の方へと目を移す。
 砕かれた椅子、画面に大穴が開いたテレビ、陥没した電子レンジ、きれいに真っ二つになった腕時計、
 しかしどれもこれもそこから『冥界の支配者』の情報が得られるとは到底考えられない…
「!?」
 いや、待て。
 おかしい。
 これはおかしいぞ!?
 よく考えれば、いいや、よく考えなくとも、どうしてこんな遺留品が存在するのだ!?
 家族の死体はあんな状態になっているというのに、これは絶対におかしい。
 そうか、あの時のあの違和感はこれだったのか。
 だけど、分からない。
 こんなものが存在している理屈が分からない。
 …!
 待てよ。
 もしかして、僕はとんでもない勘違いをしていたんじゃないのか?
 それならば、あの遺留品の矛盾にも説明がつく。
 だが、そこまでだ。
 それでも、『冥界の支配者』がどこの誰なのかは依然として掴めない。
 寧ろ、より謎は深まったと言える。
 状況は何も変わってなどいやしない。
「ドウシタ、ボウズ」
 ぼーっと突っ立ったままの僕に、アヒャさんが訊ねた。
「…いえ、何でもありません」
 僕はさっき生じた疑問を伝えようかとも思ったが、やめた。
 疑問を解決するには、あまりにも情報が足りなさ過ぎる。
 それに、もしこの疑問から導かれる『ある仮説』が正しいのだとしたら、
 不用意にこの疑問を口外するべきではない。
「…今日はこれくらいにしておきましょう」
 そう言って、僕は警察の資料室を後にするのだった。


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