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【過】『武闘列伝』

1『運営者』:2016/01/25(月) 22:25:18
『アリーナ』の過去ログスレッド。

2 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:23:08
日曜日の昼下がり。
メインストリートから道一つ外れた住宅地の中、
建売住宅の中に混じった『ラクアクア』の事務所に、『東雲』はいた。


       「――――と、これで説明は以上となります」


にこやかな笑顔をした中年男性、『吉田松太郎』の説明が終わった。
夕暮れの倉庫街で行われる、密された『スタンドファイト』。
どのような目的で『東雲』がこの闘いに興味を持ったかは不明だが、
たった今、選手登録用の書類に『サイン』を記し、その『闘志』を露わにしたのだ。

3東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:24:57
この街に潜む闇に触れる。そしていざという時に戦えるよう、己を鍛える。
そういった目的において、この『スタンドファイト』は一石二鳥だった。

「ありがとうございます」

深く一礼をして、説明をしてくれた吉田に対して感謝を示す。

「試合はいつ頃にできますか?」

早速だが、吉田に訊ねる。



持ち物:財布、スマホ、ロープ(ポリエステル製、9mm×1m)

スタンド能力:
全身から『塩』を噴くスタンド。纏うタイプ。
このスタンドの触れたものは『塩』を噴く。
その様は積雪のようで、
最初はうっすらと、次第に厚くなり、
最終的には『岩塩』と化し、対象を閉じ込める。
『塩』は水に弱く、『岩塩』でも瞬時に溶解する。
スタンド自身も『塩』に覆われるが、これは『鎧』として機能する。

『ザイオン・トレイン』
破壊力:B スピード:B 射程距離:E
持続力:B 精密動作性:C 成長性:B

4 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:25:31
「おおっ、やる気十分ですね!
 いやいや、闘志ムンムンのファイターの方が来て頂けると、
 我々としても心強いところなんですよ」

『吉田』は心底嬉しそうに破顔する。
『チラシ』を見てやってきた『東雲』ではあるが、
集合場所である事務所の中には、二人以外誰もいない。
――――どうやら、『スタンド使い』の数は相当少ないようだ。


   「試合、試合ですか。
    ……実を言うと、十分なファイターの数が揃っておらず、
    私共の力不足で恥ずかしいばかりですが、まだ試合は」


           「ここにいるぞ」

ガラス戸を開けて入ってきたのは中年の男だ。
ドジョウヒゲに角刈、極めつけに着流しの、見るからに『胡散臭そう』な外見をしている。
背中には何故か『ギターケース』を背負っており、あまり近付きたくない様相だ。


    「俺の名前は『尾藤一騎』、強いスタンド使いを探している。
     ――――お前はどうだ?  お前は強いのか?」


得意顔で問いただす『尾藤』、それを見る『吉田』の顔は引き攣っている。
内輪で開いたパーティーに呼んでもいないお調子者が来たような、
あまり『歓迎』していない様子だ。

5東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:26:52
>   「試合、試合ですか。
>    ……実を言うと、十分なファイターの数が揃っておらず、
>    私共の力不足で恥ずかしいばかりですが、まだ試合は」

(・・・なんじゃ、勇み足じゃったか。焦ってはいけん、今はまだーーー)

>           「ここにいるぞ」

ガラス戸の方へと首を向ける。そこには一人の男が立っていた。
なかなかセンスのいい格好である、背中のギターケースさえ除けば、だが。

「強いのか、ですか。正直に言ってしまえば、分かりません。『スタンド使い』と戦ったことはないもので」

「ところで、質問を質問で返すようで申し訳ないのですが、尾藤さんはお強いのでしょうか?」

「…もし腕に自信がお有りのようでしたら、そんな尾藤さんに俺が勝てたなら、『俺は強い』となりますね」

椅子を回し、己の巨躯を尾藤へと見せるようにして、彼の瞳をジロリと睨む。

6 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:27:26
「自己評価を他人に依存するなよ。
 ……だがなるほど。良く鍛えてある」

