したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

---------------------------------------------------------------------------
                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------

113朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/08(金) 09:36:44
>>112

>これマズいだろって思わないか?

 「天才は何でも試してみるもんなっス! ダヴィンチとか
ニュートンとかエジソンとかも、昔はみんながしたがらない事を
試してみたって見たっス! 私も他の天才の皆さんに倣って
色々チャレンジするっス! パワフルっス!」

>甘いの……そんな好きじゃないから……えひ

「そうっスか。それじゃあ今度は煎餅とか、おかきとか
用意しておくっス。辛党も甘党も人類には必要不可欠なんっス!」

 ビスケットをもぐもぐと食べつつ宣言するっス!
たけのこ派も、きのこ派も。戦争はよくないっス!!

 ……ジー。

 炭酸飲料をもぐもぐビスケットを頬張りつつ見つめる。

114稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/08(金) 19:29:35
>>113

「…………えひ……確かにお前、天才っぽいわ。
 そういうの……僕にはとて……もできないしな……」

         (……紙一重って言うし。)

言われてみれば『天才的』な物を感じる。
少なくとも恋姫とは違う。

「悪いことも……するんだっけ? えひ。
 パワフルに……偉人とかも大概クソみたいな事してたらしいし……」

         「お前も……偉人ルートかも……えひ。」

小さく笑う。
よもや――『悪の首領』が本気だなんて思わない。

            ・・・そして。

「……今度があるのは確定なの……まあ、いいけど……」

        「……」

   「七味せんべいが……
    僕にはよく効くぜ、好感度的にさぁ……」

           キュポ

やや視線を下に向けながら、冗談っぽく語る。
キャップは外れた。

「……」

       ス

「……欲しいのか?
 えひ、分かりやすい顔しやがって……」

     「……」

  「悪の首領的には……
    ありなの……そういうの?
     人の物貰うのは勇者の特権じゃない……?」

ボトルを『朝山』の視線から逃がすようにして、体の後ろに隠す。
意地が悪い気もするが、別に……物をあげなきゃいけない理由もない。

115朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/09(土) 12:26:50
>>114

>欲しいのか? えひ、分かりやすい顔しやがって

「そうっスねー」

 空を見上げる。爽快感が満点の青空だ。こう言う日は何時もより
もっともっとパワフルになれるっス! 桜のスカッとする空気が美味いっス!!

 「こう言う良い天気の日に、パワフルで素敵な出会いをした人と
一緒に同じものを食べたり同じものを飲みあえたら
 それはとってもパワフルな事だと思うっス」

 しみじみと呟くっス。けれど残念ながら私は飲み物を持ってきてないっス。
残念っス。なにかしらスポーツ飲料持ってくれば良かったっス。
 残念っス。 残念無念っス。

>人の物貰うのは勇者の特権じゃない……?

「??? 悪の首領でなくても、人から何か物を貰うときは
ちょーだいって自分はお願いするっス。それに関しては悪の首領は関係ないっス。
 欲しいことは欲しいけど、ねーからさんは体調悪そうな顔してるから
水分が必要不可欠っス。自分 具合がちょっとでも悪そうな人に無理強いする事しないっス。
悪の首領として、それもとーぜんの配慮ってやつっス」

 『パウッ!』

 「『そうだ!』って権三郎も同意してるっス!
七味せんべいは美味しいっス! 桜は素敵っス! 走るとお腹が空くっス!
お腹が空くって、お腹一杯になれるって事なんっス!
 つまり、全部ぜーんぶパワフルなんっス! 桜みたいにすっごい素敵なんっス!」

 ピョーン! と上下に跳ねつつ喋るっス!

そして、〆の決めポーズっス!!

クルクルクル シュッ タン!! シャキーンッ!!

      「改めて! 自分、朝山 佐生っス!   ねーからさんと友達になりたいっス!!」

 ポーズと共に友達宣言っス! 桜の下で友情を誓い合うっス!!
これ即ちパワフルなんっス!!

116稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/09(土) 23:23:40
>>115

「…………えひ……」

      イジ

長く伸びた髪の毛先を指で少しだけいじる。

  「悪の首領……のくせに。
  
   バカ
   素直すぎるんじゃないの…………」

          「……」

自分がパワフルだなんてのは――
そうなりたいなんてのは思わないけれど。

                 ス

ボトルを差し出して。

「……僕は…………昔からこういう顔だから。
 水分は別の買うよ……これ、あー、そんなに美味くないし……」

やや俯き、人形のような顔の、口元を緩く歪ませる。
受け取っても取らなくてもどっちでもいい。

「…………稗田。僕は……稗田恋姫(ひえだれんひめ)。
 『ねーから』なんて名前のわけ……ないだろ、常識的に考えて。」

      ポリ

頬を掻く。

「友、達……まあ……え、えひ、
 僕はパワフルじゃないし……悪でもないが……」   

        「それでも、いいなら……
          ………………なってやんよ。」
 
               ・・・桜と同じ色の瞳を、少しだけ逸らす。

117朝山『ザ・ハイヤー』:2016/04/10(日) 16:07:03
>>116


>僕はパワフルじゃないし 悪でもないが  
>それでも、いいなら なってやんよ

 「  ――や」


      ピョィーーーーーーーーーーン!!!


 
 「やったすぅぅぅぅぅぅううううううううう!!!!
 友達っス! 友達のOKが出たっス!! 感激っス!! パワフルっス!!
ペプシにコーラ! サイダーソーダで乾杯っスぅぅうううう!!!」

 もしもジャンプ可能なら成層圏までジャンプしてたであろう勢いを秘めた
大音声とダイナミック且つパワフルに体全体を使って喜びを爆裂させる。
 つまり 全てパワフルっス!!

 クルクルクルクルシュッ!! タンッッ!! シャ キ――ン!!

 「嬉しいっス! 全てにおいて嬉しいっス!!
抱きつくっス! 胴上げするっス!! パワフルっス!!!」

 ガシッと稗田(ひえだ)をパワフルに抱きしめて
胴上げ…は厳しいんで手を取って回るっス! この世の春が来るっス!!

 朝山は、その後も稗田と共に桜の下でパワフルに
朝食を摂ってない事を思い出すまで踊りあかす。

貰った飲み物を口に含み。そして、それでも足りないぐらいに
自分の事を一日では語りつくせないぐらいに喋るだろう。

 今日は朝山にとってパワフルな毎日の中でも一番のパワフルな日だった。

118稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/04/11(月) 01:33:33
>>117

「えひ……大げさすぎるだ…………」

     ガシッ

        「ろっ……!?」

    「や……」

          「やめろ、抱き着くなって……!
            あ、暑苦しい……んだよ……!!」

恋姫の身体は驚くほど軽い。
抱いてくる朝山を振り払い――あまり大きく動く事はしない。

されるがまま、にはならないだけ。

「………………」

    
       ニマ…

この世の春――ってほど、素直にはなれない。
けれど、この世の『開花』くらいには。

       朝山みたいなパワフルさは恋姫にはない。
       けれど、パワフルじゃなくても。


     「……えひ、ひひ。」

                   ・・・『友達』でいたいから。

119稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/05/20(金) 22:41:47

  カタ
          カタ

      カタ

ゲーム機を手に、イヤホンを耳に。

「…………」

湖畔公園の木々が茂るスペースは、恋姫が良く訪れる。
この辺りは人が少ないし――暑くもないし。

多少の散歩と、休憩にぴったりだ。
今日は休憩の時間の方が長くなったけど。

      「……」

顔を上げる。
たまに周囲を見渡したくなる。

     キョロ   キョロ

別に何があるってこともないだろうが……

120稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/05/26(木) 23:24:07
>>119(つづき)

まあ、世の中珍しいこともそうそう起こる物ではない。
特に何があるでもなく、少したってその場を去った。

          ・・・・『横丁』のゲーム屋でも行ってみるか。

121藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/26(木) 23:57:49
湖畔、公園の木の陰。
木にもたれかかって一人の女性が眠っている。

「すー……すー……」

「ん……」

どうやら目覚めたらしく手の甲で目をこする。
そして、あたりを見回す。
その顔は心配そうで、どこかおびえているようであった。

122溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/29(日) 02:50:31
>>121

「や、おはよーございます」

藤心が辺りを見回すと、痩躯の男が90°ほど異なる面の木陰に座っているのが見えるだろう。僕だ。
90°ほど異なる面って分かりづらい表現かな。西に対する北か南、北に対する西か東って感じなんだけど。
まぁともかく、僕はニヤニヤ笑いながら軽く手を振ってみよう。

「ダメだよ、お嬢ちゃん」
「公共の場所って言っても、こんなところで寝てたら危ないって。
 それに木陰なんてちょっと時間がズレると形変わっちゃうから、日焼けしちゃうぜ?」

そのまま馴れ馴れしく話しかける。初対面だけどね。
なお、僕の手にはブックカバーに包まれた文庫本がある。
これはさっきまで本を読んでたからだ。

123藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/29(日) 10:00:10
>>122

「あ……」

溝呂木を視界に入れた藤心。
びくりと大きく体を震わせた。
そしてゆっくりと下を向いた。
髪が藤心を隔離するかのようにその顔を覆う。

「あ……あう……」

「かっ……は……ん…………」

出てくるのは小さく、かすれた声。
どんどんと呼吸が乱れていく。
ぐじぐじとその手で黒く艶やかな髪をいじる。

「ご……ごめん…………ごめんなさい……」

しばらくして、そう呟くようなやはり消え入りそうな声で言うと
藤心は黙ってしまった。

124溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/29(日) 22:33:59
>>123

「あ、相当マジで怖がらせてるねこれ」

うわーショックー。
そりゃ不審者の自覚はあったけどここまでマジな反応されるとかなり堪えるよこれ。
そしてここまで怖がらせた状態で帰るのも気分悪いね。

「いや、ごめんごめん……ってすぐに謝罪合戦するのは日本人の悪い癖だけどさ」
「そりゃ公園で気持ちよくうたた寝してたのに、起きたらこんなオジサンが隣にいて急に話しかけてきたら怖いよねぇ」
「というか自分で言っててなんだけど相当気持ち悪いね僕。ハハハ」

ってわけでどうにかなだめようと頑張ってみる僕だ。
笑顔がへらっとしてるのは素だし、営業スマイルはそれはそれで胡散臭いのでこのままで。

「別にナンパしたいとかイジワルしたいとかじゃないから、そこは安心してくれ」
「じゃあなんのために話しかけたかって言うとそんなに深い意味があるわけじゃないんだけど!」

125藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/29(日) 23:38:44
>>124

「あっ……うぅ……」

溝呂木の謝罪を聞いているとそんなうめきにも似た声を発する。
小さくふるふると横に髪が揺れる。
いや、首を振っているのだろうか。
ちらりと上目遣いで見上げ、またすぐに視線を外す。

