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念を使わせてみよう小説スレッド
112
:
1
:2004/11/29(月) 02:14
「…!
そういえば、しぇりーちゃんは!?」
思考が現実に追いついた所で、僕はハッとその事を思い出して叫んだ。
そうだ、しぇりーちゃん。
彼女は、無事なのか!?
「心配するな。
あいつも五体満足に回復してる。
今は、隣の部屋でぐっすり寝てるさ」
そうか。
無事なのか。
よかった。
…本当に、良かった。
「ネーノとしぇりーから大体の話は聞いた。
災難だったな、少年」
「?
しぇりーちゃんは寝てるんじゃなかったんですか?」
「阿呆。
しぇりーは今夜中の2時だから寝てるだけだ。
あいつなら、昨日の時点でとっくに意識を取り戻してるよ」
「そっすか」
流石『禍つ名』。
ついこないだまで小市民だった僕とは耐久力が違う。
「しかししぇりーを助けに駆けつけるとはやるねー。
喜べ少年。
エロゲーなら、しぇりールートにフラグが立ってるぞ?」
「うるせえ」
フラグって何だフラグって。
ついでにしぇりールートって何だ。
「…ごめんなさい、狐さん。
心配かけてしまって」
僕は素直に謝った。
「かかったのは心配だけじゃなくて、金もだがな。
君の左腕と腹の裂傷、そしてしぇりーの左腕と右足、加えてホテルでの戦闘の隠蔽。
せっかく仕事で稼いだ金がすっからかんだ」
怒っているのかそうでないのか判別しかねる声で、狐さんは告げた。
「…狐さんと初めて会った時、ゲーセン代を渡しましたよね。
お詫びにあれちゃらにしてあげますよ」
「桁が全然違うぞ」
「僕の銀行は、利子が一日10割なんですよ」
冗談を交し合い、僕と狐さんは苦笑する。
「…本当にごめんなさい。
格好つけるだけで、僕は何も出来ませんでした」
そう、僕は何も出来なかった。
勇ましくしぇりーちゃんを助けに駆けつけたが、結果は見事に惨敗。
僕が勝てなかったしぇりーちゃんですら勝てないような相手に、僕が敵う訳など無い。
フーンさんが来るのがあと少し遅ければ、僕はしぇりーちゃん諸共殺されていただろう。
しぇりーちゃんは命がけで僕を逃がしてくれたのに、
僕はそれを台無しにしてしまう所だった。
この罪は、いくら謝っても償えるものではない。
「ああ、そうだ。
フーンが来てくれなければ、お前はしぇりーを無駄死にさせる所だったんだ」
責めるような冷たい声で、狐さんが僕を叱る。
僕は何も言い返せない。
言い返せる筈が無い。
「…だけどな」
狐さんが、ポンと僕の肩に手をのせた。
「しぇりーが今生きてるのは、他でもない君のお陰だ。
君が命を賭して、傷つきながらも戦ってくれたから、しぇりーは死なずに済んだんだ。
君があのまま逃げたら、フーンが着く頃にはしぇりーは死んでいた筈だ」
「そんなの、結果論です。 僕は…」
「結果論でも何でもいい。
しぇりーが今生きている。
それが、俺にとって何より重要なんだ。
君の行動は大局的に見れば浅はかな愚行だったのかもしれないが、
俺はしぇりーの友達として、しぇりーを助けてくれた君に感謝し、尊敬する。
…ありがとう」
そう言って、
狐さんは、
そっと、
僕の右頬に、
その薄紅色の唇で、
触れた。
…?
唇で、
触れた?
「頑張った君への、お礼とご褒美さ。
光栄に思え。 誰にでもする事じゃないぞ?」
ほんのり顔を赤らめて、狐さんが照れ臭そうに頭を掻く。
えっと、今、確か―――
「!!
うわッ!
おい、少年、大丈夫か!?」
体中の血液が沸騰するような感覚に、僕は卒倒した。
鼻からは止めど無く鼻血が流れ、塞がりかけていた腹の傷が開く。
こうして、ついさっき起きたばかりだというのに、
僕はもう一度気絶する事になるのであった。
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