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464
:
名無しモンクさん
:2010/07/01(木) 07:58:48
その日、残業で終電ギリギリに最寄り駅を降りた俺は疲労困憊だったんだ。
アパートまでの10分の道程をトボトボと歩いていると、
いつの間にか前方に白いコートを着た女性が居ることに気づいたんだ。
この蒸し暑い時期にコートを羽織っていることも奇妙だったが、
それ以上に違和感を持ったのは、その女性がジッと俺を見つめている事だった。
コートの上からでもわかるヒョロっとした身体、病的な程青白い顔にボサボサの髪。
その髪の奥から、そこだけ生気を得たようなギラリとした瞳が俺を見ている。
最初、睨まれているのかと思ったが、色味のない口元は確かに微笑んでいた。
そして俺の10m程前を“俺を見つめながら”、俺と同じ歩調で進んでいる。
そう、彼女はずっと後ろ向きで歩いているんだ。 気味が悪い。
しかも彼女は振り向いて確かめることもなく角を曲がり、
いつもの帰宅コースを知っているかのように、俺の前を後ろ向きで“ついて来る”んだ。
立ち止まると彼女も止まり、早足で歩けば彼女もそれに合わす。
決して近づくことも離れることもなく、俺の前方10mを後ろ向きで歩いていた。
「先に歩いているのは彼女の方なのだから、俺が別の道を選べばいい。」
そう気付いた時にはアパートまでの一直線だった。 「しまった!」俺は悔いた。
その先の幹線道路を超えれば、アパートは目と鼻の先だ。
だが、まさかアパートまではついて来ないだろう。
もしアパートに入る素振りを見せたら、俺はそのままアパートの前を通り過ぎ、
警察署に駆け込めば良いだけだ。
そう考えると少し気が楽になり、同時に面倒な事に巻き込まれた苛立さえ感じてきた。
ふと前を見ると、歩行者用の青信号が点滅し始めている。
まさか俺がこのまま進んでも、彼女が危険を冒してまで交差点の中に進む事はないだろう。
そう思い少ししづつ躙り歩いてみたが、彼女は歩道ギリギリになっても止まろうとしない。
俺は恐怖を感じ、その場で歩みを止めた。
信号が変わるまでの時間が永遠に感じられる。 もうずっと目を背けている俺だが、
彼女が薄気味悪い微笑を浮かべながら俺を見つめ続けているのは、何故かわかった。
「なんなんだ!あの女は!」 もう恐怖と苛立が限界に来ていた。
次の瞬間、闇夜を切り裂くブレーキ音が、俺を正気の世界へ戻してくれたんだ。
もう目の前にあの女は居ない。 あるのは、砂埃をたてて歪に止まるトレーラーだけ。
俺は一歩踏み出した右足を見つめながら、脳にこびり着いた映像を思い出していた。
確かに彼女は満面の笑みで俺を指差しながら、トレーラーに跳ね飛ばされたんだ。
記念に彼女の赤いコートを持って帰ろうと思う。
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