「い、意味がないのに……」

「話しかけるの……?」

視線を外したまま藤心はそう問うた。

126溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/29(日) 23:51:55
>>125

(うーん案の定自己評価が極端に低いタイプというか、卑屈なタイプッ!
 『僕に謝罪させていること』を申し訳なく思ってしまうタイプの子だね、きっと)

適当に推測しつつ、言葉で反応が返ってきたことに内心ガッツポーズ。
おっと表向きはなんでもない風を装うぜ。
あんまりオーバーに反応すると余計に怖がらせちゃうだろうからね。

「あはは、鋭いとこ突いてくるねぇ」
「でもまぁ、うん。そうだよ。
 意味があるかないかで言えば、無いって言っていいんじゃないかな。
 なんていうか、興味本位というかなんとなくというか」

「見ての通りテキトーな性格でね。
 『風の向くまま気の向くまま』……なんてスカすつもりもないけど、ついその場の気分で行動しちゃうのさ。
 こういうの、『刹那主義』って言うのかな。はは、またスカしてるねこれ」

かんらかんらと、表情は覇気のないスマイルだ。

127藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/30(月) 00:16:40
>>126

「……」

視線を合わせない藤心。
伏し目がちでなんとも頼りのない雰囲気だ。
じっと話を聞いている。

「……刹那主義?」

その言葉を呟くとまた、黙る。
それから、もごもごと口の中で言葉を遊ばせる。
あ、とかそ、とか単語単語だけがたまに漏れ出てくる。
ついに決心したのかちらりと溝呂木に目線をやり、目を合わせる。

「あなた……自由……なのね……」

「……すごい…………わ……」

128溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/30(月) 00:36:36
>>127

へらへら笑って、お嬢ちゃんが言葉を発するまで待つよ。
幸いにして気は長い部類だからね。

「自由、自由かぁ……」

「確かにそうだね。子供のまま大人になったとも言うけどさ」
「大人になって独り立ちして、自分の責任を自分で取らなきゃいけなくなったし」
「そうなるともう、責任取れるなら何しても自由なわけだから」
「おかげさまで好きにテキトーに生きさせてもらってるよ」

別に、褒められるようなことでもないけどね。
……こう、家庭か友人関係に複雑な事情抱えてるタイプの子かなー。

「でも、お嬢ちゃんも中々に自由だと思うよ?」
「天気のいい日に、木陰でうたた寝をしてもいい……っていうのは、すごく『自由』なことじゃないか」

129藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/30(月) 01:08:51
>>128

「好きとか……テキトーとか……私には……」

言いかけて俯いて黙り込んでしまった。
風に髪が揺れる。

「じ……ゆう……?」

「私が……? ほんとう……?」

照れているのかほんのりと、顔が赤くなっている。
といっても大部分が髪で隠れてしまっているが。

「嬉しい……」

「……でも…………」

「いいえ……なんでも……ないわ……」

130溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/30(月) 13:40:13
>>129

(うん、やっぱ人間関係で問題を抱えてるみたいだね。
 抑圧か、迫害か……まぁ別に僕はカウンセラーでもなんでもないんだけど)

つまり、的確な対処法が分からないってことだ。
下手に刺激しすぎてもマズい気がするし……いやぁ、人との会話って難しいね!
とはいえそこまで悪い気分でもない。
厄介ごとってのはそこまで嫌いじゃないんだ。好きとは言わないけど。

「ま、誰しも自由であるべきさ。
 もちろん、だらしなくあれってことじゃないよ?
 キッチリしたい奴はキッチリすればいい。それもまた自由だ」

一番悪いのは、自らで選択ができなくなることだ。
……見たとこ、このお嬢ちゃんはその部類な気がするけど。

「そういうわけで、お嬢ちゃんも言いたいことがあると言ってみるといい。
 あんたなんかに言いたくねーよオッサン! ……ってことならそれでも構わないけど。
 外に出したいものを中に溜め込むのはストレスになるぜ。
 聞いてどうにかなることじゃないかもしれないけど、話して気が楽になることもあるさ」

ともあれ僕はすっかり興が乗ってしまったので、カウンセラー気分で攻めてみよう。

131藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/30(月) 22:41:04
>>130

濡烏、それは女性の髪にあてられる言葉である。
理想美ともいわれるこの髪を藤心は持っている。
それはまるでベールのように藤心を隠す。
なにかから守るように。

「言いたいことなんて……ないわ……」

「ないの。なにも……私には……持ってないわ……」

隠す。守る。
そして、中のものを外に出さないように。
覆う。

「でも……あなた……優しいのね……」

「優しく……されると、困ってしまうわ……」

132溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/30(月) 23:21:53
>>131

「そうかい?
 ……ま、それならそれでもいいけどね」

深追いはすまい。
言いたくないなら言いたくないでもいいのさ。
それもまた自由……というか僕が地雷踏みたくないだけなんだけど。
厄介ごとはそこまで嫌いじゃないけど、それはそれとして地雷は避けたいからね!

「ははは、僕が優しいって?」
「ないないそれはない。
 ちょっとコミュニケーションが好きなだけだよ、僕は。
 あるいは暇を持て余してるだけって言ってもいいけど」

僕が優しいなんて言ったら、世の中の『優しい人』がかわいそうだ。
単純に、女の子にビビられたまま帰るとダメージが大きそうってだけだし。

「でも、変なこと言うね。
 優しくされると困るのかい? 優しさアレルギー?」

133藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/31(火) 00:14:43
>>132

「……うん」

深追いはしない。
触らぬ神に祟りなし。興味本位で藪をつついて蛇を出すことはない。

「そう……あなた……そういう人なのね……」

意味ありげに呟くと、また髪をぐじぐじといじる。

「! ……困るわ……とても……とても……」

びくりと声を掛けられた時のように体を震わせる。

「私は弱い……とてもとても……弱いの…………」

「だから……優しくされたら……あなたに……甘えてしまうわ……」

「それに……あなたが……」

ぎゅっと髪を握りしめる。
震えている。今度は目に見えて分かる。
しかし同時にその顔は赤くなっている。
肌も赤くなりそうなほどに。
赤い。不健康過ぎるほどの白い肌が赤く染まっている。

134溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/31(火) 00:44:37
>>133

(あー……こういう子にありがちなことだけど……)

いわゆる『重い女』って奴だ。
物凄く端的に言ってしまえば、だけども。

「そ、僕はこーいう人。
 だからお嬢ちゃんも深刻にとらえなくていいよ。
 野良猫が寄ってきたぐらいの感覚で」

そんな内心は心の奥にしまい込みつつ、会話続行。
ここまで来て引くわけにはいかないよね。色んな意味で。

「まー初対面のオジサンに甘えちゃうのは社会的に見てヤバそうだね。
 ……とか下世話なジョーク飛ばしてる場合じゃないかもだけど」

「なんか震えてるけど平気かい?
 それに、僕がどうしたって?」

内心はもうおっかなびっくり地雷原を進むマインスイーパーだ。
既に致命的なとこに踏み込んでる気がしないでもない。頑張れ僕。

135藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/31(火) 01:10:56
>>134

「野良猫……?」

「そう……」

理解しているのかしていないのかいまいち掴みかねる返答。

「なにもないわ……なにもなにも……」

震えている。
しかし、それを否定する。
マインスイーパーと化した溝呂木は人間爆弾と化した藤心の心の中を行く。

「それとも……」

「あなた……私の……」

「こころに入り込むの?」

136溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/31(火) 01:38:56
>>135

「んー」

ちょっと考えるそぶりを見せる。
そりゃかわいい子っぽいけど、初対面でそこまで行くのは重い。
というか初対面じゃなくても重い。
僕はそういう重いのはちょっと苦手なんだ。身軽な方が好きでね。
とはいえここでNOを突き付けるのもなんだし……

「じゃ、逆に聞くけどキミはどうして欲しい?」

「って言うと『なんでもない・なにもない』って帰ってきそうだけど。
 そもそも話しかけたのは僕の方だしね。
 でも残念ながら、僕は『白馬の王子さま』ってキャラでもない。
 僕は散々言ったように無責任な人間だ。負える責任は自分の範囲だけさ」

「つまり、『それはキミが選ぶべきだ』。
 そうしないと多分後悔するよ」

というわけで――――ここは、『あえて攻める』。
試すような、でも相変わらずのへらっとした顔でね。

137藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/05/31(火) 23:27:53
>>136

「私は……なにも……! ……なにも……」

ないもいらない。そう言いたかったのだろう。
先手を打たれ、藤心は言葉に詰まった。

「私は……私は……」

呼吸が乱れる。
かぶりを振る。
追い詰められているかのように。
うめきにも似た声を上げながら藤心は困る。

「困るわ……とってもとって……困る困る困る困る……!」

「……助けて……誰かが私を……」

「……い……」

言葉に詰まった。
呼吸が止まったかのように、言葉が出ない。

「……私は、弱い。とてもとても……」

「でも……強くなりたいの……だから……答えるわ……」

溝呂木の目を見て、藤心は言う。
不安な色のある瞳だ。
その表情もまた不安げでおびえている。

「今は……私の心に入らないで……」

「あなたを……傷つけてしまうわ……」

138溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/05/31(火) 23:53:05
>>137

(おーおー苦しんでる苦しんでる)

苦しむお嬢ちゃんとは対照的に、僕は自然体だ。
よく言うだろ? パニックになってる人が目の前にいるとかえってクールになる、って奴。
どんどん自分がクールになって行ってる自覚があるね。

(ま、それでも……そんなに『悪い刺激』じゃなかったっぽいかな)
「おーらい、大した自信だ」

パッと両手を上げて、降参のポーズ。
そのままひょいと立ち上がるよ。

「じゃあやめとこう」
「僕も傷つきたくはないし、お嬢ちゃんも傷つけたくない。
 お互いの利益が一致してるわけだ」
「それにまぁ、僕としてもその言葉が聞けたら満足かな」

うん、これなら、このまま帰っても気分が悪くはならない。
なんでかってそりゃ、やっと『お嬢ちゃんの言葉』が聞けた気がするしね。

「でもホントにお昼寝は気をつけた方がいいぜ。
 お嬢ちゃん肌白いし、日焼けがキツイタイプに見えるからね」

139藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/01(水) 00:27:29
>>138

「そう……私もよ……傷つけたくないわ……」

また、視線を逸らす。
根本は変わらない。
覆されない。彼女の言葉は出ても、彼女自身は変わらない。

「満足なのね……」

ふっと、寂しそうな色が浮かんで消える。

「日焼け……?」

一瞬の疑問符。
やがて意味を理解したのかより日陰へ日陰へと行こうとする。

「!」

突然、着信音が鳴り響く。
藤心は傍にあったカバンからスマホを引っ張り出した。
電話だ。

「はい……はい……お父様……」

「……今すぐに……? ……はい…………」

「すぐ……行くから…………」

通話が終わったらしく、スマホを耳から話す。
その表情はより一層暗い。

「あ……私……その……帰るわ…………」

「あなたのお名前……聞いても……いい?」

140溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/06/01(水) 01:06:24
>>139

