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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』
1
:
『星見町案内板』
:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。
---------------------------------------------------------------------------
ミ三ミz、
┌──┐ ミ三ミz、 【鵺鳴川】
│ │ ┌─┐ ミ三ミz、 ││
│ │ ┌──┘┌┘ ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
└┐┌┘┌─┘ ┌┘ 《 ││
┌───┘└┐│ ┌┘ 》 ☆ ││
└──┐ └┘ ┌─┘┌┐ 十 《 ││
│ ┌┘┌─┘│ 》 ┌┘│
┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘ 【H城】 .///《//// │┌┘
└─┐ │┌┘│ △ 【商店街】 |│
━━━━┓└┐ └┘┌┘ ////《///.┏━━┿┿━━┓
┗┓└┐┌──┘ ┏━━━━━━━【星見駅】┛ ││ ┗
┗━┿┿━━━━━┛ .: : : :.》.: : :. ┌┘│
[_ _] 【歓楽街】 │┌┘
───────┘└─────┐ .: : : :.》.: :.: ││
└───┐◇ .《. ││
【遠州灘】 └───┐ .》 ││ ┌
└────┐││┌──┘
└┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------
177
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/27(月) 00:11:00
>>176
散歩をしに来たココロ。
音色に足を止める。
長く黒い髪。尻にかかりそうなほどだ。
その女性がまたバイオリンをひこうと構える。
が、そこでココロと目が合った。
「あ……」
びくりと大きく体を震わせる。
視線を外し、きょろきょろと辺りを見回している。
すると、近くにあったバイオリンのケースに手を伸ばした。
178
:
ココロ『RLP』
:2016/06/27(月) 00:23:33
>>177
(あんなに長いと、
手入れが大変そうね……)
(……いえ、だから何ってことはないのだけれど。)
湖畔の緩やかな風。
長い髪に視線を取られ――目が合った。
「あっ」
ビクッ
(こ、怖がられているわ……
ど、どうしましょう、不審者だと思われた……?)
(嫌な思いをさせてしまったかしら……?)
目を逸らす。
ココロはあまり強い気質ではない。
「こ、こんにちは……
ごめんなさい、じろじろ見て。」
「その、バイオリンが聞こえたから、気になって……」
とはいえ、話すことは出来る。
ここで逃げれば、本格的に不審者だ。
もし自分がそういうことをやられたら怖い。
「……れ、レッスンをしているんですか?」
それに――楽器を、音楽をしている相手に興味があるのは本当だ。
179
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/27(月) 00:44:58
>>178
「ヴァイオリン……」
女の動きがぴたりと止まる。
が、ほんのちょっぴり震えているのだろうか。
髪の毛が揺れ、ケースを掴めないでいる。
「レ……レッスンでは……ないわ……」
「ひいていた……だけ…………それだけ……ほんとうよ?」
ぽつり、ぽつりと語る。
やはり視線は合わせない。
「私は……なにも……」
180
:
ココロ『RLP』
:2016/06/27(月) 00:58:54
>>179
「あ……そ、そうなんですか。
ご……ごめんなさい、早とちりでした……」
ココロは深追いしない。
そういうのはお互いよくない。
(ど、どうしたのかしら……
そんなに、こ、怖がられているの?)
(私そんなに怪しい……?
そ、それとも体調が悪いのかしら?)
ソロ…
ほんの少しだけ、脚を前に動かす。
懸念はあるが、話しやすいようにも歩み寄る。
「あ……え、ええと……
私も、ピアノをしているから……」
「気になっただけで……
それだけ……興味本位で。」
あくまで、恐る恐るだ。
ココロは傷つけたくないし、その逆も恐れる。
「別に何をしようとかじゃあないんです……
ごめんなさい、向こうに行った方がいいかしら……?」
「そ、それとも……何か他に出来ることとか……
いえ、私がそれを出来るかは、分からないけれど……」
一応、尋ねてみる。拒まれたなら、実際にそうするだろう。
181
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/27(月) 01:12:21
>>180
俯いたまま動かない女。
外界から身を守るように黒い髪が顔に影を作る。
「いいの……あなた、悪くないわ……」
「! ……そう……ピアノ……いいわねぇ……」
やっと目を合わせてくれたらしい。
しかしその眼は前髪に隠れている。
口元が少し緩んでいるらしいことは分かる程度だ。
「いいわ……ここは……私のものじゃ……ない……し」
「私……なにも、いらない……なにもなにも……」
「……あなた、お名前は?」
182
:
ココロ『RLP』
:2016/06/27(月) 01:25:04
>>181
「え、ええ! 良いですよね。
私も……弦楽器は詳しくないけれど……
でも、ヴァイオリンの音って、なんだか落ち着いて。」
吊気味の目を、ぱちぱちと開閉する。
(よ、よかった……音楽が好きなんだわ。
それに、私が怖がられてるわけじゃないのね。)
内心胸をなでおろす。
それに、話が合うかもしれない。嬉しい。
しかし。
(……じゃあ、何があったのかしら。
私が踏み込んで良い事じゃ……ないわよね。)
眼の前の奏者の様子は、いかにもおかしい。
それはココロにも分かるし、心配でもある。
なにも、いらない。
その心の内は分からないが――
「あ……ありがとう。
わ、私、ココロ……『水溜 意』です。」
「貴女は……?」
名前を教え、聞く。
いきなり踏み込みすぎていくのは、不作法に違いない。
183
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/27(月) 01:35:25
>>182
「……そう……そうよ……そうよね……」
肯定。
不安そうな様子もない。
正解の話題、なのかも。
「ココロ……? みずたまり……ここ……ろ……」
名前の復唱。
噛みしめる様に心の名前を呼ぶ。
何度も何度も。それから黙って少し髪を揺らし、口をまた開く。
「あなたも……ココロ、なの……ね……」
「私も……ココロ」
「藤心……舞……ふじ……ごころ……」
184
:
ココロ『RLP』
:2016/06/27(月) 01:44:56
>>183
「あっ……そ、そうなんですか。
ココロ繋がり……なんだか、奇遇ですね。」
「だって、楽器も……
音楽も好きですし……」
「いえその、勝手な、
シンパシーなのだけれど……」
恐る恐るではあるが――ココロは言葉を紡ぐ。
シンパシー。それがココロの感情なのかもしれない。
(この人も……私と同じ……
いえ、同じというのは決めつけだけれど……)
(気が……弱い人なのかもしれないわ。
もしかしたらというだけの……
私の、勝手な考えに過ぎないけれど……)
それはつまり、おかしい人じゃあないってことだ。
まだ何も、分からない程度の繋がりだけれど。
「あ、あの……」
「ヴァイオリン……よかったら。
もう一度、聞かせてもらっていいかしら……?」
――音楽。
そこに糸を見いだせたのは、光明だ。
音楽という『絆』は、言葉を超える事が出来る。
185
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/27(月) 23:34:51
>>184
「……シンパシー……?」
「そう……」
ぎゅっと胸の前でバイオリンを抱きしめる。
少しうつむきがちな視線。
それが何を意味するかは藤心だけが知っている。
「聞きたいの……? ヴァイオリン……」
「あなたが望むなら……いいわ……」
ゆっくりと、藤心はバイオリンを引く準備を始める。
長い黒髪を片側に寄せ、細い方にバイオリンを乗せる。
古めかしくも手入れされたバイオリン。
すぐにでも引ける状態になっている。
「……すぅ」
一度大きく吸い、吐いた。
演奏が始まる。
ttps://www.youtube.com/watch?v=GKn6-Wp3XJM
186
:
ココロ『RLP』
:2016/06/27(月) 23:40:07
>>185
(少し変なことを言ってしまったかしら……
でも、確かにこの気持ちはシンパシーだわ……)
(責任を持たなきゃ、自分の言葉よ。)
藤心のリアクションの意味は――察せない。
悪い反応ではないと、ココロは祈りたい。
「ええ……お願いします。
お礼が出来るわけでも、ないけれど……」
ス
小さく、しかし確かに頷くココロ。
耳に少しかかった髪をどかす。
そして――
「……」
スー
ハー
落ち着いて、演奏を――聴く。
(カノン――)
(……綺麗な音色。)
終わるまで、余計な口は叩かない。
目を薄く閉じ、聞き入る。そして終わったなら、小さく拍手をするだろう。
187
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/28(火) 00:03:35
>>186
藤心は非情におどおどしている。
それは人に会ったときにそうだし、普段から周りを伺っていた。
その割に外界からの刺激に弱い。人に合えば驚いてしまう。
しかし、バイオリンを引く彼女はひどく穏やかだった。
病的なまでに白い指が音を紡ぎだす。
ほんの少しの刺激で壊れてしまいそうなほど儚い雰囲気を纏ってはいるが
