したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【場】『自由の場』 その2

1『星見町案内板』:2021/05/15(土) 13:10:51
特定の舞台を用意していない場スレです。
使いたい場スレが埋まっている時や、
現状スレのない地域での場活動にご利用下さい。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。

60小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/05/28(金) 05:07:21

眠れない夜に一人、自宅のキッチンに佇んでいた。
『二人の新居』になるはずだった場所。
だけど、隣にいてくれるはずの『彼』はいない。
この家で暮らすようになってから時間が経ち、
以前と比べると一人きりの寂しさにも慣れてしまった。
それでも、今でも不意に、
心の奥にどうしようもなく物悲しさを感じる事がある。

  「――……」

『あの日』の事を思い出す。
『結婚記念日』に、『彼』と出掛けた日の事を。
『彼の写真』を懐に入れて、
私は『彼』と一緒に街を巡り歩いた。
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453049221/195)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647870/241)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647631/216)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647686/190)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647476/210)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647744/162)

出来る事なら、隣にいて欲しかったと思う。
叶わない願いだという事は分かっている。
だからこそ、この命を全うした先で『再会』する。
そのために、『未来を向いて生きる』と誓った。
しかし、『今すぐに会いたい』という想いは、
時間を経ても完全に失われる事はない。

  「――……」

おもむろに腕を伸ばし、
使い慣れた『果物ナイフ』を手に取る。
乱れた心を鎮めてくれる『鎮静剤』。
『衝動』に抗えなくなった時には、いつも助けられてきた。

    ……スッ

鞘に収まっているナイフを、音もなく引き抜く。
よく手入れされた刃の艶めき。
黙ったまま、そこに映り込む自身の姿を見つめ続ける。
そうしていると、これを初めて使った時の事を思い出す。
それは発作的な行動だった。
自分が何をしているかも分からなくなり、
曖昧な意識の中で自らの腕にナイフで傷を付けていた。
静かに肌を伝い落ちる血を見ている内に、
次第に心が落ち着いていくのを感じた事を覚えている。

  「――……」

この街に来てから、
『鎮静剤』を手放した事は一度もなかった。
家を出て街を歩いている時も、常に手元に置き続けてきた。
『それに纏わる出会い』の数々が、ふと脳裏をよぎる。
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647686/178-187)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647870/426-435)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647744/346-364)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647686/410-418)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1591247432/2-21)
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647744/728-741)

61小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/05/28(金) 05:09:05
>>60

  「――……」

次に思い出したのは、『あの町』で経験した出来事だった。
『幻の町』で起きた事、そこで出会った人々、
自分自身が感じた事――それらの一つ一つが、
心の内に去来する。
そこで直面した争いの中で最も強く願ったのは、
『誰も傷付けたくない』という想いだった。
どんな人間であっても、『その人を愛する人』がいるはず。
もし誰かが傷付けば、『その人を愛する誰か』も傷付く。
愛する人が傷付く辛さは、痛い程に分かる。
あの時、自分が行動を起こしたのは、
『誰かの愛』を守るためだったのだと思う。
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1552052081/2-747)

  「――……」

漂う思考は『スカイモールで出会った少年』に移る。
『誰かを殺めてしまうほど憎んだ事はないか』と、
彼に問い掛けられた。
『誰も傷付いて欲しくない』――それが自分の答えだった。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349479/27-43)


  「――……」

人間には感情があり、自分も人間だ。
『自分の中だけでは処理しきれない想い』が、
心の奥底に芽生えてしまう事もある。
自分自身の心を苛む、やり場のない気持ち。
そんな時、それを誰かにぶつけてしまえば、
少しは楽になれるのかもしれない。
けれど、ぶつけられた相手は、きっと苦しむはず。
それは、『誰かを傷付ける事』になってしまう。
『誰も傷付けない』ためには、どうすればいいか――
この街で『スーサイド・ライフ』を得てから、
その事を考え続けていた。

  「――……」

自分が誰かを傷付けてしまうとすれば、
それは『自分が弱い』からだ。
自分の心が弱いから、悲しみや苦しみに耐えられないから、
自分以外の人達にも同じ思いをさせてしまう。
それなら――『自分が強くなればいい』。
どんな悲しみや苦しみにも耐えられるように、
それを決して誰かに背負わせないように、
幸福も不幸も何もかも受け入れて生きていけるように。
『全てを受け入れられる心を持つ事』が、
『誰も傷付けない方法』なのだから。

    ……ソッ

ゆっくりと『果物ナイフ』を鞘に収める。
引き出しを開けると、その中にナイフを置いた。
慈しむような視線で『長年のパートナー』を見下ろす。

  「――……」

            ビー・ハート
今、自分の中には『第二の刃』がある。
『他の誰か』を傷付ける事なく、
ただ『自分だけ』を傷付ける事の出来る『不殺の刃』。
私は――少しは強くなれたのだろうか。

  「――……『お疲れ様でした』」

  「――今まで……『ありがとう』」

          ……パタン

心からの『労い』と『感謝』の言葉を送り、
静かに引き出しを閉めた――。



小石川文子⇒『鎮静剤』を手放す。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板