(悪いね。僕はやっぱり『白馬の王子様』じゃないのさ)

もちろん、たまに『そんな気分』になる時もあるが……今日はそうじゃない。
それに、それはあくまで『そんな気分』だ。
ほんとに王子様になれるわけじゃない。
だからやっぱり、僕は『ここまで』なのさ。

「お帰りかい?
 まぁ僕も帰るとこだけど」

……お父さん、やっぱり厳しそうだね。

「僕は……『名乗るほどのもんじゃない』、なんてスカしてもいいけど」
「『溝呂木鉄鶏(コオロギ テッケイ)』だよ」
「溝、風呂の呂に木。鉄の鶏で……コオロギテッケイ」
「お嬢ちゃんは?」

ともあれ、僕は最後までヘラヘラ笑って尋ねるわけだ。
次に会う機会があるかどうかは知らないけどさ。

141藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/01(水) 01:33:04
>>140

「溝呂木鉄鶏……」

「溝呂木さん…………ね……」

確かめる様に発音する。
そして、問いに答える。

「藤心……舞……フジのココロがマウ……」

「…………」

それだけ告げてぺこりと頭を下げると、藤心は足取り重そうに去っていった。

142溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2016/06/01(水) 01:41:54
>>141

「ん、舞ちゃんね」
「バイバイ、舞ちゃん」

手をひらひらして、お嬢ちゃん……舞ちゃんを見送る。
後に残るのは僕だけだ。

「…………まっ」
「面白い子ではあったかな。
 踏み込み過ぎにはご用心……ひょっとすると手遅れかもで、それなら御愁傷様だ。
 ガラじゃないけど、そういうのも悪く無い」

次に会う機会があるかどうかは知らないけど――――もしもあるなら、悪く無い。
彼女がどうなるのか、気にならないと言ったら間違いなく嘘さ。

「――――また会えるといいね、舞ちゃん」

またひとつ楽しみが増えたかな、なんて思いながら……僕も帰路につくのであった。
なんてね。

143小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/02(木) 23:30:11
                    ある日の午後、小石川文子は公園内を歩きながら、物思いに耽っていた。

――改めて振り返ってみても、前に住んでいた町には、あまりにも多くの思い出がありすぎたと思う。
それらは昼も夜も私の心を苛み続け、私自身が心の中で望んでいる結末へ、私を駆り立てようとした。
死に別れた『彼』の分まで生きなければならないと思いながらも、その時の私は、いつ自分を殺してしまうか分からない状態だった。

                    犬の散歩をする老人とすれ違い、一時的に思考が中断された。
                            軽く頭を下げて、歩き続ける。

――だから、慣れ親しんだ場所を離れ、この町に移り住んだのだ。
自分自身の内なる願望に負けないようにという願いを込めて。
今は、過去の記憶が残る場所から遠ざかったことで、以前と比べると気持ちを強く持つことができるようになったと実感できる。

                     前方を一組の男女が手を繋いで横切っていく。
                再び思考が止まり、その光景に一瞬目を細め、歩き続ける。

――しかし、それは決して完全ではない。
不規則に湧き起こる『死の衝動』――自ら命を絶てば、愛する者に再び会うことができるという背徳的かつ甘美な誘惑は、慢性的な病がもたらす発作のように、繰り返し私の心を苦しめている。
いつもバッグの中に忍ばせている一本の果物ナイフ――それは、いつどこで発作が起きても鎮められるように常備している『精神安定剤』だ。

                   ジョギング中の若者が、後ろから追い越して、あっという間に見えなくなった。
                 迷いのない生き方とは、ああいうものかもしれないと思いながら、また歩き続ける。

――けれど、もしかしたら、それさえも通用しなくなる時が来るかもしれない。
何かのきっかけで自分の意志が弱くなってしまったら、あるいは耳元で囁く誘惑が今よりも強くなったらと考えると、とても怖い。
そして、もしそうなったら――自分自身の意志だけで、自らを抑えることが難しくなった時は、この町に『死の衝動』を食い止める助けになって欲しいと思う。

                  ふと気付くと、私は森の中の一角に佇んでいた。
                 見上げると、眼前には一本の大樹が聳え立っている。
              溢れんばかりの生命力の発露に、どこか心を打たれるものを感じ、自然と目が挽きつけられた。

無意識の内に、神前に立つ敬虔な修道女のように胸の前で両手を組み、静かに目を閉じる。
どうか――どうか、この命を全うさせて下さい。
小石川文子は、この樹を通して、自分の住む町――『星見町』に、心からの祈りを捧げた。

144稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/06/02(木) 23:48:58
>>143

    ザッ ・ ・ ・

「…………?」

恋姫が彼女を目にしたのは、偶然で。
木陰の涼しい所を、ついでに、
画面が見えやすいところを求めてただけで。

そうしたら祈ってる所を見てしまったわけだ。

(なんだあいつ……新手の新興宗教か?
 えひ……頭痛が痛いみたいな言い回し……)

     (まあ……脳内セーフってことで……)

  
  ヒュ
      オ
        ォ

風が吹く。長い髪が揺れる。
桜色の目にかかった黒い絹糸を手で払い除ける。

「……」

恋姫の髪に染みついた、ミントの香料が風に乗る。
青春モノの一幕みたいな話だけど、それで恋姫に気づくかもしれない。

・・・・あるいはもっと単純に、不躾な視線に気づくかもしれない。

145小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/03(金) 00:14:33
>>144
鼻腔をくすぐる香りを察して、閉じていた目をゆっくりと開く。
すぐ近くに自分以外の人間がいることに、今更ながらに気付かされた。
しかし、この場所や時間を考えれば、何も不思議なことではないだろう。
清涼感のある香りが流れてきた方向に――すなわち恋姫のいる方に顔を向ける。
当然ながら視線が合うことになるだろう。


「――こんにちは」

若干の間を置いたのち、喪服に身を包んだ女は、目線の先に立つ恋姫に挨拶した。
黒い帽子の下にある顔に、穏やかではあるが、やや陰のある微笑みをたたえている。
彼女が立っている場所は、大樹の生い茂る枝葉に遮られて、ちょうど大きな日陰になっている。
そこに入れば、やや強くなり始めた日差しを避けて、十分に涼むことができるように見えた。

146稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/06/03(金) 00:33:32
>>145

   ザッ…


恋姫は少しだけ、足を進めた。
最近は蒸し暑くなってきた。
日向には、いたくない。けど。

「…………どーも。」

(うわ……何だ、こいつ……?
 何で喪服なんだ……この暑いのに。
 ゴスみたいな……ファッションでやってんのか……?)

      (……祈ってたな。
       花束でも置いてる……?)

 チラ


木の根元に視線を走らせたが、そういうわけでもない。
いよいよもって、何の喪服なのか。

「…………あー。」

     ジリ

「なんか……お取込み中か……?
 闇の儀式とか…………してないよな?」

    ジリ

      「生贄が良いとこに来たァ……!
       とか、そういうの……ないわな。えひ。」

少しだけ。近付くのを躊躇って。
人形のような、そしてダウナーな印象の顔を、暗い笑みに歪ませて。

「…………そこの日陰、入るぜ。」

結局、暑いし、日陰に入ろうと近づく。

――初対面だからこそ怖い。初見殺し、という言葉があるように。
この町にはおかしい奴もごまんといて、限って危険な『力』を持つ。

147小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/03(金) 01:04:01
>>146

恋姫から自分に向けられている疑いの眼差し。
それに気付いていないのか、あるいは気付いていないフリをしているのか。
表情から、そのどちらかを読み取ることは難しいようだった。
文子の表情は、相変わらずそのままだったからだ。
憂いと慈しみの入り混じったような複雑な優しさ――抽象的な言い回しになるが、もしたとえるとするなら、そんな顔だった。

「――ええ……。どうぞ……」

今日は日差しが強い。
木陰に入れば、体感温度はだいぶ下がって感じられるだろう。
その中に立つ文子は、今いる位置から少し横に移動して、恋姫のために場所を空ける。
それが済むと、両手を体の前で重ねて佇み、桜色の瞳を持つ少女がやってくるのを待つ。

近付いてきたなら、その手が見えるだろう。
『両手の薬指』に『同じデザインの指輪』がはめられていることに気がつくかもしれない。
それが、ある程度の背景を知る手がかりになるかもしれない――。

148稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/06/03(金) 01:35:59
>>147

「…………どーも。」

     ザリ…

空けてくれた場所に入る。
表情、所作。警戒しなくても良いらしいと気づく。

「……」

  チラ


     (うわ……っ。)

だから少し安心して。
それとほぼ同時に指輪が目に入った。それも二つ。

「…………」

意味することは――察せられた。
リア充爆発しろ、なんていうけど、ああいうのは冗談で。

すぐ、下に目を逸らす。

     「……」

         「……あー。」

「…………ゲーム、して良い?
 BGMは……出さないし、実況もしない。」

           ゴソ

そして、落とした声色で尋ねてみる。

「『いいえ』って言う選択肢も
 まあ……ふつうにあるから……」

サイズの大きいパーカーのポケットから、ゲーム機を出す。
最新型の携帯ゲーム機。イヤホンが差してある。

     「だって、えひ……」

重い雰囲気を嫌って、口が軽く動いているかもしれない。

「……常識的に考えて、
 質問、ループしたりはしないし……」

「僕、レトロゲーのNPCじゃないぜ……えひ。」

    クス…

そして、陰気な笑みを浮かべた。
もしこの冗談は通じなくとも、恋姫には面白かったから。

149小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/03(金) 02:17:16
>>148

少なくとも近年のゲームにはあまり縁がない。
昔――幼少の頃に、いくらかやったことがある程度だ。
もっとも、それはいわゆる『据え置き機』のゲームだったのだが。
しかし、取り出されたものが何であるかくらいは、すぐに察しがついた。

「ここは――『皆が気持ちよく過ごすための場所』だから……。それに……私はあなたがすることで気分を悪くしたりはしないわ……。だから――あなたもそれを気にする必要はないのよ……」

恋姫の傍らに立つ文子は、先程までと変わらない穏やかな語調で、少々暗示めいた答えを返した。
『BGM』を出してもいいし、仮に『実況』が付いたとしても、自分は気にしない。
彼女の言っていることは、そういう意味らしかった。

文子はゲームには疎い。
だから、恋姫が不意に放った冗談の意味が、すんなり理解できたわけではなかった。
しかし、今は自分の側にいる少女が笑った。
だから、文子も笑ったのだ。
優しくも憂いを帯びた、陰のある微笑み。

もし、この場に第三者がいたとして、二人が笑い合う光景を目にしたとすれば、何かしらの共通点のようなものを感じたかもしれない。
『似て非なるものの邂逅』とでも呼ぶべき雰囲気を感じ取ったかもしれない。
そして、当事者の一人である文子自身も、直感的に、この少女から『シンパシー』のようなものを感じ取っていたのだった。

150稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/06/03(金) 02:39:25
>>149

「えひ……ほんとに気にしない?
 じゃあ、まあ。遠慮なく、日陰ライフを……」

     カチ!