落ち着き、集中し、無心にバイオリンを引く姿はそんな印象を消し去ってしまうかもしれない。
「ありがとう」
拍手に対し、ぺこりと頭を下げた。
「優しいのね……」
「あなた……音楽……好き……?」
188
:
ココロ『RLP』
:2016/06/28(火) 00:14:16
>>187
ココロは演奏時の藤心に共感を抱く。
演奏は心を落ち着けてくれる。
演奏している自分は誇る事が出来る。
何もかも同じでは、ないだろう。
あくまで――親しめる物を感じる。
「こちらこそ……
ありがとうございました。」
ペコ
小さく返礼する。
シンパシーを抜きにして、良い演奏だった。
「い、いいえ。私はそんな……
あっ、いえ、音楽は好きです。」
そして、頷く。
ココロの魂には『鍵盤』がある。音色がある。
「ずっと……ピアノは、私、してきましたから。
ごめんなさい、ここでは弾けないけれど……」
(『RLP』は……聴こえない、わよね。
決めつけてかかるのは良くないけれど……)
(…………でも。)
しかし、それは幻の音色をのみ奏でる。
今、ここで出したところで、意味はない――はずだ。
189
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/28(火) 00:35:37
>>188
「……私も……好きよ」
ぼそぼそと小さな声で呟く。
聞き洩らしてしまいそうな声で話す。
「あなたの……弾く……ピアノ……」
「聞いて……みたい……けれど」
方法がない。
気軽に持ち運びできるようなものではない。
それは藤心も分かっていた。
しかし、相手の演奏を聴きたいという心は変わらない。
「……残念、ね……とてもとても……でも……それでも……いいわ」
「しょうがないもの……ね」
190
:
ココロ『RLP』
:2016/06/28(火) 00:45:27
>>189
「あ……ご……
ごめんなさい……」
「ここにピアノがあれば……あれば……」
しょうがない。
しょうがないことだ。
(だけれど……『試す』のは……
わ、私が、不審だと思われるくらいだわ。)
(……良くないことは。)
ピク
指輪に飾られた白い指が、僅かに動く。
ピアノの運指――
「……ふ、藤心さん。」
♪
「…………『聴こえますか』?」
♪
♪
僅かな動作でも、ココロが望めば『それ』は奏でる。
指先に浮かび上がる、透明な鍵盤――『RLP』。
(もし? き、聴こえなかったら、その時は……
いいえ、悪い方ばかりに考えてもしょうがないわ。)
――幻想の音が湖面に踊る。
191
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/28(火) 01:01:49
>>190
「いいわ……誰が……ううん……」
「……私の……わがまま……」
自戒するように呟く。
視線をそらし、一人また殻にこもる。
拒絶というよりは相手を自分に触れさせないための。
「……?」
ぱっと藤心の顔が上がる。
虚空を見つめる瞳。
音の鳴る方向を探し、見つけ出す。
視線の先に美しき鍵盤。
「……きれい……とてもとても……きれい……ね」
仕組みも何もわからない。
しかしそこに音があることが素晴らしい。
「素敵……」
192
:
ココロ『RLP』
:2016/06/28(火) 01:10:31
>>191
「わ、私のこれも、私のわがまま……」
「だけれど」
ポロ
ン ♪
「――よ、良かった。
演奏……聴かせ、られます。」
「……ありがとうございます。
私の『RLP』を、褒めてくれて。」
ス―
ハ―
「弾きます。」
深呼吸は余計な心を洗うための合図。
演奏に、心から指先を通じ鍵盤に音を――感覚に、没入する。
弾く曲は決めている。
技術勝負とか、そういうつもりはない。
_,.、.-―-.、., ♪
、-''´ `'-.、,_
―--:‐''^ ´ ♪
♪ _,.、.-―-.、.,
、-''´ `'-.、,_
―--:‐''^ ´
一番得意な曲を――『絆』を紡ぐための、曲を。
ttps://www.youtube.com/watch?v=0siIoIWd62c
193
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/28(火) 01:19:26
>>192
「不思議……」
藤心の知識にこのようなピアノの形はない。
そしてこういうピアノを演奏するということも、ない。
未知。全くの未知足り得る。しかし満ち足りている。
「すごいわ……あなた……」
「昔……教えて……もらった……」
「演奏は……心も……癖も……人も……出るって……」
演奏が終われば小さな弱弱しい拍手と共にそんな言葉を贈る。
「あなた……やっぱり、優しい……の……かも」
194
:
ココロ『RLP』
:2016/06/28(火) 01:53:14
>>193
ココロは『RLP』について多くは語らない。
スタンドは――知っていると思っている。
それに、これは演奏が出来るのだ。
今はそれだけで良い。
演奏が止まれば、鍵盤も消える。
「あ……ありがとうございました。聴いてくれて。」
「ごめんなさい、その……
驚かせてしまいました……?」
拍手の音は、耳に心地いい。
ヴァイオリンの音ほどではないけれど。
「……」
昔、大切な友達に教えられた。
キュ
スタンドは心の鏡――
美しいスタンドの持ち主には、美しい心が少しはある、と。
その言葉はココロを何度も励ました。
「……わ、私……嬉しい、藤心さん。
そんな風に、言って貰えて……本当に。」
「『RLP』を……演奏を、褒められるのは……嬉しくて。」
ニコ…
「ありがとうございます。」
面と向かってこれほど褒められるのは、誇らしく、照れる。
決して初めての経験ではないけれど、藤心の言葉は初めてだ。
195
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/28(火) 23:23:02
>>194
「少し……だけ……」
驚いていたらしい。
その割にはこれといった反応を示していたわけでもなさそうだが。
「いいの……私は……別に……」
感謝の言葉を述べるココロに藤心はそう返す。
黒い長髪で自らを覆い、その視線を地面に注いでいる。
「……少し……困ってしまうわ……」
「そんなに……いいえ……いいの……」
196
:
ココロ『RLP』
:2016/06/29(水) 01:08:53
>>195
「あ……ご、ごめんなさい。
私ったら、少し大げさでした……?」
ビク
少しだけ申し訳ない気がした。
けれど、感謝の気持ちは本心だし――
「でも……」
「本当に、嬉しかったから……」
あんまり謝り過ぎても、余計困らせてしまうだろう。
自分なら、きっと困る……気がする。
チラ
「……あ……」
「私、そろそろ……
行こうかと思います。」
時計が目に入って、時間が気になった。
「も、もしよかったら……また、会えたら嬉しいです。」
それも素直な気持ちだった。
この湖畔に来れば、会えるような気もした。
197
:
藤心 舞『ラヴィンチェインズ』
:2016/06/29(水) 23:35:56
>>196
「いえ……いいの……私も……嬉しい……」
ケースにバイオリンをしまう藤心。
パチンパチンとケースを閉じる。
それからほうと一息ついた。
「そう……行くのね」
「会えるわ……きっときっと……」
ココロに視線を合わせてそう返す。
その顔はほんの少しだけ、笑んでいたのかもしれない。
「さようなら……」
198
:
ココロ『RLP』
:2016/06/29(水) 23:39:48
>>197
「ええ……さようなら、藤心さん。」
ペコ…
小さく頭を下げて、自然公園を去る。
「……また。」
その表情は、笑みだった。
ヴァイオリンの音色が、絆の糸を出会わせた。
そして――ピアノの音色が、それを紡いだ。
(素敵な演奏だったわ。
……きっと、会える。
私もそう思っているわ……)
奇妙な、確信めいた思いと共に、ココロは帰路を歩いていく。
199
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/09(土) 01:18:51
恋姫はインドア派だ。
アイドルとしてもそういうことになっている。
異論は認める――と恋姫は思わない。
そこになんら異論をはさむ余地はない。
……だが、たまには散歩もする。
ザッ
「あっつ……」
まだ朝。
それでも、暑い。
主に、髪を納めた帽子の中。
それから、汗で滑る眼鏡も嫌だ。
くしゃ
「うわ……」
セミの抜け殻を踏んでしまった。
たまには散歩もするが……帰りたくなってきた。
200
:
遊部『フラジール・デイズ』
:2016/07/15(金) 21:24:48
>>199
ザァァァァ ピチピチ ピチピチ…
木々は風に揺れ、自然のみの囁きを織りなす。
木漏れ日の隙間から、微かに小鳥が謡うのが聞こえた。
空に一羽、小さな影が太陽の下を通過する。アレは……ひばりだろうか
『思いはひばりの如く軽やかに夜明けの空を飛び回るものは幸いなり』
その鳥を見ながら、黄色を基調としたレースのワンピースを身に着けている
ピンク色の長髪の女性が、鳥の横切った空を仰ぎつつ呟く。
『人生を超越しつつ飛び回り物言わぬ花々の言葉を解するものは幸いなり』
クルッ
その女性は、貴方のほうへ振り向く。
……穏やかな顔つきをした、少し妖美な雰囲気が彼女を取り巻いている。
「あら こんにちは。そちらも森林浴ですか?」
話しかけてきた……悪意はなさそうだ。
201
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/15(金) 23:30:25
>>200
スッ
足を上げて、足元の抜け殻を見る。
見事につぶれていた。
生きてるのじゃなくてよかった。
ビクッ
……突如話しかけられ、
小さい背がやや跳ねる。
「えひっ……」
「まあ……そんなとこかな……
『モンスター探し』では、ない……」
クル
冗談とともに振り返った。
(うおっ……ピンク髪……
コスプレかなんかか……?)
