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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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45葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/25(木) 00:21:59

「…………」

     シャーーー


ペダルをこぎ、タイヤは回る。
ロードバイクに跨り、風になる時間。

      ヒラ   ヒラ

黒いリボンが揺れる。
赤い髪がたなびく。

(最近は、お勉強ばっかりだったし……
  たまには、運動しなきゃね。うん……気持ちいい。)

赤い髪に黒い外套の少女が、
これも真っ赤なロードバイクを乗り回す姿は――

   (……もうちょっと、走ろう。)

                     ――目立つ。

46イザベル『アーキペラゴ』:2016/02/26(金) 00:34:30
>>45

小さな背丈に、豊かな胸で押し上げられた白い水兵服、同じく白いショートパンツ。
夏場であれば惜しげもなく晒されていたであろうへそや手足を包む、黒いインナータイツ。
そんな『いつもの格好』で、イザベル・ドレーク・ノルダーノは湖畔公園を歩いていた。
……その肩には、釣り具。

     「…………ん」

そして、視界の端に赤い色。
顔を向ければ、見知った顔。……そこそこ距離はあるが。

   「おっ、ホフリじゃねェの」


       「おォーーーーーーいッ!!」

              ブン
               ブン

大きく手を振り、大声で遠くの穂風に声をかける。

47葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/26(金) 23:01:31
>>46

「……………」

     「……あっ!」

穂風もまた、その姿を認めた。
ハンドルを切って。

            シャァァーーz__ッ

「……イザベルさんっ!」

声を返しながら、そちらへと、自転車を走らせる。

        キキーッ

   「っと……」

          トトトト……

そして、止める。
危ないので、途中からは押して近づく。

「……イザベルさんっ。」

「あの、こんにちは。お天気、ですね。
 ええと……お魚釣り、ですか、その道具って。」

      (そっか、ここって釣りの名所……だっけ。)

今日の空は、快晴も快晴。
穂風は笑みを浮かべて、視線をイザベルに、それから『釣り具』へと動かす。

48イザベル『アーキペラゴ』:2016/02/26(金) 23:21:09
>>47

    「おー!」

      ブン
       ブン

大きく手を振って、穂風が近寄ってくるのを迎え受ける。

   「Hola! いい天気だな!」

         ニッ

    「まー『魚釣り』だぜ。つってもどっちかっつーと主目的は湖の『水質チョーサ』なんだが」

  「大学は今春休みだからよ。休みの間の研究にな」

そういうことらしかった。
当然だが、この街の湖、川、海はそれぞれ繋がっているので、それぞれ調査することに意味はある。
実際のところは、趣味と実益を兼ねて……というところだが。

      「そういうホフリはサイクリングか? イカした自転車じゃねェの」

49葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/27(土) 00:01:07
>>48

「はいっ。」

    ニコ

笑み返す。
太陽のよう――とは言わずとも、明るい笑み。

「水質、調査――ですか。
 ええと、海のお勉強……研究、ですよね。」

     「……偉い、です。
      お休みまで、その、お勉強、なんて。」

穂風は関心したように、大きく頷く。
自分も『勉強』に追われる立場になったからこそ――か。

それから、自転車に視線を向けて。

「あ……はい、サイクリングです。
 これ……えへ、少し前に、福引で当たって。」

     スリ・・・

「お気に入り……です。
 えと、イザベルさんの釣り竿は、お気に入り……なんですか?」

ロードバイクのサドルを撫でつつ、穂風は聞いてみる。
やはり『愛用の一品』という趣、なのだろうか? 穂風は釣りは詳しくないが。

50イザベル『アーキペラゴ』:2016/02/27(土) 00:17:13
>>49

    「つっても休みの『手慰み』って奴よ。好きでやってることだしな」

  「まっ、アタシが偉いのはもはや言うまでもねェけどっ!」

鼻高々に豊かな胸を張った。

ともあれ、視線を『自転車』の方に向ける。

      「ほー、『福引』でか。
       大したもんじゃねェの!」

穂風の『幸運』に対してでもあるし、自転車の『質』に対しての言葉でもある。

   「アタシか? アタシの方は……『お気に入り』ってほどでもねェかなァ」

     「そこそこ愛着はあるけどな!」

そんなことを言いながら、『釣り具』の準備を始める。
……ここで『釣り』をするつもりらしい。

       「どうせ季節的に大したもん釣れねーけど、見てくか?」

51葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/27(土) 00:19:31
>>50

52葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/27(土) 00:29:22
>>50

「え、えへへ、そうですよねっ!」

      ニコ

胸を張るイザベルに、微笑む穂風。
これは『冗談』だって笑えるくらいの仲だと、思う。

            ・・・そして。

「はい、それに、ええと。
 同じ時に……旅行券も、当たって。
 えへ、それは家にしまってあって、それで……」

          「……」

あの時は――幸運だった。
一日にして手に入れた家、自転車、旅行。

       けれどそれより――

「……」

    「…………」

          「……あっ、えっ、は、はい!
              あの、お邪魔じゃないなら。」

ぼうっとしていた穂風だったが、イザベルの誘いに乗ることとした。
自転車にロックをかけ、イザベルの隣へ。

      (……どんなのが釣れるんだろう。)

                         ・・・見てみよう。

53イザベル『アーキペラゴ』:2016/02/27(土) 00:36:39
>>52

    「旅行券! そりゃまたスゲェな!」

   「まー急に『旅行』とか言われてもピンとこねーだろーけどなァ。
    期限切れる前に使っとけよ?」

『福引』の景品となると、恐らく国内ではあろうが。
それでも『旅行券』となると中々の物だ。
それも、『自転車』と同時になどともなれば!

      「ン」

    「まァマジでなんも釣れねーかもしれねェけど」

ともあれ、『釣り具』の準備を整えて(エサはミミズだ)……

           ヒュンッ

               ポチャンッ

湖に『釣り針』を投げ入れる。
…………そのまま、待機。

      「ほんとは『海』の方が好きなんだけどなー」

   「今日は研究兼ねてこっちだ。『ボウズ』なら『ボウズ』で研究結果にはならァな」

54葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/27(土) 00:56:02
>>53

「ぁう……どこに行こうか、迷ってて……
 この町でだって、まだ、たくさん……
 たくさん……行っていないところがある、から。」

          コク

          「でも……決めなきゃ、ですね。」

町の外のことは、家の中以外、ほとんど知らない。
だから遠くに行こうって思っても、そのイメージは靄のまま。

                   ・・・ともかく。           

           ヒュンッ

               ポチャンッ

(みみずだ……)

湖に沈むみみずと、針。
神妙な面持ちで見守る穂風。

    「海は……お魚、えと、いっぱいですもんね。
      漁師さん、も、海でお魚いっぱい、獲ってますし……」

                   「……ぼうずですか?」
   
お坊さんですか? とでも聞きたげな目で、イザベルを見る穂風。

55イザベル『アーキペラゴ』:2016/02/27(土) 01:08:00
>>54

    「ま、どっか行くってなったらアタシも誘えよ。
     適当に時間空けてついてくからよ」

ニシシと笑いかける。
どうせ暇の多い大学生の身分だ。
ちょっとした旅行程度ならいつでもついていけるだろう。

   「海はなー。波の音聞こえるしなー。
    あと湖に魚がいないわけじゃねーんだが、冬はどーしてもなー……」

『ワカサギ釣り』とかならまた話は違ってくるのだが。
年を越した辺りから釣りは難しくなってくる。
雪が溶ける時期になれば、また釣れるようになるのだろうが……

     「ん? ああ」

  「『ボウズ』っつーのはアレだ。
   魚が一匹も釣れなかった時のことを『ボウズ』っつーんだと」

    「ほれ、『坊さん』ってハゲてんだろ?
     毛が無いのと収穫が無いのをかけてんじゃねェかな」

これについては、語源に詳しいわけでもない。
とはいえ推測は簡単だ。どう考えてもその特徴的な頭部にかけた言葉だ。

……『浮き』が反応する気配は、ひとまず無い。

56葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/27(土) 01:27:27
>>55

「……! は、はいっ!
 あの、あの、ペア旅行券なんです、だからっ……!
 決まったらその、イザベルさんにきっと、お声、かけますのでっ!」

            ニコーーー

さっきよりも大きく、まぶしく笑う穂風。
知らない場所は楽しいけれど、不安もある。

・・・・一緒なら、不安はないし、楽しいのも、もっと楽しい。

         「……え、へへ。」

そして穂風は視線を湖面に戻す。
冷たい水。魚は果たして。

「……波の音、良い音、ですよね。
 それに、砂浜は……その、色んなもの、落ちてますし……」

ビーチ・コーミングは穂風のささやかな趣味の一つと言える。
赤い綺麗な貝殻を見つけたことだってある……

         ・・・

           ・・・

「お坊さん、あ、そうだった……気がします。
 あんまり、見たこと……ない、ですけど……頭は、禿げてたような。」

             「……」

                    じィーーッ

浮きを見つめて、時々イザベルに視線を戻して、また浮きを……そんな穂風。

57イザベル『アーキペラゴ』:2016/02/27(土) 01:44:22
>>56

     「おっ、そりゃ丁度いいやな。
      絶対呼べよ? 約束だかんな?」

少しだけ悪戯っぽい笑みを向ける。
まずもって、この少女がどこに行きたがるのか。
もちろん、どこに行くにしたって喜んでついていく気満々だが。
それにしたって今から楽しみだ。外を知ることは、決して悪い事にはならないはずだ。

   「おう、波の音なら一日中だって聞いてられるぜ、アタシは」

       「まーゴミも落ちてっからその回収もしなきゃだけどな!」

海の清掃ボランティアは、イザベルの習慣のひとつである。
このシーズンは利用客が少ないとはいえ、流れついてくるゴミなどは絶えない。

     「綺麗な物があるし、汚い物もある。海のいいとこだよなァ」

清濁併せ呑む広大さ。そういう考え方だ。
もちろん、海が綺麗であることに越したことはないが。

   「ま、坊主なんざあんま見ねェわな。アタシもあんま見たことねェし」

        「………………」

           「………………」

……『浮き』は、依然動かない。

     「……な? 暇だろ?」

苦笑気味に笑い、そう言った。
忍耐力を要求される釣りは、実のところイザベルとの相性はさほど良くない。
待っている時間を楽しめる『海釣り』が基本なのだ、そもそも。

      「飽きたら言えよー。
       アタシも多分すぐに飽きて帰るからな。
       さっきも言ったが、多分今日も『ボウズ』だからよ」

58葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/27(土) 01:54:15
>>57

「はいっ! ……約束、です。」

     (……学校でも、友達は出来たけど。
      旅行なら……イザベルさんと、行きたい。)

             (海がきれいなところが、良いかな……)

