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【場】『自由の場』 その2

1『星見町案内板』:2021/05/15(土) 13:10:51
特定の舞台を用意していない場スレです。
使いたい場スレが埋まっている時や、
現状スレのない地域での場活動にご利用下さい。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。

182風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/06/27(日) 10:33:42


「夢か」

風歌鈴音は、夢の中で目を覚ました。
いわゆる、明晰夢である。そして、奇妙な夢である。
まるで、雲の中で浮いているような、光り輝く空間の中で、柔らかな何かに包まれている様な。
夢の中で二度寝――それも、悪くはないが、せっかくの明晰夢である。好きなように、飛び回ってでも見ようか
そう思った時――風歌は、ふと、思いついた。

(夢の中でアタシを飛ばしたら、どうなるんだろうか)

『ダストデビル・ドライヴ』の風は、ゴミたる風歌を吹き飛ばす風である。すなわち、何処かに動かす力である。
ただ、夢の中を揺蕩い続けるのも面白いかも知れないし――ひょっとしたら、意図もしないどこかに向かえるかも知れない。
興味を抱いた風歌は、自らの『ダストデビル・ドライヴ』を顕現させ――本体――風歌自身に、両手を向けた。

「風に吹かれて、何処へやら、だ!」

その言葉と共に、『ダストデビル・ドライヴ』の突風が、夢の風歌を吹き飛ばし――何処かへ、夢の何処かへと、向かわせた。

183ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/06/27(日) 10:54:24
>>182

光に満ちた空間を飛んでいくと、前方に何かが見えてきた。
『毛むくじゃらの生き物』だ。
仰向けの体勢で宙に浮かんでいる。
イタチ?カワウソ?
似てはいるが、そのどちらでもない。

                   ミャー

     ――――『ラッコ』である。

       ミャー

そういえば、以前『パーティー会場』で見かけたかもしれない。
だから、こんな所に出てきたのだろうか?
それは『謎』だが、どうせ『夢』だ。
別に気にする事もないだろう。
何なら話をしてみてもいいかもしれない。

184風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/06/27(日) 11:09:48
>>183
ラッコである、可愛い生き物である。
湖畔をねぐらとする風歌にとっては広義的な意味での同居人と言えるかも知れないし、スタンド使いが跋扈する狂った街のマスコットの一人(一匹?)である。
自分がラッコの夢を見ているのか、ラッコの夢と混じり合ったのかは解らない、しかし、袖振り合うも多生の縁。夢での出会いも、縁であろう。

(ラッコに人間の言葉が分かるとは思えねえが……まぁ、夢だ、どうにかなるだろ)

風歌は、『ダストデビル・ドライヴ』の風を噴射してラッコに近づくと、軽く頭を下げた。

「場所が場所だ。こんにちはだか、こんばんはだかは解らねえが……どーも」

185ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/06/27(日) 11:31:40
>>184

普通、ラッコの棲息地は海辺である。
しかし、『星見町のラッコ』は、
『湖』や『川』や『池』にも出没するという噂があった。
風歌が知っているかどうかは別の話だ。

「――――こんにちは」

ラッコが『喋った』。
普通なら決して有り得ない事だが、ここは『夢』だ。
何でもありなのだろう。

「お好きな挨拶をしたらいいと思いますよ」

「大事なのは気持ちですから」

流暢に言葉を発するラッコ。
シュールな光景だ。
この『夢のラッコ』は意外と考えているらしい。
だが、あくまでも夢は夢。
星見町に棲む『本物のラッコ』が、
『夢のラッコ』と同じ思考を持っているかは定かではない。

「湖の辺りに住んでらっしゃいますよね」

「住み心地はどうですか?」

『夢のラッコ』は世間話を振ってきた。

186風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/06/27(日) 11:45:29
>>185


「それじゃあ、こんにちはだ。本日はいい夢見心地で……」

夢は夜見るものであるが、風歌は夢を見ながら生きている。ゴミでなくなるという夢、ゴミから這い上がるという夢だ。
それが夢物語だとしても、風歌はそれを胸に抱いている。朝も、昼も、夜も。起きている時に夢を見れる女にとって、夢はむしろ昼の産物なのだ。