「あー、僕森林浴は初心者なんだけど、
この暑いのに……ガチ勢は癒されるの……?」
ジリ
ジリ
空には素敵な光景が広がっている。
だが、舗装された地面は地獄の暑さだ。
恋姫は元から八の字気味な眉をさらに曲げつつ、うだる。
202
:
遊部『フラジール・デイズ』
:2016/07/15(金) 23:49:06
>>201
クスッ
「『モンスター探し』なんて、洒落た言い方ね。
『追う怪物に 追われる怪物 学ばない人々に 繰り返す歴史
過去の被害者さえ 未来は加害者 』ってね。
……あぁ、あなたの中のモンスター、と言う詩の引用よ」
「癒される……そうね」
うーん、と伸びをして。その女性は木々を見つめ。少ししてから
口の弧を上げるだけの微笑を向け、言葉を向けた。
「そうね、私は癒されると思うわよ。
周りが苦しくて、気に食わない所も目に付くでしょうけど。それでも
空を見れば、一点の染みのない青空でしょう? あぁ、雲が掛かっていたら
そうじゃないじゃないって言う、揚げ足は抜きにしてね」
軽くルージュを引いた唇に、指を添え。クスリとその女性は
貴方に対し茶目っ気を含め、告げた。
稗田の視点が、髪のほうに向いてるのに気づいたのか。その
ピンク色の長髪をサラッと掻き揚げながら、気負う事なく答えた。
「あぁ、この髪の色が気になる? まぁ派手だと思うわ、けどちょっとした事情があってね。
元々、『私』の地毛は落ち着いた金色なのよ。でも、ピンクも良いと思うわよ。
花でもカーネーションは落ち着く色合いじゃない」
貴方と多少のお喋りを楽しむ猶予は、目の前の彼女にはあるようだ。
203
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/16(土) 00:04:18
>>202
「……何それ怖いな。
別に……洒落てるとかじゃあないし。」
「……ゲームの話だから。」
スッ
・・・・視線を少し上げる。
地面を見ていると余計暑いから。
帽子のおかげで、上からの暑さは、少しマシ。
「流石ガチ勢だ……
僕にはとてもできない……えひ。」
ミーン ミーン
ジジジジ
「空見てもめっちゃあつい……
まあでも……セミの抜け殻よりは癒されるな。」
それから――
「えひ、カーネーションか……
落ち着くってか、ひらひらなイメージ……」
無意識に、髪を見ていた事に気づく。
「……バンドマンか何か……?
コスプレ……ってわけじゃなさそうだが……」
恋姫自身の目も、桜色をしている。
暑さのあまり細まり、満開の夏桜とはいかないが。
204
:
遊部『フラジール・デイズ』
:2016/07/16(土) 00:34:46
>>203
「『バンドマン』……あぁ、そうね。そう言う見方もあるのよね。
次から、この髪の色を誰かが気にしたら、そう言う風な肩書だって言おうかしら。
もっとも、私は楽器は弾くより聞くほうが好みなんですけどね。
ショパンとか、モーツアルトとか」
長髪のピンクの髪の先を弄り、少しだけ思案した顔つきで
稗田の質問に対し、その女性は回答を探す様子を見せる。
「そうねぇ 謂わば……こんな言い方も奇妙だけど。『擬態』と
言うべきなのかしらねぇ」
フッ
女性は、僅かに馬鹿にするわけでもない。だが何処となく
何かに対し一笑するかのような微笑みを作り上げ、そう告げた。
「保護色、って言う言葉があるでしょう?
外敵から身を守る為、または狩猟の為に身を隠す為、とか。
まぁ、私の場合。前者の意味を兼ねた意味合いでのピンク色が、その
保護色に鳴り得る訳よ。この髪の色だと、そんなにお近づきになりたいと
思える物好きな方って少ないでしょう? そう言う理由かしらね」
私、余り人付き合いを好まないのよ。と、余り人好きとは言えない台詞を
人好きのする笑い方を交えて女性は言い切った。
何と言うか、気持ちの良い女性だ……気弱、とか。ネガティブと言うものに
縁が少ないようだと。少し話を交えただけでも、そう言う性格なのが見て取れた。
「貴方は、その『バンドマン』なのかしらね? 御免なさいね
私、芸能界とかそう言った風聞に余り価値を見出さなくてね。
貴方が高名な人だとしたら気を悪くさせてしまったかしら」
そう大人びた様子で、稗田の職を聞く。
205
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/16(土) 00:48:33
>>204
「クラシックってやつなのかな……?
えひ、BGMでしか聞いたことないかも……」
ゲームの、という意味だ。
実際にはCMとかで耳にする機会もある?
……どちらにせよ、意識してはない。
それから。
「擬態ぃ……?」
(なんだこいつ……
厨二入ってんのか……?)
「まあ……うん。一理あるかな……
絶対エンカしに行かない見た目だ……」
「……えひ。」
言葉選びが引っかかったけれど、
まあ、恋姫も人の事は言えない立場。
「いや……僕は……
もっと俗っぽいやつだよ……」
「そんなスーパーレアキャラでもない……」
えひ、と笑った。
レアくらいかな……と内心思う。
「にしても……あー。
揚げ足取っちゃうけど……」
少しだけ、躊躇ってから。
「……人付き合い苦手なら、何で僕に声かけたの?」
「コミュ力の経験値稼ぎ……とか?
えひ、僕も大した経験値持ってないよ……」
206
:
遊部『フラジール・デイズ』
:2016/07/16(土) 18:37:51
>>205
>コミュ力の経験値稼ぎ……とか?
パンッ 「冴えてるわねー。ご名答っ
こんな成りでも、話が弾むのなら、お茶の一杯を楽しむ
相手には十分でしょう? 誰かと気さくに、見知らぬ相手でも
引かせず、お茶の御相手…そう出来るのも才能の一種だと思うわ」
軽い手拍子を一度打ち、女性は笑みを見せて喋る。
「自分の悪いと思える部分は、他人から見るとそんなに悪く思えないけど。
それでも直したほうがいい部分は直すべきよね。
『私』が『わたし』で悪い部分は、私は誰かとお喋りするのが好きだけど
だけどわたしは人と付き合うのが臆病なのよ。ねぇ、滑稽でしょう?」
そう、女性は唇に指を添え小さく弾けるように笑う。
不思議な内容だ……だが、冗談なのか本気なのかは判別がつかない。
一頻り笑うと、女性は気分良さそうに伸びを一度して呟く。
「あー、お喋りって本当楽しい。けど、ずっとは無理ね 悲しい事に」
それは独り言めいていて、少し寂しそうである。
だが、すぐに笑顔を見せ稗田へ尋ねた。
「それで。Ex(経験値)の少ないそちらは、Ex(急行列車)に乗る程
お忙しくなければ、少し名前をお伺いしてもよろしいかしら」
軽いジョークを交え、女性は貴方に名前を聞く…。
207
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/16(土) 23:31:47
>>206
手拍子に視線を動かしつつ。
「えひ、正解しちゃったぁ……
豪華景品は期待して良い……?」
「才能ね……
まあ……でも……」
実際、話が出来ている。
初対面でも、だ――イージーな行為ではない。
「……」
「滑稽ってことも……
ないんじゃないの……
別に、常識的に考えても……」
短く返した。
「……」
笑みは浮かべづらかった。
その理由は自分自身意識してはいない。
「後ろから、炎の壁が迫ってくる……?
じゃないだろうけど、えひ……制限時間はあるよな。」
腕時計を見た。
それから。
「……稗田。稗田……恋姫。
わるいメタルスライムじゃないよ……」
「……お前、は?」
208
:
遊部『フラジール・デイズ』
:2016/07/17(日) 00:01:32
>>207
>稗田……恋姫
稗田の返事に、大きくゆっくりと頷きを示し女性は朗らかな笑み浮かべた。
「良い名前ねぇ。私、日本人の、ワビサビのある名前って好きよ。
私?
私は…… ――『レミ』 そう、呼んでくれれば良いわ。稗田さん」
互いに名乗りを示す。通りすがりに咲かしたお喋りとしては
他人から知人にランクは上がる。中々のベターな関係の築き方、と思って良い。
そして、腕時計を見た彼女を見て。空気を読んだのだろう、抑揚をつけて告げる。
「あらまぁ、こんな時間ね。お喋りは楽しいけど、時間があっと言う間に過ぎてしまう。
まるで白昼夢のように……
『不思議の国にまどろみて 日々のまにまに夢を見る 逝く夏のように夢を見る』
……ってね。それじゃあ、また何処かで会いましょう稗田さん。
願わくば、次に会う時はお茶でも一杯互いに振る舞いながら、お話ししたいわね」
そう、一つの木陰に腰を下ろしつつ。彼女……『レミ』は貴方へと
手をゆっくりと降り、別れを告げる。
その顔つきは晴れやかであり、貴方との次の来訪を幾分かは
本当に期待してるように思えた……。
209
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/17(日) 00:14:00
>>208
「…………?
レミ……ね、んじゃそう呼ぶ。」
外国人なのか?