         シュル

電源スイッチをオン。イヤホンを耳に入れた。
さらに座り込む。

行儀が悪い?
知った事ではない。エンジョイしたい。

「エンジョイさせてもらうぜ……えひ。
 まあ……お前も……エンジョイ、続けてくれ……どーぞ。」

    チラ

恋姫が抱えるパラドクス。の、間。
そこに入ってくれる人は、ときどきいる。

        「……」

     ポチ    ポチ

今回もそうなのだろうか。
それが『シンパシー』なんだろうか?

恋姫は、同期した笑みにイライラしない。悪意を感じないから。

「……僕も、気にしないからさ。
 お前が今から呪文唱えだしても……あー、どんな顔してても……」

         「…………画面しか見てないから。」 
  
   カチ

だから、何となく、上手じゃないけど気を使ってみようなんて思うのだ。

151小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/03(金) 03:15:20
>>150

「――ありがとう」

そう言うと、樹の根元を背もたれにして、自分も腰を下ろす。
元々、特に目的があったからこの場所に来たわけではない。
ただ足の向くままに歩いていたら、偶然たどり着いた。
ただ、それだけの話だ。
だから、この場所でしばらく落ち着いた時間を過ごすというのが、自分にとっての『エンジョイ』ということになるのだろう。

そう――自分には、落ち着く場所が必要だ。
もしも『精神安定剤』だけでは抑えられなくなった時は、『この町』に頼ることになるだろう。
心を落ち着けられる場所、人、あるいは物。
そういった繋がりを、一つでも多く見つけておく必要がある。
今日ここへ来たのも、心の中で、そう思っていたせいかもしれない。

傍らでゲームに興じる少女――そうしながらも、彼女が自分に気を配ってくれていることは、すぐに分かった。
その気持ちが、ただ素直に嬉しかった。
自分が必要としている『生きる支え』の欠片が、そこにあるような気がしたからだ。

「そう――優しいのね……。ありがとう……」

その言葉の最後には、どこか含みがあった。
それは、あたかも何かを言いかけたようにも聞こえた。
名前を呼ぼうとしたが、相手の名前が分からなかった――そんな風な響きだった。

「私の名前は――小石川文子。できるなら……あなたの名前――聞かせてもらってもいいかしら……?」

隣にいる少女――恋姫の桜色の瞳を見つめて、静かに問いかけた。

152稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/06/03(金) 03:31:20
>>151

「…………礼が欲しくて。
 言ったわけじゃないし……」

「優しいとか……そういうのでも……ないし。
 フラグ管理……あー、それはちょっと違うか……」

         「こういうの……ツンデレ乙?
           ……自分で言うのは、へんだな。えひ。」

   カチ
        カチ

恋姫は俯いたまま、いっそう陰気に笑った。
楽しいって笑いよりは、快いって笑いだった。

画面から顔を上げる事はしない。
しそうになったけど、今の今で嘘になるし。

    ヒエダ
「……稗田。」

       レンヒメ
「稗田……恋姫。
 呼ぶなら……稗田でも恋姫でもいい……」

         「……僕も合わせるから。」

    カチ
           カチ

それ以上恋姫から、何かいうわけではない。
『小石川文子』というステージにいくつ地雷があるかもわからない。

         ピコ

   ピコ

わざわざ踏みに行く、意味もない気がするから。
今はこうして、エンジョイする時間を、共有すればいいと思うのだ・・・・

153小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/03(金) 04:04:36
>>152

『フラグ管理』、『ツンデレ乙』――いずれも文子にとっては馴染みのない言葉だった。
しかし、それは大した問題ではない。
なぜなら小石川文子は、言葉の表面よりも、その裏にある気持ちや込められている感情の方を重視する性格だからだ。
だから、言葉の意味は分からなくとも、どこか癒されるようなものを感じたのだろう。
彼女の――稗田恋姫の気遣いは、十分に伝わっていたのだから――。

「そう……。あなたは稗田恋姫さんっていうのね……。よく似合っていると思うわ――その綺麗な瞳に……」

画面を見下したままの恋姫――その隣に座っている文子も、それに合わせるかのように、自分の正面にある林を見つめたまま、ぽつりと呟くように言った。
気を使ってくれている少女に対して、言葉でのお礼ではなく、彼女に倣って感謝の気持ちを行動で示したかったからだ。

「じゃあ、『稗田さん』――私からは、そう呼ばせてもらうわ……」

それが、この邂逅における、文子から恋姫への最後の言葉だった。
それきり二人の間に何か特別な会話があったわけではない。
しばらく時間が経てば、日が傾いてくるだろう。
そうすれば、お互いに帰るべき場所へ帰るのだ。
しかし、少なくとも文子にとっては、それで十分だった。
『稗田恋姫との繋がり』つまり『この町の人との繋がり』を――ひいては『この町との繋がり』を得られたという実感があったからだ――。

154ココロ『RLP』:2016/06/08(水) 05:31:53

湖のすぐそばに、腰を下ろす。

「…………ふう。」

    チャプ

やっぱり、この場所が好きだ。
水面を、長く、細い指で撫でる。

そして、思い立ったように湖面に視線を向ける。

(……少し、演奏でもしようかしら?
 さ、最近は、危ない人ともあまり会わないし……)

      (いい人と会えることも、多いもの……)

  
  ♪

         ♪
              ♪

空気を叩く指先が、空中に透明な鍵盤を構成する。
ココロのスタンド――名は、『RLP』。

その音色はスタンド使いにしか聴こえない、幻想の音。

155板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/08(水) 23:02:03
>>154

    ――――――――ザッ


……灯りに誘われる虫のように。


           「水溜――――」


その演奏に誘われて。


                「ココロォ…………ッ!」


――――なんかえらい形相で現れる男がひとり。
獰猛な歓喜のスマイル。まるで百年の宿敵を前にしたかのような形相だ。

156ココロ『RLP』:2016/06/08(水) 23:37:31
>>155

     ビクッ

「…………!?」

         クルッ

慌てて振り向いたココロ。
土を踏みしめる音にただならぬものを感じた。

「な、なな何……だ、誰……」

        「あっ!」

目に入った顔は――見覚えがあった。
たった一度切り、遠くから見た顔ではあるのだけれど。

(そ、そうだわ……あの顔! そ、それにこの状況!
 いえ、早とちりかもしれないけれど……間違いないわ……)

――ある一件から、ココロにとっては『強い印象』のある人。


「い……板踏、さん。
 板踏、甲賀さん……よ、よね……?」

   (こ、この顔……私取って食われる……!?
    そ、そしてその残骸をここに沈められる……?)

          (……というわけでは、ないのよね? た、多分……)

157板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 00:02:18
>>156

そう――――板踏甲賀。
ココロにとって直接話したことは無い人物だが、互いにその顔は知っていた。
板踏はココロの様子にも構わず、ズンズンと大股で近づいてくる。

      「ああ、板踏だ!」

    「 だ が そ ん な こ と は ど う で も い い ! 」

やたらデカい声(日頃鍛えた肺活量によるものだ)で叫びながら、近づいてくる。
怒っているわけではない。
笑っているし。
まぁその笑顔が怖いのだが。
肉食動物めいたスマイルである。
取って食われるかも、というココロの想像はあながち突飛でもないかもしれない。

        「――――なんだ今の音は!」

            ズン

          「なんだ今の音色は! 演奏は!」

               ズン

      「どこからどうやって出した! こんな『湖畔の真ん中』で!」

                  ズン

            「『小型のキーボード』の音色じゃなかったぞ!」

                     ズン

                  「それともまさか――――」

                       ズギュン

                      「――――『こういうこと』かッ!」

……板踏の右手に、『朝顔の絡みついたトランペット』が現れた。

158ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 00:16:09
>>157

「ひ、ひぃぃ……」

    ヒィ ィ

情けない声が喉から出てきた。
どういう感情なのだ、その顔は?

(お、怒っては……いないわよね?
 お、音楽だし、きっと、よ……喜んでいるのよね?)

      (じ、自信過剰すぎるかしら……)

かつて『ミスコン』での『審査』を目にしていた。
それから、もう一つ。

(こ、声が大きいわ……
 吹奏楽部って、みんな大きな声なのかしら……
 それとも、わ、私の声が……小さすぎるだけかしら?)

だから何となく、どういう人物なのかは、知っている。
それでも怖いものは怖いけれど。

「まっ」

     「待って……」

              「お、落ち着いてちょうだ――」

     「あっ……!」

思わず頭を抱え、ハリネズミのように防御姿勢に入るココロ。
あまりに迫力に、明確な返答は出来ていないが……視線は『朝顔』に向いている。

(す、スタンド……そうよね、炎を操る……!)

             ・・・・ココロは『それ』を、一方的に知っている。

159板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 00:23:30
>>158

         ニィ ィ ィ

その視線をみて、ますます板踏の笑みは深くなった。

       スゥゥゥゥゥゥ…

そしてゆっくりと天を仰ぎ、大きく息を吸って……

            フゥゥゥゥゥゥゥ……

吐いて……

       「……『ウィズイン・サイレンス』だ」

幾分落ち着いた様子で――まぁ相変わらず口元は大きく弧を描いていたが――『トランペット』を撫でる。
次いで、視線をココロに。

           「…………おまえのは?」

言葉は短く……どうもそれは、激情を抑え込んでいるようにも見える。

160ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 00:30:59
>>159

「……」

(そう、『ウィズイン・サイレンス』……
 じ、実物を見たのは……初めてだけれど。)

    スゥゥゥ

          ハァァァ


深呼吸する。
それはある人に教わった『安心法』だ。

余計な不安は、要らない。

「――――『RLP』。」

   ♪

        ♪

「私のピアノの名前は……あ、『RLP』よ。」

エアピアノと共に、空間に浮かび上がる透明の鍵盤。
指先がその上で踊る。透明は少しだけ、色づく。七色に。

「……」

     「……ミスコン。」

「ミスコン以来、という事に……なるわよね。」

ココロにとっては違うけれど。そこを、再確認するようにつぶやく。

161板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 00:41:43
>>160

     「『RLP』――――」

その音の響きを、音色と共にゆっくりと味わうように。
しばし瞠目して……静かに目を開く。

       「ああ……そうか」

   「『RLP』……」

             「そいつは素敵だ」

声色も、表情も穏やかに……なっている、はずだが。
その胸の奥の『炉』では、情熱の炎が燃え盛っていることに誰が気付けようか。

    「そうだな」

      「そうなる」

     「『星見小町おめでとう』ともう一度言うべきか?」

『ミスコン』……何の因果か吹奏楽部の仲間に審査員枠に押し込まれ。
思うままにやればいいと言われたので思うままに審査した、そんな記憶。

        「いいイベントだったよ」

      「おまえの『演奏』もな。最高だった」

――――なお、審査の基準は『恋人にしたい度』だったはずなのだが。
完全に思うままに、『音楽性』がどうのとか言って気にせず点数をつけていたのはある種の伝説として吹奏楽部の間で語り草である。

162ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 00:51:43
>>161

「あ、ありがとう……
 貴方の能力も、素敵だと思う……わ。」

(よ、よかった……
 少し、落ち着いてくれたみたいだわ。
 ……そ、そんな考え方って、失礼よね。)

猛獣相手じゃああるまいし。
決して悪人などでは無い、それは知っている。

「……ありがとう。
 貴方達が良い点数をくれたおかげだもの。」

(こ、この人の点数は……どう考えても、
 こ……恋人とか……関係なかったわよね。)

礼を繰り返す。
あのイベントはココロにたくさんの賞賛をもたらした。

「あの時は、本当に……良い演奏が出来たって。
 自分でも思うわ。あんなにたくさんの人が、見ている前で……」

          「……」

あの経験があったから、あの『祭り』でも勝利を勝ち取れた。
もっとも、その事を『板踏』に説明するのは、難しいけれど。

「……ありがとう、板踏さん。」

          ・・・・もう一度、お礼をする。

163板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 01:03:56
>>162

     「高い点数を出したのは俺だけじゃない」

当たり前だが、審査員は一人じゃない。
全員が高得点を出して……だからこその『優勝』だ。

       「だから……よせ」

         「礼を言われることじゃない」

      「おまえの実力だ。おまえが勝ち取った勝利だ」

                「だろう?」

板踏はそれを評価しただけ。
『良いもの』に『良い』と言っただけのことであって、礼を言われることではない。

        「……だが」

             「そうだな」

     「それなら……ひとつ頼みを聞いちゃくれないか?」

164ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 01:17:40
>>163

「そ、それは…………」

       「……」

             「……『ええ』。」

ココロは少しだけ、遠慮がちに頷く。

自分のピアノ。
自分で弾き取った勝利。

(それは事実だもの……そうよ。
 皆のおかげもあるけれど…………)

       (私の演奏で、勝ったんだもの。
         ……自信は持っていいわよね。)

自信は、調律しなくては鈍りがちだ。
ピアノ。ココロが自認する、一番得意で、出来る事。

       ・・・・そして。

「た……頼み事?」

ココロは首を小さく傾げる。
演奏の手を、口元に当てて。

(な、何かしら……そんな、おかしなことではないわよね。
 ええ、それは間違いないわ。だけれど……で、出来ることかしら?)

           「わ……私に、出来ることなら。
             出来れば……協力、したいけれど……?」

165板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 01:33:07
>>164

頷くココロに、満足げな表情を見せる。
それでいい、と言わんばかりに。
そうでなくては、評価したほうが報われない。

     「なに、難しいことじゃない」

   「おまえにできないはずもない」

ともあれ。
ともあれ、だ。
板踏は上機嫌に、肩や指をほぐす。
コキコキと関節が音を立てた。

                ヤ
       「――――『演奏』ろう」

――――『ウィズイン・サイレンス』を構える。

                        ヤ
     「おまえとはずっと――――『演奏』ってみたいと思ってた」

          「会ってみたいと思ってたし」

    「話してみたいとも思ってた」

             「それに、『楽器のスタンド』を持ってる奴にも会ってみたかった」

        「スタンドは『精神の形』だって話を聞いたからな」

      「なら、『楽器』のスタンドを持ってる奴は根っからの『音楽屋』ってことだろ?」

少なくとも、自分はそうだ。
板踏甲賀の『精神の形』は、この形でしか有り得なかったのだろう。
再び、表情が獰猛なスマイルを形作った。

     「『即興』で行こうぜ」

            「『リード』は俺がやる」

                 「それともおまえが『引っ張る』か?」

166ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 01:45:35
>>165

「ヤ ッ――――」

   「あ」
         「え」

              「ええ!」

  ス
     ス

「私も……演奏、してみたいわ。」

やや焦りつつも、両手を、胸の前で構える。
鍵盤のヴィジョンは、姿勢を崩せばすぐに消える。

    ♪   ♪
      ♪   ♪

だが望めば、いつでも。どこででも。

「スタンドは……『精神のあらわれ』。
 私も、ええ……そう思っているわ。だから。」

        「私は音楽が大好きだし……
          それは、貴方も……同じことよね。」

ココロは湖畔を愛する。
そして、音楽を愛する。

   ♪   ♪

笑みを浮かべて、穏やかな演奏が鍵盤を保つ。

「リードは貴方に任せるわ……
 私が、合わせるから。よろしく、お願いするわね。」

          「それじゃあ……!」

                 ――準備はいつでも出来ている。

167板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 02:03:10
>>166

       「光栄だ」

私も演奏してみたい、なんて言われてしまえば、こんなにも嬉しいことは無い。
思わず高笑いしたくなる衝動を、グッと堪えて胸の『炉』にくべる。


     「OK――――」


あとは言葉はいらない。
音楽好きが楽器を持って集まれば、やることはひとつだ。


             「――――行くぞ」


          スゥッ――


『ウィズイン・サイレンス』に口を当て、息を吸い込む。
板踏甲賀にとって音楽は―――‐『全て』だ。
その世界には『音楽』しかない。
そう信じているが故に、コミュニケーションも……やはり、また。


        /二二二二7
        //___.//                               f二)
        / ―――‐ /                                 || l
        //     //                                ||ノ〉
   , -‐-v./  , -‐-v./                Vk、                レ
  《   .ノ  《   .ノ                  Vト、` ー 、
    ̄      ̄                    Vk `ー、 i
                                Vk   l/
                                Vk
                               〆 .〉
                              /   ノ
            《 ヽ___          ゝ- ´
             _ ̄ ̄ ̄| |
            《 ヽ__| |
              ̄ ̄ ̄ ̄

   〃`:
                                    丶_ノ ー、
                                      \.  ト.
                                       \.! !
                                         ヾ|


――――音は鋭く、情熱的に。
最初から手加減も遠慮もなしのフルスロットルだ。

168ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 02:14:50
>>167

「――――ええ!」

ココロにとって音楽は全てではない。
けれど――何より。

   ス

        スス

何より、自信を持って出来ることだから。
何より、誰かに好きになってもらえることだから。

       
:♯゚♪。           
  +.:♭*
     ♪.♪*
       .♪*     +.:♭*♪.♪*
         ♭*♪.♪*     *:.♪.:。.  
                         *:.♪.:。.*:.♪.:。.*:.♪.:。.
     
音を紡いでいく。

『板踏』の演奏に合わせるように。
幻の音が、炎のように情熱的な音を、補う。        


        +.:♭*♪.♪*             *:.♪.:。.*:.♪.:。.
       .♪*     +.:♭*♪.♪*   +.:♭*♪.♪*  
   :♯゚♪。            ♭*♪.♪*
*:.♪.:。.                    
゚                         


(…………楽しい! 楽しいわ!
 『RLP』――誰かと一緒に、演奏するのは!)

ココロは笑みを浮かべて――ただ音に向かい、音を躍らせる。

169板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 02:28:54
>>168

    (いい――――いいぞ!)

        (ハッハァ! 楽しい! 楽しいな水溜ココロ!)

湧き上がる歓喜。
それすらも炉にくべて燃料にして。

板踏の音楽の原動力は、その情熱。
燃え盛る炎のように、薪と風を送り込むほど熱量を上げる音楽。
鉄をも溶かす『蹈鞴製鉄』のように、際限なくその火力は上がっていく。

      (なら、こいつはどうだ――――!)

                          ∧
                        <♪>
                          ∨
       ∧
     γ   `ヽ
    <  ♪  >        ∧
      ゝ   _ノ  ∧     <♪>
       ∨  <♪>     ∨
            ∨

                      ∧
                    γ   `ヽ
                   <  ♪  >
    ∧                ゝ   _ノ
   <♪>               ∨
    ∨

挑むように、転調。
音はさらに激しく。
炉の熱量が上がっていく。どこまでも、どこまでも。

170ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 02:35:26
>>169

心の水底から――音が沸き上がる。
迷いがちな言葉より雄弁に、指は、ピアノは語る。

湖畔の水面を撫でた指先。
そのまま――音に流し込む。

(板踏さん――なんて『熱い』音色!
 でも私は……張り合ったりは、しないわ。)

もっと目立とうとか――抜き去ってやろうとか。
そういうのじゃあ、ない。

これは、『セッション』。
音と音の調和。水が炎を消すことはない。


          _,.、.-―-.、., ♪
       、-''´       `'-.、,_
―--:‐''^ ´   ♪
                             ♪                 _,.、.-―-.、.,
                                            、-''´       `'-.、,_
                                       ―--:‐''^ ´



      (……合わせるって、言ったもの。)

むしろ、水に反射して、炎の揺らめきは妖しく灯る。
熱暴走なんて、起こさせない。

              (どこまでだって……!)

音と音の調和――どこまでも、どこまでも、保って行く。

171板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 02:48:59
>>170

ついてこれるか―――――音に乗せたメッセージ。
帰って来たのは、やはり音に乗ったメッセージ。

炎は湖面を照らし、湖面は炎を映して輝く。
相互に互いを引き立てる、音と音のコミュニケーション。

    (ああ、楽しいな! 本当に!)

               (これならいつまでもやれそうだ!)

       (ああ、いつまでだって続けてたいさ!)

玉のように噴き出す汗。
僅かな時間のはずなのに、もう何時間も演奏を続けているような気すらしてくる。
つまり――――

         (だが――――ああ! クソッ!)