他の友達とイザベルは、何となく違う気がする。
穂風は――『親友』というのは、そういうものかもしれないと思う。

「ここも……ちょっとだけ、
 水の……波の音は、しますよね……
 ゴミは……海と違って、汚いゴミばっかり、だけど。」

大きな大きな湖。

「……これはこれで、いいのかも。
  だけど、けど……私も……海の方が好き、かな……」

           「……」

               「……」

浮きは動かない。
風に揺れたり、することはあっても。

    「……ちょっと、だけ。
     でも、その。まだ……大丈夫です。」

         「もうちょっとだけ……うん、見てますね。」

                   ・・・暇でも、見ていても、動かない。

59イザベル『アーキペラゴ』:2016/02/27(土) 02:04:15
>>58

    「ここは海と繋がってるからなァ」

      「『流れ』のある湖だ。生きてんだよ、ここは」

川があって。
湖があって。
そして、海がある。
そういう『流れ』があるのだ、この場所には。

   「だからっつーわけじゃねェけど……この湖も悪くねェ」

       「良くも悪くも、静かだからな。
        生きてるけど、静かな奴だ。そういうのも悪くねェよ」

ゆらゆらと、『浮き』が風に煽られて少しだけ揺れる。

     「…………」

   「……おう、そっか」

静かに、湖に浮かぶ『浮き』を眺める。
一人だったら、あるいはさっさと飽きて帰ってしまっただろうが……


――――結局この日、『浮き』が沈むことは無かった。

60葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/02/27(土) 02:16:48
>>59

「…………はい。」

        「……」


       サ  ァ ァアン ・ ・ ・


静かに、波が打ち寄せた。
こんな水辺も悪くない――穂風も、そう思った。

      ・・・

         ・・・

            ・・・

     浮きが沈むことより。
         ――この時間を、穂風は楽しむ。

                 二人でいるから、何もなくたって。

61流星 越『バングルス』:2016/03/16(水) 00:06:41

   「〜♪」

栗毛の三つ編みを尾のように垂らした、赤ブチ眼鏡にブレザーの少女。
そんな少女が、鼻歌交じりに湖畔を歩き――――

        コケッ

   「あうっ」

          カシャンッ

――――躓いて転んだ。

   「……まいがっ。痛……くはありませんが」

   「む、眼鏡が……眼鏡眼鏡……」

転んだ拍子に眼鏡が外れてしまったようだ。
手探りで眼鏡を探している……眼鏡は少し離れたところまで滑っていた。

62ココロ『RLP』:2016/03/17(木) 05:17:32
>>61

『水溜ココロ』は『湖畔』を愛している。
どんな場所より愛している。
自然が素敵で、人が少なくて。
それに、ここではたくさん素敵なことがあったから。

だから今日も――湖畔にいる。

「ひゃっ…………!?」

      ビクッ

眼の前に眼鏡が飛んできた。


「えっ……!?」

(な、何で眼鏡が? ……あ、あの子がこけたんだわ!)

拾う。

(い、いきなり……素敵でもなんでもないわね。
 ……そ、そういう考え方って酷いんじゃないかしら。
 私がどうだとかじゃあなくて……あの子を心配すべきよ。そうよ。)

茶髪はセミロング、瞳の色は緑色。
スレンダーな体型に――美人、と言って差支えの無い顔つき。
 
              ・・・もっとも、表情は妙にネガティブだが。

    コツ コツ

歩み寄る。
そして、しゃがみ込む。

「あっ……貴女……大丈夫かしら?
 いえごめんなさい、大丈夫ではないのでしょうけれど、ええ……」

              「こ、これ。眼鏡……よ。
               た、立てるかしら……?」

                            ・・・眼鏡を、差し出す。

63流星 越『バングルス』:2016/03/17(木) 22:48:15
>>62

   「むむむ……」

       ジッ…

眉根を寄せ、睨むように声の方を見る。
ガンを飛ばしている――――というわけではもちろんなく。
単純に、眼鏡を落としたことで視界がぼやけ、自然と目つきが鋭くなってしまっているだけである。
ともあれどうにか差し出された眼鏡を視認したのか、手を伸ばして眼鏡を受け取る。

   「……これはこれは、失礼しました」

          スチャッ

そしてゆっくりと眼鏡をかければ、打って変わって能面のように無表情。
にこりともせず、居住まいを正して三つ指を着いた。
…………三つ指をついて、深々と頭を下げた。正座で。

        ぺこぉーっ

   「ご親切にどうもありがとうございます。
    この御恩は決して忘れません」

大げさに礼を言って、頭を上げて。

   「というわけで早速恩返しをいたしますが――――」

      スッ
           スッ

   「――――決して中を覗きませぬよう……ぴしゃっ」

そのままパントマイムで戸を閉めた。戸を閉める擬音付きだ。口頭だが。
あまりにも雑だが日本の有名な童話の有名なワンシーンである。

64ココロ『RLP』:2016/03/17(木) 22:57:42
>>63

「…………」

      タジ

(に、睨まれているわ……な、なんで?
 あっ、眼鏡をかけていないからかしら?)

           (目を細めているだけね、そ、そりゃあそうでしょう。)

睨まれるいわれもない。
安堵しかけたその時――

「えっ……!?」

まさか三つ指を着かれるとは――そこまでされることか?
しかし、厚意とは無碍にしないもの。

(ど、ど……どうしましょう……?
 恩返し……な、何をするつもりなのかしら……)

       「そ、そんな、ねえ私恩なんて……
        いえ、貴女がそういうのだし、受け――」

  「えっ」

突然目の前で繰り広げられた手の動き――パントマイムなのか?
ココロは判断に困り、周囲を少しだけ見回して。

(あっ……! つ、つるの……恩返しなのね!?)

         フイ

「わ、分かったわ。ええ、見ないわ、私。」

(こ、ここは乗っておいた方がいいわよねきっと……)

そういうわけで、『戸の向こう』を見ないように、目を逸らすココロだ。

              「……」

                   「……な、何をするのかしら?」

65流星 越『バングルス』:2016/03/17(木) 23:27:43
>>64

エア戸の裏で後ろを向き、持っていたカバンの中をまさぐり始めた。

         ゴソゴソ

   「ひとつ積んでは父のため……ひとつ積んでは母のため……」

機織り歌的なニュアンスで歌っているがこれは死者が賽の河原で石を積む奴だ。

   「……はて、何をするのかと申されれば……」

   「げへへ、悪いようにはしねぇからちょっと待ってなねえちゃん」

   「……って感じなので少々お待ちくださいまし」

            ゴソゴソ

平たいトーンで悪い人っぽいセリフを吐きつつ。
手元で何やらゴソゴソやっている。

   「ところでお姉さん、甘いのとしょっぱいのでしたらどちらがお好きですか?」

66ココロ『RLP』:2016/03/17(木) 23:41:33
>>65

「……………」

     ゴクリ

     (ど、どうしましょう……
       な、何かおかしい気がするわ……
         で、でも、せっかく恩返しと、言っているのだし……)

何か怪しげな雰囲気だが多分問題はない……
ないのだろうか? ないと思いたい。

「えっ、あ……え、ええ。
 悪いようには……ねえ、しないのね……?」

         「……」

(ほ、本当に大丈夫なの? こ、この子……いえ!
 よくないわよ、そんな風に疑うのは……きっと、少し……)

           (ど、独特な世界観の持ち主なのよ……
            な、なんて。私、失礼なことを考えているかしら……)

独特な流星のペースに呑まれつつ――

「……えっ? あっ、ご、ごめんなさい。 
 あ……甘いのと、しょっぱいの……? た、食べ物?」

    「どちらかというと……甘いのが、好きだけれど……?」

                   オドオド

あまりよくない考えをしていたところに声をかけられおどおどするココロ。
指輪をはめた十指を絡めて、様子をうかがうように答えるのだ。

67流星 越『バングルス』:2016/03/17(木) 23:54:37
>>66

   「なるほど、甘いものがお好きと」

   「では……」

      クルッ

        スッ

   「お礼の品です。お納めください」

エア戸を少しだけ開ける仕草をして、隙間から差し出す感じの動作で物を差し出す。
差し出したのは……いわゆる『ぽち袋』だ。
折り紙製の……今折ったのだろうか。折り鶴が組み込まれた、そこそこ本格的な奴である。
…………なんか不自然に盛り上がっているので、中に何かが入っていることが予想された。

   「しかしお姉さん。決してこの袋を開けませんよう……」

   「――――とかは言いませんのでお納めくださいお代官様。金の菓子でございますげへへ」

世界観が激しくブレブレだ。
なおこの間常に無表情である。

68ココロ『RLP』:2016/03/18(金) 00:10:02
>>67

(芸が細かいわね……演劇部か何かなのかしら……?)

      スッ

「……あっ!」

差し出された折り紙――いや、ポチ袋。
ココロは吊り気味の目を、少しだけ丸くする。

「折り鶴――これ、貴女が折ったのかしら?
 器用なのね……な、中を……ええ、み、見てもいいのね……?」

          (お、お代官様……?
           いえ、ユーモアなんだわ、彼女の。)

   スッ

やや困惑しつつも、それを受け取る。

「ありがとう……
 う、うふふ、開けてみるわね。」

       スッ

袋を、そっと開封する。
中には……何が入っているのだろうか?

         (あ、甘い物って言っていたけれど。
           この大きさだし……飴玉とかかしら……?)

69流星 越『バングルス』:2016/03/18(金) 00:37:00
>>68

   「一人遊びにおいては並々ならぬ自信があります。ふふーん」

……そういうことらしかった。

ともあれ『ぽち袋』を開けると……中に入っていたのは、やはりというか包装された『飴玉』だ。
駄菓子屋で売ってる感じの物である。
色は黄色い。……はちみつ飴か何かだろうか。

   「さて、よっこいしょういちっと」

        パンパン

その間に流星は立ち上がり、膝や裾の汚れを払っていた。

   「あ、今のは戦後に終戦を知らずにグアムに潜伏していた残留日本兵、横井庄一氏にかけた爆笑ギャグです」

   「……ともあれ、改めましてありがとうございました。
    眼鏡が無いとおうちに帰るのも危ないぐらいなので、助かりました」

               ペコッ

そのまま、(間にいらん解説を挟みつつ)改めて一礼した。

70ココロ『RLP』:2016/03/18(金) 00:49:12
>>69

「そっ、そうなのね……」

(それって素直に褒めていいのかしら……
 自虐で言っているんじゃあ……い、良いわよね?)

        「でも、本当に……
          綺麗に折れているわ、これ……」

ココロも指先の器用さには、自信はあるけれど。
折り紙はここまでは出来ない。

     カサ

          コロリ

掌に飴玉を転がす。

(あ……やっぱり飴玉だわ。これ……べっこう飴?
  いえ、それにしては色が薄目だし……あっ、はちみつかしら?)