と、思ったがそれはまあ、今は良い。
「……次あった時には、な。」
暑さも忘れて話し込んでいた。
不思議な時間だった――ように思う。
「えひ……時間制限がバグってたみたい。
まだ何分かしか、喋ってないつもりだったが……」
小さく、陰気な笑みを浮かべた。
快い種類の笑みだった。
「経験値貯めて待ってるよ……
今度は絶対暑くないステージで会おうな……」
「んじゃ……
恋姫は にげだした!」
クルッ
「……なんてな、えひ……」
トコ トコ
ほんの小さく手を振り、その場を去っていく。
次に会う時は――今日の事を忘れてはいないだろう。
210
:
遊部『フラジール・デイズ』
:2016/07/17(日) 22:23:39
>>209
「えぇ! それじゃあね稗田さん。貴方と『私』が
もう一度お喋り出来るの、楽しみにしてるわっ」
ゆっくりと、伸ばされた手は振られ……貴方の姿が消えるまで
『レミ』は手を振り続け、見送る。
「……」
そして、稗田が消えると共に彼女は笑みを保ち再度木々を見上げる。
……ザッ
だが、そんな彼女に十秒足らずで、近づく足音が一つ。
ゴ ゴ ゴ
ゴ ゴ ゴ……。
『……試運転としては、どんな調子だい?』
その人影は、青年ような声色で『レミ』に語り掛ける。驚く事なく
微笑みを張り付けたまま彼女は振り向く事もせず告げる。
「そうねっ。中々好調ではないのかしら? けれど、残念ね。
あの娘、とっても気立てが良さそうな娘だったのに。私がこんな
継ぎ接ぎの存在だって知ったら、がっかりするじゃないの?」
『それも、必要な事だ。僕等にとって、そして彼女にとって……
道のりは険しく長くも、手順を踏んでいかなければならない。
レミ……それは、君も分かっている筈だ。
――全ては 玲美の為なんだから』
ゴ ゴ ゴ
ゴ ゴ ゴ
ゴ ゴ……
「フフッ。貴方も中々屈折してるわねぇ? もう少し柔軟に
ストイックに気持ちのままに生きてみたら? ねぇ ――」
『……解除』
『……レミの役柄は、上々だ。けど、まだ場数を慣れさせないと。
待っててくれ……玲美。僕が きっと……』
ピンク髪をした、華奢なワンピースを纏った女性がいる。
その女性は、何処か思いつめた横顔と共に、低い男性のような
声を発しつつ森を後にした……。
211
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/26(火) 23:13:28
ウロ
ウロ
帽子を被って日よけして。
スポーツドリンクも持参した。
「……」
スッ スッ
スマートフォンをしきりに動かす。
自然風景の撮影? 否。
ミーン
ミンミン
ミーーーーーーーン!
「……」
(夏特有のBGMいらない……
音量調整も出来ないクソゲーだ……)
イヤホンでもつけて歩けばいいか――
しかし今は、音楽で充電を減らす暇などないのだ。
恋姫はスマホの画面越しに、電子の世界のモンスターを探しているから……
212
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/29(金) 00:40:25
>>211
「ふん、ふん、ふふん」
電子の世界のモンスターではなく
現実の世界の人間が現れた。
ただし野性の存在ではない。
「ふん、ふふん」
コインを投げ上げる。
数枚のコインがきらきらと陽の光を反射する。
「はい」
ぱっと、宙にある数枚のコインを一度にキャッチした。
「ん?」
気づいたようだ。
213
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/29(金) 01:13:44
>>212
(……なんだあいつ……
『ジャグリングジャグラー』か? えひ。)
チラ…
少しだけ視線を遣った。
が、モンスターではない。
画面は向けないまま――――
「……」
ビクッ
・・・どうやら目が合ってしまったらしい。
だからと言って、勝負が始まるわけではないが。
「……なんだよ。」
「おひねりとかは……
コインいっこもないからな……」
ジリ
恋姫はやや眉の八の字をより深める。
これはすわ、大道芸人か――という警戒である。
214
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/29(金) 01:34:58
>>213
「いえ。コインもおひねりも必要はありませんよ?」
「私、暇を持て余しただけなので」
黒い髪、黒い瞳。
だが、その瞳は黒すぎる。おそらくカラーコンタクトだろう。
薄手のカーディガンを羽織り、ズボンをはいている。
服はゆったりとしたサイズのものを着ている。
髪には前髪を分けるために四つ葉の装飾のヘアピン。
「あぁ、警戒なさらず。私、雑賀華(さいか はな)と申します」
「サイカでも、ハナでもお好きなように」
手のコインをカーディガンのポケットに突っ込む。
握り込んだ拳をポケットから出して、開いて見せた。
その手には一輪の花。
「いります?」
215
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/29(金) 22:56:50
>>214
「あっそ……じゃあいいか……」
フン
鼻を小さく鳴らして、スマホを持つ手を下ろす。
恋姫は桜色の瞳を細めた。
そこに、突然一輪の花が映りこんだ。
ビク…
「花とか。えひ。キザすぎるぜ……乙女ゲーかよ。
そういうのはさ……ほら、事務所通してくれなきゃ……」
「このご時世だし……
警戒しちゃうかな……」
ダウナーな語調で、恋姫は拒否した。
もちろん手品には少しだけ、目を丸くしたが――
「……」
それを口に出しはしない。
「なあ、その花……いつでも仕込んでるの……?」
「常備アイテムなの……?」
・・・何となく気になって、そんなことを聞いてみるのだった。
216
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/29(金) 23:32:45
>>215
「事務所、ですか……」
「弱りました。どこに電話をすべきなのか、見当が付きませんので」
「それに、警戒もごもっとも」
また、ポケットに手を突っ込んで花を戻す。
俯きながら上目づかいでその眼を見る。
そして、顔に微笑みが浮かぶ。
「常備? 常備、ですか?」
「どうでしょう? 確かに、持ち歩くことは多いですが毎日ではないですし」
「準☆常備、ですかね」
217
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/29(金) 23:42:06
>>216
「……冗談で、言ったんだぜ。
こういうの、言わせんなよな恥ずかしい……」
「まあ……冗談でも、
受け取りはしないけど……」
それについては気持ちの問題だ。
黄色い声を上げるような、がらでもない。
「……えひ。なんだよ、そのテンション……?」
『☆』。
「この暑いのに……」
何だかわからないが、
……☆が見えた気がする。気のせいか?
「スター性に全振りしてるのか…………
じゃあ……他にも何か……仕込んでるの?」
「マジシャンなの……?
それとも怪盗か……えひ。」
それほど長話をするつもりもなかったし……
別に、マジックが好きというわけでもないけれど。
・・・・話の掴み、という意味では、花は実を結んだのか。
218
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/30(土) 00:11:52
>>217
「そうですか。それはますます残念」
「? テンション、ですか? いたって平常、ですが」
うそぶく。
大げさに両手を挙げて見せて。
ちょっと姿勢が☆っぽい。
「スター性なんて、仕込んでおりませんよ」
けらけらと雑賀が笑う。
そして、ズボンの裾をめくり、偽物らしいナイフを取り出す。
ズボンの後ろポケットからはカード。
「色々仕込んでますけど」
「色々な場所に。でも、マジシャンではありませんよ?」
「手品が趣味なだけです。えぇ、それだけですよ」
219
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/30(土) 00:20:18
>>218
「えひ……ハイテンションに見えるけど……」
「まあ……そう思うなら……
お前の中ではそうなんだろうぜ……」
『☆』。
ワザとではないのか……?
