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届かぬ光

1 ◆JWPaeN65Rw:2010/10/13(水) 21:20:11 ID:OQA48WNg

――光も届かぬ、あの場所で 僕は君と約束しました。


約あのキャラ視点の詩,小説置き場。
詩,小説の投稿は凛のみです。


感想,アドバイス,リクエストは励みになります(`・ω・´)
気が向いたらしてやってください!
ただ完成するまでに時間がかかることは承知の上でいてください。

2transparent:2010/11/01(月) 22:43:52 ID:OQA48WNg




机に頬杖をついて指先でペンを一回転させながら、横目で授業中の教室を見渡す。
真面目にノートを取る奴、机の下に本を隠して読んでる奴、退屈そうに黒板を見てる奴、寝てる奴、と様々だ。





そんな俺も授業には興味が湧かなかった。

目線を自分の通学鞄へと変えて、片手を伸ばして鞄の中に適当に放ってある携帯を取り出す。
そして携帯を机の下へと持っていき、新規メールを作成する。







―『授業、暇なんだけど(笑)』






あまり音をたてないようにメールの内容を打ち、自分の友人達へと一斉送信した。



授業中なので携帯をいじっている奴しかメールに気づかないだろうから、返信は少ないだろうなという俺の予想は外れた。
メールを送った奴全員からちゃんと返信が返ってきた。
驚きながらも受信されたメールを開く。
返信が少ないだろうと言う予想から、後先のことは考えていなかった。
あまり返信に夢中になって携帯を使いすぎていると、教師もそのうち気づくだろう。







『俺も俺も!』


『俺も社会とか眠くなるし、暇なんだけど〜。そっち何の授業?』


『俺を見習って教科書でも読んどけ(笑)』





受信されたメールに笑みを零す。
どうせお前ら全員暇なんじゃん、と思いつつも授業中なので声には出さなかった。
そして、返信をしようとメールを作成しようとした瞬間、











「何やってんだ!」














教師の怒声と筋肉質の腕が頭上に降ってきた。















「失礼しました」




軽い溜息混じりの挨拶を済ませて職員室から退室した。
教室でバレた後、取り上げられた携帯も今は返ってきてポケットに入っている。
授業中にも怒られたと言うのにその後呼び出しをくらい、放課後が丸々潰れてしまった。
確かに授業中、しかも義務教育の学校に携帯を持ってきた俺が悪いがあそこまでの制裁と説教をする必要があるんだろうか。
不満が募る。
それでも懲りずに職員室前で携帯を開いて携帯の時計で時間を確認した後、窓の外に目を向けた。


…もう薄暗くなっていた。





溜息をひとつついてから、下駄箱へと続く階段を降りていく。


職員室で殴られた頬が痛い。
血の味もする。…多分歯を食いしばる前に殴られたから口の中が切れているんだろう。
そう思いながら自分の靴箱から靴を取り出して、靴のかかとを踏みながら校門を出て行った。

















冬真っ盛りだ。
さっきまで薄暗かった空がもう藍色の星が散らばる空へと変わっていた。
歩けば歩くほど手の感覚が失われていく。
朝、急いで家を出て来たので寒さを凌ぐものを持ってくるのを忘れたのだ。



つくづくツイてない日である。
きっと星座占いだって12位だ。





いつもは占いなんて見ないのにそんなことを思った。

3transparent:2010/11/01(月) 22:51:34 ID:OQA48WNg





▼牡牛座の運勢▼


12星座中 12位

今日はあなたの体調も運勢もあんまり優れない日。
安易な行動を取るとあなたに危険が降りかかります。
誰かと争ってしまった場合には言い返さないよう心がけて!

でも今日を乗り越えれば、明日には運命の出会いがあるかも…!?











昨日、帰宅した後に姉に牡牛座の運勢を聞いたところ、案の定。
予想した通りの最悪な運勢だった。
しかも手も足も霜焼けで風呂に入るのさえ大変だったのだ。
…占いもあまり馬鹿にはできないと身を持って体験した。