「ありがとう、い、いただくわね。」

              スル   パク

包装を解いて、口に運ぶ。

(……知らない子にもらったお菓子……いえ。
 そんな、怪しい物を食べさせたりすること、ないわ……ないのよ。)

           「あっ、そ、そうなの……」

ギャグの解説には、少し反応に困ったが。

「あっ、いいえ、気にしなくていいのよ。
 いえ、気にしてはいないのかもしれないけれど……
 わ、私、そんな……特別なことをしたわけでは、ないもの。」

           「貴女が助かったなら、よ、よかったわ。」

もちろん、良い事はしたかな、という自覚はある。
けれど、あまり深く感謝されるのは、なんだか少し、くすぐったい。

71流星 越『バングルス』:2016/03/18(金) 01:00:41
>>70

色は黄色いので、金の菓子と言えば金の菓子と言えなくもない飴玉であった。甘い。

   「いえいえ、その些細な気遣いが特別でないからこそ、私はこんなにも嬉しいのです」

胸に手を当ててそう語る顔は、そう嬉しそうではなかったが。
常に能面を張り付けたような無表情なので、単純に表情の変化に乏しいのだろう。

   「あ、申し遅れました。
    私は流星越(ながれぼし・えつ)と申します」

   「ちょっとした親切に対するこの喜び、さてどう表現したものでしょう。
    余りある喜びエネルギーがオーバーヒートを起こしてしまいそうなぐらいでして」

   「なにかこう……都合よくなにかに困ってらっしゃったりしませんでしょうか」

かくん、と小首を傾げ、尋ねた。

72ココロ『RLP』:2016/03/18(金) 01:18:24
>>71

(甘いわね……やっぱり、蜂蜜なのかしら?)

          コロ

口内で飴を転がしつつ。

「そ、そう……? 
 いえ、貴女がそう言うのだし……
 う、嬉しいなら、良かったと思うわ。私も。」

    コク

頷くココロ。
人に喜ばれるのは――いいことだ。とても。

「流星、さん……素敵な名前ね。
 私はココロ、水溜 意(みずたまり こころ)って言うわ。」

          「……よろしくお願いね。
           いえ、別に何をするわけでもないけれど……」

温和な笑みを浮かべて、自己紹介を返して――

「こ、困っていること……?
 そ、そんな、私、そこまで……いろいろしてもらうなんて悪いわ。
 それにご、ごめんなさい、ちょっと、すぐには……思いつかないもの。」

        「ど、どうしましょうかしら。
         何かあれば、いいのだけれど……」

困っていることがあるのが本当に良い事かはさておき。
今のココロは、珍しく――あまり悩みとかはないタイミングなのだ。

              (どうしましょう、な、何か思いつかなくちゃあ……)

73流星 越『バングルス』:2016/03/18(金) 01:30:49
>>72

   「水溜、意……」

口の中でその言葉を確かめるように反芻し、こくりと頷く。

   「そちらも素敵なお名前ですね。
    以後お見知りおきますので、水溜さんもよろしければ以後お見知りおきを」

スカートの裾をつまんで右足を下げ、軽く腰を落とした。
よくお嬢様とかがマンガでやる挨拶だ。

   「むむむ、悩みが無いのは素晴らしい事ですが……
    こう……なにか……欲しいものとかないのでしょうか」

   「力とか」

   「世界の半分とか」

   「新車とか」

どちらかと言えば悪魔のささやき系のラインナップであった。

   「まぁその辺は欲しいと言われても流石に出せませんし、もはや腹を切って詫びるしかない案件ですが」

   「ともあれ特に困ったことが無いのであれば仕方ありません……感謝の波動を伝えましょう。ぬぅん」

そう言って、無表情のまま顔の前で手をうねうねし始めた。
思念波を飛ばしているジェスチャーだろうか。
傍から見てあんまり感謝の気持ちを飛ばしてるっぽい感じではない。

74ココロ『RLP』:2016/03/18(金) 01:50:52
>>73

「あっ、ありがとう……
 ええ、ぜひお見知りおきさせていただくわ。」

          ペコ・・

小さくお辞儀する。

(な、何だかお上品な挨拶をしているわ……
 これも……冗談なのかしら? それともお嬢様なのかしら?)

その辺りは謎だが、まあいい。
挨拶は大事だ・・・・

「力は……私は大丈夫、必要ないわ。
 せ、世界の半分なんて、もらったって、こ、困るし……」

        「車も別に……免許もまだだもの。
         はっ、腹切りなんてもっと困るわ……!」

  アセ
          アセ

『流星』の悪魔のささやきにあせるココロ。
くれると言われても困るラインナップではないか・・・

          そして。

「えっ…………?」

「か、感謝……そ、そう、感謝の波動。」

                ジリ

「こ、心なしか……ええ、心なしか感じるわ、何か……か、感謝みたいな……
 ご、ごめんなさい本当、感謝、ええ、今こっちに送られてきているのよね、波動が……」

                      (ど、どうすればいいの……!?)

75流星 越『バングルス』:2016/03/18(金) 02:08:50
>>74

   「……………………………」

                    ピタッ

しばらく謎の波動を飛ばしていたのだが、ふとその動きをピタリと止める。
顔の前でうねうねさせていた手は下げられ、心なしか、しゅんとしたように俯いた。

   「……すみません。水溜さんを困らせていますね」

   「ついつい舞い上がってしまいました。
    悪い癖だとは、思っているのですが……」

冗談めかした物言いでないのは、真実申し訳なく思っているからだろう。
人に優しくされるというのは……優しくしてくれる人がいるというのは、とても素晴らしく喜ばしい事だが。
喜びのあまり暴走してしまった、という自覚はあるらしい。

   「ご迷惑、おかけしました」

            ペコッ

深々と、頭を下げる。

76ココロ『RLP』:2016/03/18(金) 02:24:44
>>75

「あっ……い、いえ、そんな……
 私、いいえ、困ってなんか……いえ。」

          「……」

(こ、困ってないなんて……
 いくら何でも都合のよすぎる嘘よね。
 フォローのために言ったって、言ってるような物よ……)

ココロは少し俯く。困ったのは事実だ。
だけれど。

「大丈夫……大丈夫よ。
 私、何も……気にしてはいないもの。」

    「ちょ、ちょっと……その、分からなかったけれど。
      でも、貴女が……頭を下げるようなことじゃあ、ないわ。」

              コク


それほど、本気で心の底から困ったわけじゃあない。
ちょっと対応に、悩んだだけの事。

「あまり、そう、貴女も……気にしないでちょうだいね、ええ。」

顔を上げて欲しいと、そう思った。

(悩むのも……よく考えたら失礼な話だわ……
 う、動きは良くわからないけれど、感謝と言っているんだもの……)

            (……で、でも、よく分からなかったのは事実よね。)

77流星 越『バングルス』:2016/03/18(金) 02:46:49
>>76

   「………………」

噛み締めるように、深く俯いて。

   「……わかりました」

相変わらずの無表情で、顔を上げた。

   「では、この辺りは次回への課題として持ち帰り検討させていただきましょう」

   「次に会った時、完膚なきまでに水溜さんを喜ばせてご覧に入れます」

   「ですので……」

少し、口ごもる。
視線を脇に逸らし、しかし意を決したようにココロを見据えて。

   「……また今度、お会いしましょう」

……なんてことのないセリフ。
しかし、流星にとっては勇気のいる言葉。縁を繋いでおく言葉。

78ココロ『RLP』:2016/03/18(金) 02:58:45
>>77

「次回……ええ、また今度会ったら……
 え、偉そうな……本当に、偉そうな言い方になるけれど……」

          「……私、楽しみにしているわ。」

   コク

ココロは頷いて、微笑む。
この場所は――湖畔は素晴らしい場所だ。

ここで会う人も。
ここで紡ぐ絆も。

「私は……この湖畔に、よくいるの。
 だから、またここで……ええ、会いましょう、流星さん。」

真っ直ぐ流星を見て。
それから――時計を見て。

(あっ……ちょ、ちょっと話し込んでしまったかしら……)

        「そ……それじゃあ。
         私……そろそろ行くわね。」

                「じゃあ……『また』」

                    ニコ・・・

小さく笑んでから――ココロは、その場を去る。

79流星 越『バングルス』:2016/03/18(金) 04:22:07
>>78

   「……!」

   「ええ、首を洗って待っていてくださいね」

心なしか、本当に心なしか、明るい表情を見せて。

   「また来ます。
    またいつか。
    また会える日を、お楽しみに」

              ペコッ

謝罪でも感謝でもなく、恭しくパフォーマーのように一礼する。
そして顔を上げて、去り行くココロを手を振って見送り。
しばらくそうして……ココロの姿が見えなくなってから、栗毛の少女は鼻歌交じりに去って行った。

80ジェイク『一般人』:2016/03/20(日) 23:56:20
男がいた。
寒空の下、男がいた。
日も暮れ始めた時間、男が一人だけいた。

81ココロ『RLP』:2016/03/21(月) 00:55:18
>>80

「あ――」

    (あ、あの人……そうよね。
      前にも、ここで……ええ、ジェイクさんだわ!)

ココロはその男を知っている。
その男の『炎』を知っている。

「……」

(ど、どう、しましょう――話しかけるべきかしら?
 お、お邪魔かしらね……? 別に、仲良しというわけでも、無いし――)

          (でも……よ、良かった。
            生きて……また会えたのだもの。)


   ジ ィ ・ ・ ・ ・

けれど、声を掛けるかは迷っていて、少し離れて見ている。
ジェイクにはその視線が伝わるかもしれない――伝わらないかもしれない。

                     ・・・・どうだろう?

82ジェイク『一般人』:2016/03/21(月) 01:05:16
>>81

「何を見ている。」

男は空を見上げた。
美しい空には星が浮かんでいる。

「俺は見世物ではない。」

「お前は見世物か?」

83ココロ『RLP』:2016/03/21(月) 01:09:33
>>82

「あっ……ご、ごめんなさい。
 話しかけて良いのか……わ、分からなくて。」

            「お……お久しぶり。」

   トコ

少しだけ近づく。
距離感は、大事な物だから。

「いいえ、見世物では……ないわ。
 貴方も……それに、ええ、私もよ。」

           コク

頷いて返す。
見られることには慣れたけれど、見られるための人生じゃない。

                ・・・空を見る。

「……」

「ほ……星を、見ていたのかしら?
 ごめんなさい、どうでもいいことかも、しれないけれど……」

きれいな星だ。
視線は、空に向いたまま、ジェイクに問う。

84ジェイク『一般人』:2016/03/21(月) 01:28:58
>>83

「……お前か。」

さして驚いた様子もない。
男の瞳がココロを見つめる。

寒い夜だというのに男は袖のないシャツを着ているだけだ。

「星?」

「そうだな。見ていた。」

「星を空を」

85ココロ『RLP』:2016/03/21(月) 01:38:25
>>84

「え、ええ……私よ、ジェイクさん。こんばんは。」

        コクリ

頷くココロ。
覚えられては、いたらしい。

          ・・・それは良い事だ。

(その格好、寒くないのかしら……なんて。
 き、聞いちゃあ、よくないわよね。服を買えないのかもしれないし……)

         (そっ、それも失礼な妄想よね……
          それにしてもいくら何でも寒そうだわ……)

ジェイクは見るからに『普通の暮らし』とは思えない。
袖の無いシャツは、あの時と同じものだろうか――?