日に焼けた肌、樹皮のように泰然とした筋肉、
良く引き締まった肉体を観察し、『尾藤』は不敵な笑みを浮かべた。


     「『吉田』、コイツとの『バトル』をセッティングしてくれ。
      日取りはそうだな。三日後がいい、『大安』だからな」


          「い、いやぁ、どうでしょうねぇ……。
           流石にちょっと、予定を確認しないと……。

           ほら、対戦表だってギッチギチでしょうし」


     「安いハッタリは止せよ、『吉田』。
      C級ランカー一人集めるのも手一杯なお前らが、
      先の予定まで満足にスケジューリング出来るわけないだろうが」


明らかに困っている『吉田』に対し、『尾藤』は見透かしたように言葉を続ける。
チラリと『東雲』に視線を送るも、その弁舌は止まらない。


     「質問に答えてやる、『俺は強くなる』。
      その為の『闘技場』だ。強者以外に用はない。

      お前の強さを測ってやる、コイツがその『物差し』だ」


『ギターケース』を軽く持ち上げ、『尾藤』はニヤリと笑った。
彼を尻目にした『吉田』は渋々とばかりに電話をしている。

7東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:30:40
「…なるほど。強さとは相対的なものではなく、絶対的なものということですか」

微かに笑いながら、男の言葉を理解する。年長者の言葉には含蓄がある。
そしてそれを言ってのけるからには、この男は自分の腕に自信があるのだろう。
相手としては願ってもない。

ギターケースの中にあるであろう得物を示す尾藤に対し、椅子から立ち上がる。

「『同感』です。よろしくお願い申し上げます」

『ペコリ』

そうして一礼。
この後は命を懸けた殺し合いをするのだが、だからと言って礼を欠く理由にはならない。
ましてやこういった人種は、東雲忍の価値観において非常に好ましい。
もっともそれで手心を加えるつもりもないし、そんな余裕のある相手だとも思ってない。
全力でぶつかるだけだ。ーーー当日が楽しみである。

(…じゃが吉田サンはあがぁに尾藤サンとの戦いを嫌がっとったんじゃ?
 相手が不足しちょるなら、なおさら願ってもないじゃろうが)

8 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:31:10

     スゥゥ

                      ペコリ


椅子から立ち上がり、一礼をする『東雲』。
それに倣うかのように『尾藤』もまた、一礼を返す。


        「え、えぇー、『東雲』さんの試合の日取りが決まりました。
         三日後の二十時より、『倉庫街アリーナ』で試合を行います。

         『Cランク同士』ですので、特殊ルールの適用はありません。
         各自、戦闘準備を整えてから『係員』の合図に従い、『入場』をお願いします」


         「ああ、『了承』した」  ニィィ


スマートフォン片手に難渋なシワを作ってみせる『吉田』に対し、
得意顔を晒したままの『尾藤』。踵を返し、ガラス戸を押し開ける。


         「愉しみにしているぞ、『東雲』。
          『初戦』は以後の道筋を決める、重要な闘いだ。
          くれぐれも、無粋な真似をして『汚して』くれるなよ――――」


捨て台詞を忘れること無く、その場を後にする『尾藤』。

9東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:31:35

>        「え、えぇー、『東雲』さんの試合の日取りが決まりました。
>         三日後の二十時より、『倉庫街アリーナ』で試合を行います。

>         『Cランク同士』ですので、特殊ルールの適用はありません。
>         各自、戦闘準備を整えてから『係員』の合図に従い、『入場』をお願いします」

「了解しました」

吉田の言葉にはっきりと頷く。試合は三日後、入念にコンディションを整えておこう。

「胸をお借りします、尾藤サン」

尾藤の捨て台詞に対しては、年下として謙虚に。
だが、当然試合でも大人しくするつもりはない。
鮮やかには勝てない泥試合になるかもしれないが、負けるつもりは一切ない。
岩にかじりついてでも、打ちのめして、勝ってやる。