「んじゃ学校行ってくるから」




昨日の出来事を振り返りながら家をでた。
今日は晴れているけど、風が肌寒い。
これで太陽がなかったらどれだけ寒いかと想像するだけで身震いする。













教室。色んな男子に挨拶しながら自分の席につく。
すると、耳にピアスをつけた友達が話しかけてきた。







「晃一、大丈夫かよ?」





何が、と問うと驚かれた。いや、驚きたいのはこっちなんだけど。
「何が、じゃなくてこの頬」と言って頬をつねってきた。




途端、痛みが襲ってくる。



もちろんつねられた痛みもあるが一応は手加減をされている。
つまりは、つねられてる場所だ。
昨日暴力教師に殴られた場所。






「痛、いただだだっ、痛いから!」






まじ本気で痛いから。
その言葉を聞くと友達は手を離してくれた。






「まさか、殴られてたの忘れたとか言うんじゃねーよな」






苦笑。
…忘れてた。
昨日の今日で痛みはひいていたし、教師に対してもあまり怒りがなかったから完全に忘れていた。







「言っとくけど、結構腫れてるし青短になってるぜ?」






…見た目は重傷らしい。
「まあ、痛み感じないから放っておいても平気だって」と笑うが笑うと口元使うから超刺激されて痛む。笑顔が引きつる。







「…俺、帰ろっかな」







涙目。もう喋るだけで痛い。


何で殴ったのが腹とかじゃなくて口元の頬だったんだ、と思うと少しだけ暴力教師に怒りが込み上げる。
まあ、腹をあの筋肉質な腕に殴られた時点で絶対吐血する。断言できる。




何とも言えない気持ちになり、教室の時計に目を向ける。
まだホームルームまで20分もある。









「やっぱ俺帰るわ、休みって伝えといて」







こんな痛みに絶えながら授業を受ける意味がまったく分からない。まあ、サボりたいなんて少しの本音も含まれるがそれは置いておこう。
自問自答を繰り返して鞄を片手に持って席から立ち上がる。
「了解」と言う友達の声を聞き、「じゃーな」と言って教室を出た。

4transparent:2010/11/01(月) 22:57:29 ID:OQA48WNg



通学鞄を肩に乗せながら校門に向かうと、この中学の制服を着た女生徒が立っていた。
悲しそうな顔をしてずっと校舎を見つめている。



少しだけ気になったが、教師に欠席と伝えてくれと言ったのにいつまでも校門で立ちつくしてるわけには行かない。
しょうがなく足を進め、すれ違ったそのとき、女生徒が小さく呟いた。













「             」















声は小さく掠れていたが、言葉は必死で本気で真っ直ぐだった。















今現在、俺は校門の前にいた女生徒と一緒に歩いている。



どうしてこうなったのかなんて自分でも思い出せない。
でも話しかけたのは俺で、一緒にどこか行こうと誘ったのも俺だ。…まるでナンパだ。しかも同じ中学の多分だけど後輩。
しかもそんな俺に驚いた表情をしながらついてくる女生徒。
なんとも言えない気分である。






「そういえば俺、名前言ってなかったな。
俺は浅倉晃一。見て分かったと思うけど君と同じ中学。ちなみに学年は三年」




怪しいやつではないと思わせるためにせめて自己紹介くらいはしなければと自己紹介をした。
変なことは言ってないから通報されるとかそんな状況悪化はないだろう。


女生徒は俯けていた顔を静かにあげた。短い茶髪が揺れる。







「私は田中亜子。同じ中学の二年です」






亜子、と名乗る女生徒は校門の前にいたときとは違う明るい笑顔を見せた。







「あ、別に敬語じゃなくて平気。
つか敬語とか堅苦しいから嫌いだしさ。名前も呼び捨てで!」







俺がそう言うと彼女は「実は私も敬語嫌いなんだよね」と楽しそうに笑った。







「じゃあ、晃一って呼ぶね。私のことも亜子って呼んで!」












亜子と仲良くなるのに時間はかからなかった。
亜子と一緒に過ごす時間は時が経つにつれて多くなり、それは心の支えにもなっていた。

5transparent:2010/11/01(月) 23:28:16 ID:OQA48WNg




昨日、亜子とトマトの話しで軽い口論になった。
彼女はトマトとかトマトジュースが大好きらしいが俺はトマトもトマトジュースが子供の頃から大嫌いだった。
そんな二人の好みからくだらないトマト口論になった矢先。