「星……空。
 ええ、そうよね、空も……きれいだもの。」

          「……」

    ヒュオ
         オオ ・ ・ ・

春になりつつある、風が吹いた。
まだまだ肌寒い風。ジェイクのあまりに涼し気な服装。
 
  「……さ、寒いわね。」
 
       「かっ、懐炉を持っているの、私。
        ジェイクさん……つ、使うかしら……?」  

                       ・・・そんな、余計なお世話の気分になった。

86ジェイク『一般人』:2016/03/21(月) 02:00:04
>>85

こきりと首を鳴らす。
長いヒゲが顔の動きと連動して揺れる。

「お前、星は好きか?」

「俺にはよくわからない。」

そういってランタンに火をともした。
橙の光が夜の湖畔を照らす。

「懐炉。」

「なんだそれは。」

87ココロ『RLP』:2016/03/21(月) 02:14:59
>>86

「星……ええ、好きだわ。
 特に――この湖畔から見る星は、好き。」

               「……とても、綺麗だから。」

目を細める。
ランタンの放つ光は――幻想的だ。湖に、よく調和する。

                   ・・・そして。


「えっ」

(あっ、そ、そうよね。
 懐炉は外国には……ないのかしら?
 ジェイクさんが個人的に知らないだけかしら……)

           (どちらでもいいわよね、ええ。)

「あ、ええ、ごめんなさい。
 懐炉は……温かくなる、袋……そう、袋よ。」

                  「こ、これなのだけれど……」

     ゴソ

かばんの中から、未開封の携帯懐炉を一つ取り出し、恐る恐る見せる。
貼るタイプではなく、開ければすぐ使えるやつだ。

          (よ、余計なお世話……だったかしら?)

88ジェイク『一般人』:2016/03/21(月) 02:42:48
>>87

「そうか。」

「お前はそうなんだな。」

ココロから視線を外す。
興味が失せたような、感情のない表情。
また、首を鳴らす。
ランタンを持ち上げた。

「俺には分からない。」

「なにもな。」

そういってココロへと近づいてくる。
一歩ずつゆっくり。
確かに地面を踏みしめながら。

「なんだこれは。」

興味を示しているのだろうか。

89ココロ『RLP』:2016/03/21(月) 02:50:28
>>88

「 ・ ・ ・ ・ え、ええ。」

       タジ

           「私は……そうなの。」


(な、何か……気に障るような、答えだったのかしら。
 この人は……普通の人とは、違う世界にいる。良い悪いとかじゃあなく……)

思わず、少したじろぐココロ。
とはいえ――初対面でもない。

              ザリ

「…………」

ランタンに視線を誘導されつつ、一歩だけ、下がって。
彼の独白への、気の利いた答えは浮かばない。

ココロは強くない。

「これが……か、懐炉よ。携帯懐炉。
 開けるから、さ、触ってみてくれてもいいわ。懐炉を……」

               ピリリ

妙なふくろう?のキャラクターの絵が描かれた懐炉を開ける。
(※星見町マイナーゆるキャラ『あたたかくしろう』。)

          「す、少しは……寒さがマシになると思うの。」

                          ・・・中身を、手渡す。

90ジェイク『一般人』:2016/03/21(月) 03:13:40
>>89

「妹もそうだった……」

「だが、俺には分からない。」

「なにもかも。」

ランタンが男を照らす。
明るい光の中にあって、この男は暗い。
いや、光というものの中にあるからこそ、不気味だ。

「懐炉……」

復唱し懐炉を受け取る。
傷だらけの手のひらの上に懐炉が乗る。
懐炉が酷く小さく感じる。

「ほう……」

「まるで羊だな……」

懐炉を握る。
手に擦り付ける様に片手で懐炉を弄ぶ。
温かみを感じているのだろうか。

91ココロ『RLP』:2016/03/21(月) 03:39:20
>>90

「……………」

懐炉を渡した手を、ゆっくりと引き戻す。

「……私には。ごめんなさい。
 貴方の思いは……分からない事、だけれど――」

           「……」

ジェイクの過去は――きっとココロには知り切れない。
掘りだせないほど大きく、持ち上げられないほど、重厚なのだろう。

             ・・・ココロの腕はまだまだ、細い。


「その懐炉は……
 貴方に、あげるわ。」

「邪魔だったら……ご、ごめんなさい。」

けれど。
懐炉くらいの温かみは、渡せる。

        「これも……わ、私の、自己満足……だから。」

                        ニコ ・ ・ ・

                   ココロは、ゆっくりと笑みを作る。

92ジェイク『一般人』:2016/03/22(火) 00:17:31
>>91

男が片手で持ったランタン。
炎が揺れる。
男がランタンを揺らしているわけではないのに。
いや、揺れているのかもしれない。
目に見えないところで、揺れているのかもしれない。

「はは。」

男が笑う。
ヒゲまみれの顔がいささか不気味だ。

「これは、尽きるだろう。」

「これは、滅びるだろう。」

「これは、生まれた小鹿より脆弱だ。」

そういって、ランタンを地面に置く。

「なぁ?」

「そうだろう?」

ビリっと嫌な音が懐炉からする。
男は両の手で懐炉を掴んでいる。

「人の手で、こうも簡単に。」

嫌な音は続く。
男はなおも懐炉を破こうとしている。

93ココロ『RLP』:2016/03/22(火) 00:36:27
>>92

揺れるランタン――いや、炎?
手は動いていないように、見えるのに。

何が揺れているのだろう。
ココロは視線を揺らしながら。

         ビクッ

「……ど、どうしたの……」

笑い、というよりその不気味さに少しだけ、震える。
彼は悪人ではない。きっとそうだが――

「そ、それは……そうよ。
 数時間もしたら、あ、温かくもなくなるし……」

           「い、いえ」

   「そ、そうじゃない……
    のかしら……ね、ねえ。貴方何を――」

             ビリッ

懐炉から聞こえた音に、思わず目をむく。
破るのか……なぜ?

「そっ、それはっ……破れるかも、し、しれないわ、で、で、でも……」

                    オロ

            「な、何で……!?
             き、気に入らなかったのなら謝るわ、でも」

     オロ    オロ

                   「な、何も、破ることは……
                    あ、危ないわ、中身は凄く熱いのよ……!」

怒りとか、そういうのじゃあなくて――――この心の色は、困惑だ。

94ジェイク『一般人』:2016/03/22(火) 00:59:14
>>93

「俺は自分の行いを自己満足と言い切れるお前を評価しよう。」

男の目の中に何かが揺れる。
存在しないはずの物。
それはなんなんのか。
深い闇のようであり、あのランタンの炎のように瞳の中で
男の中で蠢いているものは。

「気に食わないことはない。お前に対してはな。」

「お前は昔を思い出させる。」

「だが同時に俺は思う。」

「俺もいずれ滅ぶ。なら、俺はどう歩けばいい?」

ギュッゥゥゥゥゥゥゥゥ
男は両の手で懐炉を包んだ。
懐炉は破れたのか破れていないのか。
それは男が知っていることだ。
懐炉の姿が見えない以上、男の体と懐炉だけが知っている。

「ここの水は飲んではいけない。」

「この世にはスタンドというものがある。」

「これの中身は熱い。」

「スタンドは後天的に得ることができることがある。」

暗唱する。
顔を地面に向けながら。男の帽子が頭から滑り落ち、地面に落ちる。

「俺もいずれ滅びる。獣よりは長く、人よりは短く。」

「俺は掴んだはずだったが、それは零れた。いともたやすく。」

「光が消えた。」

95ココロ『RLP』:2016/03/22(火) 01:13:06
>>94

「……む、昔……?」

      「わ、私は。私は……」

              ギュッゥゥゥゥゥゥゥゥ


     「……!」

          ビク

男の行いは、ココロに目を細めさせる。
懐炉はそう簡単には、破れないだろうけど――それでも。

              ・・・一歩下がる。

「ほ、滅ぶだなんて……」

「わ……私だって……いつかは滅ぶわ……
 け、けれど。けれど……貴方のことは、分からないけれど……」

彼の知ること。
そこから考えること。
それはココロには、完全には――分からないけれど。

           ソロ ・・・

               しゃがみ込む。


「……分からないけれど。
 き、消えた光というのは……私には。」

        「けれど……」

ココロは喋るのは、得意ではない。帽子を拾う、拒まれないなら。

「新しい光は……きっと、見つかると、思うわ。私……
 だって。だって私は……見つけられたもの、この町で。いくつも……」
 
ココロの生命の音は、たった17年しか続いてはいない。
それでも、これだけたくさん、きらきらしたものをつかめたんだから。

                        ・・・だから。

96ジェイク『一般人』:2016/03/22(火) 01:31:23
>>95

「昔には獣と泥の中で輝くガラス玉がいた。」

硬い声であった。冷たくもあった。
しかし、突き放しているわけでもない。

「……」

男は、静かにココロの言葉を聞いていた。
ズドンと男が座る。
ランタンの光が男を照らす。
その顔に表情らしいものはない。
しかし背を丸め懐炉を圧縮するように包む男の姿はひどく小さい。
巨体であるはずなのに。

「……俺は光を追ってここへと来た。」

「お前は、いつか見た光を覚えているか?」

「お前は、光の光景を掴んだか?」

「俺は新たな光を掴めるか?」

また、男は口を閉ざす。
それから両手を開いた。
右手の上に被さった左手がのけられる。
懐炉は破られていなかった。今にも中身が出てきそうなほどの状態であるが。

「見ろ。俺はこれを破る気でいた。」

「しかし事実は違う。なら、俺もそうなると信じても構わんだろう。」

「光を追う。もう一度。」

「……なぁ?お前はあの日の光に近づけたか。」

97ココロ『RLP』:2016/03/22(火) 01:44:20
>>96

「……………」

ココロは沈黙する。
ジェイクの心を透かせるほど、言葉が上手く紡げないから。

            ・・・顔を見る。

(やっぱりこの人は…………
 悪い人なんかじゃあ、無い。それは分かっているし――)