――――その体力は、有限で。
音は徐々に熱量を抑え、ゆっくりと……『デクレッシェンド』で消えていく。
炎は小さく、しかし最後までその輝きを誇示しながら……


                           . . : :♪
.                         . : ∮ :
           . . . .          . : : : :
         . . : : : : :|ヽ: . .     . : : :#: :
       . : : r‐┐ : C|: : : : . . . :c/⌒: : :
     . : : : d d : : :   : :♭: : : :
   . :c/⌒: : : :        : : :
. : :♪: : : :
 : : :


――――演奏を、終えた。

             「―――――ぷはっ!」

                      ドサッ

たまらず、板踏は大の字になって地面に寝転がる。

172ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 03:07:02
>>171

スタンドは精神(ココロ)の表現だ。
この音楽も――精神(ココロ)の表現だ。

全身全霊の演奏は――そう、だからこそ。

「…………!」

                           . . : :♪
.                         . : ∮ :
           . . . .          . : : : :
         . . : : : : :|ヽ: . .     . : : :#: :
       . : : r‐┐ : C|: : : : . . . :c/⌒: : :
     . : : : d d : : :   : :♭: : : :
   . :c/⌒: : : :        : : :
. : :♪: : : :
 : : :

(そろそろ……終わるのね!
 分かっているわ、最後まで合わせる――)


       ジャァ――z____ン


                 ・・・・永くは続かない。


「…………」

「………………はぁぁぁ。」

         シュ― ン

『RLP』が解除され――じきに、余韻も溶けていく。
寝転がったりはしないけれど、心地よい達成感に満たされる。

173板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2016/06/09(木) 03:21:14
>>172

呼気は荒く、汗は止まらず。
しかしそれが、たまらなく気持ちいい。
湖畔の涼しい風が頬を撫でていく。

……しばらくそうして休んでから、むくりと上体を起こした。

     「――――――『板踏甲賀』だ」

ニィと微笑んで、手を差し出す。
もう、そこに身を焦がすほどの熱は無い。
既に互いの名は知っている。
それでも――――改めて名乗らずにはいられなかった。
そういう衝動だけが胸の内にあった。

言いたいことは、既に。
音に乗せて交わした。ありったけの全てを。
余計な言葉を吐こうという気には、まったくなれなかった。

174ココロ『RLP』:2016/06/09(木) 03:31:03
>>173

    ス

差し出された手を、軽く握る。
そして。

「……」

「私は……『水溜 意(みずたまり こころ)』よ。」

       ニコ…

『板踏甲賀』個人に名乗るのは――初めてだ。
それはきっと、大きな意味があること。

    ヒュ
       オ
         オ

いつも通りの湖畔の水面。
涼しい風が吹く。

今日もまた、ココロの『絆』が――ここで、紡がれた。

175藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/26(日) 23:59:26
音が聞こえる。
音色が聞こえる。
旋律が聞こえる。
湖畔の傍から聞こえる。

バイオリンの音が聞こえる。

「……」

演奏を終える。
浮かない表情だ。

176ココロ『RLP』:2016/06/27(月) 00:03:53
>>175

「…………」

    〜♪

          「……?」

音色が聞こえた――気がした。
既に止んでいた。

自然公園には散歩をしに来た。
気のせいだとしても、帰るわけではない。

     スタ
           スタ

そして――歩く先にいる『藤心』の姿が、ココロの視界に入った。

(……あ……き、気のせいじゃなかったわ。
 バイオリン……かしら、あの人が演奏していたのね。)

        ジ…

        (あ、あまりじろじろ見ては失礼かしら……?)

と、思い直すものの、もう十分じろじろ見ていた。
視線に気づくかもしれないし――そうでなくても、距離的に近い。

177藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/27(月) 00:11:00
>>176

散歩をしに来たココロ。
音色に足を止める。
長く黒い髪。尻にかかりそうなほどだ。
その女性がまたバイオリンをひこうと構える。
が、そこでココロと目が合った。

「あ……」

びくりと大きく体を震わせる。
視線を外し、きょろきょろと辺りを見回している。
すると、近くにあったバイオリンのケースに手を伸ばした。

178ココロ『RLP』:2016/06/27(月) 00:23:33
>>177

(あんなに長いと、
 手入れが大変そうね……)

(……いえ、だから何ってことはないのだけれど。)

湖畔の緩やかな風。
長い髪に視線を取られ――目が合った。

  「あっ」
 
     ビクッ

(こ、怖がられているわ……
 ど、どうしましょう、不審者だと思われた……?)

      (嫌な思いをさせてしまったかしら……?)

目を逸らす。
ココロはあまり強い気質ではない。  

「こ、こんにちは……
 ごめんなさい、じろじろ見て。」

「その、バイオリンが聞こえたから、気になって……」

とはいえ、話すことは出来る。
ここで逃げれば、本格的に不審者だ。
もし自分がそういうことをやられたら怖い。

      「……れ、レッスンをしているんですか?」

それに――楽器を、音楽をしている相手に興味があるのは本当だ。

179藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/27(月) 00:44:58
>>178

「ヴァイオリン……」

女の動きがぴたりと止まる。
が、ほんのちょっぴり震えているのだろうか。
髪の毛が揺れ、ケースを掴めないでいる。

「レ……レッスンでは……ないわ……」

「ひいていた……だけ…………それだけ……ほんとうよ?」

ぽつり、ぽつりと語る。
やはり視線は合わせない。

「私は……なにも……」

180ココロ『RLP』:2016/06/27(月) 00:58:54
>>179

「あ……そ、そうなんですか。
 ご……ごめんなさい、早とちりでした……」

ココロは深追いしない。
そういうのはお互いよくない。

(ど、どうしたのかしら……
 そんなに、こ、怖がられているの?)

     (私そんなに怪しい……?
      そ、それとも体調が悪いのかしら?)

  ソロ…

ほんの少しだけ、脚を前に動かす。
懸念はあるが、話しやすいようにも歩み寄る。

「あ……え、ええと……
 私も、ピアノをしているから……」

     「気になっただけで……
      それだけ……興味本位で。」

あくまで、恐る恐るだ。
ココロは傷つけたくないし、その逆も恐れる。

「別に何をしようとかじゃあないんです……
 ごめんなさい、向こうに行った方がいいかしら……?」

「そ、それとも……何か他に出来ることとか……
 いえ、私がそれを出来るかは、分からないけれど……」
  
一応、尋ねてみる。拒まれたなら、実際にそうするだろう。

181藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/27(月) 01:12:21
>>180

俯いたまま動かない女。
外界から身を守るように黒い髪が顔に影を作る。

「いいの……あなた、悪くないわ……」

「! ……そう……ピアノ……いいわねぇ……」

やっと目を合わせてくれたらしい。
しかしその眼は前髪に隠れている。
口元が少し緩んでいるらしいことは分かる程度だ。

「いいわ……ここは……私のものじゃ……ない……し」

「私……なにも、いらない……なにもなにも……」

「……あなた、お名前は?」

182ココロ『RLP』:2016/06/27(月) 01:25:04
>>181

「え、ええ! 良いですよね。
 私も……弦楽器は詳しくないけれど……
 でも、ヴァイオリンの音って、なんだか落ち着いて。」

吊気味の目を、ぱちぱちと開閉する。

(よ、よかった……音楽が好きなんだわ。
 それに、私が怖がられてるわけじゃないのね。)

内心胸をなでおろす。
それに、話が合うかもしれない。嬉しい。

しかし。

(……じゃあ、何があったのかしら。
 私が踏み込んで良い事じゃ……ないわよね。)

眼の前の奏者の様子は、いかにもおかしい。
それはココロにも分かるし、心配でもある。

なにも、いらない。
その心の内は分からないが――

「あ……ありがとう。
 わ、私、ココロ……『水溜 意』です。」

               「貴女は……?」

名前を教え、聞く。
いきなり踏み込みすぎていくのは、不作法に違いない。

183藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/27(月) 01:35:25
>>182

「……そう……そうよ……そうよね……」

肯定。
不安そうな様子もない。
正解の話題、なのかも。

「ココロ……? みずたまり……ここ……ろ……」

名前の復唱。
噛みしめる様に心の名前を呼ぶ。
何度も何度も。それから黙って少し髪を揺らし、口をまた開く。

「あなたも……ココロ、なの……ね……」

「私も……ココロ」

「藤心……舞……ふじ……ごころ……」

184ココロ『RLP』:2016/06/27(月) 01:44:56
>>183

「あっ……そ、そうなんですか。
 ココロ繋がり……なんだか、奇遇ですね。」

     「だって、楽器も……
       音楽も好きですし……」

          「いえその、勝手な、
            シンパシーなのだけれど……」

恐る恐るではあるが――ココロは言葉を紡ぐ。
シンパシー。それがココロの感情なのかもしれない。

(この人も……私と同じ……
 いえ、同じというのは決めつけだけれど……)

(気が……弱い人なのかもしれないわ。
 もしかしたらというだけの……
 私の、勝手な考えに過ぎないけれど……)

それはつまり、おかしい人じゃあないってことだ。
まだ何も、分からない程度の繋がりだけれど。

「あ、あの……」

「ヴァイオリン……よかったら。
 もう一度、聞かせてもらっていいかしら……?」

――音楽。

そこに糸を見いだせたのは、光明だ。
音楽という『絆』は、言葉を超える事が出来る。

185藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/27(月) 23:34:51
>>184

「……シンパシー……?」

「そう……」

ぎゅっと胸の前でバイオリンを抱きしめる。
少しうつむきがちな視線。
それが何を意味するかは藤心だけが知っている。

「聞きたいの……? ヴァイオリン……」

「あなたが望むなら……いいわ……」

ゆっくりと、藤心はバイオリンを引く準備を始める。
長い黒髪を片側に寄せ、細い方にバイオリンを乗せる。
古めかしくも手入れされたバイオリン。
すぐにでも引ける状態になっている。

「……すぅ」

一度大きく吸い、吐いた。
演奏が始まる。

ttps://www.youtube.com/watch?v=GKn6-Wp3XJM

186ココロ『RLP』:2016/06/27(月) 23:40:07
>>185

(少し変なことを言ってしまったかしら……
 でも、確かにこの気持ちはシンパシーだわ……)

       (責任を持たなきゃ、自分の言葉よ。)


藤心のリアクションの意味は――察せない。
悪い反応ではないと、ココロは祈りたい。

「ええ……お願いします。
 お礼が出来るわけでも、ないけれど……」

      ス

小さく、しかし確かに頷くココロ。
耳に少しかかった髪をどかす。

そして――

「……」

      スー

           ハー

落ち着いて、演奏を――聴く。

    (カノン――)

          (……綺麗な音色。)

終わるまで、余計な口は叩かない。
目を薄く閉じ、聞き入る。そして終わったなら、小さく拍手をするだろう。

187藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/28(火) 00:03:35
>>186

藤心は非情におどおどしている。
それは人に会ったときにそうだし、普段から周りを伺っていた。
その割に外界からの刺激に弱い。人に合えば驚いてしまう。
しかし、バイオリンを引く彼女はひどく穏やかだった。
病的なまでに白い指が音を紡ぎだす。
ほんの少しの刺激で壊れてしまいそうなほど儚い雰囲気を纏ってはいるが
落ち着き、集中し、無心にバイオリンを引く姿はそんな印象を消し去ってしまうかもしれない。

「ありがとう」

拍手に対し、ぺこりと頭を下げた。

「優しいのね……」

「あなた……音楽……好き……?」

188ココロ『RLP』:2016/06/28(火) 00:14:16
>>187

ココロは演奏時の藤心に共感を抱く。
演奏は心を落ち着けてくれる。
演奏している自分は誇る事が出来る。

何もかも同じでは、ないだろう。
あくまで――親しめる物を感じる。

「こちらこそ……
 ありがとうございました。」

   ペコ

小さく返礼する。
シンパシーを抜きにして、良い演奏だった。

「い、いいえ。私はそんな……
 あっ、いえ、音楽は好きです。」

そして、頷く。
ココロの魂には『鍵盤』がある。音色がある。

「ずっと……ピアノは、私、してきましたから。
 ごめんなさい、ここでは弾けないけれど……」

(『RLP』は……聴こえない、わよね。
 決めつけてかかるのは良くないけれど……)

