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念を使わせてみよう小説スレッド

1121:2004/11/29(月) 02:14

「…!
 そういえば、しぇりーちゃんは!?」
 思考が現実に追いついた所で、僕はハッとその事を思い出して叫んだ。
 そうだ、しぇりーちゃん。
 彼女は、無事なのか!?
「心配するな。
 あいつも五体満足に回復してる。
 今は、隣の部屋でぐっすり寝てるさ」
 そうか。
 無事なのか。
 よかった。
 …本当に、良かった。
「ネーノとしぇりーから大体の話は聞いた。
 災難だったな、少年」
「?
 しぇりーちゃんは寝てるんじゃなかったんですか?」
「阿呆。
 しぇりーは今夜中の2時だから寝てるだけだ。
 あいつなら、昨日の時点でとっくに意識を取り戻してるよ」
「そっすか」
 流石『禍つ名』。
 ついこないだまで小市民だった僕とは耐久力が違う。
「しかししぇりーを助けに駆けつけるとはやるねー。
 喜べ少年。
 エロゲーなら、しぇりールートにフラグが立ってるぞ?」
「うるせえ」
 フラグって何だフラグって。
 ついでにしぇりールートって何だ。

「…ごめんなさい、狐さん。
 心配かけてしまって」
 僕は素直に謝った。
「かかったのは心配だけじゃなくて、金もだがな。
 君の左腕と腹の裂傷、そしてしぇりーの左腕と右足、加えてホテルでの戦闘の隠蔽。
 せっかく仕事で稼いだ金がすっからかんだ」
 怒っているのかそうでないのか判別しかねる声で、狐さんは告げた。
「…狐さんと初めて会った時、ゲーセン代を渡しましたよね。
 お詫びにあれちゃらにしてあげますよ」
「桁が全然違うぞ」
「僕の銀行は、利子が一日10割なんですよ」
 冗談を交し合い、僕と狐さんは苦笑する。

「…本当にごめんなさい。
 格好つけるだけで、僕は何も出来ませんでした」
 そう、僕は何も出来なかった。
 勇ましくしぇりーちゃんを助けに駆けつけたが、結果は見事に惨敗。
 僕が勝てなかったしぇりーちゃんですら勝てないような相手に、僕が敵う訳など無い。
 フーンさんが来るのがあと少し遅ければ、僕はしぇりーちゃん諸共殺されていただろう。
 しぇりーちゃんは命がけで僕を逃がしてくれたのに、
 僕はそれを台無しにしてしまう所だった。
 この罪は、いくら謝っても償えるものではない。
「ああ、そうだ。
 フーンが来てくれなければ、お前はしぇりーを無駄死にさせる所だったんだ」
 責めるような冷たい声で、狐さんが僕を叱る。
 僕は何も言い返せない。
 言い返せる筈が無い。
「…だけどな」
 狐さんが、ポンと僕の肩に手をのせた。
「しぇりーが今生きてるのは、他でもない君のお陰だ。
 君が命を賭して、傷つきながらも戦ってくれたから、しぇりーは死なずに済んだんだ。
 君があのまま逃げたら、フーンが着く頃にはしぇりーは死んでいた筈だ」
「そんなの、結果論です。 僕は…」
「結果論でも何でもいい。
 しぇりーが今生きている。
 それが、俺にとって何より重要なんだ。
 君の行動は大局的に見れば浅はかな愚行だったのかもしれないが、
 俺はしぇりーの友達として、しぇりーを助けてくれた君に感謝し、尊敬する。
 …ありがとう」
 そう言って、
 狐さんは、
 そっと、
 僕の右頬に、
 その薄紅色の唇で、
 触れた。
 …?
 唇で、
 触れた?
「頑張った君への、お礼とご褒美さ。
 光栄に思え。 誰にでもする事じゃないぞ?」
 ほんのり顔を赤らめて、狐さんが照れ臭そうに頭を掻く。
 えっと、今、確か―――
「!!
 うわッ!
 おい、少年、大丈夫か!?」
 体中の血液が沸騰するような感覚に、僕は卒倒した。
 鼻からは止めど無く鼻血が流れ、塞がりかけていた腹の傷が開く。
 こうして、ついさっき起きたばかりだというのに、
 僕はもう一度気絶する事になるのであった。


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