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念を使わせてみよう小説スレッド

1151:2004/11/29(月) 02:16

「…あんたは、そうなんだな。
 『今日の天気が雨だから』とか、
 『今日の朝食がご飯ではなくトーストだったから』とか、
 そういう理由で人が殺せるのだな」
 フーンは遠い目で呟くように訊ねた。
「そんなのは理由ですらないよ。
 せいぜい、きっかけとかその程度さ。
 いいや、そもそも俺は、『外法』は、殺すのには理由すら必要無いんだ。
 理由があれば、なおさらさ。
 …そういうロクデナシの集まりなのさ」
 自分は何という化物と今までこんな至近距離で会話していたのか。
 今更にしてフーンは戦慄した。
 こいつにとって、殺す事とは空気を吸うのと同じ次元だ。
 老いも若いも男も女も人間も非人間も関係無く、こいつは殺す事が出来るのだ。
 仲間だとか友達だとか恋人だとか利害が一致してるかなんて、
 その殺傷本能の前ではまるで意味を成さない。
 この化物は、自分以外の存在は、いや、自分すら殺す為の対象でしかないのだ。
 『外法』が『禍つ名』の中ですら孤立しているという事実も、これなら納得出来る。
 こんな歪な化物、『禍つ名』の中ですら存在を許される訳が無い。
「…そう恐がるなよ。
 ついこないだ仕事のついでに何人か殺してきたばかりだ。
 今ここで、お前さんを殺すとかそういうつもりは無い」
 外法狐は笑みを浮かべるが、それでもフーンは信用ならない。
 何故なら、ちょっとした気紛れでこの化物が自分を殺さないという保証など、どこにも存在しないのだ。
「…金の為の殺しはしない人だと、あの坊やからは聞いたのだがな」
 かといって逃げ出す訳しもいかず、フーンは外法狐と会話を続ける。
 下手な事をして外法狐を刺激するなど、ニトログリセリンをもってダンスをするようなものだ。
「ああ。 仕事っつうのは要人の護衛で、暗殺じゃあない。
 だけど、向こうから喧嘩を売ってくるなら話は別だ」
「…それが狙いだったんじゃないのか?」
「俺はちゃんと事前に通告したぜ?
 戦えば、俺はお前らを殺す、と。
 それでも向かってくる奴らに好き勝手させる程、俺は善人じゃない」
「そういうのは、詭弁というのではないか?」
「そうかもしれないな。
 …いや、その通りだ。
 だけどな、多分、この詭弁さえ言わななったら、
 自分を正当化する事すら必要無いと感じてしまったら、
 誰をいつどこで殺したって構わないじゃないかと思ってしまったら、俺はもうお終いだ。
 そうなったらもう俺は人間や生物ですらない。
 死と破壊のみを振りまく害虫さ。
 そうなるのだけは、俺は嫌だ」
 憂いを湛えた瞳で、外法狐は口ごもる。
「…あの坊やも、とんだ相手に惚れたものだ」
「ああ、本当にそうだ。
 人を見る目ってもんがなってないな」
 フーンが「お前が言うか」と外法狐に突っ込みを入れる。


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