「湖の住心地は……いろいろ移り住んだ中では、最高だな」

自然公園一体は野生動物の住居であると同時、野生化した人間であるホームレスにとっても住みやすい場所だ。

「まだ使えるもんはガンガン不法投棄されるし、近くの山や森に行けば食うもんにはそうそう困らねえ、魚だって釣れるし、昔は鳥だって取ってた。人間らしいかは判らねぇが、とにかく生きやすいのは間違いねえさ」

187ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/06/27(日) 12:10:51
>>186

「私も何度か行きました。いい所ですね」

「『ウニ』や『アワビ』はありませんけど」

ラッコの好物であり、人間にとっては高級食材。
しかし、そんな事をラッコは気にしない。
何故ならラッコだからだ。

「人間の事は分かりません。
 でも、居心地のいい場所なら何よりです」

「それはラッコも同じですから」

人間は人間であり、ラッコはラッコである。
ラッコに人の気持ちを理解するのは難しい。
その逆も然りだ。
しかし、同じ地球上の生物。
共感できる部分はある――――のかもしれない。

「私は『北』で生まれました。いい所でした」

「ある日起きたら、見た事のない場所にいたんです」

「最初はビックリしました。でも、ここも『いい所』なので」

「そのまま暮らす事にしたんです」

       ゴソ

それほど知られていないが、
ラッコの脇には『ポケット』がある。
そこから何かを取り出した。
『石』だ。

188風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/06/27(日) 12:34:34
>>187

「ウニやアワビ……いいもん喰ってんなぁ……」

今の手持ちの銭であれば、絶対に手が届かない程の食い物ではない。
ホームレス故に回転寿司屋には入れずとも、スーパーのパック寿司などで買えなくもないし、持ち帰り専門店なども珍しくはない。
しかし、染み付いたケチ臭さ――時偶に奢る事はあっても、ホームレス特有の性質ゆえ、寿司には手を伸ばせぬ風歌なのであった。

「アタシの生まれ場所は――まぁ、良かったよ。パパやママもいたしな」

その後――両親の死後は――思い出したもなく、語りたくもない人生だ。
今が人間として最低の生き方をしているのならば、あの頃の風歌は人間として最悪の生き方をしていた。忌まわしい、腐臭に満ちた嘗てが、そこにはある。
暗鬱たる過去から目を背ける先を探した風歌は、ラッコの取り出した石をみた。

「ラッコって言えば貝殻かと思ってたが……なんだぁ、そりゃ 石?」

189ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/06/27(日) 12:58:01
>>188

「これは『北の石』です」

それは人間から見ると、『ただの石』にしか見えない。
特に変わった形をしている訳でもないし、
珍しい色をしている訳でもない。
だが、ラッコにとっては『宝物』だ。

「これを見ていると『故郷』を思い出す事もあります」

ラッコにとって、『石』は命の次に重要なものだ。
食事の時、硬い殻を割る時に使ったり、
潜水の際に錘として使う事もある。
そして、ラッコが使う石は個体ごとに決まっている。
気に入った石を見つけたら、それをずっと使い続ける。
もしなくしたら、食事もしなくなる程に気落ちしてしまうのだ。

「でも、戻りたいとは思いません。
 ここに来たのも『何かの縁』じゃないかなと思います」

「だから『ここで生きていこう』と思いました」

あるがままをありのまま受け入れる。
それが『ラッコの生き方』らしい。
各地を移り住んできた風歌と似ているかもしれないが、
根本は異なる。

「ここに来られて――――『幸せ』だと思ってます」

ラッコに『叶えたい夢』や『目指すべき目標』はない。
『幸せに生きる』。
それだけがラッコの『願い』である。

190風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/06/27(日) 13:22:02
>>189


風歌は、自分が恵まれたゴミだとは思っているが、幸せだとは思っていない。
ホームレスである、家なき子である。スタンドという能力を有する用になり、真なる最悪であったかつてよりはマシな生活を送っているが、それでも幸せではない。