          (獣――いいえ、きっと。そうよ。
           『獣』みたいに、純粋な……人なんだわ。)

獣とは粗暴なだけじゃない。
獣とは悪い物じゃない。

むしろ――『気高い』『純粋な』面も、獣にはある。


「私は……あの時の光とは、違うものかも……しれないけれど。
 けれど掴んだわ。絶対に……ええ。間違いなく、大きな光を。
 それを手放さなかったら……きっと、私、明るい未来になれる――」

              「……あのお星さまより、綺麗で、大きな光!」

        クイ

視線を空に向ける。
春が近づいても、まだ夜は早い。星が既に見え始めていて。

「貴方も……きっと、掴めると……思うの。
 だって……だって、私が近付いて掴めたのだもの。だから……!」

           「……」

                   「……ご、ごめんなさい。
                     少し、あ、熱くなってしまったわね……」

98ジェイク『一般人』:2016/03/22(火) 01:59:13
>>97

「そうか。」

男はただ一言、そう告げた。
懐炉をズボンのポケットに入れ、ランタンを愛おしそうに撫でた。
傾けられたり揺すられたり、ランタンが動けば炎も動く。

「一羽のツバメが来ても夏にはならないし、一日で夏になることもない。
         このように、一日もしくは短い時間で人は幸福にも幸運にもなりはしない。」

「そういった者がいた。」

立ち上がる。
手にはランタン。もう片方の手をココロへと伸ばす。
その先には拾われた帽子。

「待て、しかして希望せよ。」

「そういった者もいる。」

ランタンを顔の横に持ってくる男。
空を見上げ、星を見つめている。
その顔は柔らかな笑みを浮かべていた。
不気味な浮浪者の男ではなく、そこにジェイコブ・ケイディ・ワイアットの名を持つ青年がいる。

「なら俺は言おう。」

「深い闇の中でこそ、炎はより色濃く輝く。」

「礼を言うぞ。水溜 意。」

99ココロ『RLP』:2016/03/22(火) 02:11:54
>>98

「……ええ。きっと。」

      コク

頷いて、返した。

       「……」

               ス

帽子を、返す。

ジェイクの言葉は難解に聞こえるけれど。
        ・・・意味があると分かるから、耳を傾ける。


「…………私は。」

「希望はきっと、あると思っているわ。
 自分では、分からないけれど……色んな、ところに。」

      ス

立ち上がる。
そして、少しだけ、笑みを浮かべて。

       「き、気にしないでちょうだいね。
         ……お礼を言われるようなこと、していないけれど。」

                   「でも……お役に立てたなら、良かったわ。」

ココロはそう言うと、空を少し見て、時計を見て。

「あ……わ、私、そろそろ行かなくちゃあ。
 …………また、会いましょう。ジェイクさん。」

              コク

もう一度頷いて。
獣のような男でも――彼は、ココロにとって、悪い人じゃあないから。

                         ・・・立ち去る。

100ジェイク『一般人』:2016/03/22(火) 02:19:35
>>99

「あぁ、また会おう。」

「俺に明日が来るのなら。」

帽子を胸に当てる男。
にぃっと笑った顔は不気味な浮浪者のそれであった。

「エレアノーラ。」

「俺を許せとは言わない。」

「しかし、待て。」

沈黙。
まるで祈るかのように。

そうしていつの間にか、男はどこかへと消えていった。

101稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/02(土) 01:26:09

月日は巡って、4月。
自然公園の――名前通りに、自然にあふれた散歩道。

       ハラ


          リ


「…………えひ。」

      (春ですよー…………
        僕にはあんま、関係ないけど……)


ポケットの中にゲーム機の重み。
黒髪に青い眼鏡――掌に落ちた花びらと、同じ色の瞳。

            ・・・立ち止まって、空を覆う桜色を見上げる。

102朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2016/04/07(木) 22:10:53
>>101

自然公園、その春の香りが満ち溢れ桜の花弁が道沿いを桃色に染める。

 小鳥の囀りが時に響き、麗らかな陽気さと時折吹く穏やかな風が春を祝うかのようだ。

――だが。


 「うおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!
 パワフルっス! パワフルっス!! パワフルに走るっスよぉぉぉ!!
権三郎!! 3・2・1 せ〜のっ! パワフルっスぅううううううう!!!」

 『パウゥッ!!』

 パワフルっス! 春一番が吹いたりしたりしてもパワフルなんっス!!
愛犬であり我が相棒である権三郎と共にジョギングっス! ランニングっス!!
 悪の組織の活動にも健康面でもスタンド訓練の為にも、まずは体力錬成!
権三郎と共に息が切れるまで走るっスーーーーーー!!!

 
 「はぁあああああああ!! ぅお! とぉーーーーっス!!」

 キキ――ィ!  クルクルクル シュッ タン!!

 危うく一人の女性(稗田)とぶつかりかけたっス!

何とか手前でブレーキしつつ華麗なポーズと共に横で立ち止まるっス!!

 「おはようございますっス!!」

 『パウッゥン!!』

 シャキーン!!

 道行く人々に、ジョギング中は挨拶が大事っス!
元気に挨拶すると自然とみんな笑顔が浮かぶっス!
 悪の組織の活動と共にご近所の皆さんとの交流を深めるっス!!

104稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/07(木) 23:49:59
>>102

         ビクゥゥッ・・・!

「なっ…………うわっ!」

響き渡るパワフルボイス――からの衝突未遂、華麗なポーズ。
このあまりの『衝撃』に目を見開いた恋姫だったが・・・

         「……」

イラッ

        イライライラ

(なんだよこいつマジキチかよ……スポ根読みすぎか……?
 ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ……犬までうるせえし……最悪のBGMだな……)

      (クソゲーでもBGMだけは良いってのによぉ……)

            イライラ

少しずつ、じめじめと、目を細めていく。
犬ニは絶対に目を合わせない。

「……よう。横に立つなよ…………僕まで仲間だと思われるから。えひ。」

              「こんな早朝から……
               深夜テンションとか……
               変則的寝てないアピか……?」

        ジリ

                言葉通りに、少しばかり離れる。
                 その表情は……かなり陰気な笑みだ。

105朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/08(金) 00:01:40
>>104

>……よう。横に立つなよ…………僕まで仲間だと思われるから。えひ。

「むっ! それは失礼したっス! はぁぁぁぁぁ〜〜〜おっス!」

 シュタッと真正面に立つっス! これでちゃんと顔を見て挨拶出来るっス!

「改めて! おはようっス!! 朝山と言いますっス! 14っス!
こちらは我が愛犬にして相棒である権三郎っス! 三歳っス!」 シュッタ!

 『パウゥ!』 シュタ!

右手を掲げ挨拶! 権三郎も右前足を上げて挨拶!!
 パワフルっス! 元気の源が一番っス!!

>こんな早朝から……深夜テンションとか……変則的寝てないアピか

「深夜テンションじゃないっス! いっつも私はパワフルっス!
ちなみに夜の9時には寝て6時に起きているっス! けどたまに
一時間は起きて、親にばれないようこっそり深夜番組見てるんで
合計八時間睡眠っス! 悪い事はひっそりパワフルに行うっス!」

 シャキーン!

 「自己紹介したっス! そっちも自己紹介お願いしたいっス!
挨拶したら元気に挨拶を返す! そうすると心も体もパワフルっス!」

 パワフルは元気の活力っス! なんかじめっとした空気が目の前の
年齢おなじぐらいの人から感じるけど、よくわからないんでパワフルにいくっス!!

106稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/08(金) 00:16:00
>>105(朝山)

「…………」

        ジリ

(なんなんだ、こいつまじで……やっぱ春は変なの湧くな……
 現実でも……湧き潰しが出来たら……えひ、楽なんだろうけど……)

奇声を耳に、真正面に立った姿を目に。

「別に名前なんか聞いてないし……
 お前の犬の年とか……早寝早起きとか……
 サブ垢でフォローしてるBotよりどうでもいい……」

    ブツブツ
              イライラ

次々飛び込んでくる無駄な情報に、人形のような顔を顰める。
もうさくらとか春とか吹っ飛んだ気分。

「……『ひっそり』の意味知ってんのかよ……」

          イラ

「お前に教える名前とかねーから……常識的に考えて。
 つーかお前のそれがパワフルなら……ほとんど『状態異常』じゃん……」

           「……えひ。」

                      ・・・悪態をさらに上乗せだ。

107朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/08(金) 00:28:37
>>106

>別に名前なんか聞いてないし……お前の犬の年とか……早寝早起きとか……
 >サブ垢でフォローしてるBotよりどうでもいい……

「サブ垢?? Bot??? うーん、よく言ってる事わからないっス!」

 >『ひっそり』の意味知ってんのかよ

「『ひっそり』っスか? ふふんっ! 甘く見ないで欲しいっス!
これでも国語の成績は中々のもんと言われているっス!」

 人差し指を掲げるっス! 鼻を鳴らしつつ説明するっス!

「『ひっそり』は! 物音がせず静々ーとしてる様の事を言うんっス!
わからない言葉があればじゃんじゃん聞いてくれっス! 教えてあげるっス!」

 悪の組織の首領は勉強も出来なくちゃいけないっス! 
勉強は好きか嫌いか聞かれると嫌いっスけど、それでもパワフルっス!!

 >お前に教える名前とかねーから……常識的に考えて

「うっス! 『かねーから・じょうしきてきにかんがえて』さんっスね!
何人さんか知らないけど、万国共通のそれじゃあ挨拶するっス!
 権三郎、一緒に行くっスよ!! はあ〜〜〜〜!!」

 クルクルクル シュッ タン!!

 「グッドモーニングハロー!!!! っス!!!」

 『パゥ〜〜〜ワゥン!! フッ!』

 シャキーン!!

 き、決まったっス…! 桜の花弁を背景に、今日は権三郎と共に
今日の朝一番のパワフルな決めポーズが出来たっス…!!

 流れが私に来てるっス―――!!!

108稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/08(金) 00:52:01
>>107

決めポーズを前に、なにか『珍獣』でも見るような目をする恋姫。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ひっそり。うん。」

          「・・・・・・」

     「・・・・・」

  「・・・・」

次々に繰り出される『パワフル』は――戦慄に値する。
口元に手を当て、やや上目遣い気味に。

    スゥ ゥ ・・・

息を吸いこみ。

「お前……本気で……え、えひ。
 本気で……ばかなの……?
 僕の事……ばかにしてるんじゃなくて……?」

        「……」

     「ひょっとして……あれじゃないの……
       お前の『悪い事』って……『バナナの皮』……とか?」

恋姫は……混乱しつつあった。
こういう『やばいやつ』は色々いたが……こいつは無害だ。

                ・・・何が目的なのだろう?

109朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/08(金) 01:02:12
>>108

――どうやら、我が悪のポーズの脅威に、この少女も戦慄を隠せないようっス。
たぶん、いま心の中はガタガタのガクブルのプルコギなんっス!

 上目遣いに手をおさえてこちらを見る少女に、うんうんと
満足気に頷くっス! やっぱりパワフルは最強なんっス!!

 >本気で……ばかなの……? 僕の事……ばかにしてるんじゃなくて……?

「フッフッフッ…安心して欲しいっス! 自分、お察しの通り
馬鹿じゃなく悪の首領っス! 馬鹿にする気もされる気も
これっぽっちもポッキー一本もないっス!」

 >お前の『悪い事』って……『バナナの皮』……とか?

「?? バナナは中身を食ったほうが絶対に美味いっスよ?
バナナは丸かじりすると余り中の甘味までちゃんと味わえないっス…
美味しく食べれない事って悲しいっス…どうせなら最後まで
笑顔で美味しくバナナは食べるべきっス! イッツ ザ パーフェクトイートっス!」

 シャキーン!!!

 なんかちょいっと会話が成立してないような…?
いや、そんな事はない筈っス! パワフルっス! パワフルは
外国人でも宇宙人でも異世界の住人にも通じるっス! パワフルっス!!

110稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/08(金) 01:30:57
>>109

「え、えひっ……えひひ……本気みたいだなこりゃ……」

     エヒ
 
       ヒヒ

半ば戦慄しつつも――
恋姫はダウナーな笑いをおさえられない。

         ・・・『害意』を感じないから。


傷付けようとか。
自分のための踏み台にしようとか。
恋姫のことを裏切ってやろうとか……じゃないから。

                  ・・・たぶん。

(……なんて考えんのは……深夜テンションか? それこそ。
 でも……こいつは……頭以外は……そんな、悪いやつに見えない……)

          (…………)

だから焔は膨れ上がっても――
その首をこの、悪を名乗る少女に向くことが無い。

      ニマァ

「えひ……悪の首領さんに聞きたいんだけど……
 その言い分だとあれか、バナナ、皮ごと……食べた経験あるの……?」

         「謎経験値積んじゃった感じ……?」

    クル

伸びた前髪を指でくるり、と巻きつつ。
その――『パワフルさ』に期待し、つい、余計な質問までしてしまうわけだ。

111朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/08(金) 01:46:10
>>110


>バナナ、皮ごと……食べた経験あるの……?

(あの、したり顔……そして期待してるような顔

 ――!? まさか……!)

 「―止めておくっス」

 そう、パワフルさが一旦消失し……


 「――すっげぇーーーー不味いっス!
 あれっス! なんかヨーグルド食べてたらヨーグルドの蓋まで
口の中に入ってた、見たいな。そんな感じで噛んでると
だんだんと違和感が覚えてバナナをちゃんと味わえなくなるっス!
 忠告しておくっス! 私の他にも犠牲者を増やしたくはないっス!
真似しちゃダメっスよ!? 振りじゃないっス!
 バナナは剥いて食べるべきなんっスーー!!」

 消失はしてないっス! グルグル回転 ポォーン! とジャンプしつつ
パワフルさを全力で表現しつつバナナの不味さを再現するっス!

 目の前の、ねーから何とかさんはバナナを丸ごと食べようと
思ってるに違いないっス! それは止めるべきっス!
 やっても誰も幸せになれないのは火を見るより明らかなんっス!!
パワフルに説得をしつつ、彼女をバナナの魔の手から救うっス!

 「すっかりバナナ談義になったっス……お腹空いたっス。
おやつと言うと権三郎のビスケットぐらいっス」

ポリポリ……。


 ポケットから犬用ビスケットを出すっス。
権三郎と一緒に食べるっス! なんかジュースか水か欲しいっス……。
因みに原材料は小麦粉 サラダ油 ココナッツファイン 水で
犬も人も食べれるパワフルフードっス! もうちょい甘くても良いけど
権三郎の体の為にも、これが一番良いビスケットなんっス!

 「あ! 一緒に食べるっスか?」

 ねーからさん(稗田)にもビスケット上げるっス!
美味しいものはみんなで食べるともっと美味しくなるはずっス!!

112稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/08(金) 02:28:33
>>111

「えひ……食べたのか…………まじで…………
 常識的に考えて……これマズいだろって思わないか…………?」

嘲笑――というよりは、『信じられないものを見る目』で恋姫は見る。
もちろん、口元には笑みがある。

        「……」

   「僕はしないよ……芸人じゃないし……
    そこは……うん、安心しておk……えひ。」

        ポォーン

と、ジャンプした『朝山』を目で追い、着地を見守り。
そして、取り出したビスケットに、視線を。

――犬用。

「あ…………いや、僕はいいぜ。
 甘いの……そんな好きじゃないから……えひ……」

     ニタ…

      (犬用だろそれ……何でもありかこいつ……
       いや、まあ……べつに、食えるんだろうが……)

            (何でもありか、こいつ……
             ……二回思うくらい、大事なことだよな……)

ビスケットは――受け取らないことにした。
ポーチから、ついさっき買った炭酸飲料を出して、キャップを回す。

                ・・・べつに、普通のお菓子なのだろうけど。

113朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/08(金) 09:36:44
>>112

>これマズいだろって思わないか?

 「天才は何でも試してみるもんなっス! ダヴィンチとか
ニュートンとかエジソンとかも、昔はみんながしたがらない事を
試してみたって見たっス! 私も他の天才の皆さんに倣って
色々チャレンジするっス! パワフルっス!」

>甘いの……そんな好きじゃないから……えひ

「そうっスか。それじゃあ今度は煎餅とか、おかきとか
用意しておくっス。辛党も甘党も人類には必要不可欠なんっス!」

 ビスケットをもぐもぐと食べつつ宣言するっス!
たけのこ派も、きのこ派も。戦争はよくないっス!!

 ……ジー。

 炭酸飲料をもぐもぐビスケットを頬張りつつ見つめる。

114稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/08(金) 19:29:35
>>113

「…………えひ……確かにお前、天才っぽいわ。
 そういうの……僕にはとて……もできないしな……」

         (……紙一重って言うし。)

言われてみれば『天才的』な物を感じる。
少なくとも恋姫とは違う。

「悪いことも……するんだっけ? えひ。
 パワフルに……偉人とかも大概クソみたいな事してたらしいし……」

         「お前も……偉人ルートかも……えひ。」

小さく笑う。
よもや――『悪の首領』が本気だなんて思わない。

            ・・・そして。

「……今度があるのは確定なの……まあ、いいけど……」

        「……」

   「七味せんべいが……
    僕にはよく効くぜ、好感度的にさぁ……」

           キュポ

やや視線を下に向けながら、冗談っぽく語る。
キャップは外れた。

「……」

       ス

「……欲しいのか?
 えひ、分かりやすい顔しやがって……」

     「……」

  「悪の首領的には……
    ありなの……そういうの?
     人の物貰うのは勇者の特権じゃない……?」

ボトルを『朝山』の視線から逃がすようにして、体の後ろに隠す。
意地が悪い気もするが、別に……物をあげなきゃいけない理由もない。

115朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/09(土) 12:26:50
>>114

>欲しいのか? えひ、分かりやすい顔しやがって

「そうっスねー」

 空を見上げる。爽快感が満点の青空だ。こう言う日は何時もより
もっともっとパワフルになれるっス! 桜のスカッとする空気が美味いっス!!

 「こう言う良い天気の日に、パワフルで素敵な出会いをした人と
一緒に同じものを食べたり同じものを飲みあえたら
 それはとってもパワフルな事だと思うっス」

 しみじみと呟くっス。けれど残念ながら私は飲み物を持ってきてないっス。
残念っス。なにかしらスポーツ飲料持ってくれば良かったっス。
 残念っス。 残念無念っス。

>人の物貰うのは勇者の特権じゃない……?

「??? 悪の首領でなくても、人から何か物を貰うときは
ちょーだいって自分はお願いするっス。それに関しては悪の首領は関係ないっス。
 欲しいことは欲しいけど、ねーからさんは体調悪そうな顔してるから
水分が必要不可欠っス。自分 具合がちょっとでも悪そうな人に無理強いする事しないっス。
悪の首領として、それもとーぜんの配慮ってやつっス」

 『パウッ!』

 「『そうだ!』って権三郎も同意してるっス!
七味せんべいは美味しいっス! 桜は素敵っス! 走るとお腹が空くっス!
お腹が空くって、お腹一杯になれるって事なんっス!
 つまり、全部ぜーんぶパワフルなんっス! 桜みたいにすっごい素敵なんっス!」

 ピョーン! と上下に跳ねつつ喋るっス!

そして、〆の決めポーズっス!!

クルクルクル シュッ タン!! シャキーンッ!!

      「改めて! 自分、朝山 佐生っス!   ねーからさんと友達になりたいっス!!」

 ポーズと共に友達宣言っス! 桜の下で友情を誓い合うっス!!
これ即ちパワフルなんっス!!

116稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/09(土) 23:23:40
>>115

「…………えひ……」

      イジ

長く伸びた髪の毛先を指で少しだけいじる。

  「悪の首領……のくせに。
  
   バカ
   素直すぎるんじゃないの…………」

          「……」

自分がパワフルだなんてのは――
そうなりたいなんてのは思わないけれど。

                 ス

ボトルを差し出して。

「……僕は…………昔からこういう顔だから。
 水分は別の買うよ……これ、あー、そんなに美味くないし……」

やや俯き、人形のような顔の、口元を緩く歪ませる。
受け取っても取らなくてもどっちでもいい。

「…………稗田。僕は……稗田恋姫(ひえだれんひめ)。
 『ねーから』なんて名前のわけ……ないだろ、常識的に考えて。」

      ポリ

頬を掻く。

「友、達……まあ……え、えひ、
 僕はパワフルじゃないし……悪でもないが……」   

        「それでも、いいなら……
          ………………なってやんよ。」
 
               ・・・桜と同じ色の瞳を、少しだけ逸らす。

117朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/10(日) 16:07:03
>>116


>僕はパワフルじゃないし 悪でもないが  
>それでも、いいなら なってやんよ

 「  ――や」


      ピョィーーーーーーーーーーン!!!


 
 「やったすぅぅぅぅぅぅううううううううう!!!!
 友達っス! 友達のOKが出たっス!! 感激っス!! パワフルっス!!
ペプシにコーラ! サイダーソーダで乾杯っスぅぅうううう!!!」

 もしもジャンプ可能なら成層圏までジャンプしてたであろう勢いを秘めた
大音声とダイナミック且つパワフルに体全体を使って喜びを爆裂させる。
 つまり 全てパワフルっス!!

 クルクルクルクルシュッ!! タンッッ!! シャ キ――ン!!