              (…………でも。)

しかし、それは幻の音色をのみ奏でる。
今、ここで出したところで、意味はない――はずだ。

189藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/28(火) 00:35:37
>>188

「……私も……好きよ」

ぼそぼそと小さな声で呟く。
聞き洩らしてしまいそうな声で話す。

「あなたの……弾く……ピアノ……」

「聞いて……みたい……けれど」

方法がない。
気軽に持ち運びできるようなものではない。
それは藤心も分かっていた。
しかし、相手の演奏を聴きたいという心は変わらない。

「……残念、ね……とてもとても……でも……それでも……いいわ」

「しょうがないもの……ね」

190ココロ『RLP』:2016/06/28(火) 00:45:27
>>189

「あ……ご……
 ごめんなさい……」

「ここにピアノがあれば……あれば……」

しょうがない。
しょうがないことだ。

(だけれど……『試す』のは……
 わ、私が、不審だと思われるくらいだわ。)

      (……良くないことは。)

   ピク

指輪に飾られた白い指が、僅かに動く。
ピアノの運指――

「……ふ、藤心さん。」

    ♪

       「…………『聴こえますか』?」

  ♪

      ♪


僅かな動作でも、ココロが望めば『それ』は奏でる。
指先に浮かび上がる、透明な鍵盤――『RLP』。

     (もし? き、聴こえなかったら、その時は……
       いいえ、悪い方ばかりに考えてもしょうがないわ。)

                  ――幻想の音が湖面に踊る。

191藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/28(火) 01:01:49
>>190

「いいわ……誰が……ううん……」

「……私の……わがまま……」

自戒するように呟く。
視線をそらし、一人また殻にこもる。
拒絶というよりは相手を自分に触れさせないための。

「……?」

ぱっと藤心の顔が上がる。
虚空を見つめる瞳。
音の鳴る方向を探し、見つけ出す。
視線の先に美しき鍵盤。

「……きれい……とてもとても……きれい……ね」

仕組みも何もわからない。
しかしそこに音があることが素晴らしい。

「素敵……」

192ココロ『RLP』:2016/06/28(火) 01:10:31
>>191

「わ、私のこれも、私のわがまま……」

        「だけれど」

   ポロ
        ン ♪


「――よ、良かった。
 演奏……聴かせ、られます。」

    「……ありがとうございます。
     私の『RLP』を、褒めてくれて。」

  ス―

      ハ―


「弾きます。」

深呼吸は余計な心を洗うための合図。
演奏に、心から指先を通じ鍵盤に音を――感覚に、没入する。


弾く曲は決めている。
技術勝負とか、そういうつもりはない。



          _,.、.-―-.、., ♪
       、-''´       `'-.、,_
―--:‐''^ ´   ♪
                             ♪                 _,.、.-―-.、.,
                                            、-''´       `'-.、,_
                                       ―--:‐''^ ´


一番得意な曲を――『絆』を紡ぐための、曲を。
ttps://www.youtube.com/watch?v=0siIoIWd62c

193藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/28(火) 01:19:26
>>192

「不思議……」

藤心の知識にこのようなピアノの形はない。
そしてこういうピアノを演奏するということも、ない。
未知。全くの未知足り得る。しかし満ち足りている。

「すごいわ……あなた……」

「昔……教えて……もらった……」

「演奏は……心も……癖も……人も……出るって……」

演奏が終われば小さな弱弱しい拍手と共にそんな言葉を贈る。

「あなた……やっぱり、優しい……の……かも」

194ココロ『RLP』:2016/06/28(火) 01:53:14
>>193

ココロは『RLP』について多くは語らない。
スタンドは――知っていると思っている。

それに、これは演奏が出来るのだ。
今はそれだけで良い。
演奏が止まれば、鍵盤も消える。

「あ……ありがとうございました。聴いてくれて。」

   「ごめんなさい、その……
    驚かせてしまいました……?」

拍手の音は、耳に心地いい。
ヴァイオリンの音ほどではないけれど。

「……」

昔、大切な友達に教えられた。

     キュ

スタンドは心の鏡――
美しいスタンドの持ち主には、美しい心が少しはある、と。

その言葉はココロを何度も励ました。

「……わ、私……嬉しい、藤心さん。
 そんな風に、言って貰えて……本当に。」

「『RLP』を……演奏を、褒められるのは……嬉しくて。」

              ニコ…

         「ありがとうございます。」

面と向かってこれほど褒められるのは、誇らしく、照れる。
決して初めての経験ではないけれど、藤心の言葉は初めてだ。

195藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/28(火) 23:23:02
>>194

「少し……だけ……」

驚いていたらしい。
その割にはこれといった反応を示していたわけでもなさそうだが。

「いいの……私は……別に……」

感謝の言葉を述べるココロに藤心はそう返す。
黒い長髪で自らを覆い、その視線を地面に注いでいる。

「……少し……困ってしまうわ……」

「そんなに……いいえ……いいの……」

196ココロ『RLP』:2016/06/29(水) 01:08:53
>>195

「あ……ご、ごめんなさい。
 私ったら、少し大げさでした……?」

         ビク

少しだけ申し訳ない気がした。
けれど、感謝の気持ちは本心だし――

「でも……」

「本当に、嬉しかったから……」

あんまり謝り過ぎても、余計困らせてしまうだろう。
自分なら、きっと困る……気がする。

        チラ

「……あ……」

      「私、そろそろ……
        行こうかと思います。」

時計が目に入って、時間が気になった。

「も、もしよかったら……また、会えたら嬉しいです。」

それも素直な気持ちだった。
この湖畔に来れば、会えるような気もした。

197藤心 舞『ラヴィンチェインズ』:2016/06/29(水) 23:35:56
>>196

「いえ……いいの……私も……嬉しい……」

ケースにバイオリンをしまう藤心。
パチンパチンとケースを閉じる。
それからほうと一息ついた。

「そう……行くのね」

「会えるわ……きっときっと……」

ココロに視線を合わせてそう返す。
その顔はほんの少しだけ、笑んでいたのかもしれない。

「さようなら……」

198ココロ『RLP』:2016/06/29(水) 23:39:48
>>197

「ええ……さようなら、藤心さん。」

      ペコ…

小さく頭を下げて、自然公園を去る。

     「……また。」

その表情は、笑みだった。
ヴァイオリンの音色が、絆の糸を出会わせた。

そして――ピアノの音色が、それを紡いだ。  

     (素敵な演奏だったわ。
       ……きっと、会える。
        私もそう思っているわ……)

奇妙な、確信めいた思いと共に、ココロは帰路を歩いていく。

199稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/07/09(土) 01:18:51

恋姫はインドア派だ。
アイドルとしてもそういうことになっている。
異論は認める――と恋姫は思わない。
そこになんら異論をはさむ余地はない。

……だが、たまには散歩もする。

   ザッ

「あっつ……」

まだ朝。
それでも、暑い。
主に、髪を納めた帽子の中。
それから、汗で滑る眼鏡も嫌だ。

      くしゃ


「うわ……」

セミの抜け殻を踏んでしまった。
たまには散歩もするが……帰りたくなってきた。

200遊部『フラジール・デイズ』:2016/07/15(金) 21:24:48
>>199


   ザァァァァ    ピチピチ   ピチピチ…

木々は風に揺れ、自然のみの囁きを織りなす。
 木漏れ日の隙間から、微かに小鳥が謡うのが聞こえた。

空に一羽、小さな影が太陽の下を通過する。アレは……ひばりだろうか

 『思いはひばりの如く軽やかに夜明けの空を飛び回るものは幸いなり』

 その鳥を見ながら、黄色を基調としたレースのワンピースを身に着けている
ピンク色の長髪の女性が、鳥の横切った空を仰ぎつつ呟く。

 『人生を超越しつつ飛び回り物言わぬ花々の言葉を解するものは幸いなり』
 
 クルッ

 その女性は、貴方のほうへ振り向く。

……穏やかな顔つきをした、少し妖美な雰囲気が彼女を取り巻いている。

 「あら こんにちは。そちらも森林浴ですか?」

 話しかけてきた……悪意はなさそうだ。

201稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/07/15(金) 23:30:25
>>200

   スッ

足を上げて、足元の抜け殻を見る。
見事につぶれていた。
生きてるのじゃなくてよかった。

    ビクッ

……突如話しかけられ、
小さい背がやや跳ねる。

     「えひっ……」

「まあ……そんなとこかな……
 『モンスター探し』では、ない……」

      クル

冗談とともに振り返った。

(うおっ……ピンク髪……
 コスプレかなんかか……?)

「あー、僕森林浴は初心者なんだけど、
 この暑いのに……ガチ勢は癒されるの……?」
 
          ジリ

    ジリ

空には素敵な光景が広がっている。
だが、舗装された地面は地獄の暑さだ。

恋姫は元から八の字気味な眉をさらに曲げつつ、うだる。

202遊部『フラジール・デイズ』:2016/07/15(金) 23:49:06
>>201

クスッ
 
 「『モンスター探し』なんて、洒落た言い方ね。
『追う怪物に 追われる怪物  学ばない人々に 繰り返す歴史
過去の被害者さえ 未来は加害者 』ってね。
……あぁ、あなたの中のモンスター、と言う詩の引用よ」

 「癒される……そうね」

うーん、と伸びをして。その女性は木々を見つめ。少ししてから
口の弧を上げるだけの微笑を向け、言葉を向けた。

 「そうね、私は癒されると思うわよ。
周りが苦しくて、気に食わない所も目に付くでしょうけど。それでも
空を見れば、一点の染みのない青空でしょう? あぁ、雲が掛かっていたら
そうじゃないじゃないって言う、揚げ足は抜きにしてね」

 軽くルージュを引いた唇に、指を添え。クスリとその女性は
貴方に対し茶目っ気を含め、告げた。

 稗田の視点が、髪のほうに向いてるのに気づいたのか。その
ピンク色の長髪をサラッと掻き揚げながら、気負う事なく答えた。

「あぁ、この髪の色が気になる? まぁ派手だと思うわ、けどちょっとした事情があってね。
元々、『私』の地毛は落ち着いた金色なのよ。でも、ピンクも良いと思うわよ。
花でもカーネーションは落ち着く色合いじゃない」

 貴方と多少のお喋りを楽しむ猶予は、目の前の彼女にはあるようだ。

203稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/07/16(土) 00:04:18
>>202