10 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:32:01
静かなる闘志を内に秘める『東雲』。
二人を見守る『吉田』の目は、心配そうに伏せられていた。


===============================================================


三日後、夕日は完全に没した。
しかし、天井から吊り下がった投光照明が煌々と照り付け、
『アリーナ』の場内は眩いほどの熱光が迸っている。


   「紳士淑女の皆様、おまたせしましたァ!
    今夜、催されるはまさしく『刀拳乱舞』!
    かたや『古武道』の継承者、活殺自在のラスト・サムライ!
    かたや謎に包まれしルーキー、その拳はハガネを断ち割るか!?」


サングラスが特徴的なオールバックの中年男性は、
観客のボルテージを高めようと、マイクを片手に熱弁を振るう。
照明と共に天井から吊るされた『実況席』の上でテンションの高い前説をする男性、
その隣に鎮座するのは線の細い物憂げな美青年だ。


   「――――反らず曲がらず、そして何より『美しい』。
    花は桜木、人は武士。ならば『心』は『刀』なり」


       「実況は私、『森田三郎』!
        そして解説は『山本ユキト』がお送り致しますッ!」


   「さあ、『選手入場』です!
    赤コーナー、『東雲忍』ゥ!」    「出てこいやぁ!」


突如、照明器具達が一斉に光を消した。
周囲が闇に包まれる中、周囲の壁面に仕込まれた『LEDライト』に切り替わる。


             ブシュゥゥゥゥ――――z______


東雲の両サイドの地面から、赤い光を反射した『スモーク』が吹き出した。
『スモーク』の間に1mほどの『道』が生まれている。入場の開始だ。
ステージ内には『東雲』の所望した『ステージギミック』が確認出来る。
(『東雲』は希望する『ギミック』があれば選択可能。)

『東雲』の用意した音楽も鳴り響き始めた。否応にもテンションが高まる。

11東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:34:29

(…よう作っとるわ)

倉庫街の一角にあるこの特設ステージを見て、思う。
さながらテレビなどで見る格闘技の舞台のようだ。
思えば小さい頃よりケンカは数え切れないほどしてきたが、こうして
人に見せる為のものとしてやるのは初めてだ。だからと言って緊張はしない。

「・・・・・・・・」

この解説者も言う通り、自分はルーキーであり『挑戦者(The contender)』だ。持てるベストを尽くし、相手を倒すことに集中する。
学ランの袖の中、右腕に巻きつけるようにしてあるロープを握りしめながら、入場しよう。(特に希望するステージギミックはなし)。


入場曲:Royal Crown Revue - The Contender
ttps://www.youtube.com/watch?v=ZwYmIsIkmFc

12 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:36:29
掻き鳴らされるベースビート、けたたましいスウィング、
ロックのリズムを刻むが、ジャズの上品さを根底に秘めている。
――――『The Contender』。ゴキゲンなBGMと共に、『東雲』は入場する。


    「身長182cm、九州男児を連想させる精悍な目つき!
     船仕事で鍛えた肉体には、戦士の素質は十分ッ!

     今、未知の大海原へと、一歩を踏み出したッ!」


          「『戦闘経験』は皆無。外見に反して『新雪』のような男。
           雪解けに覗ける景色は果たして、荒野か野原か花園か――――」


解説席から飛び出す言葉からは、ルーキーの『東雲』をアピールする苦心が伺える。
煙の途切れた位置で足を留める。ここで後入場者を待つ形らしい。


   「さあ、『選手入場』です!
    青コーナー、『尾藤一騎』ィ!」    「出てこいやぁ!」


             ブシュゥゥゥゥ――――z______


『スモーク』の道を割って現れたのは、三日前に顔を合わせた『尾藤』その人。
格好も同じだが、けったいなギターケースの代わりに『日本刀』を帯刀している。
流れるようなラップのリズムさえ何処吹く風、泰然と歩を進めていく。


入場曲:Diggy-Mo 『サムライズム』
ttps://www.youtube.com/watch?v=9V_C3aDZr8g


      「かの『宮本武蔵』も『五輪書』への記載を拒んだとされる、
       実践式剣術、『尾藤真正流』の継承者!