 「嬉しいっス! 全てにおいて嬉しいっス!!
抱きつくっス! 胴上げするっス!! パワフルっス!!!」

 ガシッと稗田(ひえだ)をパワフルに抱きしめて
胴上げ…は厳しいんで手を取って回るっス! この世の春が来るっス!!

 朝山は、その後も稗田と共に桜の下でパワフルに
朝食を摂ってない事を思い出すまで踊りあかす。

貰った飲み物を口に含み。そして、それでも足りないぐらいに
自分の事を一日では語りつくせないぐらいに喋るだろう。

 今日は朝山にとってパワフルな毎日の中でも一番のパワフルな日だった。

118稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/11(月) 01:33:33
>>117

「えひ……大げさすぎるだ…………」

     ガシッ

        「ろっ……!?」

    「や……」

          「やめろ、抱き着くなって……!
            あ、暑苦しい……んだよ……!!」

恋姫の身体は驚くほど軽い。
抱いてくる朝山を振り払い――あまり大きく動く事はしない。

されるがまま、にはならないだけ。

「………………」

    
       ニマ…

この世の春――ってほど、素直にはなれない。
けれど、この世の『開花』くらいには。

       朝山みたいなパワフルさは恋姫にはない。
       けれど、パワフルじゃなくても。


     「……えひ、ひひ。」

                   ・・・『友達』でいたいから。

119稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/05/20(金) 22:41:47

  カタ
          カタ

      カタ

ゲーム機を手に、イヤホンを耳に。

「…………」

湖畔公園の木々が茂るスペースは、恋姫が良く訪れる。
この辺りは人が少ないし――暑くもないし。

多少の散歩と、休憩にぴったりだ。
今日は休憩の時間の方が長くなったけど。

      「……」

顔を上げる。
たまに周囲を見渡したくなる。

     キョロ   キョロ

別に何があるってこともないだろうが……

120稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/05/26(木) 23:24:07
>>119(つづき)

まあ、世の中珍しいこともそうそう起こる物ではない。
特に何があるでもなく、少したってその場を去った。

          ・・・・『横丁』のゲーム屋でも行ってみるか。

121藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/26(木) 23:57:49
湖畔、公園の木の陰。
木にもたれかかって一人の女性が眠っている。

「すー……すー……」

「ん……」

どうやら目覚めたらしく手の甲で目をこする。
そして、あたりを見回す。
その顔は心配そうで、どこかおびえているようであった。

122溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/29(日) 02:50:31
>>121

「や、おはよーございます」

藤心が辺りを見回すと、痩躯の男が90°ほど異なる面の木陰に座っているのが見えるだろう。僕だ。
90°ほど異なる面って分かりづらい表現かな。西に対する北か南、北に対する西か東って感じなんだけど。
まぁともかく、僕はニヤニヤ笑いながら軽く手を振ってみよう。

「ダメだよ、お嬢ちゃん」
「公共の場所って言っても、こんなところで寝てたら危ないって。
 それに木陰なんてちょっと時間がズレると形変わっちゃうから、日焼けしちゃうぜ?」

そのまま馴れ馴れしく話しかける。初対面だけどね。
なお、僕の手にはブックカバーに包まれた文庫本がある。
これはさっきまで本を読んでたからだ。

123藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/29(日) 10:00:10
>>122

「あ……」

溝呂木を視界に入れた藤心。
びくりと大きく体を震わせた。
そしてゆっくりと下を向いた。
髪が藤心を隔離するかのようにその顔を覆う。

「あ……あう……」

「かっ……は……ん…………」

出てくるのは小さく、かすれた声。
どんどんと呼吸が乱れていく。
ぐじぐじとその手で黒く艶やかな髪をいじる。

「ご……ごめん…………ごめんなさい……」

しばらくして、そう呟くようなやはり消え入りそうな声で言うと
藤心は黙ってしまった。

124溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/29(日) 22:33:59
>>123

「あ、相当マジで怖がらせてるねこれ」

うわーショックー。
そりゃ不審者の自覚はあったけどここまでマジな反応されるとかなり堪えるよこれ。
そしてここまで怖がらせた状態で帰るのも気分悪いね。

「いや、ごめんごめん……ってすぐに謝罪合戦するのは日本人の悪い癖だけどさ」
「そりゃ公園で気持ちよくうたた寝してたのに、起きたらこんなオジサンが隣にいて急に話しかけてきたら怖いよねぇ」
「というか自分で言っててなんだけど相当気持ち悪いね僕。ハハハ」

ってわけでどうにかなだめようと頑張ってみる僕だ。
笑顔がへらっとしてるのは素だし、営業スマイルはそれはそれで胡散臭いのでこのままで。

「別にナンパしたいとかイジワルしたいとかじゃないから、そこは安心してくれ」
「じゃあなんのために話しかけたかって言うとそんなに深い意味があるわけじゃないんだけど!」

125藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/29(日) 23:38:44
>>124

「あっ……うぅ……」

溝呂木の謝罪を聞いているとそんなうめきにも似た声を発する。
小さくふるふると横に髪が揺れる。
いや、首を振っているのだろうか。
ちらりと上目遣いで見上げ、またすぐに視線を外す。

「い、意味がないのに……」

「話しかけるの……?」

視線を外したまま藤心はそう問うた。

126溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/29(日) 23:51:55
>>125

(うーん案の定自己評価が極端に低いタイプというか、卑屈なタイプッ!
 『僕に謝罪させていること』を申し訳なく思ってしまうタイプの子だね、きっと)

適当に推測しつつ、言葉で反応が返ってきたことに内心ガッツポーズ。
おっと表向きはなんでもない風を装うぜ。
あんまりオーバーに反応すると余計に怖がらせちゃうだろうからね。

「あはは、鋭いとこ突いてくるねぇ」
「でもまぁ、うん。そうだよ。
 意味があるかないかで言えば、無いって言っていいんじゃないかな。
 なんていうか、興味本位というかなんとなくというか」

「見ての通りテキトーな性格でね。
 『風の向くまま気の向くまま』……なんてスカすつもりもないけど、ついその場の気分で行動しちゃうのさ。
 こういうの、『刹那主義』って言うのかな。はは、またスカしてるねこれ」

かんらかんらと、表情は覇気のないスマイルだ。

127藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/30(月) 00:16:40
>>126

「……」

視線を合わせない藤心。
伏し目がちでなんとも頼りのない雰囲気だ。
じっと話を聞いている。

「……刹那主義?」

その言葉を呟くとまた、黙る。
それから、もごもごと口の中で言葉を遊ばせる。
あ、とかそ、とか単語単語だけがたまに漏れ出てくる。
ついに決心したのかちらりと溝呂木に目線をやり、目を合わせる。

「あなた……自由……なのね……」

「……すごい…………わ……」

128溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/30(月) 00:36:36
>>127

へらへら笑って、お嬢ちゃんが言葉を発するまで待つよ。
幸いにして気は長い部類だからね。

「自由、自由かぁ……」

「確かにそうだね。子供のまま大人になったとも言うけどさ」
「大人になって独り立ちして、自分の責任を自分で取らなきゃいけなくなったし」
「そうなるともう、責任取れるなら何しても自由なわけだから」
「おかげさまで好きにテキトーに生きさせてもらってるよ」

別に、褒められるようなことでもないけどね。
……こう、家庭か友人関係に複雑な事情抱えてるタイプの子かなー。

「でも、お嬢ちゃんも中々に自由だと思うよ?」
「天気のいい日に、木陰でうたた寝をしてもいい……っていうのは、すごく『自由』なことじゃないか」

129藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/30(月) 01:08:51
>>128

「好きとか……テキトーとか……私には……」

言いかけて俯いて黙り込んでしまった。
風に髪が揺れる。

「じ……ゆう……?」

「私が……? ほんとう……?」

照れているのかほんのりと、顔が赤くなっている。
といっても大部分が髪で隠れてしまっているが。

「嬉しい……」

「……でも…………」

「いいえ……なんでも……ないわ……」

130溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/30(月) 13:40:13
>>129

(うん、やっぱ人間関係で問題を抱えてるみたいだね。
 抑圧か、迫害か……まぁ別に僕はカウンセラーでもなんでもないんだけど)

つまり、的確な対処法が分からないってことだ。
下手に刺激しすぎてもマズい気がするし……いやぁ、人との会話って難しいね!
とはいえそこまで悪い気分でもない。
厄介ごとってのはそこまで嫌いじゃないんだ。好きとは言わないけど。

「ま、誰しも自由であるべきさ。
 もちろん、だらしなくあれってことじゃないよ?
 キッチリしたい奴はキッチリすればいい。それもまた自由だ」

一番悪いのは、自らで選択ができなくなることだ。
……見たとこ、このお嬢ちゃんはその部類な気がするけど。

「そういうわけで、お嬢ちゃんも言いたいことがあると言ってみるといい。
 あんたなんかに言いたくねーよオッサン! ……ってことならそれでも構わないけど。
 外に出したいものを中に溜め込むのはストレスになるぜ。
 聞いてどうにかなることじゃないかもしれないけど、話して気が楽になることもあるさ」

ともあれ僕はすっかり興が乗ってしまったので、カウンセラー気分で攻めてみよう。

131藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/30(月) 22:41:04
>>130

濡烏、それは女性の髪にあてられる言葉である。
理想美ともいわれるこの髪を藤心は持っている。
それはまるでベールのように藤心を隠す。
なにかから守るように。

「言いたいことなんて……ないわ……」

「ないの。なにも……私には……持ってないわ……」

隠す。守る。
そして、中のものを外に出さないように。
覆う。

「でも……あなた……優しいのね……」

「優しく……されると、困ってしまうわ……」

132溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/30(月) 23:21:53
>>131

「そうかい?
 ……ま、それならそれでもいいけどね」

深追いはすまい。
言いたくないなら言いたくないでもいいのさ。
それもまた自由……というか僕が地雷踏みたくないだけなんだけど。
厄介ごとはそこまで嫌いじゃないけど、それはそれとして地雷は避けたいからね!

