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届かぬ光

8transparent:2011/04/03(日) 11:52:06 ID:.TP2DUYg


友人がブランコへと徐々に近づいてくる。
呼吸が上手くできない。





「だから晃一、こんなとこに一人で何やってんの?」
「…家に帰んのが嫌でさ」






半分嘘と半分本当を言う。



夕暮れにのびる影は、ふたつだけ。
俺と、友人のものだ。
亜子はもちろん隣にいる。だが、亜子の影はない。







「つか、今日告白されてただろ!しかもお前好きな奴いんだって?
最近付き合い悪いのはそのせいかよ?」





空気が重い。
友人が喋るたびに空気が重くなっていく。






「ああ、そうだよ」





好きな奴に関して嘘は言わない。傷つけたくなんかない。
もうずっと、彼女は泣きそうなのに。




「で、好きな奴って誰?」と友人はまだ続けてくる。
夕暮れが藍色の空に変わろうとしていた。











「、俺の隣にいるやつ」









「…唇の端、大丈夫?」



二人きりになって最初に口を開いたのは亜子だった。


あのあと、俺は友人に「なに言ってんだよ」とか「気持ち悪い」と言われて殴られた。
何も見えていないやつから見たら確かに気持ち悪いんだろう。
他人からしたら、俺の隣には誰もいないように見えるのだから。


だけど抵抗は、しなかった。
嘘だとも、言わなかった。





「別にこんなの暴力教師の拳に比べたら痛くねーよ、」




唇の端が切れているから笑うと痛かったが、それでも笑った。



こんな痛み、きみの痛みに比べたらどうってことないのだから。


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