       刀は未だ抜かずッ  悠然と『ルーキー』を見定めます――――」

             「室内を想定した『居合』か、
              『刀』より鋭い『殺気』がまた『心地好い』――――」


照明が戻り、互いに顔を合わせる。その距離、『3m』。


       「おおおおおおおおおお!!!!!!!!」


           「尾藤ィー!」          「サムラァーイ!」


                 「ルーキー、やれぇぇ!!!」


      「ギミックを用意しなかったのか、アホが。
       お前が俺に勝つには、『小細工』以外に無いだろうにな」


              「さぁ、両者やる気十分!
               ノーレフェリー、時間制限なし!
               いざっ、尋常に――――」

                                   「――――『勝負』」


観客達の歓声が響き渡り、『尾藤』の挑発もそれに交じる。
『森田』の実況、『山本』の静かな言葉が試合の開始を告げる。


                       カァァァァ――――z_____ン!!



             『  G   O  N  G  !  !  』

13東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:38:36
>   「さあ、『選手入場』です!
>    青コーナー、『尾藤一騎』ィ!」    「出てこいやぁ!」


>             ブシュゥゥゥゥ――――z______


あのギターケースの中に入っていた奴の得物は、日本刀か。
最悪の想定として軽機関銃などを考えていたが、少なくとも軍人ではないということか。
もっともこれだけの近距離で開始するなら、同じ手練れなら
大型の銃器よりも、日本刀の方が警戒すべきだろう。

しかし実況の通りの『居合』であるなら、必然的に片腕での斬撃となる。
力より速度で勝負するスタンドということか?
試合前の今の内に軽く周囲を眺め、尾藤が設置しさせたと思われるギミックがあるか確かめる。

>      「ギミックを用意しなかったのか、アホが。
>       お前が俺に勝つには、『小細工』以外に無いだろうにな」

「・・・・・」

最初から見える小細工を弄して、それに拘泥しあまつさえ敵に利用されることを恐れた。
『ルーキー』たる自分の判断だ、消極的と言われればそれまでだ。
だがまずはこの戦いで、『ザイオン・トレイン』をしっかりと理解する。

>              「さぁ、両者やる気十分!
>               ノーレフェリー、時間制限なし!
>               いざっ、尋常に――――」


                                   「勝負ッ!」


両拳を握りしめ、『ザイオン・トレイン』を発現。即座に能力を発動し、自身を『噴塩化』させる。
敵に対し半身の姿勢で、まずは待つ。このまま両拳と両足を『岩塩』で武装させたいところだが、
尾藤が攻めてくればそうはいくまい。敵が自ら踏み込んでくるタイプなのか、
それとも射程に入ってくるのを誘うタイプなのか、調べる。
すぐ攻めてくるのならば、またそれに応じて策はある。

14 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:39:15
周囲を確認するが、特殊な『ギミック』は存在しない。
実況も触れていない以上、何処かに『隠れている』こともないようだ。


           シュォォォォ.....


              「『東雲』選手、スタンドを発現しました。
               身に纏うスタンドではありますが、
               更に何かを『纏っている』様子です」


『ザイオン・トレイン』を身に纏い、その身に『岩塩』を吹き出していく。
そのスピードは『秒速5ミリ』、『岩塩』に変えて『武装』するには、
肉体と同程度の『厚さ』にまで『堆積』させなければならない。

しかし、『掌』や『足裏』であれば『数秒』程度で覆い尽くせる。
その間に『尾藤』の動きを待つ。『尾藤』は未だ、刀を抜か――――


       シュラッ

             「おっと、『尾藤』選手」


                     「『刀』を抜いたァァァ〜〜〜〜〜ッッ!!!」



                              スゥゥゥ――――


片手で刀を抜き放った瞬間、『尾藤』の姿は『消える』。
一拍遅れ、パネル床を踏む音と共に、風切り音が響き渡る。

                                         ビュオッ!