「ははは、僕が優しいって?」
「ないないそれはない。
 ちょっとコミュニケーションが好きなだけだよ、僕は。
 あるいは暇を持て余してるだけって言ってもいいけど」

僕が優しいなんて言ったら、世の中の『優しい人』がかわいそうだ。
単純に、女の子にビビられたまま帰るとダメージが大きそうってだけだし。

「でも、変なこと言うね。
 優しくされると困るのかい? 優しさアレルギー?」

133藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/31(火) 00:14:43
>>132

「……うん」

深追いはしない。
触らぬ神に祟りなし。興味本位で藪をつついて蛇を出すことはない。

「そう……あなた……そういう人なのね……」

意味ありげに呟くと、また髪をぐじぐじといじる。

「! ……困るわ……とても……とても……」

びくりと声を掛けられた時のように体を震わせる。

「私は弱い……とてもとても……弱いの…………」

「だから……優しくされたら……あなたに……甘えてしまうわ……」

「それに……あなたが……」

ぎゅっと髪を握りしめる。
震えている。今度は目に見えて分かる。
しかし同時にその顔は赤くなっている。
肌も赤くなりそうなほどに。
赤い。不健康過ぎるほどの白い肌が赤く染まっている。

134溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/31(火) 00:44:37
>>133

(あー……こういう子にありがちなことだけど……)

いわゆる『重い女』って奴だ。
物凄く端的に言ってしまえば、だけども。

「そ、僕はこーいう人。
 だからお嬢ちゃんも深刻にとらえなくていいよ。
 野良猫が寄ってきたぐらいの感覚で」

そんな内心は心の奥にしまい込みつつ、会話続行。
ここまで来て引くわけにはいかないよね。色んな意味で。

「まー初対面のオジサンに甘えちゃうのは社会的に見てヤバそうだね。
 ……とか下世話なジョーク飛ばしてる場合じゃないかもだけど」

「なんか震えてるけど平気かい?
 それに、僕がどうしたって?」

内心はもうおっかなびっくり地雷原を進むマインスイーパーだ。
既に致命的なとこに踏み込んでる気がしないでもない。頑張れ僕。

135藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/31(火) 01:10:56
>>134

「野良猫……?」

「そう……」

理解しているのかしていないのかいまいち掴みかねる返答。

「なにもないわ……なにもなにも……」

震えている。
しかし、それを否定する。
マインスイーパーと化した溝呂木は人間爆弾と化した藤心の心の中を行く。

「それとも……」

「あなた……私の……」

「こころに入り込むの?」

136溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/31(火) 01:38:56
>>135

「んー」

ちょっと考えるそぶりを見せる。
そりゃかわいい子っぽいけど、初対面でそこまで行くのは重い。
というか初対面じゃなくても重い。
僕はそういう重いのはちょっと苦手なんだ。身軽な方が好きでね。
とはいえここでNOを突き付けるのもなんだし……

「じゃ、逆に聞くけどキミはどうして欲しい?」

「って言うと『なんでもない・なにもない』って帰ってきそうだけど。
 そもそも話しかけたのは僕の方だしね。
 でも残念ながら、僕は『白馬の王子さま』ってキャラでもない。
 僕は散々言ったように無責任な人間だ。負える責任は自分の範囲だけさ」

「つまり、『それはキミが選ぶべきだ』。
 そうしないと多分後悔するよ」

というわけで――――ここは、『あえて攻める』。
試すような、でも相変わらずのへらっとした顔でね。

137藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/31(火) 23:27:53
>>136

「私は……なにも……! ……なにも……」

ないもいらない。そう言いたかったのだろう。
先手を打たれ、藤心は言葉に詰まった。

「私は……私は……」

呼吸が乱れる。
かぶりを振る。
追い詰められているかのように。
うめきにも似た声を上げながら藤心は困る。

「困るわ……とってもとって……困る困る困る困る……!」

「……助けて……誰かが私を……」

「……い……」

言葉に詰まった。
呼吸が止まったかのように、言葉が出ない。

「……私は、弱い。とてもとても……」

「でも……強くなりたいの……だから……答えるわ……」

溝呂木の目を見て、藤心は言う。
不安な色のある瞳だ。
その表情もまた不安げでおびえている。

「今は……私の心に入らないで……」

「あなたを……傷つけてしまうわ……」

138溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/31(火) 23:53:05
>>137

(おーおー苦しんでる苦しんでる)

苦しむお嬢ちゃんとは対照的に、僕は自然体だ。
よく言うだろ? パニックになってる人が目の前にいるとかえってクールになる、って奴。
どんどん自分がクールになって行ってる自覚があるね。

(ま、それでも……そんなに『悪い刺激』じゃなかったっぽいかな)
「おーらい、大した自信だ」

パッと両手を上げて、降参のポーズ。
そのままひょいと立ち上がるよ。

「じゃあやめとこう」
「僕も傷つきたくはないし、お嬢ちゃんも傷つけたくない。
 お互いの利益が一致してるわけだ」
「それにまぁ、僕としてもその言葉が聞けたら満足かな」

うん、これなら、このまま帰っても気分が悪くはならない。
なんでかってそりゃ、やっと『お嬢ちゃんの言葉』が聞けた気がするしね。

「でもホントにお昼寝は気をつけた方がいいぜ。
 お嬢ちゃん肌白いし、日焼けがキツイタイプに見えるからね」

139藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/01(水) 00:27:29
>>138

「そう……私もよ……傷つけたくないわ……」

また、視線を逸らす。
根本は変わらない。
覆されない。彼女の言葉は出ても、彼女自身は変わらない。

「満足なのね……」

ふっと、寂しそうな色が浮かんで消える。

「日焼け……?」

一瞬の疑問符。
やがて意味を理解したのかより日陰へ日陰へと行こうとする。

「!」

突然、着信音が鳴り響く。
藤心は傍にあったカバンからスマホを引っ張り出した。
電話だ。

「はい……はい……お父様……」

「……今すぐに……? ……はい…………」

「すぐ……行くから…………」

通話が終わったらしく、スマホを耳から話す。
その表情はより一層暗い。

「あ……私……その……帰るわ…………」

「あなたのお名前……聞いても……いい?」

140溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/06/01(水) 01:06:24
>>139

(悪いね。僕はやっぱり『白馬の王子様』じゃないのさ)

もちろん、たまに『そんな気分』になる時もあるが……今日はそうじゃない。
それに、それはあくまで『そんな気分』だ。
ほんとに王子様になれるわけじゃない。
だからやっぱり、僕は『ここまで』なのさ。

「お帰りかい?
 まぁ僕も帰るとこだけど」

……お父さん、やっぱり厳しそうだね。

「僕は……『名乗るほどのもんじゃない』、なんてスカしてもいいけど」
「『溝呂木鉄鶏(コオロギ テッケイ)』だよ」
「溝、風呂の呂に木。鉄の鶏で……コオロギテッケイ」
「お嬢ちゃんは?」

ともあれ、僕は最後までヘラヘラ笑って尋ねるわけだ。
次に会う機会があるかどうかは知らないけどさ。

141藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/01(水) 01:33:04
>>140

「溝呂木鉄鶏……」

「溝呂木さん…………ね……」

確かめる様に発音する。
そして、問いに答える。

「藤心……舞……フジのココロがマウ……」

「…………」

それだけ告げてぺこりと頭を下げると、藤心は足取り重そうに去っていった。

142溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/06/01(水) 01:41:54
>>141

「ん、舞ちゃんね」
「バイバイ、舞ちゃん」

手をひらひらして、お嬢ちゃん……舞ちゃんを見送る。
後に残るのは僕だけだ。

「…………まっ」
「面白い子ではあったかな。
 踏み込み過ぎにはご用心……ひょっとすると手遅れかもで、それなら御愁傷様だ。
 ガラじゃないけど、そういうのも悪く無い」

次に会う機会があるかどうかは知らないけど――――もしもあるなら、悪く無い。
彼女がどうなるのか、気にならないと言ったら間違いなく嘘さ。

「――――また会えるといいね、舞ちゃん」

またひとつ楽しみが増えたかな、なんて思いながら……僕も帰路につくのであった。
なんてね。

143小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/02(木) 23:30:11
                    ある日の午後、小石川文子は公園内を歩きながら、物思いに耽っていた。

――改めて振り返ってみても、前に住んでいた町には、あまりにも多くの思い出がありすぎたと思う。
それらは昼も夜も私の心を苛み続け、私自身が心の中で望んでいる結末へ、私を駆り立てようとした。
死に別れた『彼』の分まで生きなければならないと思いながらも、その時の私は、いつ自分を殺してしまうか分からない状態だった。

                    犬の散歩をする老人とすれ違い、一時的に思考が中断された。
                            軽く頭を下げて、歩き続ける。

――だから、慣れ親しんだ場所を離れ、この町に移り住んだのだ。
自分自身の内なる願望に負けないようにという願いを込めて。
今は、過去の記憶が残る場所から遠ざかったことで、以前と比べると気持ちを強く持つことができるようになったと実感できる。

                     前方を一組の男女が手を繋いで横切っていく。
                再び思考が止まり、その光景に一瞬目を細め、歩き続ける。

――しかし、それは決して完全ではない。
不規則に湧き起こる『死の衝動』――自ら命を絶てば、愛する者に再び会うことができるという背徳的かつ甘美な誘惑は、慢性的な病がもたらす発作のように、繰り返し私の心を苦しめている。
いつもバッグの中に忍ばせている一本の果物ナイフ――それは、いつどこで発作が起きても鎮められるように常備している『精神安定剤』だ。

                   ジョギング中の若者が、後ろから追い越して、あっという間に見えなくなった。
                 迷いのない生き方とは、ああいうものかもしれないと思いながら、また歩き続ける。

――けれど、もしかしたら、それさえも通用しなくなる時が来るかもしれない。
何かのきっかけで自分の意志が弱くなってしまったら、あるいは耳元で囁く誘惑が今よりも強くなったらと考えると、とても怖い。
そして、もしそうなったら――自分自身の意志だけで、自らを抑えることが難しくなった時は、この町に『死の衝動』を食い止める助けになって欲しいと思う。

                  ふと気付くと、私は森の中の一角に佇んでいた。
                 見上げると、眼前には一本の大樹が聳え立っている。
              溢れんばかりの生命力の発露に、どこか心を打たれるものを感じ、自然と目が挽きつけられた。

無意識の内に、神前に立つ敬虔な修道女のように胸の前で両手を組み、静かに目を閉じる。
どうか――どうか、この命を全うさせて下さい。
小石川文子は、この樹を通して、自分の住む町――『星見町』に、心からの祈りを捧げた。

144稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/06/02(木) 23:48:58
>>143

    ザッ ・ ・ ・

「…………?」

恋姫が彼女を目にしたのは、偶然で。
木陰の涼しい所を、ついでに、
画面が見えやすいところを求めてただけで。

そうしたら祈ってる所を見てしまったわけだ。

(なんだあいつ……新手の新興宗教か?
 えひ……頭痛が痛いみたいな言い回し……)

     (まあ……脳内セーフってことで……)

  
  ヒュ
      オ
        ォ

風が吹く。長い髪が揺れる。
桜色の目にかかった黒い絹糸を手で払い除ける。

「……」

恋姫の髪に染みついた、ミントの香料が風に乗る。
青春モノの一幕みたいな話だけど、それで恋姫に気づくかもしれない。

・・・・あるいはもっと単純に、不躾な視線に気づくかもしれない。


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