「……何それ怖いな。
 別に……洒落てるとかじゃあないし。」

      「……ゲームの話だから。」

    スッ

・・・・視線を少し上げる。

地面を見ていると余計暑いから。
帽子のおかげで、上からの暑さは、少しマシ。

「流石ガチ勢だ……
 僕にはとてもできない……えひ。」

     ミーン  ミーン

      ジジジジ

「空見てもめっちゃあつい……
 まあでも……セミの抜け殻よりは癒されるな。」

それから――

「えひ、カーネーションか……
 落ち着くってか、ひらひらなイメージ……」

無意識に、髪を見ていた事に気づく。

「……バンドマンか何か……?
 コスプレ……ってわけじゃなさそうだが……」

恋姫自身の目も、桜色をしている。
暑さのあまり細まり、満開の夏桜とはいかないが。

204遊部『フラジール・デイズ』:2016/07/16(土) 00:34:46
>>203

「『バンドマン』……あぁ、そうね。そう言う見方もあるのよね。
次から、この髪の色を誰かが気にしたら、そう言う風な肩書だって言おうかしら。
 もっとも、私は楽器は弾くより聞くほうが好みなんですけどね。
ショパンとか、モーツアルトとか」

 長髪のピンクの髪の先を弄り、少しだけ思案した顔つきで
稗田の質問に対し、その女性は回答を探す様子を見せる。

 「そうねぇ 謂わば……こんな言い方も奇妙だけど。『擬態』と
言うべきなのかしらねぇ」

 フッ

 女性は、僅かに馬鹿にするわけでもない。だが何処となく
何かに対し一笑するかのような微笑みを作り上げ、そう告げた。

 「保護色、って言う言葉があるでしょう? 
外敵から身を守る為、または狩猟の為に身を隠す為、とか。
 まぁ、私の場合。前者の意味を兼ねた意味合いでのピンク色が、その
保護色に鳴り得る訳よ。この髪の色だと、そんなにお近づきになりたいと
思える物好きな方って少ないでしょう? そう言う理由かしらね」

 私、余り人付き合いを好まないのよ。と、余り人好きとは言えない台詞を
人好きのする笑い方を交えて女性は言い切った。
 何と言うか、気持ちの良い女性だ……気弱、とか。ネガティブと言うものに
縁が少ないようだと。少し話を交えただけでも、そう言う性格なのが見て取れた。

「貴方は、その『バンドマン』なのかしらね? 御免なさいね
私、芸能界とかそう言った風聞に余り価値を見出さなくてね。
 貴方が高名な人だとしたら気を悪くさせてしまったかしら」

 そう大人びた様子で、稗田の職を聞く。

205稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/07/16(土) 00:48:33
>>204

「クラシックってやつなのかな……?
 えひ、BGMでしか聞いたことないかも……」

ゲームの、という意味だ。
実際にはCMとかで耳にする機会もある?
……どちらにせよ、意識してはない。

それから。

「擬態ぃ……?」

(なんだこいつ……
 厨二入ってんのか……?)

「まあ……うん。一理あるかな……
 絶対エンカしに行かない見た目だ……」

        「……えひ。」

言葉選びが引っかかったけれど、
まあ、恋姫も人の事は言えない立場。

「いや……僕は……
 もっと俗っぽいやつだよ……」

「そんなスーパーレアキャラでもない……」

えひ、と笑った。
レアくらいかな……と内心思う。

「にしても……あー。
 揚げ足取っちゃうけど……」

少しだけ、躊躇ってから。

「……人付き合い苦手なら、何で僕に声かけたの?」

       「コミュ力の経験値稼ぎ……とか?
         えひ、僕も大した経験値持ってないよ……」

206遊部『フラジール・デイズ』:2016/07/16(土) 18:37:51
>>205

>コミュ力の経験値稼ぎ……とか?

 パンッ 「冴えてるわねー。ご名答っ
こんな成りでも、話が弾むのなら、お茶の一杯を楽しむ
相手には十分でしょう? 誰かと気さくに、見知らぬ相手でも
引かせず、お茶の御相手…そう出来るのも才能の一種だと思うわ」

 軽い手拍子を一度打ち、女性は笑みを見せて喋る。

「自分の悪いと思える部分は、他人から見るとそんなに悪く思えないけど。
それでも直したほうがいい部分は直すべきよね。
 『私』が『わたし』で悪い部分は、私は誰かとお喋りするのが好きだけど
だけどわたしは人と付き合うのが臆病なのよ。ねぇ、滑稽でしょう?」

 そう、女性は唇に指を添え小さく弾けるように笑う。
不思議な内容だ……だが、冗談なのか本気なのかは判別がつかない。

 一頻り笑うと、女性は気分良さそうに伸びを一度して呟く。

「あー、お喋りって本当楽しい。けど、ずっとは無理ね 悲しい事に」

 それは独り言めいていて、少し寂しそうである。
だが、すぐに笑顔を見せ稗田へ尋ねた。

「それで。Ex(経験値)の少ないそちらは、Ex(急行列車)に乗る程
お忙しくなければ、少し名前をお伺いしてもよろしいかしら」

 軽いジョークを交え、女性は貴方に名前を聞く…。

207稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/07/16(土) 23:31:47
>>206

手拍子に視線を動かしつつ。

「えひ、正解しちゃったぁ……
 豪華景品は期待して良い……?」

     「才能ね……
       まあ……でも……」

実際、話が出来ている。
初対面でも、だ――イージーな行為ではない。

「……」

「滑稽ってことも……
 ないんじゃないの……
 別に、常識的に考えても……」

短く返した。

「……」

笑みは浮かべづらかった。
その理由は自分自身意識してはいない。

「後ろから、炎の壁が迫ってくる……?
 じゃないだろうけど、えひ……制限時間はあるよな。」

腕時計を見た。
それから。

「……稗田。稗田……恋姫。
 わるいメタルスライムじゃないよ……」

                 「……お前、は?」

208遊部『フラジール・デイズ』:2016/07/17(日) 00:01:32
>>207

 >稗田……恋姫

稗田の返事に、大きくゆっくりと頷きを示し女性は朗らかな笑み浮かべた。

「良い名前ねぇ。私、日本人の、ワビサビのある名前って好きよ。
私?
 私は……  ――『レミ』 そう、呼んでくれれば良いわ。稗田さん」

 互いに名乗りを示す。通りすがりに咲かしたお喋りとしては
他人から知人にランクは上がる。中々のベターな関係の築き方、と思って良い。

 そして、腕時計を見た彼女を見て。空気を読んだのだろう、抑揚をつけて告げる。

「あらまぁ、こんな時間ね。お喋りは楽しいけど、時間があっと言う間に過ぎてしまう。
まるで白昼夢のように……
『不思議の国にまどろみて 日々のまにまに夢を見る 逝く夏のように夢を見る』
……ってね。それじゃあ、また何処かで会いましょう稗田さん。
願わくば、次に会う時はお茶でも一杯互いに振る舞いながら、お話ししたいわね」

 そう、一つの木陰に腰を下ろしつつ。彼女……『レミ』は貴方へと
手をゆっくりと降り、別れを告げる。

 その顔つきは晴れやかであり、貴方との次の来訪を幾分かは
本当に期待してるように思えた……。

209稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/07/17(日) 00:14:00
>>208

「…………?
 レミ……ね、んじゃそう呼ぶ。」

外国人なのか?
と、思ったがそれはまあ、今は良い。

「……次あった時には、な。」

暑さも忘れて話し込んでいた。
不思議な時間だった――ように思う。

「えひ……時間制限がバグってたみたい。
 まだ何分かしか、喋ってないつもりだったが……」

小さく、陰気な笑みを浮かべた。
快い種類の笑みだった。

「経験値貯めて待ってるよ……
 今度は絶対暑くないステージで会おうな……」

     「んじゃ……
      恋姫は にげだした!」

    クルッ

          「……なんてな、えひ……」

     トコ   トコ

ほんの小さく手を振り、その場を去っていく。
次に会う時は――今日の事を忘れてはいないだろう。

210遊部『フラジール・デイズ』:2016/07/17(日) 22:23:39
>>209

 「えぇ! それじゃあね稗田さん。貴方と『私』が
もう一度お喋り出来るの、楽しみにしてるわっ」

 ゆっくりと、伸ばされた手は振られ……貴方の姿が消えるまで
『レミ』は手を振り続け、見送る。

 「……」

 そして、稗田が消えると共に彼女は笑みを保ち再度木々を見上げる。

   ……ザッ

だが、そんな彼女に十秒足らずで、近づく足音が一つ。

 
            ゴ     ゴ       ゴ
              ゴ       ゴ     ゴ……。

     『……試運転としては、どんな調子だい?』

 その人影は、青年ような声色で『レミ』に語り掛ける。驚く事なく
微笑みを張り付けたまま彼女は振り向く事もせず告げる。

 「そうねっ。中々好調ではないのかしら? けれど、残念ね。
あの娘、とっても気立てが良さそうな娘だったのに。私がこんな
継ぎ接ぎの存在だって知ったら、がっかりするじゃないの?」

 『それも、必要な事だ。僕等にとって、そして彼女にとって……
道のりは険しく長くも、手順を踏んでいかなければならない。
 レミ……それは、君も分かっている筈だ。
        ――全ては 玲美の為なんだから』

      ゴ     ゴ   ゴ
        ゴ     ゴ     ゴ
                   ゴ   ゴ……

 「フフッ。貴方も中々屈折してるわねぇ? もう少し柔軟に
ストイックに気持ちのままに生きてみたら? ねぇ ――」


                 『……解除』

 
 『……レミの役柄は、上々だ。けど、まだ場数を慣れさせないと。
待っててくれ……玲美。僕が   きっと……』

 ピンク髪をした、華奢なワンピースを纏った女性がいる。

 その女性は、何処か思いつめた横顔と共に、低い男性のような
声を発しつつ森を後にした……。

211稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/07/26(火) 23:13:28

    ウロ

         ウロ


帽子を被って日よけして。
スポーツドリンクも持参した。

「……」

   スッ   スッ

スマートフォンをしきりに動かす。
自然風景の撮影? 否。

   ミーン
       ミンミン

            ミーーーーーーーン!

「……」

(夏特有のBGMいらない……
 音量調整も出来ないクソゲーだ……)

イヤホンでもつけて歩けばいいか――
しかし今は、音楽で充電を減らす暇などないのだ。

恋姫はスマホの画面越しに、電子の世界のモンスターを探しているから……

212雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』:2016/07/29(金) 00:40:25
>>211

「ふん、ふん、ふふん」

電子の世界のモンスターではなく
現実の世界の人間が現れた。
ただし野性の存在ではない。

「ふん、ふふん」

コインを投げ上げる。
数枚のコインがきらきらと陽の光を反射する。

「はい」

ぱっと、宙にある数枚のコインを一度にキャッチした。

「ん?」

気づいたようだ。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板