            「き、消えたァァァ〜〜〜〜〜ッッ!!

             『尾藤』選手、『刀』と共に姿を消したァ!」


∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□?□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□東□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

□:闘技場内。床はコンクリートで、タイルの大きさは1x1m。
■:『2m』の高さの壁。その上は『金網』が張られ、会場と観客席を隔てる。
∴:観客席。会場を見下ろす形となる。
?:尾藤がいたであろう場所。

15東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:40:22

ーーー刀を抜いた。つまりは仕掛けるということだ。
じっと尾藤の挙動に注目し、間合いを詰めてくるのに備え、迎撃を目論んだ瞬間。



>            「き、消えたァァァ〜〜〜〜〜ッッ!!


               「なっ・・・ッ?!」

これでは動作を注視するどころではない。本体のみならず、刀まで消えている。
これがヤツの『スタンド』か。
惚けている余裕はない、この床に踏み込む音、そして風切り音。既に攻撃は迫っている可能性が高い。

よっていまだ『岩塩化』していない両腕、それを利用する。
両手両足を即座に武装することは諦め、俊敏な動きでバックステップ。
同時に両腕を振り上げ、少しばかり積もった『塩』を前方に振りまく。
ただの目潰しの効果だけでなく、パラパラと砂のようなそれを当てることで、
尾藤は確かにそこにいるかどうか確認できるはずだ。なお自身の『噴塩』は継続する。

16 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:40:46
『東雲』は両腕を即座に振り上げながら、バックステップを行う。


                   ゴガァッ!


『1m』ほど背後に飛び退いたが、その腕に確かな衝撃が伝わった。
これは『鞘』だ。投擲された『鞘』が両腕に命中し、『東雲』の両腕が痺れる。


    「『命中』ッ!  ファーストヒットは、『尾藤』選手が奪いました。
     鞘です! 鉄拵えの鞘を投擲しました、これは痛そうだッ!」


           「あッ、『尾藤』選手が姿を現しました。
            抜身の『刀』を手にし、『東雲』選手へ襲い掛かるゥゥ〜〜〜〜ッッ!!」



                ビュォォオオオ!!


『東雲』の視界の端に、横薙ぎに『刀』を振るう『尾藤』の姿が見える。
狙いは『脛』。確実に機動力を奪おうと―――――


                      フゥゥッ


またしても『消える』。
敵影を目指できないまま、『風切り音』だけが確実に迫るッ
『塩』のソナーもまるで無意味だ。ほんの数振りでは『乏しすぎる』。

17東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:41:14

>                   ゴガァッ!

「ぐうっ…?!」

繰り出されたのは刃ではなく、投擲された鞘。いきなり初撃に賭けるのではなく、
まずは牽制として腕を潰す。鞘にこんな使い方があったとは。
実戦式剣術というのは、伊達ではないようだ。

そして本命の二の振り。狙いは脛。
姿の見えない相手に対して機動力を削られるのは非常にマズい。
逆に距離を詰めて威力を殺すリスキーな選択もあるが、危険過ぎる。
腕も使えない以上、ここは回避に全力を注ぐ。

尾藤が現れ、刀を振った側とは反対の斜め後ろへ、転がるように回避したい。
今度はただ後ろに下がるでは逃げ切れず、食らってしまう恐れがある。
それに上方向への跳躍を加え、斬撃を上手く飛び越えられれば上々だ。
できることなら背中側に手をついて転倒を防ぎたいが、腕が痺れてうまくいかない可能性もある。
その場合は、文字通り背中から着地し、床を転がって距離を取る。