そうは思えないので、陰気な笑みを浮かべた。
「……」
ビク
そしてナイフに多少驚く――
「……えひ。」
「装備が趣味全開すぎる……」
が、次々出てくる手品っぽいアイテム。
趣味とは言うが、これは驚く。
「さっきの……あの、コイン。
あれもなんか、手品の奴なの……?」
「別にそこまで興味あるとかじゃ……ないんだけど。」
ややわざとらしい口調で否定を付け加えつつ、聞いてみるのだった。
220
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/30(土) 00:44:57
>>219
「どうでしょう。私自身、私を理解しているわけではないので」
「そういうものかと」
似たように笑って見せる。
といっても、物まねのセンスはない様だ。
「偽物ですよ」
刃を押すとかしゅっと持ち手の中に刃が沈む。
やはり偽物。
いや、本物を持ち歩いていた方が不味いのだが。
「コイン、ですか?」
「あれは種も仕掛けもないものですよ」
「手品でも使いますがね」
くるくるとナイフをまわす。
221
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/30(土) 00:57:07
>>220
ものまねとは分からなかった。
本物ほど陰気ではないなら、いいことだ。
「えひ……まあ……
現実にステータス画面は無いし……」
「自分を理解とか、難しすぎ……えひ。
自分探しの旅は超大作RPGだよ……」
恋姫はもっと陰気に笑って、言った。
それから。
「まあ……そりゃそうだ……」
と、ナイフを見て呟いた。
本物のナイフのはずがない。
「ふうん……」
ジ…
「えひ……TECのステータス高そう。
それこそステータス見なきゃ、解らないけど……」
「サブクラスは大道芸人……?」
それはさりげないが、見事な気がした。
ナイフを回す動きを、猫のように、なんとなく目で追う。
222
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/30(土) 01:19:09
>>221
「スマホゲームの次はRPGですか」
「ゲーム、お好きなんです?」
あまり陰気な気配のない人間だった。
しかし陽気という訳でもなさそうではある。
相手の方を見ているが、どこか別の所を見ているような気もする。
「テクニックは重要ですよ。手品に置いて。いえ、人生において」
「芸を支えるものは人生を支えるものです」
「大道芸人よりは吟遊詩人や遊び人でありたいですね」
手の甲も使ってナイフが回転する。
くるくるくるくる。
ふわりとナイフが宙を舞う。
ナイフが雑賀の胸の辺りまで落ちてくる。
雑賀は両腕を胸の前で交差するように振る。
そして、手のひらを向けて両手を上げる。
ナイフはなかった。
「あなたのサブクラスはトレーナーでしょうか?」
「電子の海にモンスターを探す、一流トレーナー」
223
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/30(土) 01:40:48
>>222
「ゲームは大好きだよ……
嫌いならこんな事言わないぜ……えひ。」
視線に違和感を多少感じた――
が、それを形には出来なかった。
恋姫はナイフを見る。
見ていると、消えた。
「おぉ〜〜……」
パチ パチ…
やや湿った、うるさくない拍手。
「えひ、吟遊詩人か……
確かに詩的な言い方する……」
芸は人生を支える。
何となく、恋姫はそれを実感できている。
「僕は……メインクラスがゲーマーかな……?」
「別にトレーナーだけじゃないし。
サブクラスは……隠し職業。えひ。」
別にどうしても隠す物、でもないけれど、自分から言うほどでもない。
恋姫は暗く、悪戯っぽい表情を見せて。
「…………詳しいのか? ゲームとか。」
今の物言いに、若干の『理解』を感じた気がするから、だ。
224
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/30(土) 23:37:16
>>223
「なるほど。いかにも現代人的……いえ、そうでもないですかね」
腕を組み、うんうんとうなずく。
「隠し職業? それはそれは、少し気になりますね」
「かなり気になります」
小首をかしげる。
それから腕を下す。
だらりとカーディガンの袖が手のほとんどを隠す。
「ゲームです? いえいえ、詳しいというほどでは」
「人並み、でしょうか。なにをもって人並みとするかは不明ですが」
「しかし、ゲームの知識はあります」
ポケットからスマホを取り出し、指し示す。
カバーのつけられていない白いスマホだ。
「先ほどやられていたものがどういう類のものかは分かりますよ」
225
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/30(土) 23:59:01
>>224
「……お前だって現代っ子だろ。
常識的に考えて……違うのかよ。」
エヒ
「なんか違うなら面白いけど……
それこそ、ゲームみたいに……
いや……どっちかと言うと、ラノベ感か。」
などと、1人で何か納得したように言う恋姫。
その表情は笑みだが、暗い。
「隠しは隠し……えひ。
フラグが立ってないから、教えない……」
そして、一応のヒミツってものも、暗く隠す。
それはたぶんきっと、単なる雑談の延長のようなものだった。
「……分かるのか。
えひ、まあ……あれは、な。
リア充でもわかるくらい、人気だし……」
チラ
下げていた画面を、上げた。
伏せがちだった目が、少し大きく広がる。
「……レアなのキタコレ。」
ソワ
何か、良い物があった――というのは、いらない説明かもしれない。
226
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/31(日) 00:22:49
>>225
「確かに、私もそうでした」
はっとしてみせる。
しかし、どこか嘘っぽい顔だ。
「しかし私がもしもなにか特殊な事情を持っているなら、現代人ではないでしょうね」
「自分のことを理解できていないので可能性はあります」
今度は真面目に頷いて見せる。
ころころと表情の変わる奴だった。
「おっとそれは残念、でもないですかね」
「隠し事を暴かれるのは手品の天敵」
「私が暴く側に回るのはまずいでしょう」
手品師を気取る雑賀。
しかし、たしかに手品をしている側からすれば死活問題。
その恐怖を雑賀は知っている。
「おぉ、レア。それは素晴らしい。じつにじつに」
「私の手品でも、電子データは取り出せませんから。えぇえぇ」
「おめでとうございます」
227
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/07/31(日) 00:37:41
>>226
「……えひ、なんだそりゃ。
自分探しRPG、レベル1って感じ……」
エヒ
くすくすと笑う。
真面目な顔、ウソっぽい顔。
悪意のある嘘は大嫌いだが、それは感じなかった。
あるいは巧妙に隠されていたのかもしれないけれど。
「僕のは手品じゃないけど……
まあいいや、詮索されるのもだし……」
「それに……」
ソワ
ソワ
画面に視線を向ける恋姫。
このゲームでは……レアは出て終わりじゃない。
『捕まえなくては』――!
「えひ、タネ明かしする時間もないし……
ありがとな……んじゃ、早速捕まえに行くから……
こればっかりは……消えたら、ポケットから出たりしないし。」
「……あ、僕……『稗田』。
えひ、苗字くらい教えてやんよ。んじゃ、おつ〜」
トコ
トコ
そうして、恋姫は雑賀の前から歩き去った。
電子の世界を追い求めたから、だが――現実の繋がりも、出来たかもしれない。
228
:
雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』
:2016/07/31(日) 00:45:37
>>227
「さようなら、稗田さん」
ぺこりと頭を下げた。
そして、ぱっと袖からナイフが飛び出る。
しっかりとそれを手で握った雑賀。
ナイフをまたズボンの裾の方へと戻す。
「綺麗な方でした……そしてとても不思議な……」
「おっと、悪い癖」
「……少々、どうしたものでしょうか……はぁ……」
コインを取り出し、コイントス。
「どちらでも。たまにはおしとやかでありたいものですが……」
雑賀はコインを掴んだ。
その結果と、それからどうなったのかは雑賀だけがしっている。
229
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/09/15(木) 23:08:56
ある晴れた日の昼下がり、湖の手前にある木陰に、一つの人影が腰を下ろした。
洋装の喪服姿と、それに合わせたような黒のキャペリンハットを身に着けた、黒衣の女だ。
涼しい風が吹いているせいか、まだ残暑が残るこの時期にしては、今日は比較的過ごしやすい一日と言える。
パカッ
おもむろに、ハンドバックの中から小振りのランチボックスを取り出し、その蓋を開ける。
中に詰められているのは、手作りのサンドイッチだった。
表面を軽くトーストしたパンにマーマレードを塗り、たっぷりのパセリと、薄く切ったハムを挟んである。
やや奇妙な取り合わせだが、これが好物なのだ。
一口齧ると、ハムの塩気とマーマレードの甘みとパセリのほろ苦さが一つとなり、口の中に広がった。
目を閉じて、それを静かに味わう。
――そう……。彼も、この味が好きだった……。
ふと、そんな思いが胸の奥を掠め、誰ともなしに薄っすらと微笑んだ。
230
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/09/18(日) 00:16:16
>>229
「…………あ」
ザ
やや俯きがちに歩いていた。
やや遠くから、その女性を見た。
その黒い装いには、見覚えがあったからだ――場所含め。
「……」
(何笑ってんだ……?
思い出し笑いかな……)
(女子力高そうな物持ってんな)
ランチボックスと、手に持ったサンドイッチが目に入る。
女子力に、基準値の低い目を細めつつ。
(まあ……別に、邪魔するわけじゃ、ないし……)
(背景の村人Aみたく……
通り過ぎさせてもらおうかな……)
木陰の前を、通り過ぎる。
別に、気づかれなくても、良いし。
気づかれたとしても、それはそれで、別に良いから。
231
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/09/18(日) 00:48:31
>>230
目の前を通り過ぎていく見覚えのある少女。
それに気付いていないのか、やや俯いた状態で、沈黙を守っている。
スッ
やがて、おもむろに顔を上げる。
そして、立ち去りかけている少女の背中に声をかけた。
「――こんにちは」
少女に呼びかける声は柔らかい響きを持っていた。
その口元には、穏やかな微笑をたたえている。
「お久しぶりね。稗田さん」
少女の特徴のある桜色の瞳は、強く印象に残っていた。
そういえば、以前に彼女と出会った場所も、ここだった。
思いがけず、また会えたことは、嬉しいことだった。
232
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/09/18(日) 01:02:52
>>231
「ん…………」
ピタ
クル
「……よう」
恋姫は、掛けられた声に、振り向いた。
同じような――しかしもっと陰気な微笑を浮かべて。
「えひ、久しぶり……
ここでよくエンカするな……」
ニタ
「あー、小石川……さん。」
あまり、人に敬称はつけないのだが、
何となく釣られて――さん、と付け足した。
ヒョイ
やや離れた位置の、木陰に腰掛ける。
「何してんの……
女子力のトレーニング……?」
「えひ、飲み物がココナツウォーターとかなら完璧だぜ」
女子力という言葉は何となく湧いただけだが、言ってみた。
233
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/09/18(日) 01:34:44
>>232
「覚えていてくれてありがとう……」
傍らに腰を下ろした少女に、まず感謝の言葉を述べる。
「――そうかも、しれないわね」
そう言って、くすりと笑う。
やや悪戯っぽさを感じさせる、ほんの少し明るい笑い。
真夏の太陽とまではいかなくても、雪が降り止んだ晴れた冬の日のような笑いだった。
「もし良かったら、食べてみてもらえないかしら。
味を見て欲しいの。口に合えばいいんだけど……」
おもむろに、手の中にあるランチボックスを差し出した。
そこには手頃なサイズに切られたサンドイッチが幾つか入っている。
少なくとも、見た目は綺麗に整っているようだ。
「――ラベンダーティーならあるわ。
これを飲むと、気持ちが落ち着くから……」
バッグの中から小型の水筒を取り出して、そう付け加えた。
234
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/09/18(日) 01:45:58
>>233
「えひ。昔のゲームじゃないし……
セーブデータは簡単には消えない……」
「……」
ス
座る位置を少しずらした。
小石川のランチボックスに、手が届く、ように。
「味見ぃ……?」
ニタ
提案に少し笑みを深めて。
「まあ……んじゃ、貰おうかな。
砂糖と塩、間違えるようには見えないし」
(今日はオフだし……貢物、とかじゃないしな……)
多分、おいしいだろう。
見た目もそんな感じがする――ひと切れ、取った。
「ラベンダーティー……
えひ、なんか……しゃれおつぅ」
「……いただきます」
モッ
小さな口を開いて、静かに、手のひと切れにかじりついた。
235
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/09/18(日) 02:08:27
>>234
「――どうかしら……?」
恋姫がサンドイッチを口にしたのを確認して、静かに尋ねる。
どちらかというと、あまり一般的ではない取り合わせなだけに、口に合うか少々不安もあった。
ハムとパセリとマーマレードのサンドイッチ――少し変わった味がするかもしれない。
一口食べれば、塩気と甘みとほろ苦さが一つになり、口の中に広がるだろう。
「私は、この味が好きなの……。
色んな味が一度に感じられるから。それに――」
一度言葉を切り、そして再び口を開く。
「私が愛していた人も、この味が好きだったから……」
それは、まるで遠い過去を振り返るような口調だった。
しかし、実際には、それほど昔のことでもないのだ。
未だ心の中に強く残る傷が、そのことを裏付けている。
「――お茶をどうぞ」
恋姫が食べ終わるのを見届けてから、水筒のカップにラベンダーティーを注いで差し出す。
季節に合わせているらしく、よく冷えているようだ。
236
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/09/18(日) 02:19:03
>>235
モッ
モッ…
ゴクン
「……食べた事無い味だぜ」
飲み込んでから、恋姫は短く、そういった。
(ハム……と、マーマレードと。
この苦いのなんだ……パセリか?)