今日の弁当のメニューが少ない量だが冷凍食品のナポリタン、プチトマトがサラダと一緒に添えてあった。


ナポリタンといえどトマトケチャップ、もといトマト。
その日の昼食は長い苦痛の旅だった。














「晃一、大丈夫か?」




ペットボトルのお茶を涙目になりながら自分の口に含ませている俺に哀れみの目で見ながら話しかけてくる同級生。





「いや、もうまじで無理。」





できることなら、もう二度とトマトなんか口にしたくない。















下校時間になった。
今日は亜子と一緒に帰る約束をしている。4時に校門前だ。







「晃一」





号令をし終わり教室からぞろぞろと出て行く中、ピアスの友達が話しかけてきた。






「今日さ、いつもの奴らと一緒にゲーセン行くんだけど行かね?」





誘いは嬉しかったが亜子との約束が先なので断った。







「…なんかお前、最近付き合い悪くね?」





少し顔を歪めてそいつは言う。
確かに最近亜子といることが多いし、学校内以外ではあまり絡まないようになってしまった。







「女と付き合い始めたとか?」
「そんなわけねぇよ」





苦笑する。
今はお前らといるよりも亜子といる方が楽しいんだ、そんな言葉を飲み込んで教室から出た。















「晃一、どうしたの?」




口数が少ないから気になったのか亜子が心配そうに聞いてきた。







「どうしたの、って何が?」
「元気なさそうに見えるよ?」










大丈夫だから心配すんな、と申し訳なさそうに小さく笑った。
…そう言う以外に何も浮かばなかったから。

6transparent:2010/11/01(月) 23:39:04 ID:OQA48WNg



亜子は元気で素直で、明るい笑顔が似合う女の子だった。
たまにふざけすぎたりうるさかったりもするけど、俺はその全てが亜子の長所だと思ってる。







「浅倉先輩、好きです」






なんて、告白されているのに亜子のことを考えていたなんて最低だろうか。


俺の目の前に立つ名前も知らない女の子は返事を催促するかのように俺を見る。
だけど俺はこの子の気持ちには答えられない。
この子が俺に抱いている感情を俺はこの子には抱いていないから。




ごめん俺、と言ったところで言葉を遮られる。









「好きな人がいるんですよね」








目の前の子は俺の目を真っ直ぐと見据えながら呟く。








「だって先輩はいつも2年の教室の前を通るとき、」
「…待てよ、それ以上言うな」










嫌な予感がする。

俺の言われたくない言葉を今、この子は言おうとしている気がして。
それでも「何でですか、だって事実でしょう」と言葉を続ける。













「悲しそうに辛そうに誰かを捜していますよね」


















元気がないように見える、と言われた次の日にまた元気のない顔を亜子に見せるのはとても気が引けた。
昨日は無自覚で元気がなかったが今日は違う。
とても笑う気分なんかじゃない。




…それでも亜子に会いたい。








日が暮れた外を夕日の光が射す教室の中から見ていた。
もうずっとこうしている。
亜子はいつもの場所で待っているんだろうか。
そう思うと今すぐにでも駆けつけたいけど、心配をかけさせるのは嫌だと足が止まる。











―「悲しそうに」










どうして。









―「辛そうに」











何で。











―「誰かを捜していますよね」










そんなにも簡単に一番触れてほしくないところに触れてくるんだろう。

7transparent:2011/04/03(日) 11:48:46 ID:.TP2DUYg



「晃一、それからね、」




亜子が楽しそうに笑って話を話すがまったく頭に入ってこなかった。
前にもこんなことがあったから、本当はちゃんと喋りたいけど言葉がでない。
自分が情けなくて嫌になる。






「でさ、なんかまだ「亜子」






「ちょっと寄り道していかねぇ?」と亜子の言葉を遮って言った。











寄り道場所は公園になり、二人ともブランコに座って、亜子は強くブランコをこぎ始めた。





「ねえ、晃一?」
「なに?」





「晃一はさ、」と亜子が言うがブランコをこぐ音と
ブランコからでる風のせいで亜子の声が掠れて聞こえない。







「好きな子いるの?」







一瞬、時間が止まったような感覚になった。
亜子からそう言われるとは思っていなかったから、なんて言ったらいいのかわからない。








「私はね、いるよ」








亜子はブランコをこぐのをやめて、こっちを向いて笑った。

誰?と聞いていいのかわからなかった。
いや、本当はその相手が誰だかなんて分かってたから聞こうとはしなかったのかもしれない。



それでも、








「晃一?なにやってんの?」








友人の声が夕焼けに染まる公園に響いた。

8transparent:2011/04/03(日) 11:52:06 ID:.TP2DUYg


友人がブランコへと徐々に近づいてくる。
呼吸が上手くできない。





「だから晃一、こんなとこに一人で何やってんの?」
「…家に帰んのが嫌でさ」






半分嘘と半分本当を言う。



夕暮れにのびる影は、ふたつだけ。
俺と、友人のものだ。
亜子はもちろん隣にいる。だが、亜子の影はない。







「つか、今日告白されてただろ!しかもお前好きな奴いんだって?
最近付き合い悪いのはそのせいかよ?」





空気が重い。
友人が喋るたびに空気が重くなっていく。






「ああ、そうだよ」





好きな奴に関して嘘は言わない。傷つけたくなんかない。
もうずっと、彼女は泣きそうなのに。




「で、好きな奴って誰?」と友人はまだ続けてくる。
夕暮れが藍色の空に変わろうとしていた。











「、俺の隣にいるやつ」









「…唇の端、大丈夫?」



二人きりになって最初に口を開いたのは亜子だった。


あのあと、俺は友人に「なに言ってんだよ」とか「気持ち悪い」と言われて殴られた。
何も見えていないやつから見たら確かに気持ち悪いんだろう。
他人からしたら、俺の隣には誰もいないように見えるのだから。


だけど抵抗は、しなかった。
嘘だとも、言わなかった。





「別にこんなの暴力教師の拳に比べたら痛くねーよ、」




唇の端が切れているから笑うと痛かったが、それでも笑った。



こんな痛み、きみの痛みに比べたらどうってことないのだから。


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