少なくとも、尾藤は消え続けたまま攻撃はできないようだ。それなら打開策はあるはずだ。

18 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:41:34

         バッ

                   ズザザザザザァァァ―――z____


      「『東雲』選手、危うく回避ィ!
       受け身を取りながら距離を保つゥ!」


壁際に埋め込まれた『スピーカー』から実況の声が響く。
『尾藤』の姿こそ見えないが、斬撃の回避には成功した。
床上をゴロゴロと転がる。全身に衝撃を散らし、辛うじて『怪我』だけはない。


          スゥゥ...
                         「地べたを這いつくばるか、『東雲』ェ!」

刀を構えたまま、姿を現した『尾藤』が吠える。
その刀身は『鏡面仕上』のように、曇り一つない。
刀匠の『執念』さえ伺える作りこみだ。


           「あ、あの刀は!?
            『鏡面仕上げ』です! 互いの顔がピッタリ映り込んでいます!
            実戦に耐え得るだけの『名刀』と思われますが、
            これは後々の加工でしょうか!? 何を思ってこんな作りにしたか!?
            やはり、『新潟』の職人が一生懸命磨き上げたのでしょうか!?」


           「『研鑽』を重ねた『人生』が『鑑』と称えられるように、
            『生涯』を費やした『傑作』もまた、『美しい』――――」


地面の上を這う視線、『東雲』の視界には『床板』に繰り抜かれた『穴』、
『一円玉』程度のサイズの穴にピッタリと設置された『ノズル』が映る。
これは『スモーク』を噴出させる『ギミック』だ。


                    フゥゥ...


またしても『尾藤』の姿が消える。

       


∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□尾□□□□■∴
∴■□□□□□◎□□□□□■∴
∴■□□□□□□\□□□□■∴
∴∴■□□□□□□東□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

19 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:43:29
143: 東雲 忍『ザイオン・トレイン』 :2015/06/07(日) 23:34:21
>>142 質問

・鞘を受け止め痺れた腕は、現在どれほど回復したでしょうか?
・スモークの『ギミック』を起動させるスイッチは、ステージ内に設置されているでしょうか?

144: 『尾藤ブラック』 :2015/06/07(日) 23:37:18
>>143
>・鞘を受け止め痺れた腕は、現在どれほど回復したでしょうか?
痺れはまだ残っている。

>・スモークの『ギミック』を起動させるスイッチは、ステージ内に設置されているでしょうか?
ない。

20東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:43:51
>                         「地べたを這いつくばるか、『東雲』ェ!」

「…最後に立つためなら、何度だって膝をつく覚悟じゃ」

尾藤の言葉に返しつつ、立ち上がろうとする。腕が痺れていても、肘までが動けばそれくらいはできるはずだ。
そして、尾藤の携えた日本刀が見えた。まるで『鏡』のように美しい作りだ。

「………」

以前父親が言っていた、物体というのは光が当たるからこそ、目に見えるのだと。
例えばそこに物体があっても、光をねじ曲げられると、まるでないかのように認識してしまうらしい。
『蜃気楼』というのはそういう現象が関係しているらしい。
可能性の一つはそれだ。尾藤はあの刀を使い、光を反射させ自らの姿を隠している。

もしこの過程が事実だとするなら、一つ問題が生じる。
というのも、尾藤が自らの目に入るはずの光も反射させてしまっているのなら、
消えている最中は、敵はおろか全ての視覚に依存する情報を失ってしまうということだ。
適宜『透明化』を解除する理由として、敵の位置を確認するためとするなら、筋は通る。

が、あくまで予想であり、ここまで決め付けるのはまだ早い。
仮にAが事実だとしても、Bに繋がるとは限らない。それが『スタンド』だ。
いま確かめるべきは、『透明化』にあの刀が関与しているかどうかだろう。
両手はまだ満足には振るえない。この状態で行動を取る必要がある。


まずは人並み外れた膂力で、床を強く踏み抜き、左へとステップで移動。
衝撃による誤作動でスモークが起動すれば御の字だが、そうでなくとも
破壊が起きれば瓦礫や、砂煙が生じるはずだ。それに期待したい。
また仮に尾藤が直線的に、移動した先へと向かってきたなら、
そのコースはいまだ『噴塩』を続けている自分が転がったルートを通過する。
その際は、こちらへと移動する際に音が聞こえると思われる。

21 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:44:26
透明化の正体を『光学迷彩』の一種と推理する『東雲』。
両腕の『痺れ』を考慮し、まずは距離を取る。


            バスンッ!