口の中に残る味。
不思議な――重なり合う味だ。
「けっこう美味しい……かな」
・・・悪くはない。
「……」
「…………ん、ありがと」
重なるのは味だけでなく、思い出も――なのかもしれない。
恋姫はやや重い物を感じつつ、カップを受け取り、口をつけた。
クィ
「えひ、つめた……」
237
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/09/18(日) 02:47:29
>>236
「――そう……。良かった」
胸をなで下ろし、微笑みを浮かべる。
「少し冷やしすぎたかしら。ごめんなさいね」
そう言って、軽く頭を下げる。
やがて、緩やかな風が、二人の間を通り過ぎていく。
少しの沈黙が流れ、ややあって、静かに声をかける。
「――今、私はこの町で叶えたいと思っている目標があるの……。
稗田さんにも、あるのかしら?」
何か含みのある口調だ。
もしかすると、『Veraison』のことを言っているのかもしれない。
この町に住んでいる住人なら、その存在を聞くこともあるだろう。
実際、その通りなのだ。
つい最近、星見街道を歩いている最中に、ふと小耳に挟んでいた。
「お互いに、叶えられるといいわね……」
そう言って、恋姫の方に向き直り、ふわりと笑った。
238
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/09/18(日) 03:03:23
>>237
「今日は……まだ、暑いし……」
「美味しいよ」
ク
喉を小さく鳴らして、カップ一杯飲み干した。
緩やかな風も、快さを後押しする。
「目標か……
……えひ。唐突だな」
「…………あるよ」
知られていても。
・・・いなくても、同じこと。
「叶っても、エンディングじゃないから……」
「早く、叶えたいな……えひ」
陰気に笑った。
それ以上何かをつけたすことはない。
穏やかな沈黙か――あるいは、小石川が何かを返すか。
少し、この、快い時間に……身を任せてみたいのかもしれない。
239
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/09/18(日) 03:25:16
>>238
「挫けそうになった時、稗田さんのことを思い出したかったから、かしら」
自分の心に問いかけるように胸に手を当て、ぽつりぽつりと話し出す。
「もし――私が挫けそうになった時に、
自分と同じように頑張っている人がいることを思い出せたら、
それが支えになってくれると思えたから……」
自分にとっては、それが文字通りの意味で命綱となってくれるかもしれない。
「だから、稗田さんには、これからも進んでいって欲しいと思うわ。
勝手な考えかもしれないけど……」
「私も、頑張るわ……。
自分にできる限り……。精一杯……」
「だから稗田さんも、何かあったら、
私のことを思い出して少しでも励みにしてもらえれば嬉しいわ……」
その後は、何も言わなかった。
後に残るのは、似て非なる二人の人間と、静かに流れ行く時間だけだ――。
240
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2016/09/18(日) 04:52:03
>>239
「…………ん」
コク
恋姫は――小さく頷いた。
思い出したい――という言葉に?
励みにして欲しい――という言葉に?
あるいは両方かもしれない。
恋姫は、人に希望を与える存在――アイドルだから。
支えとなる人の存在というのは、誰にとっても嬉しいから。
「………………」
「えひ」
それから、最後に、こらえきれないように少し笑って。
・・・時間は、静かに流れていく。
241
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/10/15(土) 22:47:42
――AM9:00――
いつ来ても、この場所は居心地が良い。
湖の周りを散策しながら、改めてそう思う。
この町で暮らし始めてから、できる限り多くの場所に足を運ぶようにしているが、
ここには特に惹かれるものを感じていた。
樹木の香りや枝葉の揺れる音に囲まれていると、
自然と心が落ち着き、穏やかな気分になれるからだ。
ここにいれば、胸の奥にあり、時折表に出てきては心を悩ます『誘惑の囁き』を、
一時だけ忘れることができる。
この自然公園は、いわば心の安息所のような場所だった。
しかし、この町のいい所は、ここだけではない。
今日は、一日かけて、町を回ってみるつもりなのだ。
深呼吸して森の空気を味わい、しばしの森林浴を楽しんだ後で、次の場所へ向かって歩き出した。
242
:
神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』
:2016/12/18(日) 00:40:43
ある日の夕暮れ。
人もほとんどいないような時間。
シーズンならバーベキューを楽しむ人たちでいっぱいになっているはずの場所にそいつはいた。
『よき体を作るものは』
「いいトレーニング」
『そして?』
「食事」
燃える火。
そしてその火に焼かれる多くの肉。
たった一人でバーベキュー、ではない。
その傍らには赤褐色の人型ヴィジョン。スタンドが一体。
しかしこの二人、肉の焼き加減を見守っているわけではない。
『そこ、またズレたぞ!』
「……」
ダンスを踊っていた。
243
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/20(火) 00:09:34
>>242
人気もほとんどなくなり、穏やかな時間が流れているその場所に、もう一つの人影があった。
洋装の喪服を身に纏い、その上からやや色味の違う黒いコートを羽織り、黒い帽子を被っている。
ふと、夕方の自然公園を少し歩いてみたくなり、散歩に出てきた途中なのだ。
不意に、その足が止まり、ある一点に視線が集中した。
――……?