「アタシも、昔よりはマシに生きてるがなぁ……」

最悪では、最高ではない。腐りきった階から飛び降りて、なにもない地べたに身を投げ出したのが自分だ。

「アタシは、縁が合ったからじゃなくて、縁がなかったからホームレスを選んだんだよなぁ」

その選択に後悔は無い。ゴミになる選択をしなければ、生きる事を選ぶ事は出来なかった。
だが、それを幸せと言うことは出来ない。

「これまで、『才能』を身に着けてから、色々あったよ。勝負の場に首を突っ込んだ事もある。けど、幸せにはなれてねぇな、マシにはなってる気はするけど」

風歌は幸せになりたいと思う、人生を変えたいと思う、ゴミで無くなりたいと思う。
そして、夢、だからだろうか、その『機会』があるのを風歌は何気なしに感じていた。夢から覚めれば忘れるだろう感覚だ。

「マシにも、幸せにもなれるような――『デカイ』何か……それが、起こるかもって予感があって、『それにどうにかできれば』絶対に何かが変わるだろうって、『予感』があるんだ。今までの色々と違って『命懸け』で、『桁外れ』な何かが……まだ、『チケット』は残ってる、予感がある」

それは、『無謀』なのかもも知れない、百戦錬磨どころか3戦1敗な風歌が挑むには愚かなのかもしれない。

「死にたくはねぇが、『生きる必要』があるわけでもねえ……ラッコさんよ、あんたは今、幸せらしいが……何かをどうしょうもなく変えたい時、そいつに『挑む』べきだと思うかい? それとも、自分を磨いて、一歩一歩幸せになろうと、階段を登るべきだと思うかい?

191ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/06/27(日) 13:48:23
>>190

ラッコは風歌の話を黙って聞き、簡潔に返した。

「私は『人間』じゃありません」

風歌の目の前にいるのは『ラッコ』なのだ。
もちろん、これは現実ではない。
ただの『夢』である。
しかし、ラッコはラッコ。
当たり前だが『人』ではない。

「あなたは『ラッコ』じゃありません」

同じ『哺乳類』ゆえに分かる事もあれば分からない事もある。
『海棲哺乳類』である『ラッコの幸せ』を理解するのは、
『霊長類』である風歌には難しい事かもしれない。
同時に、『風歌の進む道』も、ラッコに分かる事ではない。
今ここで分かるのは、
お互いに『それぞれの生き方』があるという事。
『それ以外の何か』を求めたとしても、答えは出てこない。

「あなたが幸せかどうかは分かりませんけど」

「でも」

だが、共有できる価値観もある。
『幸せがいい』。
その原則は『霊長類』も『海棲哺乳類』も同じだ。

「あなたが幸せでいられる事を願ってます」

感覚で分かる。
この『夢』は、そろそろ終わる。
目覚めた頃には忘れているだろう。

192風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/06/27(日) 14:00:21
>>191

「――ありがとうよ、ラッコさん」

幸せを願われた風歌は、素直に頭を下げた。
幸せになるとは決めていた風歌であったが、それを風歌以外が望んだ事はなかったかもしれない。
しかし、今、望まれた。例え、夢であろうとも、相手が、ラッコであろうとも。
それが、風歌に意思を与えた。

「今日は、『いい夢』を見れた……あんたに会えて、良かったよ」
そして、風歌は己自身に『ダストデビル・ドライヴ』の両手を向ける。
突風を己に、打ち出す先はここではないどこか、おそらくは、目覚めの縁に。

「それじゃあ、会えたらまた会おうや、夢でも、現実でも、どこでも――さようなら! ラッコさん!」

別れの言葉と、同時。風歌は自身に突風を打ち込み、ラッコから離れる。
そして、夢の外へ、現実へ、目覚めへ――飛んでいく。
幸せを願われた思いと、僅かながらの決意を胸に。

193ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/06/27(日) 14:10:04
>>192

        プカァ…………

海の上に『何か』が浮かんでいた。
ひょんな事から星見町沿岸部に流れ着き、
そのまま定住した『野生のラッコ』だ。
ちょうど目覚めた所であり、
いつものように仰向けになって晴れた青空を眺めていた。
何を考えているのか、それとも何も考えていないのか。
その表情からは窺い知る事は出来ない。

      ミャー

                ハッピー
この町で、今日もラッコは『幸せ』に暮らしている――――。


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