地面を思いっきり蹴り飛ばし、『左』へステップ移動。
スモークは発生しない。もしも『誤作動』を狙うのであれば、
埋め込まれた機械を『殴りつける』くらいの『精度』は必要になるだろう。
板上からの衝撃は、流石に『アリーナ』も想定してセッティングをしている。
(『移動』が主体の為、『衝撃』が抜ける『踏抜き』は出来なかった。)


               「おのれェ!」

                    「ちょこまかと!」


透明になったまま、『尾藤』の悪態が聞こえてくる。
どうやら、『東雲』のスピードには追いつけないようだ。
そして、『足音』を消す程の『技術』は備えていないようだ。


                    ダダダダダダッ!


        「姿を消した『尾藤』が迫るッ!
         さぁ、『東雲』はどうするッ!?」


足音が接近してくる。
此方に迫ってくるのは解るが、正確な位置は掴み取れない。

ふと、『東雲』は二つの違和感を覚える。
一つは『尾藤』だ。先ほどの二回と異なり、『透明化』の時間が長い。
ほぼ一瞬だった前回と違い、既に『3秒』以上経過している。

もう一つ。
――――『会場』だ。何処か『トゲトゲしい』雰囲気を覚える。

22東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:44:48

>               「おのれェ!」

>                    「ちょこまかと!」


ーーー見えている。『透明化』中もこちらを認識している。となると、光の屈折によるものではないようだ。
視覚以外の情報に頼っている可能性もあるが、ひとまずその線は外していいだろう。
そして『足音』は聞こえる、塩の仕掛けがなくとも敵の移動は近距離でなければ、察知できる。
距離を詰められてしまえば、走る必要などないため奇襲を受けるだろうが。

そしてこの違和感。もし『透明化』のままでも敵をずっと認識できるなら、
解除の必要はない。にも関わらず尾藤が姿を現したなら、呼吸を整える時間が必要だと考えられる。
しかし、今回は透明化の時間が長い。先ほどとは違う条件がある。

また、このどことなく嫌な雰囲気のする会場。学校で目をつけられ、上級生に呼び出され囲まれた時を思い出す。
あの透明化の仕掛けが会場にあるのか、それとも透明化に限らないスタンドの応用か。

「ちぃとばかし待っとれ!」

反撃の手はずは、両腕が完全に回復してからだ。右袖の中に隠したロープを、
スタンドは通常物質に干渉されないという特性を活かし、腕を振るって先端を少し『ザイオン・トレイン』より出す。
そして円を描くように、左方向へと走り出す。そのまま斜め上へと。
(MAPイメージ的には、左へ三マス移動してから斜め上へと二マス移動するように)。
速度で勝るという利点を使わない手はない。
時間を稼ぎつつ、会場の様子を確認し『違和感』の正体を探りたい。

23 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:56:06
スピードという武器を活かし、フィールドを逃げ回る『東雲』。
姿を現す理由を『インターバルの必須』と推理しながら、
両腕の回復を待って逃げ続ける。


                シュルッ


袖に隠した『ロープ』を取り出し、走り続ける。
会場の様子を確認するが、目立った『変化』が見えない。
――――見えない『変化』が確実に起こりつつある。



           「……おい、どーいうことだよ」


                      「逃げてるだけじゃねぇか」


          「つまんねぇぞルーキー!」


                      「テメェ―、何がサムライだよ!」


          「さっさと殴れやヴォケェ!」



            ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャア!!!


痺れを切らした観客達が金網を掴んで揺すり始める。
尋常ではない『民度』の低さだ。思わず、実況も驚いたかマイクを取り落とす。


              ガガッ
                        ピィィ――――z____!!