男性の傍らに、見慣れない『誰か』がいる。
その姿に興味をそそられ、そこに立ち尽くしたまま、目の前の光景を見つめる。
無意識の内に、静かに見守るような形になっていた。
244
:
神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』
:2016/12/20(火) 00:24:27
>>243
『ここの振り付けは、こうだ! こう!』
「大将?」
『どうした?』
「確かに、僕普段使わない動きをトレーニングに入れたいなーって言ったよ?」
『あぁ』
「でも恋ダンスは違うくない?」
切れのいい動きで踊る人型。
本体らしい男は困った様子で頭を掻いている。
「肉焦げちゃうよ」
『よし、いったん休憩だな』
焼けた肉を紙皿の上に乗せる男。
そこで、あなたと目が合った。
「わ、人がいる」
245
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/20(火) 00:46:36
>>244
「こんにちは」
挨拶と共に深く頭を下げた。
肌の色は新雪のように白い。
身に着けている衣服の色のせいで、それが余計に際立っている。
「ごめんなさい。失礼とは思ったのですけど――」
「その――少し気になってしまったものですから……」
そう言って、申し訳なさそうに顔を伏せる。
見つめていたことに気付かれたという気恥ずかしさのせいか、頬には若干の赤みが差していた。
まもなく気を取り直して、再び顔を上げた時には、頬の色は元に戻っていた。
「何かスポーツをなさってるんですか?」
穏やかな、しかしどこか陰のある微笑みを浮かべて、そう尋ねた。
246
:
神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』
:2016/12/20(火) 00:55:38
>>245
「あぁ、どうも。こんにちは」
頭を下げる男。
黒と金がまじりあった長髪を一つ結びにしている。
服もまた黒と金がまじりあうジャージだ。
その上にジャンバーを羽織っていた。
「気にすることじゃないよ」
『うむ。その通りだ』
にこりと笑って言う言葉を隣の人型が後押しする。
「スポーツっていうか、ダンス?」
『いや、これもプロレスだ。プロレスである。プロレスだろう』
「うん。ちょっと黙ってくれないかなぁ」
『なっ……』
247
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/20(火) 01:21:40
>>246
「お気遣いありがとうございます」
まず男性を見て、それから人型の方へ視線を移す。
線の細い自分とは対称的に、筋骨隆々とした姿からは、生命力に溢れている印象を受ける。
おそらくは本体であろう男性を反映しているのだろうと思えた。
『彼』が何者なのかは、最初に見た時から。おおよそ理解はしていた。
それでも、珍しいことには変わりがない。
今までに、自分のもの以外のスタンドを見たことは少なかった。
「プロレス……ですか?そう――プロレスをされてるんですね……」
人型の言葉を受けて、小さく頷き、何気なく呟いた。
スタンドはスタンドを使う者にしか感じ取れない。
目の前にいる男性――神原が、そのことを知っていたとしたら、
この喪服の女もスタンド使いだということが分かるだろう。
248
:
神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』
:2016/12/20(火) 01:28:27
>>247
「そう。僕はレスラーなんだ」
『そして俺がトレーナーだ』
「ん?」
肉を噛みしめながら小首をかしげる。
しばしの思案。
「大将が見えるの?」
『師匠と呼べ』
「師匠、ああもういいや。君もそういう人?」
そういう人。
つまりはスタンド使いであるのだろうか。
男は念のために確認した。
249
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/20(火) 01:50:59
>>248
「はい」
投げかけられた質問に対し、特に隠すこともなく、呆気ない程に素直に肯定した。
敵対的なスタンド使いに出会ったことがないため、警戒心が薄いというのもある。
元々の性格として、嘘をつくことを好まないからというのも理由の一つだ。
何よりも、この男性が悪い人には見えなかったからというのが、一番の理由だった。
「私も同じものを持っています」
「そちらのトレーナーさんのようにお話はできませんが……」
「見せていただいたお返しに――私も少しお見せします」
利き手である左手を持ち上げ、軽く握る。
すると、その手の中に一振りの『ナイフ』が出現した。
その後ゆっくりと手を開くと、『ナイフ』の像は徐々に薄れ、最後には霧のように掻き消えた。
250
:
神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』
:2016/12/20(火) 02:00:17
>>249
「わぁ、ナイフか」
『俺とは違うタイプのスタンド』
男自身もあまり自分のもの以外を見たことがないのだろう。
素直に驚いた声をだす。
「ナイフかぁ。使いどころありそうだなぁ」
「料理するときとか……あ」
「食べる?」
バーベキューの網を指さし問うた。
251
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/20(火) 23:09:20
>>250
「誘って下さってありがとうございます――」
「では……お言葉に甘えて、少しだけお邪魔させていただきます」
少し考えてから、そう答えた。
見知らぬ男性とバーベキューをするというのは、傍から見ると奇妙な光景だろう。
しかし、自分と同じような人間と出会えたことは嬉しいことであり、もう少し話をしてみたかった。
こうして町の中でスタンド使いに出会うことはあまりない。
もしかすると、自分でも気付かない間に出会っているのかもしれないが……。
「こちらには、よく来られるんですか?」
252
:
神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』
:2016/12/20(火) 23:39:25
>>251
「好きなだけ食べてね。お酒が好きならそれもあるよ」
こんと足で蹴った先には箱型のカバン。
その中に酒もあるのだろう。
「はい。紙皿と割りばし」
『しっかり食ってトレーニングッ。それすなわち肉体増強の道なり』
肉を焼き、野菜も焼く。
次々と肉をひっくり返し、紙皿の上にのせていく。
「こっち、か。トレーニングできるならどこにでも。面白いもの、刺激のあるものがあるならどこにでもいる」
「巡業中はいろんなところ行くけど、コッチでの試合も結構あるから」
253
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/21(水) 00:03:39
>>252
「どうもありがとうございます」
左手で割り箸を、右手で紙皿を受け取る。
両方の薬指にある結婚指輪が、夕日を受けて小さく光っていた。
「お酒は嫌いではありません」
「ですけど――今日の所は、お気持ちだけいただいておきます」
そう言いながら、先程からの陰を帯びた表情で、穏やかに口元を綻ばせた。
アルコールは必要な時だけ摂ることにしている。
幸いなことに、今はその時ではなかった。
「色々な場所へ行かれてるんですね」
「私は存じ上げない世界ですけど……」
「もし、この町で試合をされるのなら、私も一度拝見させていただきたいです」
254
:
神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』
:2016/12/21(水) 00:41:54
>>253
「そう。残念だなぁおいしいのに」
おかまいなしに男はカバンから酒瓶を取り出す。
ブランデーであった。コップに注ぐとそれを一気にあおる。
「うん。ぜひ来てね」
「マスメディアが盛り上げてくれる分僕らも頑張るからね」
「今は休みの期間だからチケット持ってないけど」
「あ、神原幸輔(かんばる こうすけ)の名前があるポスターがあったらその団体のチケットを買うといい」
「僕が出てるからね」
255
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/21(水) 01:13:13
>>254
「神原さん――ですね。分かりました。その際は是非……」
ちょうどいい焼き具合になった肉と野菜を網から拾い上げ、口の中に入れる。
「おいしいです」
素直に感じたままを口にし、柔らかい笑みを浮かべた
野外でバーベキューというのはあまり馴染みがないため、自分にとっては新鮮な経験だった。
なによりも、自分と同じような人間――スタンド使いと会話していることで、
心の触れ合いを感じていることが大きいのかもしれない。
「私は何も差し上げるものがないのですけど……」
「今日ここで出会った記念に、せめて名前をお教えしておきます」
「私は小石川――小石川文子といいます」
そう言って、再び微笑んでみせた。
256
:
神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』
:2016/12/21(水) 22:17:48
>>255
「それはよかったよ。いいお肉かったからね」
「おかげで素寒貧だけど」
『レスラーは男を売るのだ。即ち見栄の商売なりッ!』
「うん。師匠はお金払わないもんねぇ」
また酒をのむ。
今度は瓶から直接ラッパ飲みだ。
「小石川さんかぁ。よろしくね」
『さぁ、幸輔踊るぞッ』
「え? ほんと?」
二人はまた踊り始める。
それは先ほどよりちょっぴりうまい踊りだった。
257
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/21(水) 23:42:05
>>256
息の合った二人のやりとりを見て、自然と口元が緩む。
同時に、ほんの少しの寂しさが胸の内をよぎった。
いつでも誰かが傍らにいてくれる。
かつては自分のそばにも、そんな人がいた。
幸せだった時のことを思い出して、その顔に浮かんだ陰の濃さが、不意に増す。
「――ふふッ」
しかし、再び目の前で踊り始めた二人の姿で、その暗さも打ち消されてしまった。
つられたように、自身も小さく笑う。
先程よりも、少し明るい微笑み。
それが彼らによってもたらされたものであることは言うまでもない。
しばらくの間、自分に明るさをくれた二人を、優しい視線で見守り続けていた。
258
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/02(木) 01:22:45
相変わらず主人は見つからず。
近辺にいるとされる『大柄で声の大きい変態女装不審者』の足取りも掴めず。
仕方がないので社会奉仕をするのだ。
カラン ガサガサ
「ポイ捨て厳禁の看板のそばなのに汚すぎます!!!!!!!」
バサリ
「うわあああああああエロ本ですよ!!!!!破廉恥!!!!」
259
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/03(金) 22:27:22
>>258
(……)
そんな時、たまたま通りかかった一人の少女
(な、なんか変なの見つけちゃったぁあああ!?)
思わず声が出そうになるくらい異様な出で立ちの…?
とにかくよくわからないがうるさい人の姿を見かけた
(まさかアレが、いま噂の…『大柄で声の大きい変態女装不審者』!?)
もし違ったら失礼だなーと思いつつも
改めてその姿をじっくり見てみるのであった
260
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/03(金) 23:00:04
>>259
君が公園で偶然発見してしまったその不審者疑惑の珍獣は、
『メイド服』を着用している20代くらいの体格のいい男であった。
『執事服』ではないのだ。『メイド服』だ。
男が膝ほどの丈のワンピースとフリルの装飾のエプロンを着ている。
なるほど異様な出で立ちである。
「しかも!!!!5冊も!!!!」
「虫が!!!!!!湧いてます!!!!!きったないですよ!!!!!!」
トングと町指定のゴミ袋を手に、どうやら『ゴミ』拾いなんかをしている様子だ。
ギ ョロ
顔を向けてきた。左目に眼帯をしている。かなり不機嫌そうな表情。
…という訳で、君と男の視線が合ったぞ。
261
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/03(金) 23:12:21
>>260
(うわー、でっかい声でゴミ拾いしてるよー…
一見すれば……ボランティア活動だけど)
そして、その体格のいい男の格好を見れば
まさにメイド服である
(…なんだか、噂のそれとかなり合致するんだけど…)
どうしようかどうしようかと思っていると
「むぅっ!?」
顔をこっちに向けてきて、ゾワッとした表情になる
「あ、えーっと…
何をして…らっしゃるのでしょう…?」
思わず敬語で震えた声で話しかける
(だだだ、大丈夫…
いざという時にはスタンドを使えばなんとかなる…
変質者とかそういうのなんて怖くない…!多分……)
262
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/03(金) 23:21:49
>>261
「『奉仕活動』です」
即答された。
バサバサ
ガサガサ
男は小汚い18禁雑誌をゴミ袋に放り込むと…
「……」
「………何か捨てるなら…」
ゴミ袋を前に突き付けながら烏丸にノシノシと接近!
263
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/03(金) 23:25:43
>>262
「えーっと…つまりボランティア?」
と、彼の様子を見ながら答える。
(別に悪いことはしてなさそうだけど…)
若干警戒心を薄めようとしたが、そんな時、
「え、え!?」
のっしのっしと接近してくるメイド服の男!
ゴミ袋を持ってくるが
「い、いえまだ何も捨ててはいませんが!」
と、ふと思い出した
「あ、そう言えば…
ゴミは持ってましたが…」
コンポタの空き缶を持っていたことを思い出し、
軽くその手を上げた
「えっと、もちろん…
ゴミ箱に捨てますとも……」
264
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/03(金) 23:39:26
>>263
「でしたらこの袋にどうぞ」
「この辺りはゴミ箱が少ないので、探すのも一苦労ですから」
「…どうぞ!」
男は表情を緩めると、ゴミ袋の口を開けて見せた。
「……そいうえば、俺の顔に『何か』ついてますか?」
「…身だしなみが崩れていましたか?」
君の不審げな態度に不思議そうにしている。
265
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/03(金) 23:45:37
>>264
「えーっと、はいどうも…」
割りと普通そうな人だなーとか思いながら
ゴミ袋の中にコンポタの空き缶を
(…投げ込んだら怒りそうかも…)
と考えて投げずに
そーっと入れた。表情はまだ固い
相変わらず不審者かもみたいな目線は消えないでいるが…
「え、えーっと…?なにか…ですか?」
と言われて少し悩む
「うーん…いや、身だしなみは崩れていないというか…
その…その格好はなんでしてるんです?」
思い切って、そのメイド服に目線を向けた。
気になってしょうがなくなってきたのである。
266
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/03(金) 23:57:34
>>265
「はいはい、ありがとうございます」
「清掃のご協力に感謝します!」
そ〜〜〜っと投げ入れられた空き缶は何事もなくゴミ袋に落ちた。
「えッ『なんで』って」
「それは俺が…」
「………『メイド』だからです!!!!!」
満面の笑み。
これに納得するか答えになっていないと感じるかは君次第。
267
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/04(土) 00:03:58
>>266
「あー、そのどうもです…
私もゴミまみれなのはやっぱり苦手ですから…」
と言って頭を下げる、
さて、どうしてメイドを着ているのか、と聞いてみれば…
「は、はぁ…メイドだからですか…
しかし…」
ちょっと冷や汗を垂らしながら聞いてみる
「男性で奉仕活動と言えば…
なんだか執事っぽい服を連想するんですが…
メイド服…なんですか?」
なおも疑問は続く
果たしてどんな返答が来るのだろうか
268
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/04(土) 00:26:18
>>267
「ですね!!!!汚いより綺麗な方が良いです!!!」
君が追って質問をすると
「うえ〜〜〜っ 初対面の人に言うのは恥ずかしいですよォ」
モジ
モジ
「エエト……恩人というか、『憧れたひと』が、その…『メイド』だったんです」
「だから、俺も…その、メイドに……」
「うははははははッ やだあ やっぱり恥ずかしいですよォ〜〜〜!!!!!」
はにかみながらそう答えた。
なんだかんだ羞恥という感情は持ち合わせている事が判明した。
269
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/04(土) 00:32:03
>>268
「ええそれはもう!
いろんなことは綺麗が一番です」
なんとなく意気投合したような気がした
「ん、ふんふん……
まぁ…恥ずかしかったんで…
あ、いやその……」
一瞬すごく意外そうに
失礼なセリフを言ってしまいそうになった
「あこがれの人…ですかー。
ということはあなたにとってのヒーローみたいな人ってことですねー…
ん、どんな人なんです?
その……色々と教えてもらったとか?」
またメイド服を見る。
コレもそうなんだろうかとか思ってたり
270
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/04(土) 01:13:16
>>269
「色々とスゴイ方でしたが…
…そうですね、『愛』をもって仕事の出来る方でした。」
「おれはその『愛』に救われて」
「あのひとを『師匠』として多くを学ばせて頂きました。
……師匠の元で学んだおかげで、今の俺があります!!!!」
だそうだ。
学ばない方が良かったんじゃないか、とは言わないでくれ(懇願)。
「服ですか?」
「合うサイズがなかったので、自分で型をとって縫製したんですよ!!」
「優れた弟子ではありませんでしたが、『裁縫』については師匠もよく誉めておられました!」
「イイ感じでしょう!」
フリルふりふり、リボンがピラピラしたそのファンシーなメイド服は男の手によるものらしい。
師匠の話と裁縫の話、どちらも男は誇らしげに話した。
271
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/04(土) 01:24:19
>>270
「むー……いろんなことを学んだんですねー…
…良いことを色々と…」
どんなことを学んだんだろうか…
と思いつつ改めて衣装を見る
「はぁー、それは自作なんですかー。
すごくいい出来じゃないですか…
うむむ……ここまで上手くは出来ない…」
改めて見てみてば
まるで店売りのようなとても良い出来の一品だ。
「…確かに、そういう系のスキルはかなり高いみたいですねー。
その師匠って人は今どこにいるんでしょうねー?」
ちょっと気になって聞いてみることにした。
272
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/04(土) 01:41:31
確かにメイド服としては出来も良くカワイイ。
ただどんなに贔屓目に見てもサイズと着用者は『異常』であるのが玉に瑕か。
「所在、ですか……」
「師匠は『流浪のメイド』で…あっ俺もなんですけどね」
「ひとりの主人を持たず、いろんな場所を転々としながら、
いろんな場所でメイドのスキルを活かして働くんです」
「なおかつ師匠は『極秘任務』とかにも携わっていると聞くので……場所は、ちょっと」
「でも俺の連絡先なら明かせますよ!!!!」
┌――――――――――――――――┐
☆・゚:*:゚ヽ *:・'゚☆
常原 ヤマト
家政婦やります
電話番号 XXX-XXXX-XXXX
E-mail *******************.com
└――――――――――――――――┘
名刺を渡してきた。どうやら『常原』というらしい。
273
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/04(土) 12:41:05
>>272
「流浪のメイド……?
それってアルバイト…
とかじゃなくて……?」
流れ者と聞くとなんだかかっこいい響きを感じるが、
レイはまさか現実に居るとは…と考える。
表情もキョトン顔である。
「極秘任務…
もしかして裏で変身ヒーローだとか…?
なーんてコトは流石にないかな…」
と軽く笑ってから、その名刺を見る
「あ、これはどうも…
常原ヤマト…さんですね。
わざわざすいません…」
名刺をじっと見つめてみる。
「そういう仕事なんですか…
ん、あー、名刺もらったので私も…」
名刺は持たないが、ひとまず挨拶しようと考えた
「えー、私は烏丸レイです。
まぁ、単なる学生をやってますー。」
と言って頭を下げた
274
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/04(土) 23:02:28
>>273
「アルバイト…とも言えなくもないです
俺はいま勤め先がないので『無職』ですから」
「溢れ出る『奉仕』の気持ちを抑えきれずに、社会奉仕をしているワケです」
「変身ヒロインとかは俺も嫌いじゃないですよ!妹がよく見ていました!」
頭を搔きながら答える。なんだか後ろめたそうである。
「学生さんでしたか!!この辺なら…『清月学園』の生徒さんですかね。
面倒でも勉強は頑張ってくださいね!」
君が自己紹介をすれば、笑いながら素直に励ましてくれた。
275
:
烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』
:2017/02/05(日) 00:14:24
>>274
「ふむー…
やっぱり自分を売り込んだりするんでしょうかねー、奉仕活動をするときは…」
と、不思議そうな顔をする
「へー!私も変身ヒロイン大好きです!
○リキュアとかそういうのですよねー!
私、特撮とはまた違うかっこよさがあると思うんですよねーあれ!」
彼女は特撮関連であれば色々大好きである
そういうこともあってか、変身ヒロインものの作品は同じく大好きなのだった
そんなわけで随分と興奮して答えている。
「…と、どうしたんですか?」
ふと、落ち着いて彼の後ろめたそうな顔を見た
「あ、はい。
勉強はまぁ、人並みにはできるように頑張ってます。
安定が重要ですからねー」
276
:
常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』
:2017/02/05(日) 19:18:42
>>275
「口ぶりからするにヒーローものがお好きなのですね」
「弟が、変身グッズとか、そういうので遊んでいました気がします」
「ああいえ、俺自身が不甲斐なくて」
「メイドのくせして特定の誰かにご奉仕できず…
地域の安全のため不審者を探せど、尻尾も掴めず…」
「いえ、掃除とて大事な仕事なんですけどね」
彼自身、ロックなナリに反して、悩みなども抱えているようだ。
見た目ではわからない、心情は普通な所もあるのである。
「…いけない、仕事を放棄して歓談にふけってしまいました」
「そろそろ職務に戻らせていただきます」
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