     「か、観客の皆さん! ど、どうか落ち着いてください!

      し、しかし『尾藤』選手! 中々姿を現しません。
      一体どーしたのでしょうか? 『東雲』選手のスピードに恐れを成したか」


ビビった『森田』は実況席で早口を捲し立てる。

                                スゥゥ


            「誰がビビるか、貴様じゃああるまいし。
             我が愛刀、『鏡花水月』も血の花をお望みだ」


                          ガァァ
                                    ピィー!


                      「貴様の死に顔を、この『やいb ピィー!』に映してやるぞ」


                                             フゥゥ...


マイクからの異音が響く中、『尾藤』が消える。
会場のブーイングは止まらない。
罵詈雑言の響き渡る場内、『東雲』が唯一人そこにいる。
痺れは抜けた。……が、殴るべき『敵』の姿はなく、
遠巻きの大衆達に一方的な罵声を浴びせられる。


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∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□東□□□尾□□□□■∴
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24東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:56:31

「じゃかあしいのう」

外野はどうでもいい。自分はプロレスラーのように、観客を楽しませに来ているのではない。
あくまで相手に打ち勝つため。そしてそれは相手の尾藤も同じことのはずだ。

(…仕込んどるんか?)

見えない変化を感じさせる場内を見て、思う。
隠すのは、自分の身体やその周りのものに限らないということか?
それを確かめてみよう。

即座に足を止め、左手でロープの端を掴みながら、尾藤がいた方向を確認する。
一気に引き抜き、右手でロープの中ほどを握って頭の上に掲げよう。
そしてあたかもカウボーイの投げ縄のごとく、残りの半分を右手で振り回しながら、『噴塩化』。
先ほどの両手に乗った塩をかけるだけでは探知としては使えなかったが、
約50cmの幅に秒速5mmで積もる『塩』。周囲へ振り回せば相当な範囲と量となるだろう。
これを用いて、敵や仕掛けの位置を確認できるか、否か。

ちなみに止まることで、自身の『岩塩化』も少しずつ、及びロープ残りの半分の『岩塩化』は即座に行われるだろう。

25 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:56:53

               ヒュォンッ

                          ヒュォンッ


ビニールロープを振り回し、『塩』を降らせていく『東雲』。
『尾藤』との距離は『5m』前後。その位置までは『塩』が届かない。
無風の室内では『塩』を届ける術はなく、『東雲』の周囲に『塩』が降り積もるのみ。


         「か、替えのマイク! 早く!」


         ピッ
                   ピィー!


     「『東雲』選手、取り出したロープを振り回すゥ!
      何でしょうか、白い『結晶』が降り積もっています。

      『東雲』選手、ここで『名誉挽回』かァ!?」

                               ガッ
                                       ピィー!


                        「やらせねェよぉ!」


                  バビュォッ!


先ほどの『風切り音』、それを認識したのは遅かった。
振り回す『ロープ』の音に紛れてしまい、マトモに聞き取れなかった。
『尾藤』が足を止めた位置、それは先ほど『東雲』が初撃を受けた場所。


            ―――――バキィッ!


                             『鞘』の落ちていた場所だ。


       「直、撃ィィ〜〜〜〜〜ッッ!!

        アバラのへし折れた音です! クリーンヒットォ!
        これは手痛い一撃です!」


                   「不可視故に、人は恐れる。
                    骨の軋る音に初めて、人は理解する――――」


『塩板』を砕いて威力が減じていたのが幸いした。
『実況』と異なり、『骨』の砕けるほどのダメージは受けていない。
――――だが、『呼吸』は乱れ、『激痛』が駆ける。
膝を着いて崩れ落ちそうになるも、辛うじて堪える。


                    スゥゥッ...


距離『2m』。刀を上段に構えた『尾藤』が姿を現す。
『両足甲』、『左手甲』にのみ、『岩塩武装』が完成する――――


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